カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(18)

今回の交渉は、ルノー側から提案...背景に、EVシフトへの出遅れ 

 

交渉には双方の都合があり、当然ながら、それぞれが納得してまとまる。資本関係見直しは日産側の悲願であり、その意味で日産の都合なのだが、今回の交渉は、意外にもルノー側がきっかけを作った。 

 

関係者によると、ルノーが2022年初め、日産に「EV新会社立ち上げ」の方針を伝えて協力を求めてきたという。 

 

この背景にあったルノー側の事情とは、欧州で急速に進む電気自動車(EV)シフトへの対応だ 

 

欧州でのルノーの販売シェアは最大手の独フォルクスワーゲンの半分にも満たず、EVでも出遅れている。巻き返すには経営資源をEVに集中する必要があると判断、そこで頼りにしたのが日産の資金と技術というわけだ。 

 

要請を受けた日産は「資本関係の見直し問題の進展」を協力の条件にし、両社の協議が本格化した。 

 

交渉にはルノー筆頭株主のフランス政府の影もちらついたが、23年1月、マクロン仏大統領岸田文雄首相と会談した際、出資比率見直しを支持すると伝えたとされる。 

 

フランス政府がルノーの日産への支配力の低下を容認した背景には、EV化競争を勝ち抜くには日産との協力が不可欠との認識がある。「3社連合が機能しなくなれば、ルノーがEV開発競争から脱落し、自動車産業に従事する国内の雇用にも響くことをフランス政府は何よりも恐れた」(業界関係者)との見方が一般的だ。 

 

交渉で最後まで障害になったのが、昨秋の記事でも指摘した知的財産の扱いだった。 

 

ルノーのEV新会社には米国の半導体大手クアルコムも出資し、ルノーは米グーグルとの協業も進める方針だ。日産は技術が第三者に流出することを警戒した。最終的にルノーが、新会社での知的財産の利用を制限する譲歩案を提示し、折り合ったという。 

 

ライバルと戦える体制は整った...日産「ルノーを気にせず事業戦略に集中できる」 

 

今回の合意により、ルノーはひとまずEV化競争で戦える体制を整えたといえる。 

 

一方、日産はどう変わるのか。 

 

内田誠社長は2月6日の会見で「新しい体制が相互の信頼を深め、モビリティーの未来に向けて我々の共通の野心を加速させられる」と語った。業界関係者は「ルノーを気にせず事業戦略に集中できる意味は大きい」とみる。 

 

ただ、EV化のほかに自動運転などを含め、自動車業界は100年に一度の転換期を迎えている。業界内の合従連衡に加え、グーグルやソニーといった異業種からの参入も相次ぎ、競争は熾烈を極める。 

 

日産は22年6月に国内で発売した軽自動車のEV「サクラ」が23年1月末時点で約3万7000台を受注する好調な出足だった。5年間でEV化に約2兆円を投じ、30年度までに世界の販売車種に占めるEVとHVの比率を計50%以上に高める目標も掲げている。 

 

ただ、トヨタ自動車やホンダと比べ稼ぐ力はなお乏しく、研究開発費でも見劣りする。日産であれ、ルノーであれ、単独で現下の競争を戦えるわけではなく、それゆえの3社連合維持でもある。 

 

資本をめぐる緊張関係は緩和されたとはいえ、3社の連携をどう再構築し、世界の強豪に伍していくのか、日産やルノーに残された時間は多くないだろう。(ジャーナリスト 済田経夫) 

https://www.j-cast.com/kaisha/2023/02/14455912.html?p=all 

 

 

ヨーロッパでのEVシフトは、思いのほか切実なものと認識されている、と小生は感じている。ルノーはBEVの新会社「アンペア」に日産の参画を、とりあえず取り付けることが出来て、EVシフトへのとっかかりが出来てほっとしていることでしょう。 

(続く)