ドイツ戦、スペイン戦の采配は評価できるが…
――森保監督の采配については、どう考えていますか。
城 ドイツ戦、スペイン戦は、前半耐え抜いて、後半にメンバーとシステムを変えたのがハマって結果を出せた。それは評価できる部分だと思います。でも、それだけですよね。
初戦のドイツ戦で逆転勝利を果たす ©JMPA
コスタリカ戦とクロアチア戦は、同じ感じでやろうとして、それがハマらなかった。一度うまくいった戦術を順番に繰り出していくみたいな感じで、状況を見ながらどのような選手と戦術が必要か判断し、手を打ったという感じではない。
森保監督はW杯最終予選の時から、疲れてきた選手を入れ替えて終わりみたいな選手交代がすごく多かったんです。あらかじめ決まった手段を出していく。それがたまたま当たる感じで、そこから先がないんですよ。だから今回も、最後は残念な結果に終わってしまったと思います。
――森保監督個人の評価はどう考えていますか。
城 正直、全然評価していません。東京五輪世代を起用し、選手は経験を積めた。そしてドイツ、スペインにも勝った。けど、監督としてはどうなのでしょう。
W杯前はベスト8に行って新しい景色を見ようと言っていました。でも、ドイツ、スペインに勝ったことで新しい景色を見られたみたいなことを言い始めましたよね。それは違うと思うんですよ。その2試合は、戦術がハマったし、選手もがんばったので、結果を出せたことはよかった。ただ、何度も言いますが、本当の目標が何だったのかを忘れてはいけない。
森保監督は、東京五輪でも金メダルを目標にしていましたが、メダルには届かなかった。東京五輪と同様に今大会も結果を残していない。最終目標を達成できていないので評価できないと考えるのが妥当だと思います。
森保一監督 ©JMPA
カタールW杯での戦いと采配をきちんと検証するべき
――その森保監督に代表監督続投の話が出ています。
城 カタールW杯での日本の戦いや森保監督の采配などがきちんと検証されていないなか、そういう話が出てくるのはおかしな話ですし、個人的には反対です。ドイツ、スペインに勝ったから良しとするのでは今後も何も変わらない。
日本がベスト8に行くためには何が必要なのか。森保監督のサッカーは、今回結果を出したドイツ戦、スペイン戦に見られるようにリアクションサッカーです。サッカーであれだけ守備を固めて戦えば、簡単には失点しない。でも、W杯ではベスト16で終わった。その先を考えると、もっと攻撃的に行く必要があるし、ベスト8以上の経験も必要になってくる。そこに対して森保監督の能力を考えると、もういっぱいいっぱいだと思います。
※リアクションサッカーとは
リアクションサッカーとは、相手の動きに合わせて柔軟に対応するサッカーの考え方・戦術のことです。
自分たちで積極的にボールを動かすのではなく、試合前に相手の動きに対するこちらの行動を決めた上で、相手のプレーや戦術に合わせて対応していきます。
基本的には戦力的に劣るチームが採用する戦略であり、守備を固めて失点をしないようにしつつ、ロングカウンターを狙う戦術が取られることが多いです。
https://tele-saka.com/reaction-soccer/#:~:text=リアクションサッ,戦術のことです。
森保ジャパンの攻撃をけん引した伊東純也 ©JMPA
――森保監督では、ベスト8は難しい。
城 今の森保監督とスタッフの力では無理だと思います。コーチは、世界を経験していないんですよ。百歩譲って森保監督を続投させるなら、コーチやアドバイザーに経験値の高い優秀な外国人を入れないとダメでしょう。彼らの力を借りてチーム作りをしていかないと、この先、さらに上へステップアップするのは難しいと思います。
――次の監督は、どういうタイプが理想として挙げられますか。
城 しっかりとアクションを起こし、攻撃の構築ができる監督が理想でしょう。本当に良い人がいたら4年間ではなく、8年間を任せるぐらいの感じでもいいと思います。
日本は4年周期で監督が代わり、その都度、スタイルが変わるのでいまだに「日本のサッカー」が確立されていないですし、選手も対応の変化を求められて大変です。時間をかけてみっちり攻守を作り上げていけば、リアクションサッカーだけに頼る戦いはなくなる。そこで初めてベスト8が見えてくると思います。
城氏が次期監督候補にあげた“3人の名将”
――具体的に、名前を上げるとすると誰が思い浮かびますか。
城 ユルゲン・クロップ監督(リバプール)がいいと思います。彼がドルトムントを指揮していた頃、奥寺(康彦)さんとドイツに行ったことがあって、そこで少し話をしました。日本や日本人に興味を持っていましたし、香川(真司)を始め日本人の扱いも慣れている。しかも、コミュニケーションというか、伝え方がうまい。
ドイツ人は勤勉で真面目だし、日本人にも通じるところがあるのでいいかなと思いますね。ジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ)も面白いけど、あんな高度なサッカーを日本ができるのかと考えるとちょっと厳しい。ディエゴ・シメオネ監督(アトレティコ・マドリード)もいいかなと思ったけど、守備から入るので、それじゃあ今までとあまり変わらないですからね。
森保監督の去就に注目が集まる ©JMPA
――外国人監督を招聘する際に気を付けないといけないことはありますか。
城 優秀な通訳を採用することでしょう。通訳は監督と一心同体じゃないといけない。トルシエ監督の時は、フローラン・ダバディさんが通訳をしていました。トルシエは熱く語っているのにダバディさんはクールに訳していたけど、それじゃあ監督が伝えたいこととニュアンスが変わってしまいます。選手は通訳の言葉を信じるので、そこで誤差が生じてはいけない。監督と同じ熱量を持っていて、かつサッカーを理解して通訳してくれる人が必要だと思いますね。
――優秀な監督が来る際、選手に求められることは何でしょうか。
城 個々の選手は、今よりもさらに成長していくことが求められます。確かに今の選手は数年前よりも確実にうまくなっているし、平均値も高くなっています。でも、ベスト8を目指すのであれば、1対1の勝負に勝てる、ハイプレッシャーの中でボールをキープできる、そういう質の高い選手に成長する必要があります。そういう選手がいないと、良い監督が来ても話にならない。
あとは、何かに特化したプレーができる選手が出てきてほしいですね。今回のW杯ではフリーキックを蹴れる選手がいなかった。あとは、三笘みたいにドリブルが半端なくうまい選手とか、ヘディングは誰にも負けないとか、キックが抜群にうまいとか、そういうずば抜けた能力を持つ選手も必要です。そうしないと、世界と戦ってベスト8に入るのは厳しいと思います。
強豪国相手に能力の高さを示した三笘薫 ©JMPA
日本がW杯でベスト16の壁を突破するためには
――今後、日本のサッカーはW杯でベスト16の壁を突破し、ベスト8、さらにその先へと進むことができるのでしょうか。
城 今回のカタールW杯は、グループステージを首位で抜けた時点で、ベスト8を狙える最大のチャンスだと思っていました。ベスト16の対戦相手(クロアチア)にも恵まれたし、スペインに勝って勢いもあった。
実際の試合では、クロアチアはグループステージ3試合を同じメンバーで戦ってきて、みんな疲れていて、ミスも多かった。そんなクロアチアに勝てなかった。相手が強すぎてボコボコにやられたならまだしも、勝てそうな相手だったのに、このチャンスを逃したのは、本当に大きい。
次のW杯は、48カ国の戦いになります。今回よりも勝ち上がるのは困難になっていく。組み合わせにもよりますが、もしかしたら次はノーチャンスになるかもしれない。ラッキーなめぐりあわせは、勝負の世界で何度も起こるわけではないですし、今回は2大会連続で決勝トーナメントに進出できたけど、次も必ずできるとは限らない。
4年後、カタールW杯がベスト8を狙える最後のチャンスだったということがないように、個の成長や監督の選考も含めて最高の準備をしてほしいと思います。
(取材・文=佐藤俊)
https://bunshun.jp/articles/-/59354?page=3
セルジオ越後氏と城彰二氏のお二人の「森保ジャパン」への苦言というか忠告と言うか、はたまた提言というか、目標未達でも盛り上がっていた「森保ジャパン」への辛口コメントを紹介して、この話し終えよう。
苦言を述べてくれる人がいたことに安堵。4年後は是非とも「BEST8」で喜びを爆発させたい。「どうする 森保?」「どうする (田島)幸三?」
(終わり)