中国武漢・新型コロナウィルス(42)

これは一国二制度が定めた香港の「高度な自治」を骨抜きにするものである。

 

一国二制度とは、1997年に香港が英国から中国に返還されるときに、香港では「返還から50年間は、資本主義など中国本土とは異なる経済・政治制度を維持することが約束され、外交と国防をのぞく「高度な自治」が認められる。」としたものである。だから、言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由などは、当然認められるものである。

 

2020年の現在では、まだ23年しか経過していない。まだあと27年間、即ち2047年までは、香港には「高度な自治」が認められなければならないのであるが、中国共産党政府は、このような国際法なんぞは、守らなくてもよいと言う認識なのである。あらゆることがそうである、信用ならざることである。

https://www.asahi.com/topics/word/一国二制度.html

 

 

 

中国、香港治安法の導入方針を採択 一国二制度が岐路に



北京=冨名腰隆、ワシントン=大島隆

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写真・図版香港の中心部で28日、武装した警察官の前を歩く女性=AP。この日、中国の全人代で国家安全法制の香港導入に関する決定が採択された

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香港で28日、街頭で警戒する警察官=ロイター

 

 中国の全国人民代表大会全人代、国会に相当)は28日、香港で反体制的な言動を取り締まる「国家安全法制の導入に関する決定を採択し、閉幕した。立法権を持つ全人代常務委員会が関連法案の制定作業に着手する。法律は早ければ8月にも可決し、施行される。「香港人が香港を統治する」との原則の下、維持されてきた「一国二制度」は岐路に立った。米国が強く反発しており、米中両大国の対立もさらなる緊張局面を迎えそうだ。

 「決定」は関連法の立法化に向けた基本方針で、賛成2878票、反対1票で採択された。棄権は6票、無効票が1票。閉幕後、会見した李克強(リーコーチアン)首相は「一国二制度を安定させ、香港の長期的繁栄を維持するものだ」と意義を強調した。

 香港の憲法にあたる香港基本法23条は、国家の分裂や政権転覆の動きを禁じる法律を「香港政府が自ら制定しなければならない」と定める。だが、2003年に50万人規模の反対デモが起きるなど、香港市民の度重なる反発により現在まで制定に至っていない。

 決定は、香港政府に「早期の立法化」を求める一方、中国も香港の治安維持に責任を有し、立法権限を持つ点を明確にした。23条を骨抜きにし直接統治に乗り出す手法とも取れるが、全人代常務委の王晨副委員長は「昨年の風波(騒動)で香港の発展が害され、国家安全の危機に直面した。憲法に合致する手続きで、一国二制度は揺るがない」と主張した。

 今後、全人代常務委が立法作業を進めるが、6月に審議が始まれば8月にも可決、成立する可能性がある。決定は法の制定後に香港政府が公布し即日施行する手続きを定めており、香港立法会(議会)による審議の機会はない。

 

https://www.asahi.com/articles/ASN5X6GYMN5XUHBI023.html?iref=pc_rellink_01

 

 

このことは、香港の「国際金融センター」としての地位を、失うと言う事である。香港がその地位を失うと言う事は、中国が国際社会から資金調達の道を失うと言う事であり、中国経済の凋落に繋がる可能性がある。

 

 

 

香港、自由な金融空間の喪失危機

2020.5.28 21:34 国際 中国・台湾

Hong Kong China バリケードが設置された香港の中国銀行=28日(AP) バリケード銀行wor2005280031-p1

 

 中国が頭ごなしで「国家安全法制」を香港に導入する「決定」を全人代が採択したことは、北京にとり目障りな香港民主派や、デモを続ける学生らに刃を突きつけることを意味する。

 

 だが、国際金融センターとして中国の経済成長を支えた香港という空間の価値は、英国植民地時代からの透明性の高い「法制度」にあったといってもいい。

 

 香港の独立した法制度を脅かせば、一国二制度で返還後も残ったレッセフェール(自由放任)と呼ばれた自由な経済政策も危うくなる。米国にも香港が見放されると、中国経済には、もろ刃の剣が襲いかかる。

 

 中国が国連に議席もなかった1960年代から、広東省と陸続きの香港は中国と海外を結ぶほぼ唯一の窓口で、貿易拠点として中国を潤してきた。人民元に国際的な価値のない時代、中国は米ドルと為替でリンクする香港ドルを使った。

 

 立教大の倉田徹教授によると、2018年に海外から中国に向かった投資額の約70%が香港経由。中国企業は香港金融市場で同年に1千億米ドル(約10兆8千億円)の資金を調達した。香港は中国にとり「金の卵を産むニワトリ」だった。

 

 対中ビジネスを進める日米などの企業には、英国流の基準で整備された金融などの法制度こそが価値であり、香港を経由すれば中国リスクも軽減できた。上場企業の情報公開ひとつをとっても、上海市場は香港市場の足元にも及ばない。

 

 上海が国際金融センターで香港に取って代わる可能性は、法制度からみて現時点でまずないが、香港が地位を失えば中国にカネが流れるパイプは詰まる。中国経済毛沢東の時代よりも厳しい鎖国への道を歩む懸念がある。(河崎真澄)

 

https://www.sankei.com/world/news/200528/wor2005280031-n1.html

 

 

 

ただでさえ中国武漢新型コロナウイルスのために、中国でのサプライチェーンが寸断されて、日本を含む欧米の先進国間では、製品の中国一国への依存度の高さに危惧の念が高まってきているのである。事実、中国ではそれを良いことに、マスクや防護具などの医薬医療品の輸出を制限し、医薬医療パニックを起こさせようとしたことは記憶に新しい。

 

そのため安倍首相は、3月の未来投資会議で「世界的なサプライチェーンの改革」について議論を始めた。主要部品は中国ではなくて日本で生産するようにすることと、それ以外の重要部品は生産拠点を中国からアセアンなどへ分散化することである。

 

 

政府、新型コロナ受けサプライチェーン改革を議論 未来投資会議

2020/3/5 17:24
日本経済新聞 電子版

政府は5日午後、官邸で未来投資会議(議長・安倍晋三首相)を開いた。会議では、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、中国などからの部品供給の滞りで日本における製品生産に影響が出ることへの懸念を受け、世界的なサプライチェーン(供給網)改革について議論する。感染拡大で訪日外国人が急減する中、東京五輪を見据えた今後の観光戦略についても話し合う。

主要先進国のなかでも日本は、中間財の輸出入における対中依存度が高い。サプライチェーン改革では、中国で生産されている付加価値の高い部品などの生産拠点を日本に回帰させることや、一国依存度が高い製品について東南アジア諸国連合ASEAN)諸国などに生産拠点を分散する必要性について検討する。

キャッシュレス決済についても議論する。政府のポイント還元事業が終了した後も、加盟店がクレジットカード会社に支払う手数料の引き下げに向けた施策について検討する。中小企業の生産性向上や環境・エネルギー戦略についても会議の議題となっている。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL05HFV_V00C20A3000000/?n_cid=SPTMG002

 

 

 

この議論は、実質的な中国撤退のための議論である。このように中国から企業が大量に撤退すると言う事は、中国経済にとっては大打撃である。ある意味中国経済が成り立たなくなってしまうことを意味する。

(続く)