カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(33)

 それにしても欧州ではなぜ、FIT for 55による事実上のEVシフトが一気に加速しているのでしょうか。 

 背景には、大きく2つの理由が考えられます。 

 


トヨタ
2021年12月に実施した「バッテリーEV戦略に関する説明会」において、トヨタ及びレクサスブランドで今後販売を予定する新型BEV(電気自動車)を一気に公開しました 

 

トヨタ2021年12月に実施した「バッテリーEV戦略に関する説明会」において、トヨタ及びレクサスブランドで今後販売を予定する新型BEV(電気自動車)を一気に公開しました 

 

ひとつは、ESG投資です。 

 

 従来の財務情報だけではなく、E(エンバイロンメント:環境)、S(ソーシャル:社会性)、そしてG(ガバナンス:企業統治)を重要視した投資のことを指します。  

 

 2010年代後半からESG投資に対する考え方がグローバルで一気に広がる中、欧州連合が掲げていた欧州グリーンディール政策がより強固な形に変化していったように感じます。 

 

 それまでも、地球温暖化について協議するCOPを筆頭に、SDGs(持続可能な達成目標)という考え方が欧州内でも徐々に広まっていきました。 

 

 それがESG投資の躍進によって、自動車産業に対する経済対策と金融対策が融合するようになり、これが欧州にとっての強みになるという考え方が広まり、欧州の一部の国や地域でのEVシフトに向けた政治的な判断が強まった印象です。 

 

 もうひとつは、エネルギー安全保障(エネルギーセキュリティ)です。 

 

 言うまでもなく、ロシアのウクライナ侵攻が大きなきっかけとして挙げられます。ロシアからの天然ガス供給を受けていた欧州では、電力を含めたエネルギー価格の高騰が庶民を直撃している状況です。 

 

 こうした「万が一」の状況に備えて、エネルギー全体のあり方についても欧州の国や地域で様々な動きが生まれています。 

 

 その中で、社会全体における、バッテリーや燃料電池を使う移動体の役割についても、抜本的な政策転換の議論が高まってきたと言えるでしょう。 

 

 元来、世界的に見てEVシフトと言えば、1990年に施行されたカリフォルニア州ZEV法(ゼロエミッションヴィークル規制法)を筆頭に、同州との技術的な連携を基盤として考案された中国のNEV(新エネルギー車)政策が目立つ存在でした。 

 

 日本の自動車メーカーも、こうしたアメリカと中国の動きの両方を睨みながら、EVやFCVを含めた将来の電動化戦略を練ってきたという経緯があります。 

 

 もちろん、欧州でのCO2規制は世界で最も厳しいということは、日本の自動車メーカーも十分に理解していました。 

 

 とはいえ日本の自動車産業界では今でも「まさか、欧州でここまで急に話が進むとは想定外だ」という人が少なくないでしょう。 

 

 欧州ではバッテリーの資源採掘や製造工程における人権問題も含めたバッテリー規制が、アメリカでは対中政策も含めたインフレ抑制法がそれぞれ強化されるなど、欧州でのEVシフトは多方面に飛び火しており、日本メーカー各社は対応に追われている状況です。 

 

 こうした中、日本は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」や「GX実現に向けた基本計画」を明らかにしています。 

 

 その上で、自動車メーカーや二輪車メーカーによる業界団体である日本自動車工業会は「日本市場はもとより、国や地域の規制や社会情勢によって、電動化や環境対応は適材適所で行うべき」という姿勢を貫いているところです。 

 

 そのため日本市場では、モデルラインアップの今後の変化を含めて、欧州メーカーと日本メーカーの間でもEVシフトに対する温度差があるのが実状です。 

 

 欧州でのEVシフトは今後、日本市場に対しどのような影響を与えるのか、これからの市場動向を注視していきたいと思います。 


Writer: 桃田健史 

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。 

 

https://kuruma-news.jp/post/615184/2 

 

 

この論考によれば、EUCO2の排出規制は次の通りである(FIT for 55)。 

 

1990年比 

(CO2排出) 2030年    2035年 

乗用車    55%削減   100%削減 

小型商用車  50%削減   100%削減 

 

(注) 

・小規模メーカー(販売、乗・千~1万台/年、商・千台~2.2万台/年) 

 →2035年末まで規制適用を考慮すること有。 

・極小規模メーカー(販売、千台以下/年) 

 →適用対象外とする。 

 

と言った内容の様だが、こと環境対策である以上このような適用除外は設けるべきではないのではないのか、と思うのである。 

 

やるとなれば、一律に例外規定なしで、CO2の削減に向かわなければならないのではなかろうか。今となれば、極小メーカーであろうがなかろうが、ロータリーエンジンであろうがなかろうが、ICEはすべてCO2の排出は出来ないと規制しなければいけないのではないのかな。 

(続く)