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ならず者国家・中国、アレコレ!(16)

個人投資4400億元も消え、青色戸籍も打ち切り

 これは天津市が2007年から税制優遇措置とセットにして呼びかけた新区開発への個人投資募集2011年までに4409.51億元を集めていた。だが、この投資募集にかかわる数十企業が汚職などで倒産、閉鎖に追い込まれ、事実上、個人投資家から金をだまし取ったことになった。この個人投資募集プロジェクトには汚職で失脚した前中央政法委員会書記・周永康氏の息子・周斌氏(逮捕済み)もかかわっていたという証言もある。

 なぜこのタイミングで大量の陳情者が詰めかけたかというと、ちょうど中央規律検査委の地方巡回チームが天津市政府に調査に入っていたからだった。被害者たちは中央規律検査委に直訴するつもりだったらしい。中央も天津市の開発失敗の背景に汚職・不正があるのではないかとみて調査を行っていたといえる。

 531日には天津市で20年に渡って取られてきた「青色戸籍制度」が打ち切りになる。青色戸籍制度とは高級マンション購入など相応の投資を行うことで天津市の都市戸籍が取得でき、地元の進学校などに優先的に進学できたり、大学進学が優遇されたりする権利も付与されるという政策だ。この制度があるからこそ、天津市の高級別荘・住宅開発は、必ず成功するといわれていた。だが、その皮算用が甘く、需要を上回る開発を行った末、武清区を含む7つの別荘・高級住宅開発区も大幅な売れ残りを抱えて、ゴーストタウン化している。青色戸籍制度終了とともに、それら開発区の失敗が明るみに出る、と言われている。

 天津のこれらの開発計画に号令を出したのは、当時市党委書記だった現・政治局常務委張高麗・副首相だった。派手な開発区計画を打ち上げ、それを政治的業績としてアピールし、中央の指導グループ7人の中に食い込んだのだった。だが今、この天津市浜海新区開発の失敗について、張氏の責任が問われかねない状況だという。

犬猿の副首相同士が権力闘争を激化

 香港誌・動向4月号によれば、今年2月の国務院内部会議の席で汪洋副首相が、天津市浜海新区開発失敗について「天津市財政は5兆元以上の債務が不履行に陥り、事実上破産している。今この責任を追及しても遅い。天津市の子孫末代まで、この債務を背負わされるだろう」と、辛辣に張副首相の責任を問うたと言う。

 ちなみに胡錦濤・前国家主席李克強首相につながる共産主義青年団共青団)派閥のホープ、汪洋氏と、江沢民国家主席にかわいがられ、曾慶紅・元国家副主席や周永康・前中央政法委書記に代表される石油閥に名を連ねる張高麗が犬猿の仲の政敵同士であることは言うまでもない。汪氏は政治局常務委(指導グループ)の末席を張氏と競り合って結局は敗れた恨みがあった。習近平政権発足以来、事あるごとに、お互いのアラを見つけ出しては攻撃し合っていることは、わりと知られている。

 汪洋氏は昨年7月、9月、11月、今年3月の国務院会議でも張氏の失政を批判。その中には、張氏の「学歴詐称」や、80年代の中国石油化工茂名石油工業社長時代のただれた生活や汚職問題まで含まれていたとか。一方、張氏も中央政治局会議上で、汪氏を攻撃する動議を提出することがしばしばだった。

 天津のゴーストタウン問題や財政破たん問題が中国メディアにも取り上げられるほど明るみに出たのは、当然、こういった権力闘争が背景にあるだろう。習政権の汚職キャンペーンの最大のターゲットである周永康の失脚と石油閥解体が、張氏に飛び火したとも考えられる。実際のところ、現役の政治局常務委の張氏が、こういった問題で何がしかの責任を取らされる、というのは従来の共産党政治においては考えられないことだ。だが、香港誌経由とはいえ、ここまであからさまな批判記事が中国ネットニュースに流れている以上、どのような顛末も考えられよう。

 北京の都市機能を河北省と並んで分散させる副都心として開発を優先され、特別に青色戸籍政策などもとられてきた天津が、ゴーストタウンだらけとなり、財政破たん問題も隠しようがなくなったのは、突き詰めていえば何が原因なのか。それは自分たちの出世を中央政府や上級政府に向けてアピールすることだけを考えた官僚政治家たちの浅知恵と汚職体質が、冷徹で客観的なプロフェッショナルの分析や調査よりも優先されて、開発計画や投資規模を決定したことにある。

経済の矛盾は政治問題に帰結。改革、待ったなし

 その計画が失敗とわかるころには、計画にゴーサインを出した官僚政治家たちは出世して別の土地に行っており、従来の共産党政治のシステムであれば、彼らは責任を取らずに済む。銀行の人事も関連企業の人事もそんな地元政府の官僚政治家が握っているとなると、たとえそれが野放図な開発計画であっても誰も異論を唱えることはない。彼らも最終的には中央政府や上級政府が尻拭いしてくれると考えているのだ。

 つまり中国の今の経済上の矛盾というのは、たいてい政治の問題に帰結する。必要な経済改革とは経済、特に金融システムを党政治と切り離すことであり、それは政治改革なしに行えない。そんなことは、中国の政治家本人たちがよく分かっているはずである。

 直轄市のゴーストタウン問題はあまりにショッキングなので、大きな注目を集めたが、実のところ、天津と同じような問題を抱える二級、三級都市は掃いて捨てるほどある。最近の報道によれば、CLSA証券が中国の600におよぶ不動産開発プロジェクトを調査したところ、過去5年に建設された不動産の空き室率は15%、1020万室が空き家のままで、2016年には空き室率は20%を突破する、との分析結果を発表した。米国の不動産の空き室率も最高10%までであり、この数字は十分深刻だ。

 中国国務院の発展改革委のアナリストの見解では、昨年10月の段階で、バブル崩壊は地方からすでに始まっている。その規模と影響がどのくらいに及ぶのか、中国にどのくらいの痛みをもたらすのか、そしてこの後始末をどうやってつけるのか、いつ中国が政治改革は避けて通れないと決断する時が来るのか、まだ誰も予測しきれていない。中国の政治家たちは本当にどうするつもりなのか。まさか指をくわえて、中国経済バブル崩壊のシナリオを眺めているつもりなのだろうか。いくら、自分たちの私的財産が欧米のプライベートバンクに移転済みであるからと言って。

 

中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス

 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20140527/265507/?n_cid=nbpnbo_mlt


 

まあ、2015.9.3には中国人民抗日戦争勝利および反ファシズム戦争勝利七十周年記念式典」で通常は101日の国慶節に執り行われている軍事パレードなんぞを大々的に行う余裕などはなかったのではないかと人事ながら心配(?)になるが、中国のことであるから苦笑い(?)して見過ごすしかないであろう。

(続く)