世界自動車大戦争(101)

30年前に花形だった全固体電池研究

いきなりの全否定に少しひきつりながらも、雨堤さんの話を聞いていくと、素人にも合点のいくポイントがいくつか出てきました。まず、全固体電池そのものは決して新しいものではないということです。雨堤さんは次のように話します。

「みんな、全固体電池は新しい技術だと思っていますが、実は30年くらい前、全固体電池の開発は電池技術者にとって花形研究だったんですよ。だから我々の年代の研究者だと、固体電解質は経験があるんです」

「小容量の全固体電池は昔からあります。例えばペースメーカーの電池がそうです。ペースメーカーは体に埋め込むので、何があっても液が漏れないようにする必要があったからです。それが30年前です」

また雨堤さんは、「全固体」という呼び名は少し奇妙だと感じています。

「全固体電池の研究は1990年代にソニーさん(現村田製作所)が出したポリマー電池(ゲル状の電解質を使用)がひとつのソリューションとなって、研究開発が縮小していきました。今、ベンチャー企業が発表している全固体電池は、半分以上がポリマーです。ポリマーは固体ではないんですかっていう話ですよね。ポリマーを全固体とするならすでに世の中に出回っていることになります。最近では京セラさんが発表した電池を、半固体と呼んでいます」

ソニーのリチウムイオンポリマー電池は、ゲル状の電解質を採用して液漏れを防止すると同時に、外装材に金属を使わず、小型軽量化につなげた製品でした。また京セラは、伊藤忠も出資している米ベンチャー企業24M」が基本技術を持つ粘土状の電極材料を採用した製品を発表しています。24Mはこの電池を「半固体(semi solid」と呼んでいます。

【関連リリース】
住宅用蓄電システム「Enerezza(エネレッツァ)」を製品化
24M Partner Kyocera to Validate Process for Mass Production

こうした事例を挙げながら、雨堤さんは次のように指摘します。

「私は、ソニーさんのポリマー電池を固体電池と呼んでもいいんじゃないかと思っています。〝全〟固体電池とは言っていませんが、液でも固体でもあまり変わらないということです。それから、ソニーさんは、ポリマー電池を作ってラミネート型にしたんです。当時は固体だからできる形状だということでした」

「でも今は、多くのラミネート電池はポリマーではなく液体の電解液が使われています。つまり、固体であることがメリットになっていないのです。固体にしたらこれが良くなるという明確な話が出てこない限り、固体にする必要はないと思います」

問題点を指摘する人が少ない

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雨堤さんは、全固体電池の最大の課題について次のように話してくれました。

「量産化する上でいちばん問題なのは、固体と固体の接触面積をどうやって確保し、維持するかです。液状だから電極の接触面積を大きくできますが、形が決まっている固体電解質では難しい。それなのに、誰もそこにフォーカスしない。電解質の話ばかりで、接触のインターフェースの話はほとんど出ていません」

「ある東工大の先生は電解質の伝導率が高いと言ってますが、そんなの関係ないんです。電解質と正極、負極とでイオンのやりとりをしないといけない。そのためには接触面積をしっかり確保しないといけない。それがちゃんとできるかどうかが電池を実用化するための問題なんです。例えば、日立造船さんは、ものすごく高圧のプレスをして固体と固体の接触を改善しましょうという取り組みをしてますが、エネルギー密度など出ている数値は実用電池としてはまだ低い。それが実態だと思います」

今年6月、村田製作所「業界最高水準の容量を持つ全固体電池」を開発したと発表しましたが、用途はウェアラブル機器などを想定していて、EVのような大容量、大出力のものではありません。雨堤さんは続けます。

「実験では、数ミクロンというすごく薄い電池を作っています。電解質を蒸着したようなものです。そのくらい薄くしないと性能が出ないんです。だから、容量の大きいものを量産する時にはどうするんですかって聞くと、数千層を積層しますって言うのですが、量産性を考えるとそんなのできるわけがないですし、逆にエネルギー密度は激減します」

「電池は、充電時には正・負極が膨張して、放電時に収縮します。電解質が固体だと膨張、収縮に十分追従できません。確かに実験室レベルでは全固体電池はできるので、ウソだとは言っていません。でも実用化のハードルはいっぱいあって、そこにメスが入れられず30年くらい前から悩んでいることが何も進んでないんです」

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雨堤さんの愛車であるモデルSは、日本発売前にアメリカから個人輸入した希少な一台。


研究者がとられるのは問題が大きい

こうした話を聞いて思い出すのは、燃料電池のことです。

政府は2001年に「燃料電池実用化戦略研究会報告」をとりまとめて、2010年に累積5万台、2020年に約500万台の燃料電池車導入を期待するという目標を示していました。現状の保有台数は約3000台で、うち1000台は愛知県が占めています(20193月末時点)。課題は、燃料電池スタックの耐久性やインフラ整備で、20年近く経った今でもあまり変化はありません。

高い目標を掲げるのは悪くはないと思いますが、現実離れした数字は社会をミスリードすることになってしまうのではないかと危惧します。

雨堤さんは、関心と予算が集まっている全固体電池に研究者がとられてしまっていることが問題だと危惧しています。

トヨタが独自に全固体電池をやるのはいいでしょう。でも周りを巻き込んで、貴重な技術者をとられるのは大きな問題だと思います。実際に日本の電池研究者がたくさん、全固体電池に流れています。毎年秋に開催される「電池討論会」(電気化学会主催)でも、全固体電池の話がとても増えていますね」

「全固体電池は安全だという話も出ていますが、今の液系リチウムイオン電池に大きな問題があるわけではありません。これで十分に成り立っているんです。それなのに、値段が高くて性能が落ちる全固体電池を誰が買うのでしょうか」

トヨタとしては、次世代電池の解決策が出てこない中で同じことばかりはやっていられないので、いろんなことを探してくるのではないでしょうか。基礎研究としてリチウム空気電池をやったり全固体電池をやるのは重要なことだと思います。しかし、無責任に実用化が近い様なことを吹聴するのは、私から見ると、真摯な研究のあり方とは思えません。少ない研究者が全固体電池に振り回されて、実際に必要な、例えば正極材の新しい材料を開発するなどの研究が進んでいない。トヨタの発言は影響力が大きいので、もう少し現実的で実体のある取り組みにも注力してほしいですね。現状は、日本の電池研究の足を引っ張っているのではないかとさえ感じています」

辛辣な言葉で現状を語る雨堤さんの言葉を、ここではできる限り、そのまま紹介しています。

全固体電池に関しては、2018年に調査会社の富士経済(東京都中央区)がまとめたリポートに、2017年の21億円市場が2035年に2兆7877億円になるという試算が出るなど、日本国内の「熱」は上がりっぱなしです。

現在までに、トヨタの全固体電池の研究開発がどの程度まで進んでいるのか、詳細はわかっていません。来年あたり、雨堤さんもアッと驚くような成果が発表されるのであれば、それは素晴らしいことです。でも、電池研究に人生を捧げてきた雨堤さんの知見に照らせば、全固体電池に「EV用電池として明確なメリットはない」し、「量産実用化への壁はまだ何も解決されていない」のが現実であるということです。

夢を語るのもいいとは思いますが、地に足が付いた研究開発が大事なのは当然のこと。全固体電池が、ドタバタの「夏の夜の夢」にならないといいのですが、はたしてどうなっていくのでしょうか。

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オフィスにあったモデルSのペダルカー。雨堤さんは、三洋電機(現在はパナソニック)がテスラに電池を供給することを決めた判断にも深く関わっていました。

(取材・文/木野 龍逸)

【追記】トヨタ自動車広報部からコメントをいただきました。

2020年になってからも、当記事にたくさんのコメントをいただいております。その中で「トヨタの見解も聞きたい」とのご意見があり、編集部としてもトヨタからご意見をいただけるのであればぜひご紹介したいと考え、広報部にお願いしたところ、以下のようにコメントをいただきましたのでご紹介します。トヨタ自動車広報部さま、ありがとうございました。
2020.1.31EVsmartブログ編集部)

トヨタ自動車広報部コメント】

全固体電池に対するトヨタの考え方について回答させていただきます。

以前より申し上げているとおり、トヨタは電動車普及には、商品開発だけでなく、それを支える電池など要素技術の開発が重要と考えております。
リチウムイオン電池より高性能で安全な電池として、全固体電池、金属空気電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウム電池(多価イオン電池)等の次世代電池の開発にトヨタグループとして取り組んでいます。
中でも、全固体電池はパッケージ小型化が可能で、次世代電池の中では、現時点で最も実用化(車載可能)に近いと考えています。
生産技術も含めて研究・開発に取り組んでおり、2020年代の前半の実用化を目指して開発を加速しているところです。

 

 

https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/solid-state-battery-mr-amazutsumi-interview/

 

 

 

これによると、トヨタ2020年代前半には実用化する、と言っている様だが、雨堤氏は辛らつだ。

 

・・・・・しかし、無責任に実用化が近い様なことを吹聴するのは、私から見ると、真摯な研究のあり方とは思えません。少ない研究者が全固体電池に振り回されて、実際に必要な、例えば正極材の新しい材料を開発するなどの研究が進んでいない。トヨタの発言は影響力が大きいので、もう少し現実的で実体のある取り組みにも注力してほしいですね。現状は、日本の電池研究の足を引っ張っているのではないかとさえ感じています

 

 

トヨタの言う「実用化は近い」などと言う事は、真っ赤な(と言ったかどうかは知らないが)嘘ではないか、と言ったニュアンスだ。しかも、ものにならないような全個体電池に技術者をとられてしまっていることは、日本の電池事業や研究開発にとって、はなはだしくマイナスである、とまで言っている。

 

実体はこれが真実なのではないか、と小生は(本能的に)感ずるのであるが、どんなものであろうか。忌憚のないご意見を期待したい。


(続く)

世界自動車大戦争(100)

専門的な表現を使えば、個体電解質と電極の接触面の「界面に抵抗層が形成される。それにより出力密度が2ケタ低下し、車載用の電池としての適用は厳しいと考えられていた。」と言う事である。

 

これは、「日経Automotive」の20189月号の「トヨタの全個体電池P64」に記載されている文言である。

 

ここでは「EV用全個体電池の普及は30年以降」とされているように、課題解決は相当難しくまだ 10年はかかると言う事のようだ。

 

それによると、トヨタは、固体電解質には「硫化物系」を使い、正極には「層状酸化物系(コバルトCo、ニッケルNiマンガンMnなどを含む)」、負極には「炭素系」などを使っていると言う。この電極材はLIBで使われているものと同じである。

 

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この図で言うと、正極にリチウムイオンが流れていく時に、固体電解質と正極の間に抵抗が発生して、大量のイオンが流れないことが原因だと言う。

 

トヨタは、その内部抵抗は「日経Automotive」の20189月号の「トヨタの全個体電池P67」によれば、次の4点だと解明している。

 

(1) 正極内の正極活物質と固体電解質の界面に抵抗層が生じる

 

(2) 固体電解質が厚くなる(薄くできない)

 

(3) 正負極内で活物質が凝集してしまう

 

(4) 正負極や電解質を構成する個体の粒子間に空隙が生じる

 

 

(1)の抵抗層が生じるのは、正極に含まれる金属元素が硫化物系固体電解質の硫黄Sと反応して、硫化物が発生しその界面に付着するためだと言う。これが抵抗層となって、Liイオンを通さなくすると言う。

 

そのため正極物質を構成する粒子(活物質、イオンを受け渡しする)に、反応しないようにコーティングすることで、反応を防ぐことにした。このコーティングはLiイオンを通すものであり、薄くて(10nm)均一でなければならないと言う。

 

(2)の正負極間にある個体電解質が厚くなってしまうと(と言ってもμ単位だが)、Liイオンの移動に時間が掛かってしまうので、電池容量としては少なくなってしまう。

 

初期は、筒状容器に正極合材(正極活物質、固体電解質、導電助剤)、個体電解質、負極合材の乾燥粒子を充填して、上下からねじ締めで圧縮していたので、厚さを300μ~500μmにするのがやっとだったと言う。

 

そのため各材料粒子を溶媒に溶かして練り状(スラリーと言う様だ)にして、夫々箔の上に塗って乾燥させてから向き合わせてプレスすることにした。

 

1.銅箔に負極合材のスラリーを薄く塗る。(Cu-

2.アルミ箔に固体電解質のスラリーを薄く塗る。(Al-s

3.正極合材も別のアルミ箔に薄く塗る。(Al+

4.これらを乾燥させる。

5.負極合材に固体電解質をむき合わせて重ねる。(Cu-)+(Al-s

6.それをプレスして、固体電解質Al箔をはがす。

7.その上に正極合材を重ねて、ブレスする。(Cu-)+(-s)+(Al+

8.すると下から、銅箔・負極・電解質・正極・アルミ箔の個体電池のセルが出来る。

9.こうすると、固体電解質20μ~50μmの薄さとなる。

 

(3)正負極内で活物質が固まってしまうと、表面積が少なくなってしまうため、Liイオンなどを伝える部分が少なくなってしまうからである。

 

そのため筒Aの中に筒Bがある装置の、筒Bの中に正極合材のスラリーを投入して、その装置を高速回転させる。筒Bには小さな穴が沢山空いていて、そこからスラリーがしみだしてくる。しかし筒ABと密着しているために、活物質の粒子の塊がすりつぶされほぐされて均一となる。

 

(4)正負極内で活物質が均一に存在することになっても、電解質と活物質との接触が密でなければ、Liの伝わり方が弱くなってしまう。そのため、粒子間の空隙を無くすように電極物質に圧力をかけて、粒子を密着させる必要がある。

 

そのブレス方法は、冷間静水圧プレスが一番適している、と言う事である。

Cold isostatic pressingと言うそうで、CIPと呼ばれている。

 

密閉パッキングされたセルを真空にして、水の中に入れて水圧を上げてセルをプレスすると言う方法のようだ。それなりの設備となるが、1.5m角程度の設備でよいと言う。

 

 

以上のような技術が、トヨタが全個体電池をものにするためのものだ、とされている。理系的な表現ではないので、うまく表現できているかわからないが、それなりに「日経Automotive」の20189月号の「トヨタの全個体電池」の内容を(かいつまんで)説明したものである。

 

補足説明、修正・訂正などあれば、どんどんやってほしいと思っている。

 

なんだかわかったような解らないような全個体電池であるが、なんとなく難しいものだと言う事がわかった感じはするものである。特にこんな手法の量産化には、トヨタと言えども、相当手こずるのではないのかな。

 

しかしこうして無い知恵を絞って全個体電池の何たるかを理解しようとしたわけだが、なんとなく本能的に「これは難しいな」と言う感じがしている。トヨタが何を根拠に、「2020年代前半に全個体電池をものにして見せる」と言っているのか解らないが、小生の印象では、試作段階に毛が生えた程度のところに留まってしまうのではないのかな、と感じているのである。

 

従って、かどうかは知らないが、専門家でも全個体電池の実用化は難しいと言っている方もいるようだ。

 

その人は、三洋電機でテスラに18650電池を供給することを決めた雨堤徹氏である。三洋電機パナソニックに吸収されたために、今は同社を退職し自分の会社を立ち上げて技術コンサルタントを営んでいる。

 

 

 

電気自動車の進化に必須といわれる「全固体電池」は実用化できない?

2019年11月19 木野龍逸 167件のコメント

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トヨタ2017年の東京モーターショーで、2020年代の早い時期に全固体電池を実用化すると発表。全固体電池は電気自動車の進化のカギになる技術として注目されるようになりました。はたして期待していいものか。電池研究の第一人者である雨堤徹さんに質問しました。

 

全固体電池に「いいところはない」?

先日、テスラ『モデル3』で淡路島へ行ったのは、雨堤さんに取材するためでした。今回の「全固体電池」の話題に加え、「EVリチウムイオン電池の必修知識」についての記事を後日ご紹介する予定です。

雨堤さんは三洋電機時代、後にテスラ車などに搭載されることになるリチウムイオン電池の開発に携わってきました。2010年に三洋電機を退職後、Amaz(アメイズ)技術コンサルテイン合同会社」を淡路島で立ち上げ、原材料から生産まで、電池の技術開発全般にわたる技術コンサルティングを手がけている電池のスペシャリストです。

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雨堤徹(あまづつみ・とおる)さん
Amaz
技術コンサルテイング合同会社代表
1982
年に岡山大学修士課程修了(無機工業化学)後に三洋電機入社。2008年に大阪市立大学博士課程修了(基礎電気化学工学)。一貫して電池開発に携わる。米テスラ社の黎明期には三洋電機側の窓口としてリチウムイオン電池を供給する契約を締結。2010年に三洋電機退社後、Amaz技術コンサルテイン合同会社を創業。

雨堤さんに質問してみました!

今、EVに関するテーマでもっとも注目を集めている分野が、全固体電池でしょう。2017年に全固体電池の話題に火を着けたトヨタは、今年6月の技術方針の説明会でも全固体電池に言及。今年9月には、2020年の東京五輪で全固体電池を搭載した電動モビリティを提供することを明らかにしました。

こうしたトヨタの動きに反応する形で、新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO2018年~2022年に100億円を投入する開発プロジェクトを進めるなど、官民挙げての取り組みが進んでいます。

では、全固体電池の何がそんなにすごいのでしょうか。メディアでは、安全性が高まったりエネルギー密度が上がるなどと紹介されることもありますが、雨堤さんはどう見ているのでしょうか。

まずは素直に「全固体電池のどこが優れてるのか」と聞いてみました。即答で返ってきた答えは「優れているとは言い切れない」のひと言でした。



───全固体電池のどんなところが優れているんですか?
優れているとは言い切れないです。何もいいところは説明されていないんです(笑)
───
え?
「みなさんが全固体電池が優れていると思うのは、トヨタがそう言ってるからですよね。トヨタとしては、全固体ができないと使い物になる電気自動車は作れませんよと言いたいのではないでしょうか。いわば、先延ばしのための言い訳とも感じてしまいます。なぜ全固体がいいのかという具体的な理由は、誰も説明していないんです。トヨタは自動車メーカとしては誰もが認める素晴らしい会社ですが、電池メーカーとして素晴らしい訳ではありません」
───
軽くなるという話は。
「なんで軽くなるんですか?(笑)」
───
エネルギー密度が上がるとか……。
「なんで上がるんですか? 上がる理由がないんですよ。エネルギー密度は、下がることはあっても上がることはないです。だって、固体の方が液体より比重が重いでしょ」
───
つまり、電極などの原材料が同じなら何も変わらないということですか?
「そうですね。例えば全固体電解質になることで、今まで使えなかったエネルギー密度の高い正極や負極活物質を使えるようになる、だからエネルギー密度が増えるんですよという人がいれば、『なるほどな』と思うか、『え、違うんじゃないの』っていう判断ができると思うんですけど、そういう話は出ていない。電解質を液体から固体に変えただけでエネルギー密度が増えることなんか、絶対にありえないです。電解質は電気容量を支配できないんです

2016年に開催された『全固体電池最前線』というセミナーでは、ノーベル賞を受賞した吉野彰氏とともに登壇。雨堤さんは今回の話と同じ主旨の問題提起をしたそうです。

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(続く)

世界自動車大戦争(99)

その一部でも、身に染みてもらおう。

 

 

 

「全固体電池」をやさしく解説、従来の電池との違いや実用化の見通しは?

   2019/10/09

 

       近年、リチウムイオン電池を超える次世代電池として全固体電池という言葉をよく耳にするようになりました。「電池は最初から固体だろう」と思われる方も少なくないでしょうが、実はこの全固体電池は従来の電池と異なるいくつかの特性を持ち、リチウムイオン電池を超える性能を秘めています。すでに一部は実用化されており、10年以内に電気自動車への搭載が始まります。全固体電池の仕組みと可能性について、やさしく説明していきます。

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  フリーライター 三津村直貴 期待の高まる電池の新技術、その仕組みとは

Photo/Getty Images) 

 

<目次>

1.全固体電池とはなにか

2.全固体電池は今までの電池と何が違う?強みと弱み

3.酸化物系と硫化物系の全固体電池、用途の違い

4.全固体電池開発の現状、各社の取り組みは?

5.全固体電池が実装されたら世の中はどう変わるか

  

全固体電池とはなにか

 全固体電池とは、電流を発生させるために必要でこれまで液体だった「電解質」を固体にした仕組みの電池のことです。

 電池は主に「電極」「活物質」「電解質で構成されており、活物質や活物質に含まれるイオンが電解質というプールの中を泳ぐことで電極間(負極から正極の間)に電子を通し電気を発生させています。つまり、電池を構成する電解質は「イオンが素早く動き回れるような特性」を持っていなければならないのです。

 人間で言えば、電解質は血液に含まれる水分のような立ち位置です。血液中の水分が失われてしまえば、栄養や老廃物の移動がスムーズに行かず脱水症状を起こします。電池も同様で、電解質が失われたり凍って固まったりすれば、電気エネルギーの移動がスムーズに行えなくなって電気が流れなくなります。

 では、簡単に従来の電池の構造を見てみましょう。図119世紀に開発されたボルタ電池、図2はさまざまな電子機器で使われているリチウムイオン電池です。

 

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  1:ボルタ電池の仕組み
電解質は硫酸。活物質(亜鉛、水素)自身が電子の授受を行う

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  2リチウムイオン電池の仕組み
負極から正極へ電子が流れることでリチウムイオンが負極から正極へ移動し、放電が行われる。充電時は逆の動きが行われる。セパレータは活物質(酸化物・カーボンなど)同士の直接接触を防ぐが、リチウムイオンは通す


 どちらのケースでも電解質は液体であり、液体の中を水素イオンやリチウムイオンが動き回り、電極に電子を通すことで電気が流れます。

 ちなみにボルタ電池は電解質が薄い硫酸、リチウムイオン電池電解質は発火・爆発の危険性がある有機溶媒が使われており、二重三重の安全対策が必要不可欠です。そんな危険な液体電解質は、凍って固体になってしまうと電気を流さなくなります。

 ところが、全固体電池ではこの電解質に特殊な物質を利用することで、固体であるにも関わらず電気が流れるようになるのです。

  

全固体電池は今までの電池と何が違う?強みと弱み

 先ほど、電解質は血液の水分のようなものと言いました。つまり全固体電池という存在は血液が凝固してカチコチに固まった人間が生きているようなもので、従来の電池の常識からすれば信じられません。

 実際、全固体電池は長年実用化できないと考えられていました。ところが、固体であるにも関わらず、内部で電子を運搬する小さな物質(イオン)が動き回って十分な電気を流すことができる物質が発見されたことで全固体電池の開発が活発化しました。

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   3:全固体電池の仕組み
イオンの通る電解質に固体を用いている。活物質が触れ合う恐れがないので、セパレーターを必要としない


 それでは、電解質が固体になると何が変わるのでしょうか?

 

全固体電池に共通する特性

1. 構造や形状が自由。薄型など、柔軟な電池が実現

2.小さな層を重ねることで小型・大容量化が可能

3.固体なので丈夫。寿命が長くて熱や環境変化に強い

4.高速充放電が可能


 従来の電池で使われていた液体電解質のほとんどが危険な物質で、液漏れは致命的な事故につながります。従来の電池はこの「液漏れ」を防ぐために丈夫な容器が必要でした。

 しかし、全固体電池ではそれが不要になるため、形状の縛りがなくなります。薄くしたり、層を重ねて多重構造を作ったり、折り曲げることも可能になります。さらに、多少傷がついても電池の性質を失わず、変質もしないので寿命が長く、熱や圧力変化にも強いのでさまざまな環境で利用することが可能です。多層化によって「小さな電池を大量に詰め込んだ電池」を作れれば、大容量にもかかわらず素早く充電が可能な電池が実現します。

 さらに、全固体電池の固体電解質には大きく分けて「硫化物系」と「酸化物系(セラミック)」に分かれており、それぞれに強みと弱みがあります。次ページでくわしく説明します。

 なお、図3のように、実は多くの全固体電池では電子の授受に「リチウムイオン」を利用しています。つまり、全固体電池も「リチウムイオン電池」の一種と考えることもできるのです。

 そこで区別するために「全固体リチウムイオン電池」と呼び分けることもあります。というのも、リチウムは電子の授受を行う物質としては最高レベルの性能を有し、全固体電池に限らず高性能な電池の多くがリチウムを利用しているためです。

 ただこのリチウムがくせ者で、水と反応する性質を持っています。そのためこれまでは電解質に水が使えず、有機溶媒などの危険な電解質を使わざるを得なかったのです。ようやく近年になって不燃性の電解質を使ったリチウムイオン電池が開発されました。

 リチウムを利用する電池は色々あるものの、それぞれ使われている「電極」「電解質」「活物質」が異なっており、同じものではないことに留意する必要があります。

【次ページ】酸化物系と硫化物系の違い、全固体電池への各社の取り組みは?

https://www.sbbit.jp/article/cont1/37046?page=2

 

(略)

 

https://www.sbbit.jp/article/cont1/37046

 

 

 

 

電気を通す固体電解質が見つかったとはいえ、個体であるため単純に言うとその電気抵抗が大きすぎて、大量の電気を流すことが出来ないことがネックとなっていた訳だ。


(続く)

世界自動車大戦争(98)

そのため長い間、固体電解質が探し求められていたが、固体電解質は内部抵抗が大きく電気出力が小さくモノにならなかった。ところが2011東京工業大学菅野了次教授トヨタ自動車が液体電解質に匹敵する出力が得られる個体を発見し、全個体電池の研究開発が進展しだした。

 

トヨタはこの物質を特定するのに5年の歳月を要しており2011年に特許を取得していたが、韓国のサムスンマサチューセッツ工科大学MIT)は合同で、材料の膨大なデータをコンピューターを使って特殊な処理を施し、わずか1年でその物質の組成を解明してしまった。特許はトヨタが取得したとはいえ、その追い上げはおそるべしと言える。

 

 

 

次世代電池開発でトヨタ5倍速、危機感与えた米韓連合

 

中山 玲子 日経ビジネス記者

2019111

 

今年のノーベル化学賞の受賞テーマとなったリチウムイオン電池旭化成名誉フェローの吉野彰氏が共同受賞者となったこの研究は、素材分野で日本が高い競争力を持っていることを改めて世界に知らしめた。だが、その優位性が揺らぎかねない技術革新の波が押し寄せている。量子コンピューターやAI人工知能)を使った材料開発の波だ。日本は戦っていけるのか。4回シリーズの第1回は日本の電池研究者に危機感を募らせた出来事から振り返る。

 1023日、米グーグルの発表が世界を駆け巡った。最先端のスーパーコンピューターで約1万年かかる複雑な問題をわずか320秒で解いたとする内容だ。超高速処理を実現したのは、原子や電子といった小さな粒子の世界で起こる現象を利用する量子コンピュータ。従来のコンピューターでは困難な問題を瞬く間に解く「量子超越」を達成したことを意味する。

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量子コンピューターはいずれ材料開発に役立つ日が来るかもしれない(写真:Google/AFP/アフロ)

 もちろん、グーグルが解いた問題は乱数がつくる計算問題で、幅広い計算に対応できるようになるには、まだまだ時間がかかる。それでも国立研究開発法人、物質・材料研究機構NIMS)の出村雅彦氏は「今回のグーグルの成果は材料開発の効率化につながる」と期待を込める。これまで人の勘に頼りながら実験と試作を繰り返して生み出してきた新素材が、量子コンピューターによって瞬時に作り出せる可能性があるからだ。

 もっとも、量子コンピューターの実現を待たなくても、材料開発のプロセスはすでに大きく変わり始めている。革新をもたらしたのが「マテリアルズ・インフォマティクスMI」と呼ぶ手法。化学領域に情報科学の知見を取り入れて、目的とする材料の組成や構造を素早く割り出す試みだ。

 コンピューターの性能向上やAI人工知能)の進化と相まって、「昨年くらいから『使えそう』と考える研究者が増えてきた」と前出の出村氏は指摘する。

 ただし、日本勢は悠長に構えてはいられない。7年前の苦い経験を思い出す必要がある。

 201210月。韓国サムスン電子マサチューセッツ工科大学MITが次世代電池として期待の高まる全固体電池に関する1本の論文を共同発表した。全固体電池は、現在、主流のリチウムイオン電池に比べて「燃えにくい」「熱に強い」といった特性を持つ。より安全で、より短時間にたくさんの電気をためられるようになれば、1回当たりの充電で走行できるEV(電気自動車)の距離は延びる。そうした特徴を見越して、日本ではトヨタ自動車が早くから研究を進めていたことで知られる。

 全固体電池の開発に携わっていた日本の研究者が後に衝撃を受けたのは、トヨタが約5年かけてようやくつかんだ電池材料の組成をサムスンMIT連合はわずか1年弱で突き止めていたことを知ったからだ。いわば、サムスンMIT連合はトヨタ5倍速で次世代電池を開発していたことになる。

 サムスンMIT連合はなぜ1年弱で成し遂げられたのか。よりどころにしたのが、MIだった。材料に関する膨大なデータをコンピューターを使って処理しながら、全固体電池に必要な特性を備えた材料の組成を見つけ出していた。

 秘密裏に研究を進めていたトヨタは、すでに11年の時点で特許を申請していた。特許公開はサムスンMIT連合の論文発表の1カ月後の1211月。トヨタ特許権を先に得ることはできたものの、「驚異的なスピードで追い上げるサムスンMIT連合に対する危機感は一気に高まった」と当時を知る関係者は明かす。

 サムスンMIT連合には米国の国家戦略が絡んでいる。

 マテリアルズ・ゲノム・イニシアチブ(MGI──。11年に当時のオバマ米大統領が打ち出したこの国家戦略は、材料分野にコンピューターを持ち込み、未知の素材開発に弾みをつける狙いがあった。コンピューターを駆使して生物のゲノム(全遺伝情報)解析を猛スピードで進めることで生命科学や新薬開発に革新をもたらした成功体験を材料分野に持ち込んだのだ。そして、サムスンMIT連合にも、MGIの中心人物が関わっていた。材料開発におけるデータやAIの重要性が世界で認識されるようになったのは、こうした経緯があった。

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マテリアルズ・ゲノム・イニシアチブを主導するのが米マサチューセッツ工科大学。自然界に存在する膨大な種類の材料データを駆使して、次世代電池材料の開発を効率化している(写真:Boston Globe / Getty Images

 米国は15年までの5年間で550億円以上を投じ、MIで世界をけん引する役割を果たしてきた。こうなると、米国と技術覇権争いを繰り広げる中国も黙っていない。中国は100億円規模の国家予算をつけ、中国科学院などが連携して、中国版MGIを推進。各地方政府も巨額の予算を投じているとみられる。

 中国では製造業の高度化を目指す「中国製造2025」でも材料分野を重点領域にしている。具体的な研究内容は明らかになっていないが、海外から優秀な研究者を積極的に引き抜いており、脅威とみる日本の研究者は多い。

 韓国でも15年からの10年間に300億円の政府予算をつけた国家プロジェクトを立ち上げた。数学やITの産業に勢いを持つインドなども、「やがて日本のライバルになる」(材料開発者)とみられている。

 実験を繰り返しながら職人的な勘も使って画期的な新材料を創り出してきた日本。リチウムイオン電池で今年のノーベル化学賞を受賞する旭化成の吉野氏らも地道に新材料を探索したからこその成果だった。

 だが、MIが広がれば、そんな職人的な芸当は通用しなくなる可能性が高い量子コンピューターやAIが瞬時に新材料を探り当てるようになれば、日本の強みは発揮しづらくなる。

 財務省の貿易統計によれば、化学製品や鉄鋼など日本の素材産業の18年の輸出額は、全体の22%を占め、同23%の自動車など輸送機器に次ぐ比率を誇る。そんな素材産業に押し寄せるMIの波。日本勢は引き続き、世界をリードできるのか。次回から詳しく見ていく。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00076/102300001/?P=1

 

その全個体電池とは、一体どんな電池なのであろうか。

 

電池の正極と負極の間にイオンが通過する電解質が液体であるものが、リチウムイオン電池LIBであるが、その電解質が個体のものが全個体電池である。電気を通す個体が見つかったものの、ただ単に電気を通すだけでは電池としてはモノにならないのだが、全個体電池とはどんなものであろうか。


(続く)

世界自動車大戦争(97)

トヨタは今年の東京オリ・パラで(正確にはオリ・パラの年に)、全個体電池を搭載した電気自動車を初披露すると言っている。

 

 

 

ニュース解説

小型のEVでも500kmトヨタが見据える全固体電池の可能性

2020/01/27 05:00   富岡 恒憲=日経クロステック/日経Automotive
 
 「液系のリチウムイオン電池(LIB)では、(電池パックの体積エネルギー密度で)300400Wh/Lの間にある壁を越えられないと考えている。(1充電当たり)500km走れる小型の電気自動車(EV)を造ることは難しい」。トヨタ自動車で全固体電池の開発に関わる中西真二氏は20201月に開催された「第12回オートモーティブワールド」の専門セミナー「EV進化の鍵となる、革新的電池の開発」に登壇し、液系LIBの限界をこのように指摘した。

 

 

 今の電気自動車EV)は、(1充電当たりの航続距離を延ばすために)電池パックをたくさん積まなければならない。そのため、大型、もしくは全高が高い車両が多いというのが同氏の見方だ。そして、こうした壁を乗り越えるためにトヨタが期待しているのが全固体電池だという。

 「トヨタ2次電池の研究開発では、全固体電池にかなりフォーカスしている」(同氏)。この言葉から分かるように、同社は全固体電池の実用化に本気だ。実際、2008年ごろは革新電池に取り組んでいた電池研究者の多くを、今では全固体電池に振り向けているという。東京五輪パラリンピックの年となる2020、同社は試作した全固体電池を搭載した最初の車両のお披露目を目指す。

 その車両に搭載する全固体電池セルは、ラミネートを採用し、フルサイズと呼ぶEVで使われているLIBと同等の大きさのものになる見込みだ()。固体電解質には硫化物系、正極や負極には既存のLIBで実績のある材料を適用する。

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 図 トヨタ自動車が試作した全固体電池セル
2019
5月開催の「人とくるまのテクノロジー展」に出展した。下から順に、スモールサイズ、ミドルサイズ、フルサイズと推定される。(撮影:日経クロステック)  [画像のクリックで拡大表示]

(略)

 

 

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/03534/?n_cid=nbpnxt_mled_dm

 

 

 

トヨタは今年のいつかには、全個体電池を搭載した電気自動車を発表するらしいが、旭化成の吉野彰氏が「リチウムイオン電池」の実用化でノーベル化学賞を受賞したように、このLIB関係はとても気難しいもののようだ。全個体電池と言っても、正式には「全個体リチウムイオン電池」と言うように、LIB液体電解質を個体にしたもので、正負極と個体電解質の境界面での有様を、如何にコントロールするかと言った難しさが存在するようで、これまた一筋縄ではいかないようだ。

 

そのためCATLなどは、中国政府の後押しを受けてせっせとLIB用の投資を続けているようで、全個体電池は2030年までは造らないと、豪語している。

 

全個体電池では1回の充電で、1000キロメートルの走行も夢ではない、と次の論考では言っているが、それも2030年代のことである、としている。やはりCATLの言うように、全個体電池の実用化は相当時間が掛かるものと思っておくことが肝要か。

 

 

 

全固体電池で1000キロ走るEV 安全で大容量

2019/12/27 11:00
日本経済新聞 電子版

次世代のリチウムイオン電池である「全固体電池」が電気自動車(EV)を一変すると期待を集めている。2020年代前半には製造技術が確立する見通しで、30年ごろには1回の充電で現在の2倍以上にあたる1000キロメートルの走行も夢ではない。発火しにくい全固体電池は安全性の高さに関心が向くが、容量が大幅に増える利点もある。電池切れの懸念を払拭するだけでなく、大きな蓄電池とみなして太陽光発電などの電気をためたり非常用電源に使えたりする。電気自動車が「発電所」になる可能性も秘めている。

 

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開発した全固体電池(松田教授提供)

203×年の連休初日。あなたは東京から大阪まで旅行することに決めた。電気自動車を自宅の電源につなぐと、わずか10分で80%まで充電できた。あとは大阪まで向かうだけだ。全固体電池を積んだ車体は急速充電ができ、1回の充電で1000キロメートルも走る。電気自動車は充電がわずらわしく、街中でしか乗れないと話していたのが懐かしい。家が停電のときは、電気自動車の電気を使い回す。

全固体電池は、主にリチウムイオン電池の安全性を高める発想から開発が始まった。燃えやすい液体の電解質を固体の材料に替え、燃えにくくする。大きな発見もあった。電気をつくるリチウムイオンの動きが速まったのだ。急速充電や容量の大幅向上がにわかに現実味を帯びてきた。

研究に力を入れるのが、2019年のノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が理事長を務める技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センターだ。全固体電池の委託事業にトヨタ自動車などの企業と大学が参加する。車載向けの全固体電池の標準の形を22年に完成させる計画を立て、大学などを支援する。

豊橋技術科学大学の松田厚範教授らは固体電解質のイオンの動きをさらに速くできるとにらむ。硫化物の固体電解質イットリウムなどを混ぜると、電解質に空間ができてイオンが動きやすくなった。セ氏50度では電解質の抵抗が10分の1になった。試算では、電池の放電容量は約2.5倍に向上する。

より多くのリチウムイオンを負極にためて電池の容量を引き上げようとしているのが、大阪府立大学の辰巳砂昌弘教授らだ。負極に金属リチウムを使う全固体電池を研究する。電解質に塩素などを混ぜた全固体電池では、電極にからみつくリチウムがそれまでの固体電解質よりも少なくできるめどをつけた。「容量を2倍にできる可能性がある」(辰巳砂教授)と期待する。

甲南大学の町田信也教授らシリコンを使う新たな負極を考案した。シリコンは炭素負極よりも23倍のリチウムイオンをため込めるという。液体のシリコンを使い、負極の劣化を抑えた。

ある調査によると、全固体電池の市場は35年に27千億円を超える。吉野氏は12月のノーベル賞受賞記念講演で「リチウムイオン電池が電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電に広く普及する未来社会」を紹介した。全固体電池にかかる期待は大きい。

 

 車載向けの全固体電池は、2011東京工業大学の菅野了次教授トヨタ自動車リチウムイオン電池の性能を引き出す電解質を発表し、本格的に研究が動き出した。日本発の電池の実用化に向けて国も支援し、新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)は18年から5年間で100億円の予算をつける。
 技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センターが22年に完成を見込む標準電池は、走行距離に関係する「エネルギー密度」という性能が最新のリチウムイオン電池に近づく。現在の車載用リチウムイオン電池に必要な冷却装置などが全固体電池でいらなくなれば、多くの電池を積める。「1回の充電で500キロメートルは走る車になるのではないか」と同センターの石黒恭生常務理事は話す。ただ、ハイブリッド車などは1度の充電と給油で1000キロメートルを走る車もある。全固体電池でも1回の充電で1000キロメートルを超える性能が目標になる。
 米国や台湾のベンチャー20年代前半の実用化に向けて車載向け全固体電池を研究しており、どの国の電池が市場を握るかは不透明だ。ナトリウムイオン電池など他の次世代電池の研究も活発になり、全固体電池の開発で先手を打てるかどうかが問われる。
(福井健人)

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53871420X21C19A2X90000/?n_cid=NMAIL006_20191228_K

 

 

 

現在のリチウムイオン電池は、正極と負極の間に液体の電解質を使っている。リチウムは水と反応する性質を持っているため、その電解質有機溶媒などを使っている。そのため液漏れなどで発火する可能性があるため、厳重に密閉されている。しかも発熱するため冷却装置が必要となり、小型化が難しい電池である。


(続く)

世界自動車大戦争(96)

以上見てきたように、HV車はEVと比べても、決して環境負荷では劣ってはいない訳で、トヨタとしては是非ともHV外し」を止めさせたい狙いが強いのではないのかな。

 

だから、VW300万台に対してトヨタ50万台のEVでも、HVがあれば決して環境負荷に対しては劣ってはいない、とトヨタとしては自慢できるわけだ。

 

それで、ハイブリッド技術の無償提供での世界的普及が、トヨタの狙いなのではないのかな。そしてHV外し」を止めさせるためにも

 

昨年の4月の論考ではあるが、藤村俊夫氏のご意見を伺おう。

 

 

 

「次世代ハイブリッド完成の自信」か、トヨタの特許無償提供

私はこう見る、元トヨタのエンジン技術者・愛知工業大学客員教授の藤村俊夫氏

近岡 裕 日経 xTECH  2019.04.04

 

[画像のクリックで拡大表示]

藤村俊夫氏

愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任


 201943トヨタ自動車(以下、トヨタ)はモーターとPCU(パワー・コントロール・ユニット)、システム制御などの車両電動化関連技術の特許を無償提供すると発表した。トヨタが単独で保有する23740件の特許の実施権を2030年末まで無償で提供する。言うまでもなく、ハイブリッド車HEV)はトヨタの競争力の源泉。その価値の高いハイブリッド技術の特許をなぜ無償で公開したのか。その狙いを識者に聞いた。

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藤村俊夫氏

愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任

 

トヨタによる特許の無償公開をどう見るか。

藤村氏トヨタらしいと言える。かねてトヨタは、「環境車は普及させて初めて意味がある(環境負荷軽減に貢献したと言える)」という考えの下、ハイブリッド車HEV)を環境車の「現実解」と主張してきた。特許を囲い込めば、現実解であるHEVの普及が遅れる。そこで、特許を無償提供することでHEVの普及を加速させるという考えなのだろう。目先の利益を追わず、環境負荷軽減お客様志向を優先させたということだ。

 欧州の自動車メーカーはHEVを造れずにもがいている。このままでは欧州の2021年規制をクリアすること、すなわち二酸化炭素CO2)排出量95g/kmに抑えることは難しい。

 「クリーンディーゼル」と銘打ってディーゼルエンジン車を推す構想は、2015年に発覚した「ディーゼルゲート」、すなわち独フォルクスワーゲンVolkswagenVW)によるディーゼル車の排出ガス不正問題でつまづいた。そこでHEVプラグインHEVを造りたいが、トヨタによるがんじがらめの特許で造れない。仕方がないので電気自動車(EV)を前面に打ち出したが、思ったほど売れない。そこで、2017年から48Vマイルドハイブリッド車48V電源部品を使った簡易ハイブリッドシステム(48Vマイルドハイブリッドシステム)搭載車〕の開発に力を入れ始めたが、それだけでは同規制の達成は難しいという現実に直面している。達成できなければ、欧州の自動車メーカーは巨額の罰金を払わなければならない。

 こうした状況でハイブリッド技術の特許を無償提供すれば、HEVの世界的な普及を後押しすることができるとトヨタは踏んだのだろう。

 

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[画像のクリックで拡大表示] TNGAに対応したHEVプリウス 4代目のもの。(写真:日経 xTECH

トヨタとしては特許を囲い込み続けた方が、参入障壁を築けてビジネス的にうまみがあるのではないか。

藤村氏:世界の排出ガス規制において、いわゆるHEV外し」をやめさせる狙いもあると思う。米国カリフォルニア州ZEVZero Emission Vehicle;無公害車)規制も中国のNEVNew Energy Vehicle;新エネルギー車)規制も、HEVをクレジット対象車(環境対応車)から外した。これは、自国の産業を守るための政治的な判断が背景にあると見られる。というのは、実質的に日本の自動車メーカーしかHEVを造れないからだ。両国の立場から見ると、HEVを入れると他国の産業を優位にしてしまうことになる。

 特許の無償提供で米国や中国の自動車メーカーもHEVを造れるようになれば、規制からHEVを排除する必要はなくなる。こうして、環境負荷軽減に対して技術的に正しいHEVをクレジット対象に戻すという狙いトヨタにはあるだろう。

 

(略)

 

 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/01910/

 

 

 

だからトヨタは、凝りもせずに、ル・マン24時間レースにカーメーカーとしてはトヨタ一社しかエントリーしていなくても毎年TS050 HYBRIDで、参加しているのでしょう。如何に燃費を改善してゆくか、を実走経験を体験させて改善に改善を積み重ねている、と言う訳なのだ。

 

WEC 2020-2021年シーズン新カテゴリーの「Hypercarsハイパーカーズ)」となるようで、トヨタGRスーパースポーツコンセプトをベースとした「ハイブリッド・プロトタイプ車両」で、参戦することを決めている。LMP1-HでのTS050 HYBRIDは、2020/6/13~14で見納めとなる。

 

 

ル・マン24時間 2019中嶋一貴組のトヨタ8号車がル・マン24時間レースを2連覇

23時間レースをリードしたトヨタ7号車はタイヤトラブルで2位に

  • 笠原一輝

  • Photo:中野英幸

  • Satoshi NOMA/IMC

201961622:02



201961515時~1615時(現地時間)

201961522時~1622時(日本時間)


ル・マン24時間レースを優勝した8号車 Toyota TS050 HYBRIDセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組、MI

 

(略)

 

残り約1時間、タイヤのスローパンクチャーで優勝を逃し、2位となった7号車 Toyota TS050 HYBRID(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組、MI

 

(略)

 

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1190691.html

 

 

 

と言う話はさておき、トヨタEVにもシャカリキになってきている。問題は電池だ。PFe-TNGAで既に完成している。そこに搭載する電池は、LIBリチウムイオン電池も考えてはいるが、将来的には全個体電池も候補となっている筈だ。


(続く)

世界自動車大戦争(95)

と言っても昨年の2019/12のスペイン・マドリードでのCOP25の際には、EUは、2030年の温暖化ガスの排出削減目標を(1990年比40%減から)50%現に引き上げている。これは責められるべきことではないが、同じようなことをやっていたのである。と愚痴は言っていても始まらないが、環境対策は待ったなしであることには間違いないのである。

 

しかもEU2050年までに域内での温暖化ガス・GHGの排出をゼロにすることも決めたのである。

世界は環境対策に、頑張るしかないのである。

 

 

EU、温暖化ガス50%削減に引き上げ 30年目標

2019/12/11 22:43
日本経済新聞 電子版

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 「欧州グリーンディール」について説明するフォンデアライエン欧州委員長(11日、ブリュッセル=AP 

ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合EU)の執行機関である欧州委員会11日、環境分野の総合対策の概要を発表した。2030年の温暖化ガスの排出削減目標を従来の1990年比40%減から50%減に引き上げた上で、さらに55%をめざす。50年に域内の排出を実質ゼロにする法案を203月までにまとめる方針を示した。持続可能なエネルギー構造への転換を資金支援する仕組みを設け、大幅な排出減に慎重な国を説得したい考えだ。

12月に就任したフォンデアライエン欧州委員長は環境政策を最優先課題と位置づける。同氏は委員長として初となる1213日のEU首脳会議で、50年の排出実質ゼロの目標について各国首脳の同意を得たい考えで「欧州グリーンディール」と名付けた環境政策の全体像を示した。フォンデアライエン氏は11日「これが我々の新しい成長戦略だ」と述べ、新産業創出や雇用増につながると力説した。

 

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EUはこれまで30年の排出削減目標を90年比で少なくとも40%としてきた。だが相次ぐ自然災害や若者を中心とした環境対策の強化を求めるデモを受けて一段の深掘りを検討していた。欧州委はひとまず50%に引き上げ、20年夏までに55%に上積みすることを検討する。

大幅な排出減に慎重な加盟国を支援するための仕組みづくりにも着手する。石炭などに依存する国が急速に再生可能エネルギーに移行すると、石炭産業に関わる人が失業する恐れがある。欧州委は「公正な移行」を進めるために、産業構造の転換や職業訓練などに使える支援の仕組みを整え、不満を和らげる。具体案を201月に提示する。

環境関連のインフラや産業振興などに向けて、欧州委は1千億ユーロ(約12兆円)規模の官民による資金メカニズムの設立も目指す。EU排出量取引制度を海運業などに拡大したり、環境対策が十分でない国の製品に関税を上乗せする国境炭素税を一部の分野で実施したりする方針も明記した。

スペイン・マドリードでは第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が開催中で、各国が既存の排出削減目標を引き上げるかが焦点の一つとなっている。欧州委は率先して目標を高めることで世界の気候変動交渉の主導権を握りたい考えだ。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53246740R11C19A2EAF000/?n_cid=SPTMG002

 

 

 

小泉進次郎環境大臣も、慌てて日本の石炭火力発電の推進を止めようとしているようだが、遅きに失したようだ。もっとしっかりと信念をもって、環境対策を進めてもらいたいものだ。ただ単に「Sexy」だけで済ませてもらっては困るのである。

 

トヨタはと言うと、これらの動きに対しては、LIBも使いながら全個体電池 と 燃料電池 で対応するようだ。但し、電動化を5年前倒ししたとはいえ、その計画は質実剛健と言ったものだ。

 

2025年のEVの販売は僅かに50万台であり、VW300万台には遠く及ばない数字となっている。

 

 

 

トヨタ、EV世界販売、25年に年間50万台
付かず離れず低速発進

2020/1/8 23:00
日本経済新聞 電子版

トヨタ自動車2025に世界で年間50万台電気自動車(EV)の販売を計画していることが分かった。EVシフトを急ぐ独フォルクスワーゲンVW)の約6分の1にとどまる。電池性能や今後の市場動向を見極める必要があるとして手堅く拡大する。中国や欧州の環境規制をクリアするのに必要な最低限の台数に設定した。

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トヨタの高級ブランド「レクサス」が発表した初のEV(広州モーターショー)

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 まず20年にレクサスのSUV(多目的スポーツ車)のEVUX300eなどを中国や欧州で発売する。25年までにグローバルで10車種以上を売り出す。生産は元町工場(愛知県豊田市)などが担う見通し。20年に1万台、21年に3万台と徐々に販売台数を伸ばす。

中国では19年に自動車大手にEVなど環境対応車の製造・販売を義務付ける規制が始まり、欧州でも21年、二酸化炭素CO2)排出量の規制が強化される。25年以降は環境規制が世界でさらに厳しくなる見通しだ。トヨタが主力とするハイブリッド車HV)だけでは対応できなくなり、EVの量産に乗り出す。

VW25年に年間300万台超EV販売の目標を掲げ、米テスラ19年に中国・上海で年産50万台規模EV工場を着工した。トヨタは引き続きHVを電動車戦略の中心に据えていることや、中国、欧州での販売比率が相対的に低いこともあり、ライバルに比べ抑えた販売計画にした。トヨタ25年にEV燃料電池車(FCV)含む電動車の世界販売の目標を550万台に設定するが、大半をHVでカバーする考えだ。

トヨタも本格的なEV時代の到来に向けた準備は進めている。「今後の規制はHVではクリアできず、EVなど新技術が必要になる」。電動化担当の寺師茂樹副社長は予測する。昨年6月に中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や自動車大手、比亜迪(BYD)と提携し、中国での電池調達の道筋をつけた。4にはパナソニックと共同でEV向け車載電池の新会社を稼働する。

トヨタしばらくはHVを主力に据えながら、電池性能や環境規制など不確実性の高い電動車市場の動向を慎重に見極めていく方針だ。ただ、世界の自動車市場でEVシフトが一段と加速すれば、大胆な戦略転換を迫られる可能性もある。



https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54186520Y0A100C2916M00/?n_cid=SPTMG002

 

 

 

トヨタは「HVを電動車戦略の中心に据えている」わけで、2025年の電動車550万台の大半をHVでカバーする、と言う事のようだ。


(続く)