世界の流れは、EV化(54)

多様な観点からニュースを考える 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。 

伊藤さゆりニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事 

 

EUは、2050年の脱炭素化のために、この10年間の取り組みを重視しており、2030年の中間目標に合わせた規制、税、排出量取引制度等の包括的見直しを進めています。脱炭素化は次世代に対する現世代の責任という意識も強く、「脱炭素化は経済や雇用に打撃が及ばないスピード」でという現世代優先の考え方は通らなくなっています。脱炭素社会への成長モデル転換の痛みも覚悟し、取り残す人や地域を作らないための再分配の仕組みも、政策・制度設計の重要な一角を占めます。日本から見ると急進的過ぎるEUの取り組みですが、EU市場へのアクセスを望む企業は、EUの理念に合わせる必要があることを象徴する動きと受け止めました。 

2021年12月3日 12:0543 

 

 

高橋徹日本経済新聞社 アジア総局長兼論説委員 

 

別の視点 

世界のEVブームはこれが何度目かです。以前の排ガスという地域環境対策から、温暖化という地球環境対策に重心がシフトしました。温暖化抑止は待ったなしですが、気になるのは政府・自治体の普及政策です。ガソリン車との価格差を埋めるため、消費者への購入補助金が代表的ですが、純粋に温暖化防止を考えるなら、車に乗らず電車やバスなどの公共交通機関を使う人に補助を出す手もあるのでは?産業・雇用政策や「個人の移動の自由の確保」といった別の理由はありますが、目的達成に向けた政策手段はもっと柔軟に考えるべきだと思います。 

2021年12月3日 12:27 (2021年12月31日12:28更新)  

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR02F13002122021000000/ 

 

 

欧州グリーンディール法案の威力は大したものだ。欧州の名だたる車メーカーはすべて2030年頃には、EV専業となっているような雰囲気である。 

 

と言うことは、バッテリーをどのように確保してゆくか、と言うことが今後の世界での最大のテーマとなろう。 

 

この記事にも書かれているように、メルセデス・ベンツも、2030年までに全車種をBEVにする計画の様だ。 

 

 

メルセデス・ベンツ、2030年までに全販売車種をEVに 

2021.07.29  櫛谷 さえ子 日経Automotive専属ライター 

 

 ドイツ・メルセデスベンツMercedes-Benz)は2021年7月22日、2020年代の終わりまでに販売するすべての車種を気自動車(EV)にすると発表した。今後はハイブリッド車プラグインハイブリッド車よりもEVに注力する。 

 

 まず22年までに、同社が提供する全車種にEVを導入する予定。25年には中・大型乗用車用「MB.EA」、高性能車用「AMG.EA」、小型商用車用「VAN.EA」の3つのEVプラットフォームを発表し、新たに発売するモデルはすべてEVとなる。同社はEV化を加速させるため、2022~30年に400億ユーロ以上を投資する計画だ。 

f:id:altairposeidon:20220131230604j:plain

「EQ」シリーズ(左)の前に立つDaimlerおよびMercedes-Benz会長のOla Källenius氏(写真:Mercedes-Benz)[画像のクリックで拡大表示]  

 

 同社はパワートレーン事業を再編した後、企画・開発・購買・製造を垂直統合する。そのため、電動モーターメーカーである英YASA(YASA Limited)を買収し、独自の「axial flux motor」技術を使った次世代の超高性能モーターを開発する。こうした新しい電気駆動技術を採用することにより、開発と製造の垂直統合のレベルを深める。また、モーターの内製化は、「eATS 2.0」のようなインバーターとソフトウエアを統合した電気駆動システムの効率向上とコスト削減の重要な要素になるとする。 

 

年間200GWh以上の電池生産体制 

 

 全車をEVにするため、電池の調達規模を拡大する。年間200GWh以上の電池容量を確保するため、世界中のパートナーとともに8カ所のセル生産ギガファクトリーを設立する。これらのセル生産拠点は、すでに計画されている9カ所の電池システム生産拠点に追加して設立される。 

 

 次世代電池は高いレベルで標準化され、同社の90%以上のモデルで共用できる。また商用車など個別のカスタマイズが必要なモデルにも使える柔軟性を持つという。最先端の電池技術を生産中のモデルに採用していくことで、モデルの生産ライフサイクル中でも航続距離を伸ばしていけるという。 

 

 次世代電池の開発では、米シラナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)などのパートナーと協力し、負極にSiとカーボンの複合材を使用することでエネルギー密度を高める。これにより航続距離を伸ばし、充電時間を短縮する。また、さらに高いエネルギー密度と安全性を備えた全固体電池の開発もパートナーと協議しているという。 

 

 同社は現在、航続距離が1000km以上となるコンセプトEV「Vision EQXXを開発している。高速走行で100km当たりの使用電力量を10kWh未満にすることを目指しており、同社のF1高性能パワートレーン部門の専門家を含む複数の分野にまたがるチームが開発を進めている。開発で得られた技術は、同社の新しいEVに応用される可能性がある。 Vision EQXXは2022年に発表される予定だ。 

 

ソフトウエア技術者を大量採用 

 

 EV生産については、グローバルの生産網を準備しているところで、需要の動向に合わせて立ち上げていくという。柔軟な生産体制と最先端の生産システム「MO360」の構築を進めており、すでにEVの量産が可能になっている。早ければ2022年から3大陸の7拠点で8車種のEVを生産する予定という。 

 

 電池生産ではドイツGROB(GROB-WERKE GmbHと協力し、電池モジュールと電池パックの組み立てに焦点を当て、自動化システムを含む電池生産ノウハウの強化を図る。また、ドイツのクッペンハイムに電池リサイクル工場を新設し、リサイクルの能力とノウハウを確保する予定。リサイクル工場は、公的機関との協議が済めば2023年から操業を始める。 

 

 こうした生産体制の変化に応じて従業員のトレーニンも進める。ドイツ国内では2020年に約2万人がe-mobilityに関するトレーニングを受けた。また、独自OS「MB.OS」を開発するため、全世界で約3000人のソフトウエア技術者を雇用する予定。 

 

高い利益率を維持してEVシフトを実現 

 

 EVを普及させるためパートナーのシェル(Shell)と協力し、充電網の拡大に取り組む。Mercedes-Benzユーザーは、欧米および中国に3万カ所以上あるShellの充電ポイントを2025年までに利用できるようになる。このうち1万カ所以上が急速充電器を備える。このほかに、Mercedes-Benzとして、欧州でプレミアム充電サイトを複数立ち上げる予定。 

 

 同社は、21年後半のEV「EQS」発売と同時に充電サービス「Plug & Charge」を始める。同サービスは、様々な充電ポイントでユーザー認証から支払いまでをシンプルな手順で行うことができるという。 

 

 同社は2020年秋に、EVにリソースを集中させつつ利益率を10%前後に高めるという目標を発表した。この発表時点では、25年までに電動車の販売比率を25%にすることを前提としていた。今回、2025年までに電動車の販売比率を最大50%までに引き上げ2030年までに完全なEV化を目指すシナリオが発表されたが、利益率の目標は変わらない。「Mercedes-Maybach」や「Mercedes-AMG」などの高級EVの比率を高め、同時に価格と販売を直接コントロールすることで、1台当たりの純利益を増やすという。 

 

 また、デジタルサービスでの収益増加を見込んでいる。今後、変動費および固定費の削減と、設備投資比率のさらなる削減に取り組む。電池セルの標準化やEVプラットフォームの採用によりEVの低コスト化を進める。エンジンやハイブリッド車への投資は2026年に2019年比で80%減少させる計画だ。 


https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/10863/?P=1 

(続く)