もともとトヨタの戦略は「全方位」を基本としている。EVもやれば、エンジン車もハイブリッドも、水素で走るFCVも、すべてやるというわけだ。また、トヨタという自動車メーカーの特徴は、グローバル市場に向けてフルラインナップを販売するというのが特徴だ。欧州や北米、中国といった大マーケットだけでなく、ASEANや中東、南米、アフリカなど、世界170ヵ国以上。まさに世界中で商売をしている。車種もコンパクトカーからSUV、商用車まで、さまざま。つまり、世界中にいろいろな顧客を持っている。市場ごとに自然環境も違えば、経済環境も異なる。EVが普及しつつある市場もあれば、逆にエンジン車でないと困るという市場もある。さらには南米のようにバイオエタノールという、カーボンニュートラルに近い燃料がすでに普及している市場もある。
そうした、多様な市場に対応するには、EVシフトではなく、全方位な姿勢で臨まねばならぬというわけだ。
「カーボンニュートラルのカギを握るのがエネルギーです。現時点では、地域によってエネルギー事情は大きく異なります。だからこそトヨタは各国、各地域のいかなる状況、いかなるニーズにも対応し、カーボンニュートラルの多様な選択肢をご提供したいと思っております。どれを選ぶか。それを決めるのは、私たちではなく各地域の市場であり、お客様です。どうしてここまでして選択肢を残すのか。経営的な話で言うなら、選択と集中をしたほうが効率的かもしれません。しかし私は、未来を予測することよりも変化にすぐ対応できることが大切だと考えております。だからこそ、正解への道筋がはっきりするまで、お客様の選択肢を残し続けたいと考えています」とトヨタの豊田章男社長は説明する。
「選択するのはお客様」であり、「トヨタは選択肢を残すためにEVも用意する」というわけだ。そして、お客がEVを選ぶようであれば、「迅速にEVを品ぞろえするよ」というのが今回の説明会の骨子であった。
必要なモノを、必要な時に、必要なだけ用意する「ジャスト・イン・タイム」。これはトヨタの十八番の生産方式のこと。EVも、そうしたジャスト・イン・タイムで臨むということなのだ。
撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY
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(続く)