カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(66)

bZ Sport Crossover Concept 

 


 

PHEVとBEVの販売で世界を席巻しつつある中国のBYDと共同開発する車種となります。2020年に稼働を開始したトヨタとBYDの合弁会社「BYD TOYOTA EV TECHNOLOGY」主導のもと、若者を想定したスタイリッシュでアクティブなデザインに仕上げられています。実際の市販車は第一汽車との合弁会社一汽トヨタ」が製造・販売を行います。モデルのコンセプトは「Reboot」であり、乗り込んだ瞬間に気分が変わるという考えを取り入れているといいます。 

 

若いユーザーをターゲットにしており、パーソナルスペースを提供する機能を強調。ドライバー アシスタンスなどのインテリジェント機能を含め、購入後もその機能がアップデートできるように開発されています。BEV含めてこれまでの日本車では少し手薄だったこれらの分野もbZ Sport Crossover Conceptでは充実をはかりました。 

 

ちなみにトヨタがBYDと電気自動車を共同開発するのはこれが初めてではありません。この2つの会社の協力関係は2022年10月に発表されたbZ3ですでに形になっており、今回のbZ Sport Crossover Conceptはそれに次ぐ車種となります。BYDはもともとバッテリー会社として誕生した経緯もあり、リチウムイオンバッテリーに関連する卓越した技術を持っています。そのBYDと、世界的自動車メーカーであるトヨタがタッグを組むことで、より中国市場、中国の購買層に根ざした商品開発を行なっていくという狙いがあります。 

 


2022年12月に中国で予約受注が始まったbZ3。バッテリー容量49.9kWhと65.3kWhの2タイプで価格は16万9800元(約331万円)〜。今のところ日本での発売予定はありません。
 

bZ FlexSpace Concept 

 


 

 

こちらは広州に本拠地を置く中国の自動車メーカー「広州汽車」との共同開発によって誕生したモデルです。 

 

トヨタは広州汽車との合弁会社広汽トヨタ」を設立しており、現地でのトヨタ車種の製造と販売を行っています。近年では広州汽車がトヨタの名前が入らない自社ブランドで販売するハイブリッドモデルに、トヨタが開発した「トヨタハイブリッドシステム」を搭載する例が見られ、2社は電動化の時代になっても密に連携し、市場の声に耳を傾けた商品開発を行なっています。 

 

bZ FlexSpace Conceptは実用性重視、ファミリー向けのSUVであることを念頭に置いて開発されたとのこと。トヨタはこのモデルのコンセプトを「Cozy Home」(心地よい家)とし、家族が安心して快適に、自由に使える空間をつくることを目指しています。広い室内空間、使いやすさ、先進の安全性、信頼できる航続距離のほか、さまざまなインテリジェント機能を提供しています。家族、友人、カップルが毎日の生活をさらに楽しくするのに理想的な車として開発を進めてきました。なお、サイズ感はbZ4Xと同等かこちらが少し大きめといったところですが、車高が低く設定されているためとてもスタイリッシュな印象を与えます。 

 

bZ Sport Crossover Conceptでは若い世代を中心に昨今の中国で流行りを見せているクーペスタイルSUVで流行に敏感な若者がユーザーになってくれることを想定。一方、bZ FlexSpace Conceptでは大空間かつ居心地の良さを念頭に置いたファミリー層を想定と、2車種の間には明確なターゲットの違いがあります。 

 

若者向けクーペスタイルSUV、ファミリー向け実用的なSUVは、どちらも現代の中国では加熱している重要なマーケットとなっています。 

 

(編集部注/EVsmartブログでは原則として発売されるかどうかもわからないハリボテのコンセプトカーは紹介しない方針ですが、今回は2024年には中国で発売すると明言されていること。また、トヨタのBEV戦略が中国市場を軸に構想されていることを感じ取れる内容でもあったので、取り上げることにしました) 

 

2023年4月の新体制発表会にてトヨタは 2026 年までに合計10 モデルの新しい BEV 市場投入を計画していることを明らかにしました。今回発表された2台もその中に含まれています。すでに発売されているbZ3を含めて、トヨタのBEV戦略はおもに中国市場を見据えたもの? という印象でもあります。 

 

同じく2026年までに年間150万台のBEV販売目標を発表しており、新世代のBEVは「はるかに効率的なバッテリーを使用することで航続距離を2倍にすると同時に、心臓を鼓動させるデザイン走行性能を提供する」ことを示しています。日本市場で発売するEVは「はるかに効率的なバッテリー」が完成してからということなのでしょうか。日本市場のEVラインナップがどうなるのか。また、中国を含めた世界で「2026年に150万台」販売できるトヨタのEVの全貌について、さらに新たな情報を期待したいところです。 

 


2022年11月のロサンゼルスオートショーでは、 bZ Compact SUV Concept が出展されました。
  

 

 

今回発表された中国市場向けモデル以外にも、グローバルで展開予定のBEVを何モデルか中国にも投入する予定もあります。電動化における先鋒として知られる中国市場において、BEV、PHEV、HEV、そして中国政府が国策として開発を推進しているFCEV(水素)も含めた「全方位戦略」を展開するトヨタは今後も注目されることでしょう。今回の上海モーターショーでは「2024年、日本国外で水素燃料システム専用の最初の工場が北京で生産を開始する」ことも発表しました。 

 

取材・文/加藤 久美子
写真/加藤 ヒロト 

 

https://blog.evsmart.net/toyota/2023-toyotas-bz-at-the-shanghai-motor-show/ 

(続く)