ロシアのウクライナ侵攻(33)

世界は軍事増強に動いている

ウクライナ侵攻が大きく騒がれる割には、日本の国防問題は、以前よりましになったとはいえまだまだ人々の関心が足りない

世界平和も大事だが、「日本を守る」ことが国防の基本である。だが、日本は(潜在的な敵も含めた)諸外国に比べてえがお寒い限りだ。

 

例えば、中国の国防費はこの20年間膨張を続け、日本の5倍以上だ。

 

また、日本と同じく第2次世界大戦の敗戦国であり、戦勝国から軍備に圧迫を加えられてきたドイツも、最近国防に関する姿勢を大きく変化させた。

 

時事通信227日の、産経新聞314「ドイツ、軍備増強へ13兆円 対ロ防衛で大転換、NATO目標超え」という状況である。

 

また、すでに兵器の国産化においては、日本と同じ敗戦国であるドイツの武器輸出額は国別ランキング4位であり、枢軸国であったイタリアも7位である。

 

米国軍需産業の売りつける(援助される)兵器を使った戦争で日本人の血が流されないようにするだけでは無い。兵器の国産化というものは、兵士が戦う武器の調達を「外国の思惑で左右されないようにする」という、戦略上極めて重要な課題なのである。実際、それだけが理由ではないと思うが、武器の調達をロシアにかなり依存しているインドプーチン政権に親和的だ。

 

言ってみれば、現在騒がれている「食料の国産化」と同じように、「兵器の国産化」は日本の命運を左右するとさえ言えるかもしれない。

 

米国は世界の警察官はやめたいが軍需産業で儲けたい

米国だけで世界をコントロールできる時代は終わった。だが、軍需は今でも米国産業の基盤だ。世界の軍事費のシェアはG7加盟国が52.7%と過半を占めるが、米国だけで38.5%と突出している。

 

それに対して、ロシアの軍事費シェアはわずか3.2%しかない。だから、ロシアがNATOと(通常兵器で)全面戦争を行えば、ロシアは一瞬で消えるであろう。したがって、私には「ロシアがウクライナをいじめている」というよりも「米国などの西欧諸国がロシアをいじめている」ように思える。

 

また、いじめられっ子が追い詰められて「窮鼠猫を噛む」ことは珍しくない。つまり核ミサイルが発射されるという最悪の事態だ。

 

ちなみに、日本はそのいじめられているロシアを下回る2.6の軍事費シェアしか持たない(参考:第一生命経済研究所・石附賢実氏「世界軍事費ランキングとパワー・バランス」

 

米国の軍需産業は戦争によって儲かる。アフガンからやっと撤退したと思ったら、すぐさまウクライナ紛争が始まったのは、バイデン民主党選挙対策のためだけではないと思える。

 

当たり前だが、米国では「米国民の血が流されること」が忌み嫌われる。(米国が直接介入しない)ウクライナ紛争長期化は、米国軍需産業に極めて都合がよくベトナム戦争のようになれば彼らが潤う。

 

軍需産業は国防の基本だ

529日公開「戦争と米国の存在感の時代こそ日本は『のび太+ドラえもん』で行こう」で述べたように、戦後、戦勝国の米国は敗戦国である日本の軍需産業(重工業)を徹底的に痛めつけた。日本の重工業を破壊して貧しい農業国にすることで、2度と「米国様」に立ち向かえないようにするつもりであったようだ。

 

特に、ゼロ戦の圧倒的戦力に苦しんだせいか、戦後日本の航空機の研究・設計・製造を全面禁止した。さらに、戦前の航空機資料は全て没収され、機体は一部が米軍をはじめとする連合軍に接収された他は、すべて破壊された。

しかし、朝鮮戦争によってその方針が覆った

 

だが、日本の航空産業はその後も不調である。トヨタ自動車が米国のビッグスリーを圧倒し、世界のナンバーワン企業に躍り出ようとしているのとは対照的に、航空機産業においてはボーイングエアバスのような企業は日本に存在せず、せいぜいビジネスジェットにとどまっている。そのビジネスジェットもホンダは好調だが、三菱重工MRJ(三菱スペースジェット)は迷走が続いたあと開発中止に追い込まれた。

 

日本が誇るゼロ戦は、三菱重工が開発し中島飛行機SUBARUの源流)が生産したことを考えると複雑な気持ちだ。

だが現在でも、米国をはじめとする航空機メーカーは多くの日本製部品を使用している。

 

一般製造業と軍需産業の境界はあいまいだ

2019年の韓国への輸出管理規制を思い出してほしい。たった3品目の輸出管理の「強化」だけで、韓国がパニックになったのである。日本の技術水準はすさまじいほど高いのだ。

 

日本の製造業のパワーについては、昨年59日公開「日本の『お家芸』製造業、じつはここへきて『圧倒的な世界1位』になっていた…!」などで述べた。

 

実際の戦場においても、高性能な日本製のピックアップトラックが人気で、パトロールカーなどとして利用されている。

 

また、チャド軍と反政府勢力の両者が、トヨタ自動車ピックアップトラックを戦場で使用した際、荷台後部に大きく表示された「TOYOTA」のロゴタイプがたびたび放映され目立った。そのため、「トヨタ戦争」と呼ばれるようになっている。

 

さらに、日本の軍需産業の手足を縛っていた「武器輸出3原則」だが、日本経済聞527日「防衛装備の輸出緩和 戦闘機も検討、豪印など12カ国対象」のように緩和に向かっている。

 

歴史を振り返れば、元々航空産業に進出していたこともあるが、第2次世界大戦中、米自動車大手フォードは爆撃機を大量に生産した。さらに、ジープ、軍用トラック、戦車、水陸両用車、装甲車などあらゆる兵器生産に従事した。

 

もちろん、フォードだけではなく他のメーカーも戦時体制下で兵器生産に協力した。日本でも同様である。

 

さらに、お掃除ロボット「ルンバ」を製造しているiRobot社は、もともと米軍、SWATで爆発物処理や偵察に使用されている、軍事用ロボットであるパックボットなどを開発していた。

 

兵器も自給自足すべし

今でも米国の軍事費世界シェアは4割近くあり強大だが、それをこれからも維持することが困難なのは明らかである。だから、世界各国の同盟国に防衛費の負担を強いるのである。

 

そして、米国は本音では一方的に米国が日本を守る日米安保条約を破棄したいはずだ。だがそれは日本の国防を日本自身で行うチャンスでもある。

 

ただし、日本が負担した防衛費で米国製兵器を購入して米国の軍需産業を喜ばせるのは愚策だ。食料やエネルギーと同じように、兵器も「自給自足」すべきなのである。

 

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95938?page=1

 

 

 

日本が攻め込まれた場合には、自衛隊は思い切り戦うことになるが、如何せん専守防衛のくびきがあるので、効果的に戦えるかは疑問があるところである。しかしアメリカが助けに来てくれるまでは何としても負けるわけにはいかない。日米安保条約がある以上、アメリカは日本と共に戦ってくれるはずではあるが、以上見てきたようにバイデンはおいそれと日本を助けてはくれない可能性もある

 

日本有事でも同じように参戦しないのではないのかな。いくら日米安保条約があるからと言って、日本は安穏としている訳にはいかないのだ

(続く)