纏向遺跡と邪馬台国(日本古代史の謎)(52)

大国主命の話が出たついでに、一足飛びに「国譲り」の話を持ち出してしまったが、それまでには大穴牟遅神(オホナムヂ)」から大国主神への成長物語が存在するのである。 

 

 

因幡の白兎(イナバノシロウサキ)の話は、多くの日本人は子供の頃から、おとぎ話としてよく聞かされていたことと思う。 

 

古事記の原文は、冒頭では「大国主神」と表現しているが、その次からは大穴牟遅神(オホナムヂ)」と表現しているので、オホナムヂが成長して大国主神」となっていったものと思われる 

 

故。 此大國主神之兄弟。八十神座。』・・・原文 

 

かれ この大国主の神の兄弟はらから 八十神ヤソカミましき。 

・・・書き下し(武田祐吉 

 

この大国主命の兄弟は、沢山おいでになりました。 

・・・現代語訳(武田祐吉 

 

https://classicstudies.jimdofree.com/古事記/上巻-第三部/因幡の白兎/ 

より借用した。 

 

これによると、最初から大国主神(立派な国の主)となっているが、沢山の呼び名があったと言っているので、沢山の変わり型の逸話が存在したものと思われる。 

 

小生としては、「大穴牟遅神(オホナムヂ)」が成長して、大国主神」となって「豊葦原の瑞穂の国」の頭首となった、と語った方が面白く理にかなっていると思っている。 

 

いずれにしてもこの話は(試練はまだあるのだが)、大国主神大穴牟遅神(オホナムヂ))を鍛えるための試練であった様だ。 

 

以下、読み解き古事記神話篇三浦祐之朝日新聞出版)により、その概略を記す。 

 

1) 八十神たちは稲羽の八上比売ヤガミヒメを娶りたいと稲羽にゆく。 

2)大穴牟遅神を従者として、袋を背負わせた。→ここからはオオナムヂとなっている。 

 

因幡の白兎】 

3)気多の岬で皮をはがされた兔と会う。八十神は海水で洗って風で乾かせ、と 

 兎に教える。 

4) その通りにすると、皮膚がひび割れし痛くて泣き伏す。すると 大穴牟遅神 

  が後から来て「なぜ泣くのか」と尋ねる。 

5) 兎は隠岐の島にいて、一族の数の多さをくらべるために、鰐をだまして 

  並ばせてその上を飛び跳ねて数を数えながら本土へ渡ろうとした。 

6) 最後のところでそれがばれて、鰐につかまって着物をはがされてしまった
  ので(皮をはがされて)、泣き悲しんでいたところ、 

7) 八十神が来て、海水で洗って風で乾かせと教えられたが、この有様です。 

8) 大穴牟遅神は、「水門に言って水で体を洗い、蒲の穂をとって敷きそこに  

  寝ころべば旧の肌のようにに治る」と教える。医療知識を持っていた。 

9) 教えられたとおりにすると、兎の肌は元通りに治る。 

10) 喜んだ兎は、八十神たちは八上比売ヤガミヒメを得られない、きっと 

  あなたが得るでしょう、と言う。 

11) 兎か言った通り、ヤガミヒメは八十神を断り、大穴牟遅神と結婚すると答 

  える。ヤガミとは因幡国八上郡で、結婚は土地の領有を意味する。 

 

【猪狩り】 

12) 八十神は怒ってイノシシ狩りにかこつけて、大穴牟遅神を殺そうとする。 

13) 伯伎ハハキの国の手間山のふもとでのイノシシ狩り、大穴牟遅神は下で 

  待っていて、降りてきた赤いイノシシを捕まえよ、と言われる。 

14) 八十神たちは真っ赤に焼いた石を転がり落とすと、大穴牟遅神はその岩に 

  押し潰されて死んでしまう。 

15) そこで泣き悲しんだ母の神が、天の神産巣日神カムムスビノカミに頼み 

  こむ。 

16) そのため「赤貝姫」(キサカヒヒメ)と「蛤貝姫」(ウムカヒヒメ)を 

  派遣して生き返らせる。 

17) (意訳すると)「赤貝姫」が岩から大穴牟遅神をかきとり、「蛤貝姫」が 

  蛤の汁と母の乳汁とを塗り付けると、大穴牟遅神は難なく生き返り元の 

  立派な男となって出歩くことが出来た。 

(続く)