先の論考にもあるように、次のような過程で合成燃料は作られるものである。
工場・DACよりCO2→
→CO+H2(合成ガス)→FT合成→合成燃料・CnH2n
高温の水蒸気・H2O →
小生はここら辺の技術的なことには詳しくはないので、間違いがあればどんどんご指摘を願うが、このような合成燃料が一般的となれば、ICE(Internal Combustion Engine)・内燃機関でもCO2フリーの燃料として重宝されることには間違いなかろう。
なんといっても、クルマで言えば現在使用されている(いわゆる中古)車にも使える燃料であることが、最もメリットがあることであろう。
2020年時点における日本の自動車保有台数は約8,185万台だと書かれていたが、このうちCO2の排出の少ない電動車(HEV,PHEV,EV,FCV)は、11%ほどだという。残りの89%はガソリンエンジン車で、CO2の排出がある意味野放し状態となっている。もしリーズナブルな価格で合成燃料が提供されれば、これらの89%のガソリンエンジン車にも合成燃料が行き渡り、CO2フリーとなりうるのである。だから(小生は)合成燃料の時代が早く来ることを、心から願っているものである。
クルマに限らず、石油燃料を使うモビリティも、この合成燃料を使えばCO2フリーとなり得るものである。
電動航空機なんぞと言う代物は、重たいバッテリーをたくさん積まなければならないので、全くものになる乗り物とはならない代物である。だから、航空機などには、この合成燃料は最もふさわしい燃料となりうるものである。船舶も同様に、合成燃料であればCO2フリーの燃料として大いに重宝されるものである。いわんや、自動車においておや、である。
もちろん自動車においても同様に重宝される燃料であることは、言わずもがなである。
このように既存のインフラが使えて、且つ、内燃機関・ICEで使える燃料であるこの「合成燃料」は、まことに重宝するものである。何とか技術開発が進み、コストも競争力のあるものとなれば、あらゆるモビリティで使われることになろう。2030年、2040年と言わずに、早く一般的に流通する代替燃料となればよいと願っている次第である。
そんなこんなで、トヨタもカーレースでこの「合成燃料」を使って、その実用性を確かめてゆくことでしょう。合成燃料が流通しだせば、水素・H2も大量に市場に投入されることになり、いわゆる水素社会の実現が現実のもの(に近づくこと)となろう。
そうすれば、水素を燃やす「水素エンジン」も陽の目を見ることとなり、CO2フリーの燃料革命が起きることになる。すると次に起こることは、FCV・燃料電池車や水素エンジンの時代となってゆくのではないのかな(もちろん合成燃料も)。とは少し大袈裟であるが、いわゆる「水素社会」の到来である。
次の論考は「合成燃料」ではなくて、直接「水素」を燃料として使うことを念頭に置いたものであるが、ご一読願う。水素も有望な「脱炭素燃料」である、合成燃料よりも有望かもしれない。
ICE(内燃機関)が"カーボンニュートラル"時代に生き残るためには、"水素社会"の到来が必須?
近頃、トヨタ、カワサキ、ヤマハなどの大メーカーが、水素を燃料にするICEを開発するニュースが巷をにぎわせています。電動2&4にアレルギー反応? をしめすタイプの趣味人にとっては、カーボンニュートラル時代もICE搭載車を楽しめる希望がわく話題ですが、はたしてホントに、私たちが水素燃料ICE搭載車を趣味の対象として、楽しむことができる未来はおとずれるのでしょうか・・・?
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2021年12月28日に公開されたものを転載しています。
ICEのCNには水素
LAWRENCE - Motorcycle x Cars + α = Your Life.
カーボンフリー時代に、水素燃料が一番適しているのは「飛行機」!?
オランダのライデン大学のジョー・ヘルマンス教授は、論文のなかで化石燃料の代わりに水素燃料が適している輸送機関として"飛行機"を推しています。
電気モーターの力だけでプロペラを回して空を飛ぶ乗り物については、2050年までに全製品のゼロエミッション化を目指しているロールスロイスなどのメーカーが開発していますが、大型旅客機や大型輸送機に採用されているターボファンやターボプロップのような役割を、電気モーターで代用することは技術的に難しいです。
ゆえに、ターボファンやターボプロップ飛行機に使い続ける需要は、カーボンニュートラルの時代にもなくなることは考えにくく、これら動力源をカーボンニュートラル時代にも使うための手段として、水素燃料が脚光を集めているわけです。
[動画] ロールスロイス、電動飛行機の速度記録を更新!! この技術は、2&4のEV技術にも貢献するのでしょうか? - LAWRENCE - Motorcycle x Cars + α = Your Life.
ヘルマンス教授の論文によると、化石燃料の代替手段として水素燃料が飛行機に適している理由に、既存の航空機燃料同様に液化水素燃料と取り扱うのが専門スタッフだけなので安全性を担保できること、航空機燃料より液化水素が軽量であること、そして大型旅客機は主に外気温が低い高高度を飛ぶため液化水素をマイナス253度に維持することが地表よりも容易になる・・・などをあげています。
2035年までに、ゼロエミッションの民間航空機を市場投入することを目指しているエアバスは、水素燃料航空機の開発を進めています。搭載されるのはターボファン(左上)とターボプロップ(左下)、そしてハイブリッド水素ターボファン(右)の3タイプなります。 www.airbus.com
大手航空機メーカーのエアバスは、2035年に民間市場に水素燃料航空機を投入することを目標に、水素技術開発に励んでいます。エアバスの想定する水素技術の活用法は、改良されたターボファンやターボプロップエンジンを水素燃料で動かしたり、その補完推力として水素燃料電池で発電した電力で駆動されるモーターを使うハイブリッド方式がまずひとつ。
そしてもうひとつは、水素をeフューエルの材料として使う方法です。再生可能エネルギーで作った水素をCO2と結合させることで、温室効果ガス排出が正味ゼロの燃料を航空機用に作るやり方です。なおエアバスは2025年までに、「水素技術の最適な組み合わせについて、必要な決定を下すことを期待」と述べています。
川崎重工業も、水素燃料で飛ぶ航空機の研究を行なっています!
また川崎重工業も航空機メーカーとして、2030年を目処に水素燃焼向け航空機エンジン燃焼器の実証を目指し、水素航空機の研究を進めています。
先述のとおり、ヘルマンス教授は化石燃料の代替として水素燃料を使う場合は飛行機が最適と論文に記していますが、それは開発の容易さを保証するものではもちろんありません。水素燃料をつかう水素燃焼器、液体水素燃料タンクおよび供給システム、そして機体レイアウトなどの設計は、技術的に非常に難しいものです。
川崎重工業の水素航空機イメージ図。機体両側面の大きな膨らみが外観の特徴ですが、この部分はジェット燃料比で4倍の大きさになる水素燃料タンクのスペースです。 meti-journal.jp
高高度の外気温の低さは、マイナス253度の液化水素を維持することにはプラスになりますが、それでも極低温に耐える軽くて丈夫な燃料タンクを、ジェット燃料に比べて体積4倍のサイズでレイアウトしなければいけないことは、技術的には非常に難しいです(なおエアバスも水素航空機の水素タンクがかさばることから、従来の航空機と外観が変わる可能性があることについて言及しています)。
また「水素推し」勢の企業・団体はあまりそのことに言及しませんが(苦笑)、水素を燃料として燃焼させると、排出されるのはクリーンな水・・・だけではなく、空気中に窒素が存在するゆえに有害な窒素酸化物=NOxも出てしまいます。その対策も、水素を燃焼用の燃料として使う上で無視できない課題に違いありません。
ともあれ、もしも世の中の大型航空機のほとんどが、水素を燃料にして空を飛ぶ時代が訪れたら・・・世界の最終エネルギー消費に占める輸送部門の比率は28%前後ですので、そのうちの大型航空機分はかなり"クリーン"にすることができるわけです。2&4輪業界ではカーボンニュートラルへの道はEVこそが最適解!! と主張する声が大きいですが、電気モーターでは力不足というジャンルにおいては、水素の可能性に期待を寄せる業界もあるわけです。
(続く)