続続・次世代エコカー・本命は?(62)

まあ変動の激しい自然エネルギーの活用には、ちょっとした工夫が必要となる。それが水素の活用なのであろう。

 

 

風力発電による水素供給網の実証実験、トヨタなどが実施へ

2016/03/15 00:53

佐藤 雅哉

 トヨタ自動車2016314日、岩谷産業東芝、神奈川県や横浜市川崎市などと共同で、風力発電を活用した水素供給網の実証プロジェクトを発表した(図1トヨタ自動車のニュースリリース)。水素の製造から燃料電池フォークリフトによる水素利用といった一連の過程を通して、水素の製造コストやCO2排出量の削減効果を検証する(図2)。風力発電燃料電池フォークリフトを使用する場合は、ガソリンフォークリフトや系統電力を使う電動フォークリフトに比べて、CO2排出量を80%以上削減できる潜在能力があるという。

1 風力発電による水素供給網の構築を目指す(右から3人目がトヨタ自動車専務役員の友山茂樹氏)

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2 水素供給網の例   

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 今回のプロジェクトは、横浜市にある風力発電所「ハマウィング」の電力で水を電気分解し、水素を製造する(図3)。製造した水素を燃料電池フォークリフトへ供給して、横浜市川崎市にある青果市場や工場、倉庫などで稼働させる。2016年秋ごろから試験的に運用を始め、2017年度から本格運用を開始する。2030年ごろの実用化を想定して、普及モデルを検討するという。

3 横浜市風力発電所「ハマウィング」

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 トヨタ自動車専務役員の友山茂樹氏は「燃料電池車(FCV)普及の最大課題は水素のコスト。本実証を通して産業用途への利用促進に道筋が立てば、量産効果や効率化による低コスト化が図れる」と語る(図4)。「(ミライなどの)乗用FCVにも水素インフラとして応用できる。水素充填に関する規制が緩和されれば、充填機器をすぐにでも適用できる」という。

4 トヨタ自動車専務役員の友山茂樹氏

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 風力発電は、天候によって発電量が変動するため電力の供給が不安定である。そこで、風力発電による電力を蓄電池に充電し、それを利用することで電力供給を安定化させる取り組みがある。しかし、蓄電設備が大規模になる上、充電効率が低いことや自然放電によって多くのエネルギーを損失してしまうという課題があった。これに対して、発電した電力で水素を製造・貯蔵する技術は、エネルギーの損失が少なくて済む。従って、風力発電と水素の製造・貯蔵技術の組み合わせは、次世代の再生可能エネルギー技術として期待されている。

東芝の水素製造装置、岩谷の水素充填車を使用

 水素の製造には、東芝の水電解水素製造装置を使う(図5)。同システムは1時間に10Nm 3の水素を製造できる。製造した水素は、風力発電の電力を使って圧縮し、高圧ガスの状態で貯蔵する。風が吹かず、発電できない場合を考慮して、水素の貯蔵タンクには2日分の水素を貯蔵する。水素を継続的に圧縮できるように、容量150kWhの蓄電設備も設けている(図6)。

5 東芝の開発した水電解水素製造装置

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6 トヨタタービンアンドシステムの蓄電装置の部品

ハイブリッド車に搭載していた使用済み電池を再利用している。

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 水素の運搬には岩谷産業の簡易水素充填車を使う(図7)。燃料電池フォークリフト充填用の車両で、45MPaの高圧水素を270Nm3搭載する。液体水素を運搬する大型トレーラーと比べて、搭載できる水素量が少ない代わりに車両を小型化できる。1台の簡易水素充填車当たり、6台の燃料電池フォークリフトを満充填できる。燃料電池フォークリフト豊田自動織機で、水素充填圧力は35MPaである(図8)。

7 岩谷産業が開発した簡易水素充填車

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8 豊田自動織機燃料電池フォークリフト

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http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/031401076/?ST=tomene&P=1

 

 

このような活動により、トヨタは「工場CO2ゼロチャレンジ」の実現に努力している、と言うことか。

(続く)