思わぬ方向とは、素人の我々が感じているだけかもしれない。クルマの玄人であれば、さもありなんと頷いているのではないのかな。
バッテリーにとてつもない革新がない限り、ある意味、当然の帰結なのではないのかな。
当座は大型のSUVのような電気自動車は、流行らない。流行るとしたら超小型EVであると言う事か。中・大型のSUV(とは限らないが)などの車両はEVではなくて、HVかPHVが最適なのである、とは先にも藤村先生が指摘していることである。場合によってはFCVもあり得る。
先に(3/2)、「中国側からトヨタにHVシステムを格安で使わせてほしい、と要請があったからの無償公開なのであろう。だから中国はHV優遇に舵を切ったとみえる。」と記述しておいたが、そのもととなったニュースを次にお伝えしよう。
中国「HEV外し」を急転換、VWに試練 トヨタに追い風か
元トヨタのエンジン技術者・愛工大客員教授の藤村俊夫氏に聞いた
近岡 裕 日経 xTECH 2019.07.18中国がハイブリッド車(HEV)に対する優遇策の検討を開始した。自動車行政を担う工業情報化省が政策草案(修正案)を公表。HEVを事実上の「低燃費車」と位置付け、ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車(以下、エンジン車)よりも優遇すると見られる。「HEV外しで、電気自動車(EV)推し」とメディアで報じられてきた中国が一転、「HEV推し」に方針転換。これが自動車メーカーにどのような影響をもたらすのか。元トヨタのエンジン技術者で愛工大客員教授の藤村俊夫氏に聞いた。
藤村 俊夫氏
愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車、PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任(写真:都築雅人)
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藤村俊夫氏 s5nk
中国は、2019年からNEV(New Energy Vehicle;新エネルギー車)を導入した。一定の比率でNEV〔EVとプラグインHEV(PHEV)〕の生産を義務付けるものだ。修正案では、HEVを100万台生産する場合に2万台のEVの生産が必要だった現行の規制を緩め、約6000台のEVの生産で済むようになる。一方、ガソリンエンジン車の場合は100万台の生産に対して2万台のEVの生産が必要な現行の規制から、約2万9000台のEVの生産が必要になる──と、2019年7月13日付の日本経済新聞が報じている*。
100万台のHEVに対し、2万台のEV(現行)⇒約6000台のEV(修正案)
100万台のガソリン車に対し、2万台のEV(現行)⇒約2万9000台のEV(修正案)
HEVに対する規制が緩和される一方で、ガソリンエンジン車に対する規制はより厳しくなる。この修正案が通れば、実質的にHEVの優遇策となる。
* 2019年7月13日付日本経済新聞朝刊「中国ハイブリッド車優遇 環境車規制を転換へ」
現行のNEV規制では、米国カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle;無公害車)規制と同様に、HEVがクレジット対象に入っていない。いわゆる「HEV外し」と呼ばれるものだ。ZEVは2018年以降にHEVをクレジット対象から除外した。だが、それ以前はHEVはクレジット対象に入っていた。中国の修正案は、かつてのZEV規制のような感じだろう。
現行のNEV規制がHEVを除外していることもあって、多くのメディアがこれまで「中国はEV推し」と報じてきた。実際にはHEVがなければ、企業平均燃費(CAFC)規制をクリアできないというのが中国の本音だったのだが、HEVでは日本の競争力が高すぎて中国は歯が立たない。しかし、EVなら世界で戦えるかもしれない。自国の産業の振興と都市部の大気汚染対策のためにEVを推そうと中国は考えていたのだろう。
トヨタのハイブリッドシステムのパワーコントロールユニット(PCU)
(写真:日経 xTECH) [画像のクリックで拡大表示]
中国側とトヨタが交渉か
ところが、現実を見ると、助成金まで投入したにもかかわらずEVの販売は思ったほど伸びない。EVの技術も期待したほど高まらない。充電インフラの整備も思ったほど進まない。一方で、CAFC規制は満たさなければならない。中国は、2030年に省エネルギー車〔燃料代替エンジン車(天然ガス車など)とHEV〕の販売台数シェア(市場占有率)を50%とし、そのうちHEVを25%以上に引き上げる計画を立てている。しかし、HEVの技術は持っていないし、日本企業の特許も回避できないため、自力ではHEVを造れない。こうした状況に、中国の自動車メーカーは困り果てていたはずだ。
こうした中で昨年(2018年)、中国政府の要人がトヨタ自動車(以下、トヨタ)を訪れている。これは私の推測だが、その際に中国の要人とトヨタはHEVに関して交渉したのではないか。つまり、中国の自動車メーカーにHEVを造らせてほしい、ハイブリッドシステムを販売してほしいと中国側がトヨタに要請したのではないか。この要請を受け、トヨタはハイブリッドシステムのコストが量産効果で下がり、HEVを拡販できると考え、2019年4月に発表したハイブリッド技術の特許の無償開放に踏み切ったのだろう。
これがトヨタが同年6月に発表した、電動化戦略の目標の5年前倒しにつながっていると私は見ている。トヨタが特許の無償解放や電動化の加速といった思い切った手に出た背景には、こうした中国側との交渉があったのではないか。逆に、中国がHEVの優遇へと舵を切るのは、トヨタからHEVの特許やシステムに関して協力を得られたからだと考えると辻褄(つじつま)が合う。
関連記事:EVは「見せ球」にすぎない トヨタの電動化戦略、5年前倒しのワケ
(略)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/02575/?i_cid=nbpnxt_reco_atype
中国では、低速小型EV(Low Speed EV、以下LSEV)が、急速に普及していると言う。HVと共に、これがEVの主流になると、藤村先生は読んでいる。
LSEVと記述されていたので、レクサスのLSのEVかと一瞬思ったが、トヨタの考え方からして何か秘策があるのかとびっくりしたが、さにあらん。LSEVとは、Low Speed EV、低速小型EVなのである。トヨタは軽自動車よりも小さい超小型EVを今年には発売すると言っているが、この件については、当ブログの2019.11.29のNO.19~を参照願う。
ちなみに、レクサスのLSの環境車はEVではない。それはFCV・燃料電池車である。トヨタは既に2015年に高級車のFCV「LEXUS LF-FC」を発表している。
(続く)