水素を直接燃焼させるためには、水素エンジンの項でも述べたようにブレイグニッションガ起きやすく燃焼速度が速すぎるために、燃焼速度が早いガス火力での混焼の方が合っている。
しかし日本での火力発電は石炭火力が主力となっているため、ガスと比べて燃焼速度が遅いため、水素を直接混焼させるためには相応しくない。そのため石炭と同じ燃焼速度のアンモニア・NH3であれば、石炭火力との混焼が可能となりその分CO2の削減にも寄与することになる。
しかもアンモニアであれば、すでに肥料用途で広く世に出回っているため既存のアンモニア流通経路を活用することで、燃焼用途に利用が可能であることも利点となる。
ただし、アンモニア貯蔵タンクや混焼設備などは、新たに必要となるが、もう一つの課題は、燃焼時に窒素酸化物・NOXの排出が増加することである。そのためには、既存の脱臭装置を活用することで改善されることが分かっているので、問題ではあるがそのうち解決策も出てくるのではなかろうか。
そんなことで、EUでも「欧州水素戦略」を2020年7月に発表し、水素やアンモニアの活用を戦略的目標として脱炭素政策を進めてきている。この件は下記の論考などを参照願う。
脱炭素の切り札?にわかに脚光を浴びる「アンモニア発電」とは何か
2021年3月3日
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210302/se1/00m/020/035000c
このように地球温暖化対策は、単にクルマを電気自動車・BEVにすればよい、と言うものではない。目標は間違えては困るのである。我々が目指すところは、「脱炭素化」であってEV化ではない。EV化はその一つのものであるが、バッテリーの製造段階を見てもいかに大量のCO2が排出されているか、と言うことも考慮する必要があり、このままEV化が進むとも思えないのである。
我々はEV化を唱える前に、そのもととなる電源構成をいかに環境にやさしいものに転換してゆくかを考えてゆかなければならないものである。
再生可能エネルギーや原子力による発電、水素の利活用による発電そして石炭火力発電の削減と廃止に向かって、これから更なる努力を重ねてゆくことが最重要である。
EV化がそれだけで地球温暖化を防ぐと思っていたら、大間違いであることが少しはわかったところで、ひとまず筆をおこう。また何かあれば、続きを始めたいと思っているが、我々はEV化と言うよりも脱炭素化に、それこそ死にもの狂いで取り組まなければならないのである。
(終わり) 2022.02.25 21:59
EV化を先頭に脱炭素化が必要だ、と書いてこのテーマを終了していたが、二日前の3/4に、ソニーとホンダが電気自動車・EVの設計・開発、製造・販売で事業提携し、共同出資会社を作り2025年にEVを発売すると発表した。製造に関してはホンダの工場に委託することになるので、新会社は設計・開発と販売を業とすることになろう。
ソニーは2020年にEV「VISION-S」を発表し、更に2022年のCESでは「VISION-S2」を発表して、安全性を高めるセンサーやクルマ本体ではなくて付属機器である画像センサーや車内で利用するための通信技術や音響・映像コンテンツを紹介して、車内空間を移動中に有意義な「エンタメ空間」にすると発表した。
ソニーはいわゆるクルマのスマホ化と言う中身だけを見せたわけだが、それを搭載する外身と言うかそれの基盤となるクルマ本体をどうするかが、課題であった。それが今回のホンダとの提携話である。ホンダの(製造する)車両にそのソニーの「センサーやコンテンツ」を搭載すると言うもので、ホンダの工場でそのクルマを製造することになろう。
ホンダと言う会社は、日本では唯一の独立系の自動車製造・販売会社である。
日本には、トヨタ系、日産・三菱・ルノー系とホンダと言う三つの自動車会社群がある。かっては数十社あった自動車会社が、この三つに統合されていったものである。そのホンダは、トヨタ系に入ったスバルやマツダと違い、ただ一つ残った独立系の自動車会社である。ちなみに日本の自動車会社は、次の14社である。
いすゞ自動車、カワサキモータース(オフロード四輪、二輪)、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車(仏ルノーが43.4%株所有)、日野自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業(日産が34%株所有)、三菱ふそうトラック・バス(DaimlerTruckAG社傘下)、ヤマハ発動機(四輪バギー、二輪)、UDトラックス(旧日産ディーゼル→ボルボ→いすゞ100%取得2021.4.1) の14社。名称から「株式会社」は省略してある。
(https://www.jama.or.jp/industry/maker/index.html)
トヨタ自動車、 日産自動車、 本田技研工業、の3グルーブに二輪のカワサキとダイムラー傘下の三菱ふそうトラック・バスの二社が存在している。四輪メーカーとしてはホンダだけ1社が独立系として存在している状況で、米国のGMとEVの開発・生産では提携しているので、GM系かと思われる節もあったが、今回のソニーとの提携でこのCASEの難局を乗り切ってゆくつもりのようだ。
どんな形のクルマになるのかまだ想像つかないが、自動運転を前提に空間が移動する「会議室」とか「事務所」とか移動する「居間」とか「書斎」とか「娯楽室」と言ったことを想像すればよいのか、そんな単純なものではないかもしれない気もするが。
使い方によってなんにでも使える「空間」となるわけだが、果たしてどれだけのニーヅ・需要があるのかは未知数であろう、と小生は感じている。自動運転はいざ知らず、あれば便利だが、それだけのことに終わってしまう可能性も無きにしも非ず、と言う気もするのである。
汽車や船舶・航空機などの長時間利用するモビリティに、そのようなものを設けた特別室が設置されて移動中に使われる、と言うことはあり得るのであるが、もちろんクルマにも適用可能ではあるが、果たしてどれほどの利用価値があるものであろうか、疑問のあるところでもある。
ホンダもどんなものになるのかは確信が持てないようで(とは小生の感じであるが)、ホンダ本体の中には取り込まずに別組織(当然別会社)として動かして、ホンダ本体には影響させずにホンダ本体のEV事業はそのままで継続させるようだ。
何はともあれ、2025年にソニーとホンダが売り出すEVは、どんな形のもの(具体的なモビリティにしてもアダプタビリティにしても)になるのか、見ものである。大いに期待すると言う訳でもないが、期待して待とう。
言っておくが、「クルマ」がスマホになるわけではない。スマホ的機能がクルマに搭載されて、スマホ的な使われ方が多くなるということから、クルマが何になるのかはまだ誰にも分っていないのではないのかな。
このソニーの諸センサーを含む車載用ソフトウェアコンテンツはオープンだというので、他の事業体にも販売されることになるので、どんな展開となるのか興味あるところでもある。
(続く)