カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(58)

とは言うものの、「世界の流れはEV化」なので、トヨタもそれなりの構え、動きをしなければ通用しなくなっている。これは厄介なことだ。 

 

 

一年半ほど前の2021年の12月14日には豊田章男社長自ら、従来はEVとFCVの電気自動車2030年には200万台を販売するとしていたものを、2030年に350万台そしてレクサスはすべてEVにすると発表している。 

 

トヨタは世界で約1千万台の車を販売しているので、その35%をBEV(含むFCV)にするという計画だ。そのためにEVは30車種を投入するという。 

 

レクサスの車種としては、トヨタのH.Pageによると全部で12車種が存在していると言う。内1車種・UX300eだけがBEVなので、11車種がICE車種であるので、これがすべてBEVとなるという。 

 

すると、EV全30車種とすると、残りは30-11=19車種となりこれがトヨタブランド車のBEVとなるわけである(単純計算ではあるが)。 

 

トヨタ車種一覧表で検索すると(https://toyota.jp/carlineup/ より)、 

トヨタ車の乗用車のラインアップは現在54車種だという。既にBEVである小型モビリティを除く51車種のうちの19車種がBEVとなる計算となる。 

 

コンパクト 6車種 

ミニバン  7車種 

セダン   6車種 

ワゴン   2車種 

SUV        11車種  

スポーツ  5車種 

GR/Sport   10車種 

軽自動車  4車種  

小型モビリティ 3車種(全部EV)  

合計    54車種   

 

このうち上記の赤字の車種・32車種が、BEVの対象に相応しい車種ではないかと想定すると、この32車種のうちから19車種がBEVとなることになるが、そうすると19/32=0.594 となり、約6割の車種がBEVとなる計算である。 

 

こうして計算してみると、一般に見られる身近なトヨタ車の6割の車種がBEV化される見立てとなり、この中には海外分も含まれるものと思われるので、日本国内でみられるトヨタ車のBEVの割合はどれほどになるものかは見当がつかないが、おおよそ半分の車種はBEVになるものと想定すると、これらの車種でどれほどの台数になるかは知らないが、半分の数の車種がBEVになるとすると、ある意味新車は、BEVだらけになる感じとなるのではないのかな。 

 

 

 

トヨタ、EVを年350万台世界販売 レクサス全てEVに
2021/12/14 14:58 (2021/12/14 22:38更新)日本経済新聞 電子版 

 

トヨタ自動車は14日、電気自動車(EV)の世界販売台数を2030年に350万台とする目標を発表した。燃料電池車(FCV)と合わせ200万台としていた従来目標の約8割増と大幅に引き上げた。バッテリー(電池)を含めたEVへの4兆円規模の投資も明らかにした。世界的に加速する脱炭素の流れを受けて経営資源をEVにより配分することで、先行する欧米勢や中国勢との競争に備える。 

 

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「フルラインアップでEVをそろえ世界を支える」。豊田章男社長は同日、都内で説明会を開き、EVへの投資を最大限に引き上げる方針を示した。21年4~9月期のEV販売台数は世界で7000台にすぎないが、現在の年間販売台数の3割強に相当する水準までEV販売を高める。 

 

具体的な戦略として、豊田社長はEVを30年までに30車種とする計画を掲げた。トヨタは現在、約100種販売している。高級車の「レクサス」ブランドについては30年までに欧州、北米、中国で、35年に世界でEV比率を100%にするとも明かした。 

まずは22年に初の量産型となる専用車台を使った新型EV「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」を世界で発売する。 

 

 

EV車種の拡充でカギとなるのが、電動車の動力源となるバッテリーの確保だ。30年までEVに振り向ける4兆のうち、バッテリーへの投資額は2兆円とする。9月に発表した1兆5千億円から5千億円引き上げた。 

 

世界の競合でフォルクスワーゲンVWが30年に世界販売の5割をEVとし、バッテリーは30年に240ギガワット時を欧州で確保する計画だ。トヨタはEVの台数で劣るものの、バッテリー(同280ギガワット時の確保)でEVで先行するVWを、上回る量を目指す。 

 

 

 

EVを巡ってはテスラが30年に3000ギガワット時の桁違いの電池確保を目指す。ゼネラル・モーターズGM)も35年までに乗用車全てをEVとFCVとするなど、世界の自動車メーカーの間でEVが電動車の主戦場との見方が強まっている。 

 

トヨタはEVだけでなく、ハイブリッド車(HV)、FCVや環境性能を高めたエンジン車など幅広く提供する戦略で脱炭素化に取り組む。こうした姿勢がともすれば「トヨタはEVに慎重」との見方につながった。EVへの投資増強や車種のラインアップの広さのアピールは、EVへの慎重姿勢を払拭する狙いもありそうだ。 

 

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD132OK0T11C21A2000000/ 

 

 

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中西孝樹ナカニ自動車産業リサーチ 代表アナリスト
 

 

分析・考察 

350万台とはもの凄い台数規模でしょう。パーセンテージ云々でトヨタのBEVへの姿勢を懐疑する見方を変えるべきです。一台一台丁寧に積み上げ、350万台規模でお客様に届けることを実現するのがどれほど大変で、集中していかなければならないことか。今日の会見は、身に染みるものがありました。グローバル・フルラインのトヨタが全方位で選択肢を顧客に提供する基本戦略は不変です。顧客がパワートレインを選択でき、トヨタはリスクを分散し、日本の雇用を維持する意味を内包します。残りは、効率を如何に維持できるかです。柔軟性、TPSの原単位やリードタイム、バリューチェーンなどを活用することで解決策はあります。 

2021年12月14日 17:06 (2021年12月14日 18:35更新)115 

 


尾三四郎伊藤忠総研 上席主任研究員 

 

別の視点 

トヨタ車1台あたりのライフサイクル排出量(LCA)の目標設定が求められる。カーボンニュートラル(CN)実現に向けての「基準」はEVの台数ではなく、供給網全体にわたるスコープ3を含めたLCAとするのが世界的潮流。欧米はLCAを基準にし、雇用維持を目的に排出量取引や国境炭素税を導入する方向にあり、電源構成で不利な日本で生産するトヨタ車の輸出競争力は削がれ、雇用喪失リスクが高まる。海外競合が我先にと意欲的なEV化目標を掲げたのは調達難に陥る半導体や電池の調達力を上げるためで、今や戦いの土俵はLCAに移行している。LCA削減に新たな価値が生まれており、モノづくりから価値づくりへの発想の転換が必要だ。 

2021年12月14日 17:2985 

滝田洋一日本経済新聞社 特任編集委員 

 

ひとこと解説 

 

トヨタ自動車のEV戦略の成否は、日本の貿易全体の行方を左右します。今年10月までの12カ月間の輸送用機器は12兆8515億円の貿易黒字。その間の電気機器の貿易黒字は1兆6239億円にとどまりますから、自動車がひとりで日本の貿易(全体で1兆1055億円の黒字)を支えていることが分かります。一方で、鉱物性燃料は13兆6946億円の貿易赤字。言い換えると、自動車輸出の黒字分で原油天然ガスの輸入の赤字分を埋め合わせている格好になります。要するに、トヨタがEVでも勝ち残ることが、日本が巨額の貿易赤字に陥らないための必要条件なのです。国内でEV生産を行えるよう、政府のバックアップが欠かせません。 

2021年12月14日 16:47 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD132OK0T11C21A2000000/ 

(続く)