次世代エコカー・本命は?(106)

充填時間は34

 パッケージ型スマート水素ステーション24時間に1.5kgの水素を製造可能だ(図4)。これはFCXクラリティが約150km走行可能な量だ3。パッケージ内には蓄圧タンクが8本内蔵されており、35MPaの水素を最大約18kg、貯蔵できる。蓄圧タンクだけで3台のFCXクラリティを満タンにできる計算だ。

3) ホンダFCXクラリティ(ZBA-ZC3)は4人乗りのセダン。高圧水素タンク(35MPa)の容量は171Lであり、航続距離は620km1015モード時)。

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4 スマート水素ステーションの主な仕様 出典:ホンダ
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 「FCXクラリティーの水素タンクが空の状態から34分で満タンになる」(ホンダ)。充填速度は他社の水素ステーションと変わらない(図5)。ただし、多くの競合他社は70MPaを最大充填圧としている。「70MPaのタンクを備えた他社の燃料電池車に今回の装置で充填した場合、満タンにはならないものの、60数%までは達する」(ホンダ)。圧力は半分だが、5割以上充填できるということだ。


5 水素注入のためのノズル 出典:ホンダ
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普及への課題は何か

 パッケージ型スマート水素ステーションを利用すれば、小面積の土地に短時間で水素ステーションを設置できる。設置期間が短いことは、設置コスト引き下げにも効く。残る課題は何だろうか4

 適用法規だ。「商業地に水素ステーションを設置する場合、防火壁や散水栓など(過大な)規制が多い。関係省庁に規制適正化を求める必要がある」(ホンダ)。市街地に設置できるよう、岩谷産業とともに実証実験を重ねていくとした。なお、今回の設置場所は商業地ではないため、半径5m以内に火気が存在しないなどのわずかな規制しか掛かっていないという。

4) この他、水素の製造コストが課題になる。化学工業の副産物である副生水素などを運び込む場合と比較して、(再生可能エネルギーによる)電力を用いた水電解はコストが高いとされている。新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)が20147月に公開した「水素エネルギー白書」では、製造法ごとの水素の製造コストをまとめている。苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)製造の副成水素は20/Nm3、石油精製時では2337円、水の電気分解(水電解)では76136円だという(関連記事 http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1409/01/news078.html)。なお、ホンダは水素の製造コストを公開していない。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1409/22/news038.html


 

「常圧の水を注入して、35気圧(35MPa、メガパスカルの水素を直接得ること」ができると言っているので、ここら辺りにこの装置の味噌があるのであろう。水の電気分解自体が35気圧下で行われているのか、分解された水素がそのまま35気圧(35MPa、メガパスカルに加圧されて出てくるのかはわからないが、そこがホンダの工夫したところであろう。だからホンダは水素タンクの圧力を35気圧に拘(こだわ)ったのであろう。

と言うことはさらに一押しして70気圧にも簡単?に出来るのではないのかな。そうすれば水素ステーションの問題は早晩解決されることになるのではないのかな。・・・と、いろいろなところで技術革新が進行してゆくものと思われる。意外と水素社会の実現も早いのかもしれない。

 

しかし水素社会の実現はそんなに甘いものではないと言う論評もある。

 

FCV燃料電池車)は普及する?
年の始めに考える「究極のエコカー」の現状と課題

ガイド:山田 正昭 2015115日掲載

有害な排気ガスを一切排出しない究極のエコカー、それがFCV燃料電池車)です。昨年末に発売されたトヨタMIRAI」は予想をはるかに上回る受注を獲得し、増産が決定しました。それに先立つタイミングで開催されたロサンゼルスモーターショーでは、ホンダ、フォルクスワーゲンアウディが相次いでFCVのコンセプトモデルを発表。中でもホンダは2015年度内の発売を目指すと発表しています。しかし、FCV普及のためには、水素ステーションの整備、車両や水素の低価格化といった難題を解決しなければなりません。石油依存から脱却した水素社会の到来はまだまだ先の話のようです。

 

トヨタFCVの市販車である「MIRAI」を昨年末に発売したのは記憶に新しいところ。115日には、ホンダ20163月の発売を発表しました。新たなエコカーの時代はすぐそこまで来ているかのようにも思えますが、FCVの普及は順調に進むのでしょうか。

 

あと数年で各メーカーのFCVが勢揃いする?

FCVは、水素と酸素を反応させて電気を作り出す燃料電池を搭載した自動車。燃料電池ガソリンエンジンなどの内燃機関に取って代わるパワーユニットとして、長いあいだ開発が進められてきました。そして、201411トヨタの「MIRAI」が発売されたわけですが、FCVの開発に成功しているメーカーはトヨタだけではありません。(この内容は間違いです。FCVミライの発売は2014.12.15です。トヨタ2014.11.18に記者発表で発売日を公表したもので、発売はあくまでも12/15です。)

ホンダは昨年11月のロサンゼルスモーターショーで「FCV CONCEPT」を発表し、2015年度内の発売を目指すとしました。ホンダ版FCVはシステムが極めてコンパクトなのが特徴で、そのほとんどすべてをボンネット下のエンジンルームに収めることができます。

MIRAI」はシステムをボディのあちこちに分散させてなんとか詰め込んでいる印象で、車内はかなりタイト。乗車定員も4人となっています。しかし、ホンダのFCV5人乗りで登場するようです。

また、ホンダは車両に加えて、外部給電器スマート水素ステーションも発表し、三位一体での普及を目指すとしています。外部給電器は災害時などにFCVから家庭用電源を供給するための可搬型の装置。スマート水素ステーションはホンダ独自技術の高圧水電解システムで水素を作り出せるステーションです。

同じロサンゼルスモーターショーでフォルクスワーゲン燃料電池の研究車両「ゴルフ ハイモーション」を発表しました。フォルクスワーゲンでは燃料電池のために専用モデルを用意するという発想をせず、「FCV」という言い方もしていないのが特徴です。

フォルクスワーゲンは、「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス」という新世代のプラットフォーム(自動車の基本構造)を採用しており、MQBはその開発段階からあらゆるパワートレインを搭載できる設計。すでにガソリン、ディーゼル天然ガス、電気、それにプラグインハイブリッドのパワーユニットを搭載している実績があります。

燃料電池についても、単体で開発したパワートレインを「ゴルフ」など既存のモデルに搭載する、というのがフォルクスワーゲンのスタンスです。そしてそれは、公道テストを繰り返すほど完成に近づいています。

さらにアウディもロサンゼルスモーターショーでFCVを披露。しかも、走行可能な車両を会場に持ち込み、報道陣向けに一般公道での試乗会まで実施しました。

各社とも、「発売のタイミングでトヨタに先を越されたが、技術開発で後塵を拝しているわけではない、すぐに追いつき追い越せる」と言わんばかりです。

(続く)