世界自動車大戦争(87)

EV C.A.Spiritが各種のEVに共通となる基盤技術を開発し、それを使って、トヨタとしては

トヨタZEVファクトリーEVFCVの開発や生産準備、事業企画を担当することになる。ZEVファクトリーには、トヨタの多くに関連企業が名を連ねている。

 

 

これらのことを、次の論考を参考に、述べてみたい。

1EVを普及させるために-日本での超小型EVの展開-

20190607

https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/28417031.html

 

 

そこでは、次のように紹介されている。

 

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そしてEVには、バッテリー・モーター・インバーターControl Unit)の3要素が必須項目となるが、バッテリーはトヨタが開発を進めている全個体電池も含めパナソニックと密接に提携してゆくことを中心に、その他は主に外部調達することになる。

  

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その開発するEVについては、6つのバリエーション(車種)を考えている。トヨタは必ずしも、超小型EVe-Paletteだけを考えているだけではないようだ。

 

1) ラージSUV

2) ミディアムセダン

3) ミディアムミニバン

4) ミディアムクロスオーバー

5) ミディアムSUV  スバルと共同企画・開発

6) コンパクト     スズキ、ダイハツと共同企画・開発

  

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こうしてみると、トヨタが自慢する

 

e-Paletteや超小型EVは、この6つのバリエーションのどこに含まれるのか。

 

e-Paletteは、ラージSUVで、

超小型EVは、コンパクトに含まれると考えればよいのか。

 

超小型EVは当然、スズキダイハツが企画開発し、生産まですることになろう。とすると、

e-Paletteは、当然トヨタGの工場で作られることになる筈だ。

 

 

と言う事でトヨタは、e-Paletteや超小型EV以外でも、EVの普及を考えているようだ。

 

 

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 詳しくは上記のURLを参照願いたいが、トヨタには中型クラスのEVの投入計画もおありのようだ。

 

事実、C-HREVUX300eEVを中国で発売すると既に表明しているからだ。

 

どんな形で、どんな車種で、いつ発表するのか、楽しみであるが、次のニュースを読むと、2020年代前半には発売するようだが、今は2月末である、トヨタはこれからクリティカルな期間を迎えることになる。

 

 

ニュース解説

トヨタ、中型EVモックアップ公開 20年代前半に投入計画

2019/06/10 12:30 富岡 恒憲=日経 xTECH

 

 トヨタ自動車は、2020年代前半に投入を計画する中型の電気自動車(EV)のモックアップを報道陣に公開した(14)。公開したのは4種類のモックアップ。具体的には、「シエンタ」クラスのミニバン、「RAV4」クラスのSUV(多目的スポーツ車)、「カムリ」クラスのセダン、「ハイランダー」クラスの3列シートのSUVである。いずれも、中型EV専用のプラットフォームである「e-TNGA」を使う想定だ。

 

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シエンタ」クラスのミニバン 

(撮影:日経 xTECH

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 2 「RAV4」クラスのSUV

(撮影:日経 xTECH

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3 「カムリ」クラスのセダン

(撮影:日経 xTECH

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4 「ハイランダー」クラスの3列シートのSUV(撮影:日経 xTECH
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https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02334/?n_cid=nbpnxt_mled_dm

 

 

まあモックアップでは、どうしようもない。動くことがなければ、どんな車でも作り出せる。このためだけにモックアップを造った訳でもないだろうから、そんなEV車両開発は本当に存在するのであろう。


(続く)

世界自動車大戦争(86)

なお「100年に一度の大変革の時代」は、トヨタ2017.11.28に組織改正に際しての豊田章男社長の言葉として言及されたものである。

 

 

役員体制の変更、組織改正、および人事異動について

20171128

グループ会社の力を結集、また社内外を含め、高度な専門性を有する多様な人材を適所に配置

副社長の役割刷新、フェローポストの新設、執行役員体制の変更時期前倒し等、役員自ら役割・

 意識を変革し、執行のスピードアップを図る

よりお客様・現場の近くでの意思決定が可能な体制への変更

 トヨタは、「もっといいクルマづくり」と「人材育成」の一層の促進のために、常に『もっといいやり方がある』ことを念頭に、組織および役員体制の見直しを行ってきた。
 2011年に「地域主体経営」、2013年に「ビジネスユニット制」を導入、20164月にはカンパニーを設置し、従来の「機能」軸から「製品」軸で仕事を進める体制に大きく舵を切った。2017年も、9月に電気自動車の基本構想に関して他社も参加できるオープンな体制で技術開発を進めるための新会社(EV C.A. Spirit)を設立する等、「仕事の進め方変革」に積極的に取り組んできた。
 また、役員人事についても、2015年に初めて日本人以外の副社長を登用、2017年には初めて技能系出身の副社長を登用するなど、従来の考えにとらわれず、多様な人材を適所に配置する取り組みを進めてきた。

 いま、自動車業界は、「電動化」「自動化」「コネクティッド」などの技術が進化し、異業種も巻き込んだ新たな「競争と協調」のフェーズに入っている。トヨタは、グループの連携を強化し、これまで取り組んできた「仕事の進め方改革」を一層進めるために、来年1月に役員体制の変更および組織改正を実施する。また、現在のトヨタを取り巻く環境変化はこれまでに経験したことがないほどのスピードと大きさで進行しており、一刻の猶予も許されない、まさに「待ったなし」の状況であると認識している。こうした認識のもと、役員体制については、本年4月に実施した後も、6月、8月、11月と随時、変更してきており、来年についても従来の4月から1月に前倒しで実施することにした。

 今回の体制変更について豊田章男社長は「自動車業界は100年に一度の大変革の時代に入った。次の100年も自動車メーカーがモビリティ社会の主役を張れる保障はどこにもない。『勝つか負けるか』ではなく、まさに『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いが始まっている。他社ならびに他業界とのアライアンスも進めていくが、その前に、トヨタグループが持てる力を結集することが不可欠である。今回の体制変更には、大変革の時代にトヨタグループとして立ち向かっていくという意志を込めた。また、『適材適所』の観点から、ベテラン、若手を問わず、高い専門性をもった人材を登用した。何が正解かわからない時代。『お客様第一』を念頭に、『現地現物』で、現場に精通をしたリーダーたちが、良いと思うありとあらゆることを、即断・即決・即実行していくことが求められている。次の100年も『愛』をつけて呼んでもらえるモビリティをつくり、すべての人に移動の自由と楽しさを提供するために、トヨタに関わる全員が、心をあわせて、チャレンジを続けていく」と述べた。

(略)

 

https://global.toyota/jp/detail/19944468

 

 

さて、このブログで扱ったことのあるトヨタがらみの関連事項を、時系列的に次に抜粋してみよう。

 

2016.01  トヨタダイハツを完全子会社化すると発表

2016.12  トヨタEV事業企画室を新設、トヨタ・織機・アイシン・デンソーから各1名。

2017.02  トヨタプリウスPHVを発売

2017.08  トヨタマツダ5.1%出資し資本提携を発表

2017.09  トヨタマツダデンソーEV C.A.Spirit Co.設立。

2017.11  豊田章男社長、人事異動で「自動車業界は100年に一度の大変革時代に突入」

2017.12  トヨタパナソニックリチウムイオン電池で提携を発表

豊田社長、2030年、電動車550万台(内ZEV100万台)と質問に答える。12/13

       寺師茂樹副社長、2030年電動車550万台(内ZEV100万台)チャレンジ発表

       2025年までに10車種以上EVをラインアップする。12/18

2018.01  豊田章男社長、CESで「トヨタモビリティサービスを提供する会社に変革してゆく」

2018.01  同、「e-Palette Concept」を発表

2018.01  EV CASにスバル、スズキ、DH、日野が参加、(10月にいすゞヤマハ参加)

2018.02  中国「ホワイトリスト」中止の意向、'20年より中国製Batt.縛りを無くす。

2018.10  トヨタZEVファクトリーを発足させる。EV事業企画室を吸収。

2018.xx  中国要人、トヨタを訪問。HV特許に関して何らかの要請したのでは?

2019.04  トヨタハイブリッド技術の特許の無償公開を発表

2019.06  トヨタ'30年電動車550万台(ZEV100万台)販売を5年前倒し、電池開発と調達

       超小型EV'20年に発売、20年代前半に10車種以上EVを発売する、
       e-TNGAでスバルとEVの共同企画するなどと発表

2019.06  中国NEV規制修正、HV車を優遇する燃費規制へ(全体の25%HV'30年)

2019.07  トヨタCATLBatt.調達の包括的提携を締結BYDとはEVの共同開発も。

2019.08  トヨタスズキ4.9%出資し資本提携すると発表

2019.09  トヨタスバルに追加出資20%とすることを発表。

2019.09  中国、HV優遇策の縮小を検討

2019.10.23~11.4  東京モーターショーTMS

2019.12  中国、NEV比率アップを検討。'20年・20%→25%

 

 

こうしてみると、この年表から大きな二つの潮流を読み取ることが出来る。

 

一つ目は中国のNEV規制に関するもの、

二つ目はトヨタZEV開発に関するものだ。

 

トヨタ

 

EV C.A.Spirit Co.トヨタZEVファクトリーの2本立てで、

EVFCVなどのZEVを開発・販売してゆく様だ。

(続く)

世界自動車大戦争(85)

さてもう一つのトヨタEVは、「e-Palette」(イーパレット)である。

 

トヨタは、2018International CES 2018.1.9~12)に先立つ14日のトヨタブレスカンファランで、このクルマを発表している、しかも豊田章男社長自ら。

これは、トヨタが相当力を入れているプロジェクト、と見た。

 

そこで、豊田章男社長は「トヨタクルマを売る会社から、モビリティサービスを提供する会社に変革してゆく」と、高らかに宣言したのだ。

 

「・・・・・

トヨタはもともと自動車ではなく自動織機の発明により創業した会社であることを知らない方もいらっしゃるかもしれません。
私の祖父である豊田喜一郎は、当時多くの人が不可能だと考えていた、織機を作ることから自動車を作ることを決意しました。

私は豊田家出身の3代目社長ですが、世間では、3代目は苦労を知らない、3代目が会社をつぶすと言われています。

そうならないようにしたいと思っています。

私はトヨタを、クルマ会社を超え、人々の様々な移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革することを決意しました。私たちができること、その可能性は無限だと考えています。

私は、お客様がどこにいようとも、新たな感動を提供し、お客様との接点を増やす新たな方法を作り出す、と決心しました。
・・・・・

 

 

そしてこの「e-Palette」を使って、新たな「移動を提供」するモビリティーサービスの基盤となるプラットフォーム(Mobility Service PlatformMSPF)の構築に邁進してゆくことを、仲間を集めて推進してゆくと表明したのである。

 

これがトヨタ100年に一度の大変革に対するある種の回答であろう。

 

 

仲間とは、次の人達である。

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右から 

 

TOYOTA 豊田章男社長

UBER ジェフ・ミラー自動車提携責任者

Pizza Hut US アーティー・スターズ社長

Didi Chuxing ジェシー・ヨウ バイスプレジデント

Amazon ティム・コリンズ バイス゛レジデント

TOYOTA       友山茂樹副社長

TCNA ザック・ヒックスCEO TOYOTA Connected North America,Inc. 2016/4

TRI ギル・プラットCEO TOYOTA Reserch Institute,Inc. 2016/1 背が高い

 

なおこの仲間には、MAZDA も入っているが、ここには登壇していない。

 

 

e-Palette」は次の図を参照願うが、詳しくは

トヨタ自動車、多目的電動モビリティのイーパレットコンセプトをCESで発表

201819 carguytimes

https://motorcars.jp/toyota-announces-e-pallet-concept-of-multipurpose-electric-mobility-at-ces20180109

 

を参照願う。上下の写真はこれより借用した。

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トヨタ、モビリティサービス専用EVe-パレット』をCES 2018で発表

201819(火) 1215

 

e-パレットをCES 2018で発表する豊田章男社長。
e-Palette1261640

  • e-パレットをCES 2018で発表する豊田章男社長。

  • e-パレット コンセプト

 

 

   トヨタ自動車は、19日から112日まで米国ラスベガスで開催される世界最大の家電見本市「CES 2018」にて、モビリティサービス(MaaS専用次世代電気自動車(EVe-パレット コンセプト」を初公開した。

e-
パレット コンセプトは、トヨタが有する電動化、コネクティッド、自動運転技術を活用したMaaS専用次世代EV。低床・箱型のバリアフリーデザインで、車両サイズは全幅全高2.25メートル、全長は荷室ユニット数に応じて47メートルの3種類を用意する。フラットかつ広大な空間には、ライドシェアリング仕様、ホテル仕様、リテールショップ仕様など、用途に応じた設備が搭載可能。移動や物流、物販など、さまざまなサービスに対応し、人々の暮らしを支える「新たなモビリティ」となる。また将来は、複数のサービス事業者によるシェアリングや、複数のサイズバリエーションをもつ車両による効率的かつ一貫した輸送システムなど、サービスの最適化を目指す。

トヨタでは、自動運転キットの開発に必要な車両状態や車両制御インターフェースなどをモビリティサービスプラットフォーム(MSPF)上に公開。自動運転キット開発会社は、開発した自動運転制御ソフトウェアやカメラ・センサーをルーフトップなどに搭載できる。また、車両制御インターフェースはサイバーセキュリティ対策に加え、自動運転キットからの車両制御指令コマンドの安全性を確認するガーディアン機能を装備。さらに、MSPF上に整備されたOTA環境により、自動運転キット上のソフトウェアを常に最新の状態に更新できる。

すでにトヨタでは、より実用性の高い車両仕様の検討や、新モビリティサービスを実現するMSPFの構築を推進するため、初期パートナーとして、AmazonDidi Chuxing滴滴出行)、ピザハット、ウーバー、マツダと提携。提携各社はサービスの企画段階から参画し、実験車両による実証事業をともに進めていく予定だ。今後は、2020年代前半には米国など各地域でのサービス実証を目指すとともに、2020年には一部機能を搭載した車両を東京オリンピックパラリンピックのモビリティとして提供することも計画している。 《纐纈敏也@DAYS

 

https://response.jp/article/2018/01/09/304454.html

(続く)

世界自動車大戦争(84)

思わぬ方向とは、素人の我々が感じているだけかもしれない。クルマの玄人であれば、さもありなんと頷いているのではないのかな。

 

バッテリーにとてつもない革新がない限り、ある意味、当然の帰結なのではないのかな。

 

当座は大型のSUVのような電気自動車は、流行らない。流行るとしたら超小型EVであると言う事か。中・大型のSUV(とは限らないが)などの車両はEVではなくて、HVPHVが最適なのである、とは先にも藤村先生が指摘していることである。場合によってはFCVもあり得る。

 

先に(3/2)、「中国側からトヨタHVシステムを格安で使わせてほしいと要請があったからの無償公開なのであろう。だから中国はHV優遇に舵を切ったとみえる。」と記述しておいたが、そのもととなったニュースを次にお伝えしよう。

 

 

中国「HEV外し」を急転換、VWに試練 トヨタに追い風か

トヨタのエンジン技術者・愛工大客員教授の藤村俊夫氏に聞いた

近岡 裕 日経 xTECH 2019.07.18

 中国がハイブリッド車HEV)に対する優遇策の検討を開始した。自動車行政を担う工業情報化省が政策草案(修正案)を公表。HEVを事実上の「低燃費車」と位置付け、ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車(以下、エンジン車)よりも優遇すると見られる。「HEV外しで、電気自動車(EV)推し」とメディアで報じられてきた中国が一転、「HEV推し」に方針転換。これが自動車メーカーにどのような影響をもたらすのか。元トヨタのエンジン技術者で愛工大客員教授の藤村俊夫氏に聞いた。

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 藤村 俊夫氏

愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任(写真:都築雅人)

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藤村俊夫氏 s5nk

 中国は、2019年からNEVNew Energy Vehicle;新エネルギー車)を導入した。一定の比率でNEVEVプラグインHEVPHEV)〕の生産を義務付けるものだ。修正案では、HEV100万台生産する場合に2万台のEVの生産が必要だった現行の規制を緩め、約6000台のEVの生産で済むようになる。一方、ガソリンエンジン車の場合は100万台の生産に対して2万台のEVの生産が必要な現行の規制から、約29000台のEVの生産が必要になる──と、2019713日付の日本経済新聞が報じている*。

 

100万台のHEVに対し、2万台のEV(現行)⇒約6000台のEV(修正案)

100万台のガソリン車に対し、2万台のEV(現行)⇒約29000台のEV(修正案)

 HEVに対する規制が緩和される一方で、ガソリンエンジン車に対する規制はより厳しくなる。この修正案が通れば、実質的にHEVの優遇策となる。

* 2019713日付日本経済新聞朝刊「中国ハイブリッド車優遇 環境車規制を転換へ」

 現行のNEV規制では、米国カリフォルニア州ZEVZero Emission Vehicle;無公害車)規制と同様に、HEVがクレジット対象に入っていない。いわゆる「HEV外し」と呼ばれるものだ。ZEV2018年以降にHEVをクレジット対象から除外した。だが、それ以前はHEVはクレジット対象に入っていた。中国の修正案は、かつてのZEV規制のような感じだろう。

 現行のNEV規制がHEVを除外していることもあって、多くのメディアがこれまで「中国はEV推し」と報じてきた。実際にはHEVがなければ、企業平均燃費(CAFC)規制をクリアできないというのが中国の本音だったのだが、HEVでは日本の競争力が高すぎて中国は歯が立たない。しかし、EVなら世界で戦えるかもしれない。自国の産業の振興と都市部の大気汚染対策のためにEVを推そうと中国は考えていたのだろう。

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トヨタのハイブリッドシステムのパワーコントロールユニット(PCU

(写真:日経 xTECH  [画像のクリックで拡大表示]

中国側とトヨタが交渉か

 ところが、現実を見ると、助成金まで投入したにもかかわらずEVの販売は思ったほど伸びない。EVの技術も期待したほど高まらない。充電インフラの整備も思ったほど進まない。一方で、CAFC規制は満たさなければならない。中国は、2030年に省エネルギー車〔燃料代替エンジン車(天然ガス車など)とHEV〕の販売台数シェア(市場占有率)を50%とし、そのうちHEV25%以上に引き上げる計画を立てている。しかし、HEVの技術は持っていないし、日本企業の特許も回避できないため、自力ではHEVを造れない。こうした状況に、中国の自動車メーカーは困り果てていたはずだ。

 こうした中で昨年(2018年)、中国政府の要人がトヨタ自動車(以下、トヨタ)を訪れている。これは私の推測だが、その際に中国の要人とトヨタHEVに関して交渉したのではないか。つまり、中国の自動車メーカーにHEVを造らせてほしい、ハイブリッドシステムを販売してほしいと中国側がトヨタに要請したのではないか。この要請を受け、トヨタはハイブリッドシステムのコストが量産効果で下がり、HEVを拡販できると考え、20194月に発表したハイブリッド技術の特許の無償開放に踏み切ったのだろう。

 これがトヨタが同年6月に発表した、電動化戦略の目標の5年前倒しにつながっていると私は見ている。トヨタが特許の無償解放や電動化の加速といった思い切った手に出た背景には、こうした中国側との交渉があったのではないか。逆に、中国がHEVの優遇へと舵を切るのは、トヨタからHEVの特許やシステムに関して協力を得られたからだと考えると辻褄(つじつま)が合う。

関連記事:EVは「見せ球」にすぎない トヨタの電動化戦略、5年前倒しのワケ

(略)

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/02575/?i_cid=nbpnxt_reco_atype

 

 

 

中国では、低速小型EVLow Speed EV、以下LSEV)が、急速に普及していると言う。HVと共に、これがEVの主流になると、藤村先生は読んでいる。

 

LSEVと記述されていたので、レクサスのLSEVかと一瞬思ったが、トヨタの考え方からして何か秘策があるのかとびっくりしたが、さにあらん。LSEVとは、Low Speed EV低速小型EVなのである。トヨタは軽自動車よりも小さい超小型EVを今年には発売すると言っているが、この件については、当ブログの2019.11.29NO.19を参照願う

 

ちなみに、レクサスのLSの環境車はEVではない。それはFCV燃料電池である。トヨタは既に2015年に高級車のFCVLEXUS LF-FCを発表している。



(続く) 

世界自動車大戦争(83)

その答えが、小生は、「超小型EV」と「e-Palette」ではないかと推測している。

 

ニュース解説 2019/07/01 05:00

LSEV」こそEVの本命、トヨタの電動化戦略の“裏”を読む

私はこう見る、元トヨタのエンジン技術者・愛工大客員教授の藤村俊夫氏(後編)

近岡 裕=日経 xTECH
 
 201967にトヨタ自動車(以下、トヨタ)は「EVの普及を目指して」と題した電動化戦略を発表。「電動車を世界で550万台以上販売し、そのうち電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)を100万台以上とする」という目標達成の時期を、2030年から2025年に早めた。元トヨタのエンジン技術者で愛知工業大学客員教授の藤村俊夫氏は、この主因をハイブリッド車HEV)の拡販と見る。そして、トヨタのEV開発について見るべきは、超小型EVへの参入だと語る。
 

関連記事:EVは「見せ球」にすぎない トヨタの電動化戦略、5年前倒しのワケ

前編において、トヨタの電動化戦略に関する計画の5年前倒しを支える主因はHEVであり、同社はEVには思ったほど力を入れていないという見立てを聞いた。世間が騒ぐほどEVは売れないということか。 

f:id:altairposeidon:20200302120241j:plain藤村 俊夫氏

愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任(写真:都築雅人)

 

藤村氏ガソリンエンジン車の代替である現行のEVについては、そうだ。世界の主要都市における深刻な大気汚染対策の一環で売れることはあっても、都市部以外に広くEVが売れることはないだろう。

 

 特に大型のEVに関しては「市場投入しても仕方がない」というのがトヨタの本音のはずだ。大型車に向くのはFCVの方だと同社は考えている。だからこそ、例えばFCVのショーファーカー(高級車)「LEXUS LF-FC」を開発したのだ。FCVの燃料と燃料タンクを合わせた質量は、ガソリンタンクのそれと大差ない。これに対し、現行の大型EVはいわば「電池輸送車」だ。仮に、車両重量(質量)をガソリンエンジン車と等しくするには、現行の電池のエネルギー密度(180Whkg)を20倍以上に高める必要がある。全固体電池が実用化されても、エネルギー密度は3倍の500Wh/kg程度にとどまる。依然として、現行のガソリンエンジン車との乖離(かいり)は大きい。

 技術的な合理性を踏まえると、大型SUV(多目的スポーツ車)のEVの「現実解」は、HEVでありPHEVである。このことは前編でも述べた通りだ。

 

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高級車のFCVLEXUS LF-FC
次世代のフラッグシップカーをイメージしたコンセプトカー。トヨタ2015年の東京モーターショーで公開した。(出所:トヨタ
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驚くべきは、超小型EVの開発

では、今回の発表は見どころなしということか。

藤村氏:そうではない。今回の発表には驚くべき点がある。それは、トヨタ超小型EV(マイクロEV)の開発を宣言したことだ。全長約2500×全幅約1300×全高約1500mm2人乗りの、軽自動車よりも小さなクルマだ。最高速度は60km/hで、満充電した際の航続距離(1充電航続距離)は100km。通勤や買い物などの日常の近距離移動向けのクルマである。注目すべきEVは、この超小型EVの方だ。

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トヨタが開発に本腰を入れ始めた超小型EV
2020
年に発売すると発表。2人乗りで最高時速は60km/h1充電航続距離は約100km。左端の車両の外観デザインが発売予定に近いもの。左から2番目の黒色の車両はビジネス向けコンセプトモデル。(写真:日経 xTECH
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 というのも、中国で今、低速小型EVLow Speed EV、以下LSEV)が急速に普及しているからだ。中国では2018年にEV78.8万台売れたが、実はその半数をLSEV(登録車)が占めている。それ以外に実は、違法なLSEV(非登録車)が登録車の台数以上あるとも言われている。

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中国市場の新エネルギー車(NEVEVPHEV)の販売台数の推移
2018
年のEVの販売台数は78.8万台だが、このうちの半数をLSEVが占めている。(作成:藤村氏)
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 LSEV2人乗りで、容量が5kWh程度の交換式電池を使う。最高速度は60km/h以下で、1充電航続距離は50100km程度だ。スペックに多少の違いはあったとしても、超小型EVLSEVと本質的に同じだと考えてよい。トヨタEVとして力を入れたいのは、この超小型EVのはずだ。中国でLSEVの販売が急増していることを、トヨタが知らないわけがない。間違いなく、中国市場にも超小型EVを投入すると私は見ている。事実、米ゼネラル・モーターズGM)や独ダイムラー中国企業と組むなどして超小型EVの開発を進めている。

 LSEVシェアリングビジネスにも有効であり、新興国に限らず先進国でも潜在的な需要がある。つまり、MaaSMobility as a Serviceへの活用も含めて重要な位置付けになる可能性があるのだ。だからこそ「EVの本命はLSEV」と、かねて私は主張してきた。今回トヨタが超小型EVのビジネス向けコンセプトモデルまで発表したのを見て、「やはり、そうか」と合点がいった。

関連記事:パリ協定のCO2削減目標は満たせる、その技術的シナリオ(後編)

 技術的な評価を踏まえると、EVLSEVという市場に活路を見いだすことが理にかなっている。今回トヨタは日本市場に投入すると言っているが、中国をはじめ世界各国に展開できるはずだ。

 ただし、今回トヨタが発表した超小型EVは、中国市場で販売するには“高級”過ぎる。もっとシンプルで安価なLSEVにしなければ中国では受け入れられないだろう。中国市場で販売する場合は現地ニーズに合ったLSEVにすべきである。

LSEVは今後、どれくらい売れると見るか。

藤村氏2030年において、EVの世界販売台数は545万台で、中国市場に限ると342万台になると私は予測している。そして、中国市場で売れるEVのうちの8、すなわち274万台2030年に中国市場で売れるLSEVだと私は見込んでいる。

 なお、先述の通り、電池は交換式が普及するだろう。交換式であればユーザーは充電時間を気にする必要がないし、電池の技術的な進化を取り込めるからだ。当然、トヨタも交換式電池の利点については頭にあるはずだ。

電池の囲い込み大作戦へ

この5年前倒しの計画はトヨタの狙い通り達成可能か。

藤村氏課題は電池だ。達成できるか否かは、電池をいかに調達できるかにかかっている。これまでトヨタと一緒に電池を開発してきたパナソニックプライムアースEVエナジーに加えて、東芝ジーエス・ユアサコーポレーションGSユアサ)、豊田自動織機、さらには中国のCATLBYDまで広げてトヨタが協業するのはこのためだ。

 企業別平均燃費(米CAFÉ、中国CAFC)規制トヨタの特許無償公開によってHEVがより一層売れるようになり、米国カリフォルニア州ZEVZero Emission Vehicle;無公害車)規制と中国のNEVNew Energy Vehicle;新エネルギー車)規制への対応でPHEVの販売台数が増える。これらに加えて超小型EVLSEVも市場投入し、規模は小さいかもしれないが通常のEVも造るとなると、非常に大量の電池が必要になる。

関連記事:「次世代ハイブリッド完成の自信」か、トヨタの特許無償提供

 搭載する電池容量の目安は、HEV向けが1kWh程度、PHEV向けが10kWh程度、LSEV向けは5k10kWh程度だ。10kWhの場合には5kWhのリチウムイオン2次電池(HEV向けはニッケル水素が主流になると見る)を2個にして使うとしても、パナソニックとプライムアースEVエナジーの供給量だけではとても足りない。

PHEVプリウスPHV」の駆動用電池 PHEV用電池zu51.jpg
容量8.8kWh68.2kmEV走行ができる。(出所:トヨタ[画像のクリックで拡大表示]

 ただし、全固体電池をはじめ電池の共同開発をトヨタと行うのは、今後もパナソニックとプライムアースEVエナジーだけだろう。両社以外の電池メーカーとの協業は、あくまでも電池の調達量を確保するためだけの関係と見る。中国の電池メーカーと協業するのはもちろん、中国市場でHEVLSEVPHEVが売れるとトヨタが予測しているからだ。

 いずれにせよ、今回トヨタが打ち出した、電動化戦略に関する計画の5年前倒しの鍵を握るのは中国だ。HEVの拡販も、LSEVの普及も世界最大の市場である中国で大きく進むからである。

ただ、トヨタ自動車は小型車づくりが苦手だと聞く。コンパクトカーではなかなか利益を上げられないのが悩みだと副社長も言っていた。それなのに、LSEVのような小さなクルマを造れるのか。

藤村氏:その点については、ダイハツ工業スズキという、小さなクルマづくりが得意なメーカーとトヨタは組んでいる。自社で造りにくいということであれば、得意な会社に任せるという選択肢をトヨタは選ぶかもしれない。

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02482/?P=1

 

 

何だが世界自動車戦争の動向は、思わぬ方向へと進んでいるようだ。



(続く)

世界自動車大戦争(81)

と言うよりも、中国側からトヨタHVシステムを格安で使わせてほしい、と要請があったからの無償公開なのであろう。だから中国はHV優遇に舵を切ったとみえる。

 

 

 

中国、ハイブリッド車優遇に転換 トヨタなどに追い風
【イブニングスクープ】

2019/7/12 18:00
日本経済新聞 電子版

 【北京=多部田俊輔】中国政府はハイブリッド車(HV)を優遇する検討を始めた。ガソリン車と同等としてきたHVを「低燃費車」とみなし、普及支援に転じる。中国は今月、世界で最も厳しい基準とされる新たな排ガス規制を導入するなど大気汚染の解消自動車業界の構造改革を急ぐ。電気自動車(EV)の普及に限界があるなか、HVを含め環境対策を強化する。中国政府の方針転換はHVに強みを持つトヨタ自動車など日系メーカーの追い風となる。

 

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中国政府によるハイブリッド車(HV)などの低燃費車を優遇する方針は、トヨタ自動車などに追い風になる可能性がある(広東省広州市の販売店

イブニングスクープ

翌日の朝刊に掲載するホットな独自ニュースやコラムを平日の午後6時ごろに配信します。

 中国では2019に新エネルギー車を一定比率、生産することを義務付ける「NEV規制」が始まった。ガソリン車やディーゼル車などの製造販売台数を基準に、複雑なポイント制度で新エネ車の製造販売台数を算出する。自動車行政を担当する工業情報化省はこのほどその修正案を公表した。8月上旬までメーカーや専門家などの意見を聴取し、今年中の決定をめざす

 例えば、19年にガソリン車を100万台製造販売するメーカーについては、10%の10万ポイント分の新エネ車の製造販売を義務付ける。今回の修正案ではポイント算出時に低燃費車については0.2の係数をかける。これまではHVを年間100万台製造販売する場合、EVなら2万台を製造販売しなくてはならなかった。修正案では6000台で済む。

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 修正案では、ポイント算出で優遇するのは低燃費車と記載されており、HVと明記していない。ただ、中国メディアは低燃費車は燃費が良い上位5%の車種になる見通しとし、HVを持つ自動車大手に有利に働くと報じている。トヨタホンダにとっては追い風で、中国市場でHVが一気に広がる可能性がある。

 今回の修正案ではこれまでのEV重視から、水素を燃料に使う燃料電池車(FCV)の普及を目指す内容にもなっている。同分野で相次いで中国企業と提携しているトヨタの後押しにつながるとの見方も多い。

 また、新エネ車を規則よりも多く製造販売した場合は一定の条件をクリアすれば、翌年に持ち越せる内容も盛り込む。19年は10%、20年に12と決めた新エネ車の製造販売の義務付け台数を決める基準も、2123年に2%ずつ増やすなど規制を強化していく方向だ。

 今回の修正案は、深刻な大気汚染の改善や石油資源の有効活用をするのに、中国政府が低燃費で環境負荷が小さいHVを評価したことが背景にある。習近平(シー・ジンピン)最高指導部は18年に「青空を守るための戦いに勝利する3年行動計画」を策定。大気汚染が深刻な都市などを対象に排ガス規制を強化する。

 18年の中国の新車販売台数は世界1位で、米国の1.6倍、日本の5倍に相当する。25年には3500万台前後を見込む。今回の修正案がそのまま実施されれば、世界最大の中国市場でのHVの普及が進む

 電動車の中でもHVを「現実解」とし当面の主力と位置付けるトヨタには追い風だ。「燃費規制強化などを背景にもともとHVへの潜在ニーズは大きい」(トヨタ幹部)。新エネ車規制での優遇対象になれば、他の中国メーカーもHV生産を増やす可能性が高まる。

 トヨタ2018、中国で前年比14%増の149万台弱を販売した。「カローラ」など販売の1割強をHVが占め、20年をめどにHV比率を3割超まで引き上げる計画だ。

 中国では地場メーカー中心に燃費規制への対応が急務だ。トヨタは4月にHVの特許無償開放を発表しており、HVシステムの外販も強化する方針だ。HVの関連技術の提供でも商機があるとみている。

 また、中国政府が優遇する見通しの燃料電池車(FCV)でも、トヨタ北京汽車集団などと部品供給などで相次ぎ提携。最大の自動車市場である中国での展開を加速する。

 世界の主要国も自動車の環境規制を強めており、新エネ車規制と並んで「CAFE」と呼ばれる燃費規制への対応が喫緊の課題だ。自動車メーカー別に燃費の平均値を規制する方式で米国や欧州、中国では導入済みで日本でも20年から適用される。

 基準が最も厳しいといわれる欧州では、1キロメートル走行当たりの二酸化炭素(CO2)排出量の目標値を15年に平均130グラムと定め、21年には平均95グラムと、15年に比べ3割近く減らすよう求めている。達成できなければ罰金が科せられる。



https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47294650S9A710C1MM8000/?n_cid=NMAIL006

 

 

 

トヨタの電動化戦略の要は、あくまでもHVなのである。5年前倒しもHVが売れると見たからであり、EVがそれだけ売れるから前倒ししたわけではない。

 

EVは「見せ球」に過ぎない、と言う論稿を先に紹介した。

 

トヨタは少なくとも、中・大型のSUVタイプの)EVはそれほど普及はしないのではないか、と危惧している筈だ。何と言っても、中・大型のSUVとなると、大量のバッテリーが必要となり、そうすると重くて高価な車両となってしまうし、航続距離も満足のいくものではない筈だ。

 

これでは好き者には少しは売れるであろうが、流行らない。供給者としては、採算に乗せるのに相当苦労する筈だ。と言うよりも、採算には乗らないことは確かだ。

 

と、トヨタは考えている筈だ。では「見せ球」のEVをどのように工夫して商業化してゆくのか、と言う問題に悪戦苦痛した筈だ。

 

その答えが、小生は、「超小型EV」と「e-Palette」ではないかと推測している。


(続く)

世界自動車大戦争(81)

EUCAFE規制によれば、企業単位で、車両平均重量毎にCO2の排出量平均値の基準がきめられている。それを達成できなければ、クレジットと呼ばれる罰金を支払わなければならないことになる。

 

欧州の排気ガス規制のEURO 7では、乗用車のCO2排出量の企業平均値を、2021年比2025年は15%減、2030年は37.5%減とすることを決めた。

 

1) 2020年 130g/km

2) 2021年~  95g/km  プリウス78g/km

3) 2025年~  81g/km?15%減)

4) 2030年~  59g/km?37.5%減) プリウスPHV28g/km

 

この数字はいわゆる車両重量による企業平均値であるので、小型車が沢山売れたり、また重いSUVが沢山売れたりして平均車両重量が変わってくれば、その目標値も変動することになっている。

 

CO2の排出量は、ガソリンなどの消費量に比例するので、これは、将に燃費競争なのである。トヨタが単独でもHV車でル・マン24時間レースに出場するのも、如何に燃費を良くするかの実験をしていると言う事なのでしょう。

 

と言ってもこの2030年の数字は、HV車でも到底達成できるものではないので、当然PHVFCVEVを強制的に導入せざるを得なくなるわけである。ある意味トヨタHV外しの目標値だとしても、間違いないでしょう。EUでは、ディーゼルでしくじってしまったので、今はトヨタのストロングHV車が売れまくっているようなので、ある意味、頭にきていると言う事で、敢えてHV外しの目標値を設定したと思ってもさしつかえなかろう。

 

 

欧州のCO2排出規制強化、対応迫られる日系各社

20181224

欧州の二酸化炭素(CO2)排出規制の強化が加速している。欧州連合(EU)加盟国と欧州議会は17日、乗用車のCO2排出量の企業平均目標を2030年までに1キロメートル当たり60グラム以下へと大幅に引き上げることで合意した。

ディーゼルエンジン(DE)車ハイブリッド車(HV)では達成が困難な厳しい目標値となる。これまでCO2規制で世界をリードしていた欧州だが、電気自動車(EV)などの普及を見据えてハードルを引き上げた格好だ。HVなどで規制対応に有利とされてきた日系メーカーだが、規制値の引き上げが現実となったことで、方針の見直しも迫られそうだ。

今回合意した新たな目標値は30年に21年目標である95グラム/キロメートルから37・5%削減するというもの。EU加盟国で構成する閣僚理事会と欧州議会での正式な承認手続きを経たのち実施する。
ただ、非常に厳しい目標値に対して欧州の自動車業界からは批判の声が相次いでいる。欧州自動車工業会(ACEA)は「技術的、社会・経済的な現実を考慮しない完全に政治的な動機に基づいた目標で、遺憾だ」と声明を発表した。独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長も「投資計画の見直しが必要」と述べた。加えてEVの販売比率を高める必要性を挙げるほか、雇用減退の懸念も指摘する。

日系メーカーも欧州戦略の見直しが迫られそうだ。トヨタ自動車やスバル、スズキなどは欧州でのDE車に対する批判を受けて、DEの設定廃止を表明している。同時にトヨタやホンダはHVのラインアップを強化する方針を打ち出している。その結果、トヨタの欧州の乗用車販売におけるHV比率は17年に41%まで高まった。さらに20年には50%への引き上げも計画する。
ただ、CO2排出量で強みを持つトヨタプリウス」でも78グラム/キロメートルと、新たな目標値には届かないのが実情だ。このためさらなるCO2排出量の削減には、EVプラグインハイブリッド車PHV)の販売拡大が不可欠となる。
一方で厳しいのがマツダやスバル、スズキなどの中堅メーカーだ。特にマツダは世界販売のうち欧州は16%を占めるなど、北米、中国に次ぐ主力市場と位置付けている。独自技術の採用で商品力を高めたDEを武器としてきたものの、従来半数を占めていたDE比率は10%台まで低下している。これにより企業平均燃費が上昇し、現在ではCO2規制に対するペナルティーを支払う状況となっている。

目標値の引き上げにより今後欧州では中国などと同様に、EVやPHVの販売が本格化することが予測される。中でもPHVは欧州のCO2測定基準「ECE R101」において、EVモードの走行距離に応じてCO2を軽減して計算することができるなど、HVに比べて大幅に有利な数値を得ることができる。例えばトヨタプリウス プラグイン」(日本名プリウスPHV)ではCO2排出量を28グラム/キロメートルまで低減できる。

日刊自動車新聞1220日掲載
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/6880/

 

中国では、少しはHV車が目の敵にされなくなるような雰囲気があるが、ヨーロッパでもアメリカでもHV外しに(深く静かに)躍起となっているようだ。環境車は沢山売れなくては対策とはならない訳で、現実的な環境対策車としては、トヨタHVを当座の真の環境対策車と考えているようで、バッテリー問題の解決や充電設備の完備がなければ、EVは現実的な環境対策車にはならない、としている。

 

しかし、このようにEVでなければ守れないような環境規制が法制化されてしまうので、トヨタとしてもEVにシャカリキにならざるを得ない、と言う訳だ。

 

 

アメリカでは、CAFECorporate Average Fuel Economy ・企業別平均燃費)基準の関する合意が200712月にまとまり、新エネルギー法が成立している。

 

この法案では、CAFE基準を、2020年までに35mile/galon14.9km/L)と決められている。

 

しかしオバマ政権は20104月には、2016年までに35.5mile/galon15.1km/L)に引き上げてしまったので、自動車メーカーは4年前倒しされてしまった目標に邁進したわけだ。

 

またカリフォルニア州ではこれとは別に、ZEV規制を設けていることはご承知のことと思う。

 

ZEV  TZEV  TOTAL         ZEV車 : EVFCV

20182%2.5% 4.5%         TZEV車 : PHVと水素燃料車

20194% 3.0% 7.0%         HV車はZEV関係車からは除外されている。

20206% 3.5% 9.5%

20218% 4.0% 12.5%

202210% 4.5% 14.5%

202312% 5.0% 17.5%

202414% 5.5% 19.5%

202516% 6.0% 22.0%

 

 

加州と同規制を適用する他の9州では、この比率で、ZEV関係車を販売しなければならない訳で、未達の場合には、当然のこととして罰金(クレジット)が科せられる。2025年にはEVFCVも含めて)を16%も売らなければならないのである。年間10万台売れたとすると、16千台もZEVEV)を売らなければならない、と言う事である。トヨタがバッテリー確保に動くわけだ。

 

 

 

まあトランプがどのように茶々を入れるかは知らないが、今のところは世界はどこもかしこも、EV一辺倒となっているので、トヨタとしてもHVに胡坐をかいて(いる訳でもないが)いるわけにはいかないのだ。EVに代わるFCVでもよいのだが、如何せん水素ステーションがまだどこにもある訳ではないので、EVに掛かりきりになる必要がある。

 

 

日本の燃費規制は、2015年・16.8km/L2020年には20.3km/Lだと言う。

 

これに対して、中国の燃費規制(CAFC)は、次のようになっている。

 

2018年 6.0L/100km16.6km/L

2019年 5.5L/100km18.2km/L

2020年 5.0L/100km20.0km/L

https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/15/170315i_nishino.pdf

 

と言う事で、企業平均燃費が、リッター20kmとなっている。だからどうしてもNEV車を所定台数だけ売らなければ、達成できそうにもない基準となっていると言う事だ。

 

 

中国はHVにやさしくなってきたと先に言及しておいたが、中国共産党も自国の大気汚染のひどさにほとほと閉口してきたのではないのかな。電気自動車で自動車強国になろうとしたわけだが、思い通りにはならずに、北京の大気汚染は一向に改善の兆しもないので、現実解に戻ったと言う事である。

 

いわゆる環境対策車とは、普及してなんぼなのである。いくら排ガスを出さないEV補助金を出しても、普及しなければ元も子もないのである。相変わらず大気汚染対策は進まず、温暖化対策にもならないのである、と言う事に気付いたと言う事である。いくら中国共産党が笛や太鼓で踊らせても、高価な電気自動車はそんなに普及はしなかったと言う事なのである。それよりもそれほど高価ではない環境対策車であるHV車が普及すれば、相当な大気汚染対策となるのである、と言う事にようやく気付いたと言う事ではないのかな、トヨタハイブリッド技術の特許の無償公開を受けてHV車を推薦しだした様だ。


(続く)