ALPS処理水放出と習近平の凋落(64)

 さらには中国には「易姓革命思想」という伝統的な考えかたがあり、天は己に成り代わって皇帝に地上を支配させるが、その皇帝が徳もなく悪政を行っていると天が判断すると、皇帝の姓、血統を入れ替え、王朝交代が起きるという。天が為政者に徳や能力がないと判断した場合、疫病や天災、飢饉などが続き、人々は皇帝が天に見放されそうだと知ることになる。 

 

 これは暴力によってしばしば王朝が簒奪(さんだつ)されてきた中国で、簒奪者が自分の正統性を示すための考え方だ。そういう考えに基づくと、習近平の治水は失敗し、近年、疫病、天災などが続いたのは、天の啓示ではないか、というわけだ。 

 

 今回の北京の大水害では、過去600年水没した記録がない故宮紫禁城も冠水した。そのため、迷信を信じる人達や風水師はこれを凶兆だと騒ぎはじめた。 

 

過去600年水没した記録がない故宮紫禁城も冠水した(写真:新華社/アフロ)ギャラリーページへ        

 

 ある風水師動画では「この台風5号はもともと台湾を襲うものだったが、意外なことに台湾を迂回し、上海、北京を襲った。台湾と香港の間を通って中国を直撃し、紫禁城を水没させた。これには意味があろう。大凶兆であり、王朝が不安定化する」「天の現象は人間社会の現象を反映している。この数年、異常気象が続き、王権の象徴である紫禁城が600年来初めて、台湾と香港からの風によって水没した」「天が民衆に何かを啓示している」という。 

 

習近平の威信が崩れ始めている 

 

 紫禁城の水系は紫禁城内と太和門前を流れる内金水河が天安門前から外金水河に続き中南海(中海と南海の2つの人口池をもつ紫禁城西側の皇帝の離宮の呼び名。今は共産党中枢の建物群がある場所で、中国共産党政権中枢を指す言葉として使われる)に流れ込むようになっている、という。今回の大雨で、大量の雨水が金水河を通じて中南海に流れこんだが、中南海では水は排水されず、金水河が逆流し、紫禁城が冠水した。 

 

 風水師的には「台湾、香港からの風によって、大雨が降り、中南海で排水できない雨水が王権の象徴の紫禁城を水没させた」ということに何がしかの予感を感じるわけだ。 

 

 新型コロナが辛亥革命発生の地である武昌(武漢)で最初にアウトブレークし、その打撃から中国経済は回復できず、若者失業率の更新が続き、さらには次々と天災、人災が襲われた。政治においても、外相が突然理由も示されずに解任されたり、解放軍ロケット軍幹部が総入れ替えになったり、政権内部の不安定さも露見しつつある。 

 

 風水や天命の話はさておき、習近平は実際、災害時に十分なリーダーシップを発揮できていない。国内の治水事業も口でいうほど成功していない。体制内の人心も掌握しきれておらず、経済回復の処方箋も持たず、米国との外交的緊張も緩和の兆しがみえていない 

 

 こういう状況で、14億の中国人が習近平体制の支配に従順に甘んじ続ける時代が続くのかどうか、という疑問はやはり強まっていくのだ。 

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76356?page=5 

 

 

紫禁城が冠水したということは、習近平などが常駐する中南海も被害にあったということだ。「皇帝」としての習近平の権威は、地に落ちたことになる。 

 

(2023年の)7月19日に「習近平の治水に関する重要論術」なる本が出版され水利部、メディアを挙げて、「習近平がこの10年自ら計画し、配置し、推進し、全国の海綿都市(水害に弱い都市)の治水事業を完成させたと大々的に喧伝していたこともあり、関係する機関紙では、長期間解決しがたかった治水問題を(習近平が)解決した」と報じていたなどと更に習近平の業績を煽っていたこともあり、このだが、その1週間後に、福建から上海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没したのだ。という事実は、習近平の治水事業は大失敗であったことを、自ずと証明することになってしまったことになった。 

 

これでは習近平の評判も『がた落ち』ではないのかな。 

 

なんと言っても首都の北京をはじめ、『福建から上海、江蘇、河北、北京、天津の至るところが水没』てしまったのであり、あの有名な故宮紫禁城までもが水の中にはまってしまったのであるから。 

 

だから普通では、習近平の評判は「がた落ち」している筈なのである。中国のあの有名な「易姓革命」で習近平は民衆に首をはねられていてもおかしくはない状況なのであるのだが、そこは共産党一党独裁体制なので、何とか習近平は守られているのではないのかな。 

(続く)