世界の流れは、EV化(72)

電気自動車の場合、単純にバッテリーとモーターをつなぐだけでは、自動車としてはうまく動かないが、バッテリーとモーターだけなので機構はICEに比べればかなり単純である。

 

EVでは、バッテリーの充放電の制御、バッテりーの直流を交流に変換するインバーターや交流モーターを制御するコントローラーなどが必要となる。

 

ICEでは、

 

・エンジン、変速機、吸気系、点火系、排気系、冷却系、触媒系、などが必要となるが、

 

EVでは、エンジンの代わりがバッテリーであり、

 

・バッテリー、バッテリーコントローラー、モーターコントローラー(インバーター)、モーター、減速ギア、普通・急速充電器 の組み合わせで足りる。

 

 

 

バッテリーバッテリーコントローラー モーターコントローラー モーター減速ギア 

     Power Control Unit

 

 車載・充電器(交流 急速・充電器(直流)

 

 

BEVはこれだけなので、ICEに比べればとても簡単なのである。だからEV化が進行すれば失われる職はかなりの規模となろう。

 

そしてEVは、Batteryに蓄えた電気で、モーターを回して走ることになる。バッテリー製造時には多くのCO2を排出するが、走行時にはEVCO2フリーである。しかしここにEVの一つの注意点がある。このBatteryEVではキーテクノロジーとなるわけだが、当然蓄えられた電気には限りかあるから、EVには次のような欠点・デメリットがある。

 

 

(1) 航続距離が短い。日産Leaf458kmWLTC)、三菱i-Mieve164kmJC08)、Honda-e 

              (283kmWLTC)、実質は、5~6割り掛けと言ったところか。

 

(2) 充電時間が長い。満充電に8h~24h、急速充電Stand少ない、

 

(3) 非常に高価である。バッテリーやモーターなどの希少金属(リチウム、コバルト)やレア
アー ス(ネオジム、ジスプロシウム、etc)などが必要。

 

(4) 製造時には大量のCO2を排出。そのためLCAベースではHV車の方が、CO2排出は少な
              いケースがある。

(5) バッテリーの寿命は長くない。四千サイクル?5~10年と言ったところか。新型「日産リー
フ」の保証期間は、新車登録から816km。中古車価格はかなり低い。

 

(6) 火災の発生の恐れがある。特にGMボルトEVやテスラの火災のニュースが多い。

 

(7) 雪道にはBEVは全く不向きである。雪道に閉じ込められた場合には、BEVにはなすすべがない。従って寒冷地への遠出にはBEVは、全く不向きである。

 

 

このバッテリーの欠点雇用問題を避ける意味で、既存設備が使える水素エンジン合成燃料車注目されている。バッテリーの革新、例えば全個体電池などの話は後に譲るとして、まずは水素エンジン合成燃料車に話題が移る可能性がある。

 

 

水素エンジン合成燃料車に話題を移す前に、次の論考をぜひ読んでいただきたい。

 

トヨタが350万台のBEVを売るという根拠と、その裏側の真実が余すところなく説明されている。

 

結局のところEVは、それほど売れないであろう、と言うことである。欧州市場では、ICEを持つHV車がEVの2倍以上も売れているという。だからと言う訳でもないが、CO2フリーの水素エンジン合成燃料車も捨てたものではないと言うことになるが、それはさておきこの論考を読んでいただきたい。

 

 

 

敵は誰か、本音は何か 350万台も売るというトヨタの新EV戦略

近岡 裕 日経クロステック 2021.12.20

 率直に言って、驚いた。トヨタ自動車(以下、トヨタ)が20211214日に発表した新EV戦略のことだ。ただし、記者が驚いたのはトヨタが見せた「本気のEVシフト」なるものではない。したたかな広報戦略に、である。「あのトヨタが、メディアを黙らせることを狙ってここまでストレートな発表をするとは」というのが正直な感想だ。

新EV戦略を発表する豊田社長

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EV戦略を発表する豊田社長

報道陣の質問に対し、「今までのトヨタEVには興味がなかったが、これからのEVには興味がある」などと語った。(写真:日経クロステック)   

 トヨタは、発表に関して極めて慎重な会社だ。あまりにも慎重すぎて、本音が見えないことも少なくない。世間に与え得る影響の大きさを心配してのことだとは思うが、ことEV戦略に関しては裏目に出た。結果、トヨタEVに後ろ向き」「ハイブリッド車HEV)にこだわって世界から孤立する」「エンジン関連のトヨタグループの雇用を守りたいだけだろう」……などといった事実に反するイメージが世間に流布してしまった。

 トヨタの手に掛かれば、EVなど簡単に造れる。事実、超小型EVC+pod」を商品化し、中型SUV(多目的スポーツ車)タイプのEVbZ4X」の詳細についても公表済みだった。EVのコア部品でもある駆動用モーターと2次電池(以下、電池)、インバーターを、車載用部品としてどこよりも多く実用化しているのは同社である。これは、1997年から積み上げてきたHEVの累計販売台数が1870万台(202110月時点)に達しているためだ。さらに言えば、次世代電池として注目を集める全固体電池の技術でも特許でも、世界の先頭を走っているのはトヨタ(とパナソニック東京工業大学連合)である。

新EV戦略の骨子

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(続く)