世界自動車大戦争(96)

以上見てきたように、HV車はEVと比べても、決して環境負荷では劣ってはいない訳で、トヨタとしては是非ともHV外し」を止めさせたい狙いが強いのではないのかな。

 

だから、VW300万台に対してトヨタ50万台のEVでも、HVがあれば決して環境負荷に対しては劣ってはいない、とトヨタとしては自慢できるわけだ。

 

それで、ハイブリッド技術の無償提供での世界的普及が、トヨタの狙いなのではないのかな。そしてHV外し」を止めさせるためにも

 

昨年の4月の論考ではあるが、藤村俊夫氏のご意見を伺おう。

 

 

 

「次世代ハイブリッド完成の自信」か、トヨタの特許無償提供

私はこう見る、元トヨタのエンジン技術者・愛知工業大学客員教授の藤村俊夫氏

近岡 裕 日経 xTECH  2019.04.04

 

[画像のクリックで拡大表示]

藤村俊夫氏

愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任


 201943トヨタ自動車(以下、トヨタ)はモーターとPCU(パワー・コントロール・ユニット)、システム制御などの車両電動化関連技術の特許を無償提供すると発表した。トヨタが単独で保有する23740件の特許の実施権を2030年末まで無償で提供する。言うまでもなく、ハイブリッド車HEV)はトヨタの競争力の源泉。その価値の高いハイブリッド技術の特許をなぜ無償で公開したのか。その狙いを識者に聞いた。

f:id:altairposeidon:20200319235554j:plain

藤村俊夫氏

愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)、 元トヨタ自動車PwC Japan自動車セクター顧問をはじめ数社の顧問を兼任

 

トヨタによる特許の無償公開をどう見るか。

藤村氏トヨタらしいと言える。かねてトヨタは、「環境車は普及させて初めて意味がある(環境負荷軽減に貢献したと言える)」という考えの下、ハイブリッド車HEV)を環境車の「現実解」と主張してきた。特許を囲い込めば、現実解であるHEVの普及が遅れる。そこで、特許を無償提供することでHEVの普及を加速させるという考えなのだろう。目先の利益を追わず、環境負荷軽減お客様志向を優先させたということだ。

 欧州の自動車メーカーはHEVを造れずにもがいている。このままでは欧州の2021年規制をクリアすること、すなわち二酸化炭素CO2)排出量95g/kmに抑えることは難しい。

 「クリーンディーゼル」と銘打ってディーゼルエンジン車を推す構想は、2015年に発覚した「ディーゼルゲート」、すなわち独フォルクスワーゲンVolkswagenVW)によるディーゼル車の排出ガス不正問題でつまづいた。そこでHEVプラグインHEVを造りたいが、トヨタによるがんじがらめの特許で造れない。仕方がないので電気自動車(EV)を前面に打ち出したが、思ったほど売れない。そこで、2017年から48Vマイルドハイブリッド車48V電源部品を使った簡易ハイブリッドシステム(48Vマイルドハイブリッドシステム)搭載車〕の開発に力を入れ始めたが、それだけでは同規制の達成は難しいという現実に直面している。達成できなければ、欧州の自動車メーカーは巨額の罰金を払わなければならない。

 こうした状況でハイブリッド技術の特許を無償提供すれば、HEVの世界的な普及を後押しすることができるとトヨタは踏んだのだろう。

 

f:id:altairposeidon:20200319235711j:plain
[画像のクリックで拡大表示] TNGAに対応したHEVプリウス 4代目のもの。(写真:日経 xTECH

トヨタとしては特許を囲い込み続けた方が、参入障壁を築けてビジネス的にうまみがあるのではないか。

藤村氏:世界の排出ガス規制において、いわゆるHEV外し」をやめさせる狙いもあると思う。米国カリフォルニア州ZEVZero Emission Vehicle;無公害車)規制も中国のNEVNew Energy Vehicle;新エネルギー車)規制も、HEVをクレジット対象車(環境対応車)から外した。これは、自国の産業を守るための政治的な判断が背景にあると見られる。というのは、実質的に日本の自動車メーカーしかHEVを造れないからだ。両国の立場から見ると、HEVを入れると他国の産業を優位にしてしまうことになる。

 特許の無償提供で米国や中国の自動車メーカーもHEVを造れるようになれば、規制からHEVを排除する必要はなくなる。こうして、環境負荷軽減に対して技術的に正しいHEVをクレジット対象に戻すという狙いトヨタにはあるだろう。

 

(略)

 

 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/01910/

 

 

 

だからトヨタは、凝りもせずに、ル・マン24時間レースにカーメーカーとしてはトヨタ一社しかエントリーしていなくても毎年TS050 HYBRIDで、参加しているのでしょう。如何に燃費を改善してゆくか、を実走経験を体験させて改善に改善を積み重ねている、と言う訳なのだ。

 

WEC 2020-2021年シーズン新カテゴリーの「Hypercarsハイパーカーズ)」となるようで、トヨタGRスーパースポーツコンセプトをベースとした「ハイブリッド・プロトタイプ車両」で、参戦することを決めている。LMP1-HでのTS050 HYBRIDは、2020/6/13~14で見納めとなる。

 

 

ル・マン24時間 2019中嶋一貴組のトヨタ8号車がル・マン24時間レースを2連覇

23時間レースをリードしたトヨタ7号車はタイヤトラブルで2位に

  • 笠原一輝

  • Photo:中野英幸

  • Satoshi NOMA/IMC

201961622:02



201961515時~1615時(現地時間)

201961522時~1622時(日本時間)


ル・マン24時間レースを優勝した8号車 Toyota TS050 HYBRIDセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組、MI

 

(略)

 

残り約1時間、タイヤのスローパンクチャーで優勝を逃し、2位となった7号車 Toyota TS050 HYBRID(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組、MI

 

(略)

 

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1190691.html

 

 

 

と言う話はさておき、トヨタEVにもシャカリキになってきている。問題は電池だ。PFe-TNGAで既に完成している。そこに搭載する電池は、LIBリチウムイオン電池も考えてはいるが、将来的には全個体電池も候補となっている筈だ。


(続く)