ちなみに主要経済国フォーラム(MEF)の首脳宣言の概略骨子は次の通りであ
る。
①2050年までのCO2削減目標を設定するために、12月のCOP15コペンハ
ーゲン会議に向けて、取り組みを続ける。
②世界全体の平均気温が産業革命以前から2℃を超えないようにすべきであ
る。
③CO2削減のための技術開発などの行動計画を11月までに作成する。
④各国はMEFの枠組みを継続する。
と言うもので、新興国はあくまでも半減と言う数値目標の設定には反対した。し
かし2℃目標には同意している。中国は胡錦濤がウイグル問題で帰国して不在
であったが、新興5ヵ国首脳会議では代理を務めた戴ヘイ国国務委員などが
リードし、最後まで削減のための数値目標の設定に拒んだ。そのためにサル
コジ大統領の「最初から新興国を議論に加えるべきだ」との意見が出てくるので
ある。そしてイタリアのベルルスコーニは議長国の首相として、閉幕後の記者会
見で「今後の政策決定は主要14カ国G14が重要な場になる」としゃべっている。
G14は、G8+S5新興5ヵ国+エジプトである。
そして7月10日午後(日本時間10日夜)、ベルルスコーニ首相が議長総括を
発表して、ラクイラサミットは閉幕した。オバマ大統領も閉幕後の記者会見で、
「中国、インド、ブラジル抜きの取り組みは間違っている」と述べ、今後は20カ国
・地域(G20)重視でのサミットの枠組みを検討することを明言している。さらに
G8は途上国との拡大会合を開催して、途上国の食料安全保障対策として今後
3年間で200億ドル以上を拠出する方針を発表している。そして麻生首相も
2010年から3年間で30億ドル以上を拠出することを表明した。
しかも新興国は、1人当たりの排出量が多い先進国が世界の温暖化対策のコス
トを負担すべきだと言う。そして先進国が資金支援を確約するまでは数値目標
を受け入れないと言う。ますます以って金のかかることとなる。金をくれなければ
数値目標を受け入れない、などとは言語道断だ。日本は今まで金を出して技
術開発をしてきている。伊達に世界最先端のCO2の低排出国になっているの
ではない。新興国はそれらの技術の恩恵に与っているのを忘れてはいけない。
特に中国は世界の排出量の2割を占める「排出大国」である。しかも先進国
の技術開発の恩恵を一番こうむっているのは、中国である。中国が日本と並ぶ
経済大国になりつつあるのは、かなりの部分が外資とその技術のお陰である。
外資なくしては今の中国はなかったことであろう、今でこそ大きな顔をしている
が。その中国はCO2の排出削減などは外に置いて、ドルを機軸とする国際通
貨制度の見直しを求めている。外国資本のお陰で経済成長した結果、ドルを
貯め過ぎてドルの下落で損失を蒙らないかと心配なのである。ドルの下落を心
配するなら、CO2の排出にも心配してもらいたいものだ。もっとも中国が自国の
温暖化ガスの排出削減に努力しなければ、巡り巡って中国大陸は砂漠化が急
速に進行することとなる。その時には他のどの国も中国のことを心配しないだ
ろう。日本も、あんまり中国に技術支援はしないことだ。
(続く)