CNは自動車メーカーの死活問題となってきているから、彼らもある意味、必死なのである。
エネルギーと環境
Vol.28 二酸化炭素と水素がガソリンに代わる?「合成燃料」の可能性
2021.06.29
写真) Audiのe-fuel製造プラント
出典) Audi Japan Press Center
- まとめ
- カーボンニュートラルの潮流の中、自動車メーカーは合成燃料の開発に乗り出した。
- 海外ではAudi社が合成燃料の分野で先行しており、日本メーカーも開発に動いている。
- 課題は生産効率の悪さとコスト高。各国の環境規制も含め、産官学で取組むことが必要。
自動車メーカー各社にとって、各国政府が目指す「カーボンニュートラル」政策は、経営戦略に大きな影響を及ぼす。ガソリンエンジン車からEV(電気自動車)への潮流はもはや止めることはできない。テスラのようなEV専業メーカーが躍進し、EV普及の鍵を握る充電技術開発も加熱している。(参考記事「Vol.25 今、EV充電ビジネスが熱い!」(2021年3月16日掲載)
一方、現在普及している自動車のほとんどはガソリン車であり、それらは今後も走り続ける。そうした中、従来のガソリンに代わってよりクリーンな燃料を開発しようという動きが出てきた。今回は、その「合成燃料」を紹介する。
合成燃料とは?
「合成燃料」とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を合成した燃料だ。石油以外の炭素資源(天然ガスや石炭など)由来の従来の合成燃料と異なり、二酸化炭素自体を利用して製造するものだ。
以前の記事(「CO2を大気中から回収!?驚きの新技術」:2021年6月15日掲載)でも紹介したDAC(ダイレクトエアキャプチャー)によって大気中から回収されたCO2や、工場などから排出されたCO2を使う。そのため、燃焼時に排出されるCO2と相殺されてCO2排出量が実質ゼロ=カーボンニュートラルな脱炭素燃料とみなされる。脱炭素燃料といえば、バイオマス(生物資源)を原料とするバイオ燃料もあるが、バイオ燃料よりも製造時間が短く、大量生産しやすいという利点がある。
図) 合成燃料の製造プロセスと分類
出典) 経済産業省 合成燃料研究会
その合成燃料は、大きく分けて気体合成燃料と液体合成燃料の2種類がある。液体合成燃料のなかでも、「e-fuel(イーフューエル)」と呼ばれるものは、回収したCO2と再生可能エネルギーの余剰電力を使った水素H2から合成する。再生可能エネルギー供給量の変動性と、それに伴う価格の不安定さが課題だが、その改善にもつながる。
なぜ今、合成燃料が注目されるのか?
合成燃料は、従来の化石由来の燃料と同様にエネルギー密度が高いことが特徴だ。EVをみればわかるように、ガソリン車と同じ距離を走らせようと思ったら、巨大で重いバッテリーを搭載しなくてはいけない。
その点、合成燃料は、ガソリンなどとエネルギー密度がほとんど一緒のため、ガソリン車などに搭載されている既存のタンクをそのまま活用できる。また、供給網として既存のガソリンスタンドも使えるし、EV用に必要な充電スポットの増設の投資も抑えられる。
図) 日本の次世代自動車の普及目標と現状
出典) 一般社団法人 次世代自動車振興センター 日本政府のゴール・次世代自動車普及状況
(元データは 一般社団法人日本自動車工業会「日本の自動車工業2020」)
先にも述べたが、現時点で世界の道路を走っている車の多くはガソリン車、もしくはディーゼル車だ。
(続く)