ラクイラサミットではウイグル暴動で胡錦濤が帰国してしまったが、中国は温暖
化対策ではまことに消極的だった。と言うよりも温暖化対策には反対だった。し
かも新興5ヵ国をたきつけて「温暖化ガス排出量の50%削減目標」すら、共同宣
言に盛り込ませなかった。このためフランスのサルコジ大統領は「最初から新
興国を議論に加えるべきだ」とし、中国などを除いた国際会議は無意味との認
識を示し、議長国イタリアのベルルスコーニ首相は7月10日、「今後の政策決定
は主要国14カ国(G14)が重要な場になる」と言っている。そして「もはや新興
国抜きに世界的な決断をするのは不可能だ」とも述べている。これも7月11
日付けの日経新聞に載っていたものであるが、以下の記述も主に日経新聞を
参考にしている。
G8主要国首脳会議(ラクイラサミット)は、7月8日夜(日本時間9日未明)G8
首脳宣言を採択した。
首脳宣言は、経済分野と政治分野の二つがあり、それとは別に二つの首脳声明
を採択している。首脳声明は、「核不拡散、テロ対策」である。
政治分野では、イランや北朝鮮の核開発・実験やミサイル発射、CTBT、拉致
問題に関するものが宣言に盛り込まれた。
経済分野での焦点はもちろん「地球温暖化問題」である。骨子は次の3点で
ある。
①温暖化ガスの排出量を2050年までに80%またはそれ以上削減する。(長期目標)
②世界全体の平均気温が産業革命以前から2℃を超えないようにすべきである
と言う科学的見解を共通の認識とする。(共通認識)
③2050年までに世界全体で温暖化ガスの排出量を半減させることを提案する。
これはG8間で合意されたものであるが、当然CO2はG8だけが排出しているも
のではない。当然中国を筆頭に新興国が大量に排出している。中国のCO2
排出量の多さは先に示したとおりである(世界の排出量の2割を占めている排
出大国である)。さらに80%削減は日本にとってはかなり厳しい目標となる。先
に示したように、日本はすでに相当のCO2削減を実施してしまっている。そのた
め日本の現状比での60%~80%削減との長期目標の上限に収まる「80%ま
たはそれ以上」と言う言い回しになったと言う。
そしてなぜ80%の数字にG8が固執したかと言うと、「新興国を含むすべての主
要排出国が責任ある形でポスト京都議定書の枠組みに加わることが最優先」と
して、G8のこの意欲的な80%削減の長期目標を切り札にして、
新興国に「2050年までに50%削減」と言う目標を共有することを迫るため
であった。
この半減目標は、昨年の洞爺湖サミットではG8間では合意できたものが、中国
・インドなどの新興国とは共有することが出来なかったものである。そのため敢
えて80%と言う高い目標をG8間で長期目標としたものである。
しかしこれも中国を中心とする新興国とは共通目標とはすることが出来なかっ
た。そして7月9日午後(日本時間同日夜)の主要経済国フォーラム(MEF)
では合意されずに、MEF首脳宣言には「2050年までにCO2を先進国は80%
世界全体では50%削減」と言う削減目標はすっぽりと抜け落ちたのである。ち
なみに主要経済国フォーラム(MEF)の首脳宣言の概略骨子は次の通りである。
(続く)