カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(50)

 ではなぜドイツはエンジン車の存続に固執したのか。筆者が理由の1つと考えるのは、スポーツカーや高級車向け液体燃料の可能性を残しておくことだ。例えば合成燃料の実用化に最も熱心なのが、高級スポーツカーを手掛けるドイツPorsche(ポルシェ)である。ドイツSiemens Energy(シーメンスエナジー)と組んで2022年12月にチリ南部で合成燃料の工場を稼働させた。ドイツ政府の補助を受け、2025年までに年間5500万L、2027年からは同5億5000万Lを生産する。 

 

ドイツPorsche(ポルシェ)がチリで稼働させた合成燃料工場(写真:ポルシェ)[画像のクリックで拡大表示]   

 

 ポルシェも商品の電動化を進めているものの、スポーツカーユーザーのエンジン車へのニーズは根強い。同様に、ドイツBMW傘下の英Rolls-Royceロールス・ロイス)や、ドイツVolkswagenフォルクスワーゲン)傘下の英Bentley(ベントレー)といった超高級車の分野でも、エンジン車へのニーズは高いと思われる。一方で、こうした高級車や高級スポーツカーのユーザーは、燃料が多少高価でも気にしないだろう。利益率の高い高級スポーツカーや高級車の市場でエンジン車を残したいという思惑が、ドイツがエンジン車の存続に固執した大きな理由だと筆者はみている。 

 

PHEVの注目度が増す

 EUでエンジン車の存続が認められたことで、今後注目度が増すと考えられるのがプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。例えばトヨタ自動車の新型「プリウス」のPHEVモデルは、13.6kWhのバッテリーを積み、17インチタイヤ装着車では105km(WLTCモード)のEV走行を可能にしている。100kmの航続距離があれば、国内では日常走行の約8割をカバーできる(国土交通省のユーティリティーファクターより試算)。燃料を補給する頻度が低いため、燃料コストの高さはそれほど問題にならない。 

 

国土交通省のユーティリティーファクター:https://www.mlit.go.jp/common/001283223.pdf

 

トヨタ自動車の「プリウス PHEV」。バッテリー走行距離は105km(WLTCモード)で日常走行の8割程度をまかなえる(写真:トヨタ自動車)[画像のクリックで拡大表示]      

 

 一方で、プリウスPHEVの価格は460万円と、トヨタのEVであるbZ4Xの600万円(参考価格)より大幅に低い。さらに航続距離を見ると、bZ4Xの559km(前輪駆動仕様)に対して、プリウスPHEVはEV走行距離105kmエンジン走行距離1204kmWLTCモード燃費30.1km/Lと燃料タンク容量40Lからの計算値)で、合計1300km以上を確保している。つまり大幅に価格が低いのに、実用性は大きく上回る。 

 

 さらに資源の有効利用の観点からも、プリウスPHEVは有利だ。プリウスPHEVのバッテリー容量は、bZ4X71.4kWhのLio Batt.71.4/13.6=5.25の1/5以下であり、それで日常走行の8割をカバーできるということは、bZ4Xのバッテリーの4/5は、多くの走行シーンで、重さが300kg近いただの走行負荷になってしまっているということだ。バッテリーは貴重な資源の塊であり、機会の少ない長距離走行のために、大容量のバッテリーを積むことは、資源の無駄遣いといえる。 

 

 つまり合成燃料というオプションを活用することで、エネルギーの消費量や環境負荷を最小限にしつつ、ユーザーの利便性も損ねないための選択肢が広がる。加えていえば、日本は、国内のエネルギー需要を再生可能エネルギーだけでまかなうことは不可能であり、海外で製造した再生可能エネルギーを、何らかの形で輸入することが避けられない。再生可能エネルギーの輸入形態としても、合成燃料は有力な候補となるだろう。 


https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00050/00134/?P=2 

 

結局、EUはスポーツカーなどの高級車用に合成燃料(e-fuelなど)が必要なだけで、エコカー用とは考えていない(当座は)、と言うことである。だからEVシフトは進行してゆく、と言っているだけだ。だから合成燃料の技術革新を期待したいのであるが。 

 

bZ4XのBatt.は71.4kWhのLio Batt.だというので、71.4/13.6=5.25となり本文のとおりPrius-PHEVの5.25倍の容量のバッテリーを積んでいるのである。床全面にバッテリーが搭載されていて、約300kgだという。参考までにその床面のPhoto.を載せておく。 

 

世の電気自動車はすべからく床全面にバッテリーを敷き詰めているので、テスラもBYDもVWもEVは全部こんな状態である。 

 

New Car 車好きニュース      

https://carislife.hatenablog.com/entry/2021/04/19/103808  より。 

 

 

だから衝突などでここをつつかれると重大事故につながりかねないので、日米欧の真っ当なEVには、相当の安全対策が施されているものと思われる。

(続く)