爆笑問題・太田光と(旧)統一教会(19)

日本人は「日帝支配の恩讐に報いるべき」 

 

これまでの説明で、旧統一教会信徒が信奉する教えと究極の救済方法である祝福をある程度理解していただけたかと思う。 

 

いわゆるオーソドックスなキリスト教諸派と比べれば、旧統一教会の独自性は明らかである。現代人には、教祖の選んだ人であればどんな人とでも……というような結婚は受け入れがたいものだろう。 

 

しかし、これまでに7000人あまりの日本人女性信徒が信仰のゆえに韓国人男性と祝福を受け、多くの人々が韓国の郡部で暮らしている。そこでは日本の農村部同様、深刻な男女のミスマッチ(いわゆる嫁不足)があり、中国朝鮮族の女性と結婚する農村男性も少なくない。 

 

韓国人男性の中には信仰が全くなくても、旧統一教会主催の合同結婚式に参加して日本人女性を伴侶としているものもいる。 

 

信徒同士の宗教的結婚というのは1990年代半ばまでの話であり、その後、教会は韓国人の信者獲得のために日本人女性を送り込んできたと言えなくもない。勧誘 

 

もちろん、教会が言うには、韓国人男性は霊的に高いから日本人女性信徒にとっては結婚できるだけでも幸いであり、韓国が日帝による36年間の支配から受けた恩讐おんしゅうに報いるには、日本人女性の献身がよりいっそう求められるし、何より彼女達は喜んで韓国に来たのであるという。 

 

文鮮明によれば、地上天国の統一言語は韓国語であり、韓国式文化こそ日本人が救いに与るために学ぶべきものなのだ。 

 

このセリフは昔も聞いた。朝鮮半島に渡った日本人妻といえば、北朝鮮への帰還事業で何千人もの日本人女性が在日朝鮮人の人達と一緒に地上の楽園に行ったことだろう。彼女達の帰国を阻むのは国境であるが、旧統一教会は信仰により国際結婚した女性達を韓国に留めている。 

 

献金目標額のファックス」が次々に届く 

 

信仰で結婚はできるが、生活は現実である。 

 

生活力のある男性と結婚できた女性信徒はよいが、そうではないケースも仄聞そくぶんする。 

 

櫻井義秀『霊と金』(新潮新書 

 

高学歴社会の韓国で、配偶者に恵まれない地方在住の男性はどのような学歴や職業の人物であろうか。1990年代の日本女性の平均的な大学進学率は4割に達していた。おそらくは、彼女達の生活水準や学歴達成を、自分たちの子供にかなえてやることも難しいのではないかと心配になる。 

 

もっとも、韓国に嫁いだ女性信徒達は、世界の中心たる韓国にいるということで、日本の旧統一教会が負うミッションから逃れることができる。 

 

文鮮明によれば、韓国はアダム国家で日本はエバ国家、アダムを堕落させたエバがアダムに仕える(侍はべるという言い方もする)のは当然となる。 

 

大変なのは、日本で生活をしている祝福家庭の信徒達である。 

 

祝福を受けて原罪のない子供を産み、理想の家庭を築こうという時に、教祖の命を受けた日本本部から、次々と献金目標額のファックスが届くのである。 

 

統一教会の信徒たるもの、再臨主の願いに応えないわけにはいかない。問題は、どこからそのお金をかき集めてくるのか、である。 

 

櫻井 義秀(さくらい・よしひで)北海道大学大学院文学研究院教授 


1961(昭和36)年山形県生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程中退。文学博士。専攻は宗教社会学、タイ地域研究。主な著書に『霊と金』(新潮新書)、『「カルト」を問い直す』(中公新書ラクレ)。編著に『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』(北海道大学出版会)、『カルトとスピリチュアリティ』『よくわかる宗教社会学』(編著、ミネルヴァ書房)など。 

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(続く)