ALPS処理水放出と習近平の凋落(67)

ずさんな「千年大計」 

 

 さらに、深圳特区を建設した時代とは条件がかなり違った。深圳特区が驚異の発展を遂げ成功したのは、まず自由主義経済が一国二制度で担保されていた当時の香港に隣接していたという地理条件がある。2つ目に全国の資源を深圳に集中できたことだ。 

 

 その深圳への資源の集中は行政命令によるものではなく、深圳ならば金もうけができると信じた企業や人たちが自然に集まってきた結果だった。当局が行ったのは税金や、香港との通関手続きの簡素化、投資の条件に関する特例措置や政策を打ち出しただけだ。
 
 雄安新区が設立された2017年は、全国各地ですでに18の新区が乱立しており、保税区、各種開発区として、雄安ならではの「うまみ」は突出したものではなかった。地理的に北京に近すぎるのは、むしろ欠点だった。北京との違い、差別化がうまくできず、むしろ政治の街、北京のような管理統制の厳しさがコピーされた。 

 

 雄安新区はスマート化をうたい文句にしていたが、それはデジタル・レーニン主義的監視管理を実施するということでもあり、決してそれがビジネスにとって魅力的というわけではない。ビジネスに必要なのは、むしろ自由と法治、公正なルールだ。 

 

鄧小平が主導した深圳の街並み(写真:Top Photo/アフロ、2021年)ギャラリーページへ         

 

 深圳が自由都市・香港のゲートウェーだったのに対し、雄安は北京のデジタル・レーニン主義実験都市であった。一部中央企業や大学、研究機関が行政命令に従ってしぶしぶ雄安に移転したとしても、北京に住む人や企業が北京戸籍を捨ててまで、移り住むほどのビジネスチャンスや魅力を感じるような仕様にはなっていない 

 

 そもそも地理的条件が整っている直轄市の天津の経済開発区や濱海新区ですら、北京に近すぎることが原因で十分に発展できず、ゴーストタウンを抱えている。雄安新区建設よりも、先に解決すべき爛尾プロジェクトは山のようにあった。 

 

 このように、雄安新区プロジェクトは今のところ誰がみても失敗なのだ。習近平が心血傾けた千年大計というわりにはずさんなプロジェクトで、その理由が「習近平が自ら発案、計画、指導」して、専門家の意見に耳を貸さないで決めたのだとしたら、この失敗の責任は習近平が負うべきものだろう 

 

もはや為政者としての能力不足を隠蔽できず 

 

 だが、習近平政権3期目続投で、その個人独裁体制がさらに継続することになったため、誰もその失敗の責任を指摘できず、失敗そのものを隠蔽するしかない状況となった。その隠蔽のために、河北省涿州の多くの部分を水底に沈め、その犠牲者の数を含めて、その災害の大きさを隠蔽した。 

 

 こうした当局者の失敗は、これまでも繰り返しの隠蔽されてきた。だが、現代は農村の都市化が進み、犠牲を強いられる人口も増え、なにより地方の人たちの権利意識の向上とスマートフォンの普及で、このひどい状況を世界に発信できるようになった。失敗を隠蔽するために、より多大な犠牲と被害を出し、国内外に発信されることで、むしろより多くの人たちが雄安新区の失敗の深刻さを認識するに至った。 

 

 河北省当局は11日の段階で直接経済損失を958億元と推計し、水害で被害を受けた町の再建には2年かかるとしている。だが、おそらく雄安新区は2年たってもゴーストタウンのままだろう。そして、習近平独裁体制は続いているかもしれないが、彼の為政者としての無能さは、もはや隠蔽する術すらなくなっているかもしれない。 

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76576?page=1 

 

 

 

雄安新区は、習近平自ら発案した経済特区だという。人口二千万人のスマート・エコシティになる、という計画のようだ。 

 

だが目下企業も人もほとんど住んでいないという。しわゆる爛尾(ランビ?、中断したまま完成していない)と呼ばれる廃墟群しかない経済特区なのだ。 

 

そこを習近平が、多くの部下たちを連れて、視察したという。 

 

視察の目的は、'23年7月末~8月初の「北京の大洪水」災害にも被害がなかったことと雄安新区建設の大失敗を否定するためのものであった。 

 

習近平は、鄧小平の深圳以上の都市を新たに造り中国の国力の象徴にしようとして、雄安新区プロジェクトを考えたわけだが、意図通りには全く進んでいない。 

 

深圳は1979年3月に市に昇格し、翌年の1980年には鄧小平により経済特区に指定され外資導入も積極的に推進されて、中国の「シリコンバレーとも呼ばれるまでに急速に発展し、国際的にも中国経済を支えるまでの存在となっている。 

 

しかしながら雄安新区は深圳と異なり、「爛尾」と呼ばれる廃墟となっているようだ。 

(続く)

ALPS処理水放出と習近平の凋落(66)

 今年5月10日、習近平が第3期目の総書記、国家主席の座を固めたのち、新首相の李強と、書記処筆頭書記の蔡奇、副首相の丁薛祥、何立峰ら、新指導部をぞろぞろ引き連れて視察した。このときの様子はCCTVが報じていたが、この視察で廃墟群を目の当たりにしても、首相、副首相ら誰一人として、このプロジェクトに問題があるという発言をしなかった 

 

 これは、新指導部として、雄安新区建設の失敗を否定し、新区建設継続を維持するために、改めてプロパガンダを打つための視察だったと言われている。 

 

 雄安新区は北京からおよそ100kmの場所にあり、習近平の「偉大な新時代」を象徴する都市プロジェクトとされた。鄧小平を超える指導者として共産党史に刻まれたい習近平は、鄧小平が創った深圳以上の都市を新たに作り、中国の国力の象徴にしようと考えた。 

 

 初期面積は100km2、中期発展で200km2、長期的には2000km2まで拡大し、現在の深圳以上の大きさを目指している。 

 

建設中の雄安新区(写真下:2021年)と開発後(上:2023年)(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ     

 

 2017年4月、北京・天津・河北共同発展指導チーム組長の張高麗は雄安新区に関する中国官製メディアの取材に、「このプロジェクトは習近平総書記が自ら計画し、自ら政策決定を下して推進している。習近平の大量の心血が注がれ、習近平の強烈な使命を担い、深遠な戦略眼と超越した政治的智慧を体現している」「雄安新区の前期計画、研究論証、計画のステージなどすべては習近平が招集する重要会議で配置を検討し、重要指示、命令を下したものだ」と語っている。 

 

雄安新区の駅の写真(上:2023年)と建設中の写真(下:2019年)(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ     

 

 2018年5月には、外交部は全世界に向けて雄安新区を推奨し、当時の王毅外相は雄安新区を「中国と人類の発展方向に代表するものだ」「大都市が抱える病を解決するための中国式処方箋だ」と持ち上げていた。 

 

 理解しがたいのは、習近平がこれほどまでに雄安新区を重視しているなら、なぜもっと慎重に計画し、準備しなかったのか、ということだ。大宣伝とは裏腹に、計画自体は稚拙きわまりない。 

 

共産党が守るべき地域、人民を「選別」 

 

 そもそも、この計画は市場原理に逆らって、政府の意志と行政指導にのみを頼って強引に進められた。当時、すでに地方では、需要を超える都市建設問題が表面化し、地方都市での不動産バブルの崩壊が始まり、新都市建設に十分な資源を分配できる余裕はなかった。建設途中で資金がショートしたまま野ざらしにされる「爛尾」プロジェクトが山のようにあった 

 

 次に、土地条件が悪かった。雄安が建設される土地の多くは白洋淀という湿地帯で、ここは長年、華北で水害が起きたときに最も水が流れ込む「遊水地」だった。雄安新区の計画が打ち出された当初、社会科学院の地理学者の陸大道院士らが、「あそこは人が住む場所ではない」「必ず大水害が起きる場所に都市をつくるべきではない」「土地を選定しなおすべきだ」と提言したが、習近平はその意見を聞き入れなかった。 

 

中国・河北省涿州は北京を守るために犠牲となった(写真:ロイター/アフロ)ギャラリーページへ      

 

 ちなみに、中国の洪水対策は、ダムや堤防を使って川の水量を調節して、あらかじめ決められた「洪区」と呼ばれる遊水地に水を逃がす「泄洪」という方法で、都市部や重要地域を洪水から守ることが1997年に制定された洪水防止法で決められている。洪区は全国の河川の流域に98カ所、華北最大の河川の海河流域だけで28カ所ある。 

 

 こういう中国式治水の在り方は、豪雨でダムの水量が増大したのち、ダム自体の決壊を守るために緊急に予警なく泄洪で水を遊水地に流すことで、ダム下流域に住む人たちの洪水被害を悪化させるという矛盾が当時から指摘されていた。だが中国では、共産党が洪水から守るべき地域、人民を恣意(しい)的に選別したとして、それに抵抗できるほど昔は人民に発信力もなかった。 

 

 習近平は、本来華北最大の遊水地であるべき白洋淀に「雄安新区」を建設し、そこを「守るべき都市」に変えてしまった。これは他の遊水地がその分、過剰に洪水を引き受けるということで、今回、その犠牲に涿州が選ばれた 

(続く)

ALPS処理水放出と習近平の凋落(65)

福島 香織は、この論考を次の様に締めくくっている。 

 

 風水や天命の話はさておき、習近平は実際、災害時に十分なリーダーシップを発揮できていない。国内の治水事業も口でいうほど成功していない。体制内の人心も掌握しきれておらず、経済回復の処方箋も持たず、米国との外交的緊張も緩和の兆しがみえていない 

 

 

だがこの水害から半年も経過している現在、中国では何も起こってはいない、ようだ。どうなることやら。 

 

上記の「・・国内の治水事業も口でいうほど成功していない。・・」と言うことは、次の論考を読めばよくわかる。習近平の大失敗が述べられている。 

 

 

 

 

北京を守るのに地方100万人を犠牲に、大洪水で露見した中国の非人道的な治水 

習近平肝煎り「スマートシティー」プロジェクトも失敗 

2023.8.18(金)福島 香織 

 

中国・河北省涿州を襲った大洪水は、人為的に引き起こされた(写真:VCG/アフロ)ギャラリーページへ      

 

100万人が暮らす町や農村を飲み込んだ中国・河北省涿州を襲った大洪水は、人為的に引き起こされた 

 

首都北京と、習近平国家主席が主導したスマート・エコシティーを守るために、意図的に遊水池の水門が開かれた 

 

治水やスマート・エコシティー建設の失敗はもはや明らかで、為政者としての能力に疑問符が付き始めている。 

福島香織:ジャーナリスト) 

 

【関連記事】
◎中国・北京の大洪水は「人災」、治水失敗の皇帝・習近平は天から見放された? 

 

 7月末から8月2日にかけて河北省涿州を襲った大洪水は、首都北京と雄安新区を守るために人工的に引き起こされたものだった。北京西南部の房山区、門頭溝区で140年以来という記録的集中豪雨により、永定河が氾濫。首都を守るために、河北省の7カ所の洪区(遊水地)に向けて水門が開かれた。そのうちの2つが涿州にあり、100万人が暮らす町や農村の多くに濁流が押し寄せた。 

 

 水深6メートルもの洪水が町をのみ込み、3階建て以上の建物や道路標識、信号などがやっと水面からのぞくほかは、街並みが水の底に沈む状況となった。8月11日の段階で河北省は死者29人、行方不明者16人、被災者は388万人と公式発表されている。だが、ネット上で拡散されている動画では遺体が流れている様子も散見され、多くの人民は公表している十倍、数十倍の犠牲者が出ていることを疑っていない 

 

 河北省の倪岳峰書記は、災害救援任務に際し、「蓄滞洪区(遊水地)を用いることで、北京の洪水圧力を軽減し、断固として首都を守る護城河となれ」と演説。「護城河」とは町を守る堀のことだが、ようは北京を守るために涿州を水に沈める決断をしたということだった。 

 

 首都を守るために地方の100万人クラスの町を犠牲にするという判断は残酷で非人道的である。だが、それ以上に今回の涿州の遊水地に流す水量が異常に増大したのは、本来河北最大の遊水地であったはずの白洋淀にできた習近平肝煎りの新都市「雄安新区」を守るためだった 

 

 そして、河北388万人の人々が被災し苦しんでいる最中、倪書記は雄安新区に水害被害が出ていないことを確認して、「我々は試練に耐えた!」と喜びの声を上げたのだ。だが、果たして、雄安新区は100万人が暮らす涿州を犠牲にしてまで守る価値があったのだろうか 


習近平肝煎りのスマートシティーも大失敗 

 

 雄安新区習近平が自ら発案、計画、指揮した国家級新区。「国家千年の大計」プロジェクトとして2017年4月に設立させた。完成は一応2035年予定で、2050年には先端テクノロジー企業と研究機関を集中させ、北京の非首都機能も移転した人口2000万人規模のスマート・エコシティになる、という話だった。すでに5000億元(約10兆円)が投じられている。 

 

 だが、今のところは、工事のほとんどが中断し、人も企業も集まっていない空っぽの「爛尾」と呼ばれる廃墟群しかない。 

 

 目下、雄安には中央企業4社が登記し、その本社ビルが建設中で、大学、研究施設も4カ所が雄安に移転されている。だが、その移転条件とされている雄安居住は回避できる条項がある。つまり、人はほとんど住んでいない 

 

スマート・エコシティー「雄安新区」を視察する習近平国家主席(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ        雄安新区」視察 

(続く)

ALPS処理水放出と習近平の凋落(64)

 さらには中国には「易姓革命思想」という伝統的な考えかたがあり、天は己に成り代わって皇帝に地上を支配させるが、その皇帝が徳もなく悪政を行っていると天が判断すると、皇帝の姓、血統を入れ替え、王朝交代が起きるという。天が為政者に徳や能力がないと判断した場合、疫病や天災、飢饉などが続き、人々は皇帝が天に見放されそうだと知ることになる。 

 

 これは暴力によってしばしば王朝が簒奪(さんだつ)されてきた中国で、簒奪者が自分の正統性を示すための考え方だ。そういう考えに基づくと、習近平の治水は失敗し、近年、疫病、天災などが続いたのは、天の啓示ではないか、というわけだ。 

 

 今回の北京の大水害では、過去600年水没した記録がない故宮紫禁城も冠水した。そのため、迷信を信じる人達や風水師はこれを凶兆だと騒ぎはじめた。 

 

過去600年水没した記録がない故宮紫禁城も冠水した(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ        

 

 ある風水師動画では「この台風5号はもともと台湾を襲うものだったが、意外なことに台湾を迂回し、上海、北京を襲った。台湾と香港の間を通って中国を直撃し、紫禁城を水没させた。これには意味があろう。大凶兆であり、王朝が不安定化する」「天の現象は人間社会の現象を反映している。この数年、異常気象が続き、王権の象徴である紫禁城が600年来初めて、台湾と香港からの風によって水没した」「天が民衆に何かを啓示している」という。 

 

習近平の威信が崩れ始めている 

 

 紫禁城の水系は紫禁城内と太和門前を流れる内金水河が天安門前から外金水河に続き中南海(中海と南海の2つの人口池をもつ紫禁城西側の皇帝の離宮の呼び名。今は共産党中枢の建物群がある場所で、中国共産党政権中枢を指す言葉として使われる)に流れ込むようになっている、という。今回の大雨で、大量の雨水が金水河を通じて中南海に流れこんだが、中南海では水は排水されず、金水河が逆流し、紫禁城が冠水した。 

 

 風水師的には「台湾、香港からの風によって、大雨が降り、中南海で排水できない雨水が王権の象徴の紫禁城を水没させた」ということに何がしかの予感を感じるわけだ。 

 

 新型コロナが辛亥革命発生の地である武昌(武漢)で最初にアウトブレークし、その打撃から中国経済は回復できず、若者失業率の更新が続き、さらには次々と天災、人災が襲われた。政治においても、外相が突然理由も示されずに解任されたり、解放軍ロケット軍幹部が総入れ替えになったり、政権内部の不安定さも露見しつつある。 

 

 風水や天命の話はさておき、習近平は実際、災害時に十分なリーダーシップを発揮できていない。国内の治水事業も口でいうほど成功していない。体制内の人心も掌握しきれておらず、経済回復の処方箋も持たず、米国との外交的緊張も緩和の兆しがみえていない 

 

 こういう状況で、14億の中国人が習近平体制の支配に従順に甘んじ続ける時代が続くのかどうか、という疑問はやはり強まっていくのだ。 

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76356?page=5 

 

 

紫禁城が冠水したということは、習近平などが常駐する中南海も被害にあったということだ。「皇帝」としての習近平の権威は、地に落ちたことになる。 

 

(2023年の)7月19日に「習近平の治水に関する重要論術」なる本が出版され水利部、メディアを挙げて、「習近平がこの10年自ら計画し、配置し、推進し、全国の海綿都市(水害に弱い都市)の治水事業を完成させたと大々的に喧伝していたこともあり、関係する機関紙では、長期間解決しがたかった治水問題を(習近平が)解決した」と報じていたなどと更に習近平の業績を煽っていたこともあり、このだが、その1週間後に、福建から上海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没したのだ。という事実は、習近平の治水事業は大失敗であったことを、自ずと証明することになってしまったことになった。 

 

これでは習近平の評判も『がた落ち』ではないのかな。 

 

なんと言っても首都の北京をはじめ、『福建から上海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没』てしまったのであり、あの有名な故宮紫禁城までもが水の中にはまってしまったのであるから。 

 

だから普通では、習近平の評判は「がた落ち」している筈なのである。中国のあの有名な「易姓革命」で習近平は民衆に首をはねられていてもおかしくはない状況なのであるのだが、そこは共産党一党独裁体制なので、何とか習近平は守られているのではないのかな。 

(続く)

ALPS処理水放出と習近平の凋落(63)

天災は今回の大雨だけでは終わらない 

 

 北京でこれほどの水害に見舞われたのは2012年7月21日午後から深夜にかけての集中豪雨による大水害以来だ。この時の集中豪雨は10時間以上続き過去60年間で最大の降水量が記録された。当時、79人の死者、直接経済損失100億元と公式発表された。だが今回の豪雨は67時間以上続き、降水量も記録を確認できる1883年以降最大で、2日朝までに744.8mmを記録した。被害の全容はまだ出ていないが、2012年7月を超える規模となるとみられている。
 
 台風5号は北京に来る前に福建省で記録的な被害を引き起こしていた。泉州で体育館の屋根が吹き飛び、数十階の高層アパートが暴風によってゆがみ、倒壊した様子が報じられている。道路の自動車や街路樹が洪水に押し流され、橋などを破壊した。台風は厦門泉州、福州を破壊し、浙江、江蘇、上海にも甚大な被害を出しながら移動し、亜熱帯低気圧になったのちも河北、北京を襲った。 

 

 今年は台風5号上陸前から中国各地で豪雨災害が発生しており、異様に水害の多い年と言われている。5月下旬は河南を中心に華中を豪雨が襲い、10年に一度の規模の「爛産雨」(小麦の収穫に甚大な被害をもたらす雨)といわれた。 

 

クルマもすっかり水に浸かった(写真:ロイター/アフロ)ギャラリーページへ 

 

 また、異常高温が続く夏でもあり、北西部では気温50度超えがたびたび発生。広西チワン族自治区江蘇省では暑さで養殖の魚や家畜の豚が大量死する事案も報告された。新疆北西部の高温と豪雨、雹に襲われ小麦生産に大規模被害をもたらした。 

 

 今年は世界的な異常気象であり、こうした天災被害は何も中国に限ったことではない。だが昨年の河南省の7月21日の大水害といい近年、中国で大規模水害が頻発していることについては「人災」を指摘する人も多い。 


防災などの都市インフラで「手抜き」か 

 

 今回、北京の洪水のすさまじさが大きく報道されているが、北京市を守ろうと河北省に対して予告なく行われた永定河などの「泄洪」(水門を開いて河水を放出する)の結果南部にある70万人が暮らす河北省涿州市が水没したのはまさしく「人災」だ。 

 

 また過去40年の都市開発の在り方が問題だったという声もある。奇抜な形の高層ビル建設など表面的な繁栄を追うばかりで、防災や排水など目に見えない都市インフラ建設に手抜きをしてきたせいだという批判も起きている。 

 

 門頭溝の水害がここまでひどかったのは、単に予期せぬ長時間の集中豪雨のせいだけでなく、近年、郊外観光地として開発が進められていたこの地域が、表面上の景観ほどには地下インフラが整備されていなかった、という地元民の批判の声もSNSなどであがっていた。 

 

 ドイツ・日本の植民時代にインフラが整備された青島で、これまで水害が発生したことがないことを例にあげて、中国の都市計画、都市開発の未熟さを指摘する声もあった。 

 

習近平は「皇帝」としての力不足 

 

 人々が人災説を強く感じたもう一つの背景は、7月19日に「習近平の治水に関する重要論術」なる本が出版され、水利部、メディアを挙げて、「習近平がこの10年自ら計画し、配置し、推進し、全国の海綿都市(水害に弱い都市)の治水事業を完成させた」と大々的に喧伝していたこともある。水利部機関紙「中国水利報」(7月19日)は、「長期間解決しがたかった治水問題を(習近平が)解決した」と報じていた。 

 

 だが、その1週間後に、福建から上海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没したのだ。これは、宣伝と実情がまったく異なるということであり、何も解決できていないのに、解決できたというウソを浸透させたがために、台風上陸前に準備すべき対応策や泄洪計画に手が抜かれたのではないか、と思われた。 

 

 暴れる竜のような黄河、長江の大河ほか無数の河が走る中国はもともと水害が多い国であり、治水で国家指導者の能力が試されてきた国でもあった。中国の皇帝が竜の紋章を使うのは、竜が治水の象徴だからだ。ならば、習近平はその治水に失敗しているのだから、果たして「皇帝」としての能力が足りているといえるかどうか。 

(続く)

ALPS処理水放出と習近平の凋落(62)

人民解放軍に支払われる給料もでもが、削減されているというではないか。 

 

こんな状況では人民の不満の声は、大きくなりはしないのかな。 

 

と言う訳で「それどころか中国は今や体制の危機にも直結しかねない動きになり始めているのだ。」とこの論考は結んでいるが、飼いならされている中国人民には、自分たちの生活を良くしようと共産党政府に働きかける勇気は持ち合わせてはいないのではないのかな。 

 

困ったことだ。 

 

だから安全・安心な日本のAIPS処理水を「危険だ、危険だ」と吹聴して、中国人民の不安を外に向けさせていた訳だ。 

 

 

この先中国はどこへ向かうやら、どうも習近平は、この経済不安を解決するすべは持ち合わせてはいない、と見るべきなのではないのかな。 

 

見守るしかないのか。危険なことだ。 

 

もう一つ、習近平のやらかした大失敗を紹介しよう。それは習近平が治水に失敗した昨年'23年7月末~8月初の「北京の大洪水」災害である。 

 

故宮紫禁城までもが冠水してしまったのだ。 

 

 

 

中国・北京の大洪水は「人災」、治水失敗の皇帝・習近平は天から見放された? 

600年以上水没被害のない故宮紫禁城も冠水 

2023.8.4(金)福島 香織 

 

台風5号「トクスリ」による大雨で 中国各地で深刻な被害が出ている(写真:ロイター/アフロ)ギャラリーページへ      

 

中国・北京を襲った記録的な大雨による被害は「人災」との指摘が広がっている。 

 

表面的な開発を優先し十分な治水事業を怠った習近平国家主席の失策との声も。 

 

皇帝の紋章である竜は治水の象徴で、風水師は天に見放されたと騒ぎ立てている。 

 

(福島 香織:ジャーナリスト) 

 

 福建省を直撃した台風5号(トクスリ)は、熱帯低気圧に変わった後も、北京で12年ぶりに最高レベルの暴雨警報が出るほどの集中豪雨をもたらした。8月1日までに洪水によって北京、河北ですでに20人以上の死者が出ている。SNSには、北京市西部郊外の門頭溝区は道路が濁流と化し、人が乗ったままの数十台の自動車を押し流す動画などが多くアップされている。 

 

 被害は1日までに、北京市だけで4.4万人が被災し、12万人以上が避難。災害救急隊員2人の殉職を含めて11人が死亡し、27人が行方不明だ。台風5号福建省ですでに被災者266万人以上、直接経済損失147.5億元以上の大被害を出している。中国全土で被災者は300万人を超える。この大災害は、人災の側面もあり、習近平の治水事業の失敗ではないか、という声も上がっている。 

 

 台風5号7月28日に福建省に上陸、その後北上し熱帯低気圧に変わったのちに、北京、天津、河北地域で連日の豪雨災害をもたらした。特に北京市西部の山間地域の門頭溝区の集中豪雨により永定河の水位が急上し氾濫、川沿いの道路は濁流と化し、沿道の店舗が水没した。 

 

 北京、天津、河北地域の豪雨は29日から始まって、8月1日午前にようやくやんだ。 

 

 SNS上では数十台の自動車が濁流に流される様子や、永定河大橋が水流で破壊される様子、おぼれた少年の蘇生を試みるも間に合わなかった様子などが映された動画が拡散されている。撮影者が悲鳴のように「雨よ、やんで!」「天よ!」と叫ぶ音声なども記録されている。門頭溝賈溝村は洪水で流れてきた土砂や樹木、自動車などで埋もれてしまい村民全員が村を脱出して緊急避難した。 

 

 主要な被災地の門頭溝では洪水や土砂崩れによって多くの電線、変圧器が損壊し、電気供給や通信が途絶えるところも多く出た。1日未明、解放軍は4基のヘリを緊急出動させ、車両や建物に閉じ込められた市民に飲食や雨具などの救援物資を届けたり、傷病者の救援を行ったりしたという。 

 

 門頭溝豊沙線安家荘駅付近では冠水で、列車が立ち往生していた。列車内は、夏休みで新疆ウルムチ旅行からの帰路にある家族連れが多く、高温と飲料水不足で具合が悪くなる乗客も多く出た。門頭溝は水道、電気、ガス、通信の供給が停止され、公共交通もすべて停止。陸の孤島となったのだった。 

 

 門頭溝に近い房山区も洪水で、1万人以上が暮らす社区(コミュニティー)が深さ1.5mの水につかった。永定河大橋から、河面が急上昇して家を押し流す様子が目撃された。永定河の氾濫は50年以上ぶりだという。最新の排水設備が設計されているという触れ込みだった北京大興空港の停機場の大部分が冠水し巨大な湖のようになった。 

(続く)

ALPS処理水放出と習近平の凋落(61)

沿岸部の裕福な地域でさえ 

 

私がこうした話題をいろいろと提供しても、「中国は広いからそういう苦しいところもあるんだろう」程度に思う人もいるだろう。だが中国の中で最も裕福な都市のはずの上海市でさえ、給与削減に動いているのだ。 

 

上海の課長級の公務員の年間の給料は、すでに15万元(300万円)引き下げられている。上海市はさらなる給与削減を目下検討中ということだ。また、広東省浙江省の公務員は25%の給与削減、江蘇省福建省の公務員は20%の給与削減となったとも伝えられている。 

 

Gettyimages          

 

これらはいずれも沿岸部の裕福な地域のはずだが、そうした地域でも厳しい給与削減に動かざるをえないのだ。山東省でも2月から25〜35%の給与削減が行われるとの内部情報のリークが出て、話題になっている。 

 

苦しいのは、公務員だけではない。2022年から2023年前半までに、中国の不動産業は26万人の人員整理を行った。デジタル産業の技術職の給料は前年比12%減少し、デザイン職は18%減少した。電気自動車、バッテリー、太陽光発電風力発電などの新経済分野の給料でさえ、前年比2.3%も下落している。 

 

中国48社の証券会社の2022年上半期の総人件費は前年に比べて11.3%、合計で100億元(2000億円)以上下落した。招商銀行は12月28日に、職員に一旦支払った業績報酬総額5824万元(12億円)を、会社側に戻させた。 

 

上海の大銀行である上海浦東発展銀行では、給料が突然、従来の1/3に減らされたことに抗議して、銀行員たちが「ちゃんと給料を払え!」と訴える集団行動に出ている。 

 

中国の労働争議は昨年は1900件を超え、2020年から2022年の3年間に起こった数をたった1年で抜いたという。このように、民間経済もすこぶる悪いのは間違いないのだ。 

 

「全民降薪」(国民全員が給料削減) 

 

中国では新年のお祝いは旧暦で行われる。今年の春節(旧暦の正月)は2月10日であり、本来であれば、この直前に都会から田舎への大移動が始まる。 

 

もちろん今年もそういう動きは見られるだろうが、例年とは異なった動きになっていることが指摘されている。すでに11月頃から田舎に戻る動きが始まっているのである。都会で仕事を見つけようとしても、仕事が見つからないからだ。 

 

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上海の復旦大学は中国でも有数の難関大学だが、去年の就職率がわずかに18%だったことが明らかになった。一昨年は、北京大学原子核物理学の博士号取得の新卒者が北京市の城管(都市管理職員)に就職したことも話題になった。 

 

城管は庶民いじめのヤクザな仕事という感じで、かなりイメージの悪い仕事だが、そんな仕事でも選り好みしないで選ばないと、スーパーエリートでもなかなか就職できないのだ。 

 

こうした中で、「降薪潮」(給与削減ブーム)とか「全民降薪」(国民全員が給料削減)などという言葉まで現れている。 

 

さらに驚くべきことに、軍隊に支払う給料まで削減されていることがわかった。中国の軍人には基本給の他に任務による様々な手当がつく。こうした手当は赴任先の現地政府の財政から出され、中央政府の国防予算からは支出されていないものが多い。地方政府の財政が苦しい中で、こうした軍人に対する手当の支払いも止まっているのだ。 

 

また、人民解放軍の科学技術関連の研究所の研究職の給与、予算までもが大きく削減されていることが明らかになった。警察についても給料の削減が起きている。 

 

このような状態で、国民の所得も消費も順調に増えて、GDPが年率5.2%成長するような経済になどなるわけがない。それどころか中国は今や体制の危機にも直結しかねない動きになり始めているのだ。 

 

 

 

https://gendai.media/articles/-/122904 

(続く)