カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(12)

 一般的にe-fuelは、カーボンニュートラル燃料の一種だと解釈されおり、再生可能エネルギー由来の水素など、再生可能な資源からの電池エネルギーを化学的に蓄える燃料を指します(トヨタなど自動車メーカーの2022年6月時点での解釈)。 

 

 こうしたドイツの動きに対して、筆者(桃田健史)はさまざまな機会にその兆候を感じてきました。 

 

 例えば、2022年11月、都内で開催されたランボルギーニのイベントで、来日していた同社のステファン・ヴィンケルマンCEOに筆者が今後の電動化戦略について聞いてみると「ランボルギーニのようなハイエンドなクルマのメーカーにとって、2035年以降もe-fuelの導入を真剣に議論するべきだ」と答えています。 

 

 ランボルギーニは2028年に初のEVを市場導入し、またほかのモデルもプラグインハイブリッド車化する計画ですが、同ブランドのユーザーである富裕層のなかには、たとえプラグインハイブリッド車になっても大排気量のV型ガソリンエンジンを求める声が少なくないのでしょう。 

 

 なお、Fit for 55では、販売台数が欧州域内の年間販売台数が1000台から1万台の乗用車メーカーの場合、2035年まで段階的に引き上げられるCO2規制の対象外としていますが、2035年以降については詳細が決まっていません。 

 

 近年販売好調のランボルギーニが今後、販売台数をさらに増やしていけば、この1万台の壁を越えてしまうかもしれません。 

 

 前出のヴィンケルマンCEOはランボルギーニの親会社であるフォルクスワーゲングループ出身です。そのため、2010年代から世界に先んじてEVシフトを推進してきた同グループ全体としても、部品の共通性が今度さらに高まるという指摘から、e-fuelの必要性を示唆したとも考えられます。 

 

 例えば、EU内での社会情勢の違うさまざまな国や地域で販売されている、フォルクスワーゲン、セアト、シュコダなど、比較的販売価格が低いモデルがあるブランドでは、2035年の完全EV化の壁が高くオプションとしてe-fuelを考えざるを得ないともいえそうです。 

 

VWの新型EV「ID.Buzz(ID.バズ)」© くるまのニュース 提供     

 

VWの新型EV「ID.Buzz(ID.バズ)」 

 

 つまり、Fit for 55という大規模な規制が現実となっていく過程で、欧州域内での社会情勢の違いが改めて浮き彫りになってきたため、欧州域内での販売台数が多いメーカーを抱えるドイツがEUに対して修正案を要請したとも推測できます。 

 

 ただし、Fit for 55が可決して間もない時点でこうしたドイツ主導によるe-fuel活用が要請という形となった背景には、欧州の国や地域の思惑が交錯しているのではないでしょうか。 

 

 そこには、欧州域内だけではなく、アメリカや中国の動きを見据えた、欧州主要国間での政治的な駆け引きがあるように思えます。 

 

※ ※ ※ 

 

 こうしたEUでの政治的な動きは、当然日本にも及ぶはずです。 

 

 とはいえ、日本では電動化の実現に向け、達成の時期を定めて義務化する規制はありません。また、メーカー各社は日本を含めたグローバルでの販売主要地域が違いますし、アライアンスなど他社との事業連携の状況でも差があります。 

 

 今回のドイツのEUに対する要請をどう捉えるかは、日本の自動車産業全体というより、日系メーカーそれぞれで捉え方が違うのではないでしょうか。 

 

https://kuruma-news.jp/post/620436 

 

 

上記論考の「 例えば、EU内での社会情勢の違うさまざまな国や地域で販売されている、フォルクスワーゲン、セアト、シュコダなど、比較的販売価格が低いモデルがあるブランドでは、2035年の完全EV化の壁が高くオプションとしてe-fuelを考えざるを得ないともいえそうです。ある様に、2035年完全EV化は「壁が高い」どころか、まったく成り立たない可能性がEUでも(特に)中東欧諸国ではあり得るのである。とするとこの「Fit for 55」と言う法律はどうなるのか、と言う疑問が生ずるのである。 

 

ルノーでさえ慌てふためいて(?)いるわけで、ましてやその他の弱小国や弱小メーカーでは、法律で決められてしまえば、その影響は計り知れないものと思われるのである。 

 

ドイツでさえ、頭が痛い状態、であったのであろう、もともとEV化の原点であった「ディーゼルゲイト事件」を起こしたVWですら対応が難しい、と言うよりも不可能に近いものであると感じていたのではないのかな(とは少し言い過ぎの感がないのでもないのだが)。 

(続く)