ロシアのウクライナ侵攻(7)

Q:事態打開の見通しは?

 

両国が停戦協議を重ねていますが、見通しは不透明です。プーチン氏の思惑は外れウクライナ制圧は進んでいません。ロシア軍は4月初めにキーウ周辺から撤退しました。苦戦を強いられたために軌道修正し、東部や南部の要衝獲得に戦力を集中させるとみられています。

 

プーチン氏は国内に「勝利」を宣言し、侵攻を正当化する必要があります。毎年59にロシアで開く第2次大戦の戦勝記念パレードまでに、できるだけ占領地域を広げて成果の演出を図ることが考えられます。戦闘の長期化は避けられないとの見方も強まっています。最終的に停戦に応じるかはプーチン氏次第です。

 

 

停戦協議ではウクライナの「中立化」が焦点となっています。同国はNATO加盟を断念する代わりに、米仏独や中国など複数の国々が安全を保証するように提案しました。ロシアが破らない抑止力がある枠組みを確立するのは簡単ではありません。ウクライナは領土を渡さないと主張しており、ロシアが占領した地域の扱いを巡る協議はさらに難航しそうです。

 

 

Q:日本や世界への影響は?

 

ウクライナからの国外への避難民は450万人を超えました。国内の避難民とあわせて国民の4人に1人以上が住まいを追われた計算になります。ポーランドなど周辺国の受け入れ態勢は限界に近づき、避難民の受け入れの分担が急務となっています。

 

エネルギー価格にも影響を与えます。米欧の制裁によって各国が資源国であるロシアとの取引を止めたり、減らしたりすることによって、世界的に供給が混乱する恐れが強まり、原油天然ガスなどが高騰しました。資源価格の上昇は、日本を含む消費国でのガソリン代や電気代の上昇に直結します。ロシアが最大の輸出国で、ウクライナとあわせて世界の3割を供給する小麦の価格も上昇しています。各国のインフレに拍車をかけることが予想されます。

 

プーチン氏はウクライナ東部の「住民保護」が目的と主張する(3月11日、南東部マリウポリ)=AP

プーチン氏はウクライナ東部の「住民保護」が目的と主張する(311日、南東部マリウポリ=AP

 

米欧が懸念するのは中国が対ロシア制裁の抜け穴となることです。米国との対立を背景に中ロは連携を深めてきました。中国は将来的な台湾統一も念頭に、国際社会の反応を見極めているとみられます。力による現状変更を試みる強権国にどう対峙するか。日本の安全保障にも深くかかわる課題となっています。

 

情報戦への備えも問われています。侵攻を巡ってはSNS(交流サイト)などを通じて真偽不明な情報が飛び交っています。衛星画像などの公開情報を分析して事実を明らかにする「OSINTオープンソース・インテリジェンスの略)」と呼ばれる手法が、ロシア軍の動きなどを伝えるのに力を発揮しました。

 

(小川知世)

 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2885V0Y2A320C2000000/?n_cid=NMAIL006_20220416_A

 

 

 

 

プーチンとしては、ウクライナを、簡単に、完全な形で自国側にとどめておけると考えていたようだ。それが次の文章でよくわかる。

 

『・・・旧ソ連の構成国で民族的に近いウクライナ民主化を警戒し勢力圏にとどめようとしてきました侵攻で同国をすぐに降伏させて事実上の支配下に置けると考えていたようです。国際社会での米国の影響力を失墜させ、「大国ロシア」を復活させた指導者として、歴史に名を残す思惑があったとみられます。

 

そしてウクライナを屈服させて、5月9日第二次世界大戦対独戦勝記念日での「勝利宣言」に花を添えようと考えていたに違いない。そんなわけでプーチンは、ロシアの歴史に自分の名を残そうとする思惑を大いに膨らませていたわけだ。

 

だがそうは問屋が卸さなかった、と言うことだ。こんな状態では、勝利宣言は絶望的である。

(続く)