4.ロシア軍の後方を叩く具体的方策
ウクライナ軍はこれまで、弾道ミサイルの保有が少なかったので、ロシア軍の後方部隊を破壊することはできていなかった。
この問題を解決するのが、正確に目標に命中させられる大量の各種自爆型無人機と火砲から発射される誘導砲弾だ。
ウクライナは、米国から「スイッチブレード300」、「スイッチブレード600」、「フェニクス・ゴースト」の3種類の無人機の供与を受けている。
3種類の米国製自爆型無人機は、電磁波攻撃にも撃墜されない。ほかに、トルコから購入した「バイラクタルTB2」、自国生産の「UJ-32Lastivka」の2種類がある。
ロシア軍の後方を叩く各種手段
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これらの無人機は、それぞれの機能に応じて使い分けることができる。
使い分けることによって、戦闘機の能力を超え、敵の攻撃や防御でも、縦深に配備される兵器や兵站施設、予備として投入される部隊を攻撃することができる。
各種無人機の攻撃目標
・スイッチブレード(Switchblade) 300
小型軽量で、見通し線を超えて10キロ先までの飛翔距離を有する精密誘導兵器である。
大きさは、40ミリ手榴弾弾頭のサイズであり、主に対人兵器である。ソフトターゲットの車両に対しても効果がある。戦車や装甲車には効果がない。
両軍の接触線から10キロ以内の密集している歩兵、狙撃手、迫撃砲、弾薬・燃料を補給する車両を破壊することができる。
これまで、前線から離れ隠れて射撃する狙撃手を殺傷することが難しかったが、この300型は極めて有効に使用できる。
歩兵がコントローラーで遠隔操作するので、スイッチブレードの機首部分に搭載された高性能カメラから送られた映像で偵察ができる。
つまり、重要目標である狙撃手などソフトターゲットを捜索しながら、そのまま突入させて、自爆攻撃することができるものだ。
発射管を含む弾薬の全体的な重量は2.5キロであり、リュックサックに収容することができる。格納状態から、発射まで2分もかからない。
時速100キロ以上の巡航速度と160キロの最高速度で飛翔し、6分以内に最大飛翔距離である10キロに到達する。
数機が同時に発射された場合、15分間の滞空時間があるので、この時間内であれば、それぞれ射撃目標を振り分けることができる。
スイッチブレード300
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・スイッチブレード(Switchblade)600
20分間飛翔し、到達距離は40キロだ。この範囲内で合計90キロ(56分)まで飛翔できる。
ジャベリンと同じ弾頭を搭載して、時速185キロの最高速度で突入する。搭載されているカメラの解像度も高く、高度な精密誘導制御が可能である。
価格は、ジャベリンのような対戦車ミサイルよりも安価である。
戦術的には、対戦車ミサイルシャベリンの射程(2.5キロ)以遠の戦車・装甲車、火砲部隊(多連装砲を含む)、弾薬・燃料を補給する兵站部隊、戦闘部隊の防空を担任する防空ミサイル部隊などを捜索して発見し、正確に突入して破壊することができる。
特に、戦車などは、移動していても40キロ以内であれば、上空から攻撃(トップアタック)を受け破壊される。
戦車殺傷用ドローン(tank-killing drones)とも呼ばれている。
前線から離隔していれば、安心して行動ができたが、この無人機によって、不意急襲的に攻撃され、恐怖にさらされる。
左:飛翔中のスイッチブレード600、右:発出時の様子
© JBpress 提供 出典 左:筆者作成、右:AeroVironment,Inc
出典 左:筆者作成、右:AeroVironment,Inc
・UJ-32Lastivka
戦車ロケット「RPG-7」の弾頭をドローン化したもの。これまでの兵器を使用できることと、ウクライナ製であることから、大量生産が可能である。
無誘導であるRPGロケット弾に誘導性能を持たせた自爆ドローンで、飛行距離は最大40キロである。オペレーターによる操縦とプログラムされた自律飛行が可能だ。
巡航速度は時速120キロ、最高速度は180キロになる。
電動駆動のモーターエンジンは低ノイズ、最低飛行高度は2メートルと相手に気づかれずに標的まで接敵することができる。
機体下部にはカメラが取り付けられており、映像はリアルタイムでオペレーターに提供される。
空中からの侵入が可能になったことで戦闘装甲車の脆弱な部分である上面を狙う、「トップアタック」が可能になる。電磁波攻撃への対応能力は不明である。
UJ-32Lastivka
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(続く)