次世代エコカー・本命は?(29)

国産初、水素液化技術を川重が開発 

神戸新聞20141119日(水)12:15

国産初、水素液化技術を川重が開発 
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 燃料電池車など次世代のクリーンエネルギーとして注目される水素を液化する国産初のシステムを、川崎重工業神戸市中央区)が開発した。19日、同社播磨工場(兵庫県播磨町)にある実証プラントを報道関係者に公開した。液化すると水素ステーションなどへの大量輸送が可能で、本格運用に弾みが付きそうだ。

 川重は、石炭から水素を取り出し燃料電池車や発電所などで使う構想を6年前から進めている。液化は体積を小さくして運びやすくするための技術だが、水素がマイナス253度の低温になるのが難点。約4年かけて安全管理などの実験を重ねてきた。

 液化プラントは、高さ13メートル、直径4メートルの水素液化機を中心に、容量50立方メートルの原料タンクと、同70立方メートルの液化水素タンク2本などからなる。1日約5トンの液化水素を製造できる。

 川重は今後、豪州の石炭採掘地周辺などに試験プラントを設けたい考え。水素を運ぶ船やコンテナ、水素を燃料とするタービンなどの開発も進めており、「国産の液化技術で世界環境の未来に貢献したい」としている。(佐伯竜一)

http://news.goo.ne.jp/article/kobe/business/kobe-20141119004.html

 

ここに石炭から水素を取り出す事が述べられているが、これは石炭を高温ガスで熱分解させてガス化させ、そこへ水や酸素と反応させて最終的に水素と二酸化炭素を精製させる反応である。ここでもCO2が生成されている。結果として先に示したメタンの改質と同じ終着点となる。

 

と言った水素に関しては種々の図式が考えられるが、水素をベースとしたFCVは究極のエコカーの候補になりうると、先のローランド・ベルガー遠山プリンシパルの言及であったが、これとまったく反対の考えもある。即ち究極のエコカーバッテリー使用のEVであり、水素は製造に時間もコストも掛り、更には貯蔵も輸送も難しく安全性にも問題があると、散々だ。一寸長くなるがご一読願う。

 

水素社会の明暗
明の定置型、暗の燃料電池

20141216日(火)  村沢 義久

大阪で1.2MW燃料電池導入

 大阪府2014122日、大規模定置型燃料電池システムを導入し、大阪府中央卸売市場内に設置すると発表した。購入先は、ソフトバンクグループとアメリカBloom Energy社の合弁会社であるBloom Energy Japan(ブルーム・エナジー・ジャパン) <本稿201416日号参照>

 中央卸売市場は、野菜や果物、および水産物を扱うため、大量の電力を使う。現在の、関西電力との契約電力は4600kWである。それに対して、新たに導入する燃料電池システムの発電能力1200kW1.2MWBloom Energy Japanの「Bloomエナジーサーバー」(出力200kW6セットからなる。1MWを超える燃料電池は国内最大である。

 完成は2014年度内の予定で、導入後は20年間にわたり燃料電池を常時定格出力で動かし、その電力は卸売市場が全量購入する。そのため、関西電力との契約電力は1200kW減って3400kWになる。

 燃料電池システムや付帯設備および設置費用、燃料ガスの購入費用は全てBloom Energy Japanが負担する。従って、ユーザーである卸売市場は、初期コストゼロで燃料電池システムを設置でき、後は電力料金を支払うだけである。その料金は、発電量1kWh当たり25円に抑えるという。

 この方式により、この卸売市場全体の通常と非常用を合わせた総合的な負担は燃料電池システムの導入前後で変わらない予定。

非常用電源も兼ねる

 大阪府が、この卸売市場に燃料電池システムを導入することになったきっかけは、老朽化した非常用ディーゼル電源(900kW更新しようとしたことだ。

 今回の燃料電池システムの発電能力は1200kWなので、非常用電源としての能力を3割以上増加させることになる。ディーゼル発電は非常用のみだが、燃料電池システムは、常用にも使えるため、関西電力との契約電力を26%減らせるという追加のメリットが得られることになったのだ。

 この燃料電池システムは、都市ガス(主成分メタン)を使用現場で改質し、空気中の酸素と反応させて電力を生み出す仕組みだ。非常用電源は、系統電力が途切れた時にも機能しなければならないのだが、その時にガス管が損傷してしまったのでは役に立たない。この問題を克服するため、このシステムでは、中圧導管からガスの供給を受けることとした。

 都市ガスは、上流側から高圧(10気圧以上)で送り出され、整圧器で中圧(数気圧)に整圧されたのち、再度整圧器を通して圧力を落として低圧で一般家庭などに供給している。

 地震で被害を受けるのは主に末端の低圧導管。そのため、この燃料電池システムでは、地震に強い中圧導管から取り込む仕組みとしたのである。

汐留のソフトバンク本社に設置されたBloomエナジーサーバー(200kW)

出所:ソフトバンク 定置式FCp1

燃料電池車にアメリカから冷たい反応

 水素の活用には、定置型自動車向けがある。定置型の中でも、小型のものは、「エネファーム」の日本勢が先行しているが、大型で進んでいるのはBloom Energyなど海外勢だ。一方、燃料電池車(FCV)では、トヨタ、ホンダの日本勢がリードしている。

 トヨタは、FCVMIRAI(ミライ)」を1215日に国内で発売すると発表した。価格は7236000円(税込み)で、国からの補助金を活用すれば約520万円になる。ホンダも2015年度中にFCVを販売する予定と言う。

 筆者は、定置型燃料電池と比較して、FCVの先行きには悲観的な見方をしている。日本では、「究極のエコカー」と呼ぶ人もいるのだが、世界の見方はかなり違っている

 まずは、テスラ・モーターズイーロン・マスクCEO最高経営責任者)。マスク氏は、テスラの年次総会などで「燃料電池Fuel Cell)は馬鹿電池Fool Cell」と発言し、FCVの普及には否定的な見方をしている。

 マスク氏は、その理由として、水素燃料はつくるのに時間もコストもかかり、貯蔵、輸送が難しく、さらに安全性の問題があること、などを挙げている。

 フォーブス誌も辛辣で、今年(2014)417日に発表されたコラムで、水素燃料補給の困難さなどネガティブな面を指摘した上で、「トヨタFCVは)買うのがバカバカしいほどのものridiculous to buy)」と突き放している。

 筆者は、FCVについて、マスクCEOやフォーブズ誌のように、「Fool」や「Ridiculous」などと言う気はない。トヨタの技術は素晴らしいものだと思う。しかし、FCVが「究極のエコカー」の座を勝ち取れる可能性は極めて低いと考える。

(続く)