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ならず者国家・中国、アレコレ!(78)

中国のいう「和諧」とは、中国による「一極支配」のことであり、「中国の夢」とは、世界で唯一の超大国、つまり経済的、軍事的、文化的に無敵になると言うことである。

これは断じて、私たちが心待ちにする未来などではない、と結んでいる。

 

4回 習近平vsオバマ会談は中国の圧勝だった
中国の大国への野望を明らかにした『China 2049』のピルズベリー氏に聞く

2015102日(金)石黒 千賀子

 経済面でも、軍事面でも着実に力をつけ新たな大国として浮上する中国――。世界中の国々と企業は巨大市場を有する中国との関係強化に腐心しているが、その一方で、南沙諸島で大規模な埋め立て工事を続け、軍事施設まで建設する中国の姿勢に脅威と警戒感を感じずにはいられずにいる――。

 

China 2049

 米政府の対中政策に長年かかわってきたマイケル・ピルズベリー氏は、近著『China 2049』の中で、中国には「100年マラソン」と呼ばれる世界の覇権を再び握るための野望があり、硬軟交えた一連の行動もその長期戦略の一環と説明した。しかし、同時に「中国を過大評価してはいけない」とも指摘する。

 最終回となる今回は、このほど米国を初めて公式訪問した習近平国家主席オバマ大統領との首脳会談をどう見るか、そしてその中国とどう向き合っていけばいいのかを聞いた。

 なお、今回も記事の末尾にピルズベリー氏へのインタビューを一部収録した動画を掲載しているので、併せてご覧下さい。

 第1回はこちら

 第2回はこちら

 第3回はこちら

(聞き手 石黒 千賀子)

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 マイケル・ピルズベリー(Michael Pillsbury)氏
1945
年米カリフォルニア生まれ。米スタンフォード大学卒業(専攻は歴史学)後、米コロンビア大学にて博士課程を修了。196970国連本部勤務を経て、7377年ランド研究所社会科学部門アナリスト、78ハーバード大学科学・国際問題センターのリサーチフェロー、81国務省軍備管理軍縮庁のディレクター代行、84国防総省政策企画局長補佐、8690年議会上院アフガン問題タスクフォース・コーディネーター、9293国防総省総合評価局特別補佐官、982000国防総省特別公務員(米国国防科学委員会)、19972000年米国防大学客員研究フェロー、20012003国防総省政策諮問グループメンバー、20032004年米中経済・安全保障検討委員会シニア調査アドバイザー、2004年以降、現在も国防総省顧問を続けながら、ハドソン研究所中国戦略センター所長も務める。米外交問題評議会と米シンクタンク国際戦略研究所CSIS)のメンバーでもある。米ワシントン在住。
著書に『Chinese Views of Future Warfare』『China Debates the Future Security Environment』などがある。(写真:大高 和康、以下同)

 

先週の金曜日、(2015)925にワシントンで習近平国家主席オバマ大統領の首脳会談が行われました。どうご覧になりましたか。

ピルズベリー:中国にとっては成功、米国が得たものはゼロだった。中国は首脳会談前から指摘されていた南シナ海東シナ海の問題、あるいはサイバー攻撃問題などについて、何かを確約するということをうまく逃れた。

 ビジネス面を見ても、米中2国間投資協定の締結には至らなかった。首脳会談で最終合意できるようこの数カ月、両国間で相当な努力がなされていた。だが、この投資協定は中国政府が中国国有企業を優遇することを禁じている。首脳会談でどんな話があったのかは明かされないので理由は分からないが、中国は投資協定においても譲歩しなかったということだ。

 

合意文書が一つもないという首脳会談

しかし、サイバー攻撃の問題については、今後、閣僚級の協議を新たに設置することで合意したと報道されています。

ピルズベリー:いつかね。

いや、年内にも初会合が開かれる、という報道を目にしました。

ピルズベリー:いつ開始するかといった具体的な時期は決まっていない。今回の首脳会談の特徴は、文書での合意は何もないということだ。首脳会談後、ワシントンで随分沢山の記者と話したが、メディアも今週になって、その事実に気づき始めた。

 通常、2つの大国の首脳が会談すれば、複数の事項について何らかの最終合意にこぎ着け、両者が合意文書に署名し、それが会談後に発表されるものだ。だから記者たちは週が明けた今週の月曜日、ホワイトハウスに連絡して、サイバー攻撃の問題を扱う閣僚級協議新設など一連の合意事項に関する合意文書のコピーを欲しいと要請したが、ホワイトハウスは「渡せるような文書になったものは何もない」と回答している。それは、ホワイトハウスのウェブサイトを見てみれば明白だ。そこにはオバマ大統領と習近平国家主席共同記者会見での発言しか上がっていない

合意文書が全くない?

ピルズベリー:そう、全くない。習近平氏はオバマ大統領と並んで共同記者会見を開くことさえ嫌がっていたと聞いている。だが、共同会見は中国側が譲歩して実現した。

 確かに、共同会見で彼らは「米中はサイバーセキュリティーについては協力していく」と語り、メディアの報道ではpromise(約束)とかpledge(誓約)という言葉が使われた。だが、それは飛躍というものだ。合意して署名に至った文書は一枚たりとも存在していない。

安全保障に関わるテーマはすべてはねつけた

 今回の首脳会談で何より顕著だったのは、中国側が次の5つの点について、徹底して自らの主張と立場を押し通した点だ。1、「両国はサイバー犯罪がこれ以上起きないように協力して戦うという重要な合意に達した」と習近平氏は会見でこそ述べたが、米国が昨年、米企業へのサイバー攻撃に関与したとして起訴した中国人民解放軍PLA)の当局者5の米国への引き渡しを拒否した。

 2、中国は過去に自国の人工衛星を撃ち落とすことに成功し、他国には脅威になっているが、宇宙における中国の衛星攻撃を禁じる話や中国が宇宙スペースで進めている軍事増強に関する議論について議論することも拒否した。

 3、米国が求めた軍事交流の拡大も、限られたものしか受け入れないとの姿勢を貫いた。

 4台湾向けミサイル配備に関する議論も拒否した。中国は過去10年間で、台湾向けに1000発以上のミサイルを配備してきたが、直近でも毎年200発以上増強している。この話題についても議論を拒否した。

 5、冒頭でも話したが、南シナ海における埋め立て工事については、他国から一切の制約、制限は受けないと主張した。共同会見でも習主席は「南シナ海における島々は古来、中国の領土だった」と発言。これに対してオバマ大統領は、何のコメントも反応もしなかった。

 実は、首脳会談前に私は、かねてつきあいのある中国の軍部の将校から、中国がこうした反応をするであろうということを聞いていた。情報源は国防大学などで教えている将校クラスの学者たちだ。人民解放軍には、あまり知られていないがGeneral Political Department(総合政策部)と呼ばれるチームがある。タカ派の彼らは通常、どちらかというハト派の外交部の方針と衝突するものの、政策決定に強い影響力があり、今回の習近平氏の訪米を巡る中国側の方針を決める上でも重要な役割を果たしたと考えられる。

 彼らが出した方針とは、安全保障に関わるテーマは徹底してはねつける、というものだったという。


(続く)