ロシアのウクライナ侵攻(11)

・フェニクス・ゴースト(Phoenix-ghost

 

 米国は、121機以上フェニックス・ゴースト戦術無人航空システムを提供するという。

 

 だが、この無人機については正確で詳細の情報がなく、不明な点が多い。とはいえ、各種情報を整理すると、以下の能力があるようだ(今後、正確な情報が発表されれば、改めて分析する必要がある)。

 

 低コストの使い捨ての自爆ドローンであり、標的に突入する前に空域を飛び回ることができる。

 

 ウクライナのニーズに基づいて、短期間で製造されたもので、ウクライナ東部のドンバスで必要とされている。

 

 スイッチブレードよりも大型であることから、その破壊力も大きい

 

 滞空時間は6時間である。衛星を使用したデーターリンクであれば、スイッチブレード60040分で飛距離40キロであることから、9倍の300キロ以上であると推測できる。

 

 赤外線センサーにより、夜間にも飛翔できて、目標に突入させることができる。

 

 スイッチブレード600の飛距離40キロ以遠の目標を攻撃できる。

 

 具体的には、

 

ウクライナ軍占領地からマリウポリを占拠しているロシア軍を攻撃できる。

 

 このドローンが59日までに、ウクライナ軍に届いて使用できるようになれば、ロシア軍は、マリウポリでの軍事パレードはできなくなるだろう。

 

ウクライナ東部と南部で、ウクライナ軍とロシア軍の接触線からウクライナ国境まで平均的に約200キロである。

 

 ウクライナ軍は、接触線からロシア軍の後方の国境線まで、十分に攻撃することができる。

 

 つまり、ウクライナに侵入しているロシア軍すべてに対して攻撃ができるということだ。

 

ウクライナ軍は、オデーサからクリミア半島の大部分、特に、黒海隊司令部があるセバストポリ基地とそこに停泊している軍艦に対して、攻撃できる。

 

・バイラクタル(BayraktarTB2

 

 この無人機は、コントロール範囲は300キロ以下で、滞空時間は27時間武装ペイロード150キロまでのロケット弾や対戦車ミサイルを搭載できて、対地攻撃ができる。

 

 また、監視も可能である。飛翔速度(時速)は、巡航約130キロ、最大約220キロである。

 

 全長6.5メートル、全幅12メートルで、自爆型と比べると大型であり、レーダーで発見されれば、撃墜される可能性がある。

 

 自爆型無人機と用途を分けて運用されている。

 

 413日に、黒海艦隊旗艦の「モスクワ」を対艦ミサイル「ネプチューン」で攻撃した時に、この無人機は、囮として行動していたという情報もある。

 

 最大150キロのペイロード、翼には4つのハードポイントがあり、最大の4つの長距離対戦車ミサイル、小型精密誘導爆弾、レーザー誘導ミサイル/ロケットを搭載できる。

 

 ウクライナはこのバイラクタルTB22019年に6機調達した。

 

 将来的には、24(追加)~48機(国内生産)の予定であったが、実際には、調達できていないようだ。ロシア軍が2機を撃墜したとの情報もあり、残りは4機のようだ。

 

 用途は、フェニックス・ゴーストと同じ戦略的目的のために使用され、また、これと連携して運用もされるだろう。

 

イラクタルTB2

出典:筆者作成© JBpress 提供 出典:筆者作成     

5.反転攻勢の道開く自爆型無人

 

 前線で見えない目標を攻撃できたのは、これまで戦闘機・対地攻撃機攻撃ヘリ無人機であった。

 

 戦闘機・対地攻撃機攻撃ヘリ・大型無人機は、両軍が防空ミサイルを保有すれば、撃墜される可能性が高まり、運用する場面に限界がある。

 

 現実に、戦闘の当初には、相当の機数が撃墜された。

 

 神風ドローンと呼ばれるスイッチブレードの300型と600型は小型であり、防空レーダーには発見されにくく、600型は戦車などにも正確に命中し、破壊することができる。

 

 ウクライナ軍は、ロシア軍の戦車や装甲車を何両破壊すれば勝利できるのだろうか。

 

 ロシア軍が当初保有していた戦車と装甲歩兵戦闘車数は7000(旧型の倉庫保管を除く)である。

 

 当初投入分と事後充足された数は、保有数の約85%と考えられ約6000両である。

 

 撃破されたのが約1000両であることから、現在戦っている戦車などの数量は、約5000両であろう。

 

 ウクライナ軍は、この約40%である2000両を破壊することが必要だ。

 

 装甲車については、当初保有していたのが約9000両(倉庫保管を除く)で、再編成後の数両が約8000両である。

 

 撃破されたのが約2300両であることから、現在戦っている装甲車の数量は、5700両である。

 

 ウクライナ軍は、この約40%である2300両を破壊することだ。

 

 つまり、今後ロシア軍が投入した数量の約40%、戦車など約2000装甲車2300の合計4300両を破壊すれば、ロシア軍は戦えなくなる

 

 戦史上では30%の損耗が出れば、戦闘不可能と言われている。

 

 これを超える40%の損耗を与えれば、ロシア軍は敗北を認め、当然、ウクライナ国境からロシアに撤退せざるを得ないであろう。

 

 約4300両を破壊できる数量の各種自爆型無人機と精密誘導ができる砲弾を投入して破壊すること、さらに、バイラクタルTB2とフェニックス・ゴーストを運用して、ロシア軍の戦略的施設および海軍艦艇を破壊すれば、ウクライナ軍の勝利は見える。

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69960

 

 

 

そんなわけで、ロシアの同盟国のベラルーシのルカシェンコ大統領も、ロシア軍の弱体化にあきれているようだ。

(続く)