ALPS処理水放出と習近平の凋落(7)

若い世代の失業が深刻 

 

 

 

さらに5月の16歳から24歳までの若い世代の失業率は20.8%と過去最悪の水準を更新。         

若い世代を中心に雇用への不安も広がっています。

こうした状況に6月20日には事実上の政策金利を引き下げられる追加の金融緩和が行われると見込まれるなど、警戒感を強める中国当局による景気対策が打ち出されるとみられています。 

 

【専門家の見方は】 

 

中国経済に今、何が起きているのか。

中国経済が専門で上海に駐在するみずほ銀行(中国)伊藤秀樹主任エコノミストに聞きました。

 

みずほ銀行(中国) 伊藤秀樹 主任エコノミスト      

 

Q.中国経済の現状をどうとらえればいいか? 

 

A.「ゼロコロナ」政策の終了後、3月くらいまではリバウンドで回復したが、4月からはかなりゆっくりしたペースになっていて、予想より悪い。

「足踏みに近い」状態だ。

去年のこの時期は新型コロナの感染拡大の影響が広がっていた影響で前年同月比で見ると高い水準に見えるが、消費、生産、投資は前の月(4月)と比べた伸び率ではいずれもコロナ前を下回る水準に陥っている。 

 

Q.なぜ回復が鈍くなっているのか? 

 

A.要因の1つは、若年層を中心に雇用と所得環境が改善せず消費者心理が回復していないことだ。

飲食や観光などのサービス業では「リベンジ消費」が起きたが、いわゆる「モノ消費」は伸びておらず自動車や家電などの販売が悪い。

また、不動産業も3月に一時、回復の兆しが見えたがその後はやはり低迷していて、浮上するきっかけが見えていない。

 

 

 

個人も企業も先行きの不透明感が強い中で「マインド=心理」が改善しておらず、雇用や所得が上向かず財布のひもが固い。    

そしてモノが売れないので雇用や所得もよくならないというコロナ禍での「負の循環」から脱することができていない。 

 

Q.中国政府はどのように対応するだろうか? 

 

A.景気の現状について慎重な見方を示していて一定の対策を検討していると思う。

一方で、不動産については刺激をしすぎるとすぐに投機的な動きが強まり「バブル」懸念が出てくるし、コロナ禍で債務も膨張したため財政規律も重視しているとみられる。

難しいかじ取りとなっている。 

 

Q.中央銀行は追加の金融緩和に踏み切ると見られているが?  

 

 

 

A.中央銀行としてはやることをやっているということだと思う。

ただ金融政策で景気が上向くかというとその時々の状況による。

今はマインドが上向かない中で企業の資金需要も強くなく、効果が限定される可能性がある。 

 

Q.今後の見通しは? 

 

A.サービス業の「リベンジ消費」も落ち着きつつある上、海外経済の減速の影響で輸出も予想通りよくない。

そして人々や企業の「マインド」を転換することは簡単ではなく、当面は回復が鈍い感じが続くだろう。

政府も今のところ大規模な刺激策をとるような姿勢も見せていないため劇的に変わる可能性は低い。

一方でことしの経済成長率を「5%前後」とした政府目標は今のままでも達成できるだろう。

去年の1年間の成長率が3.0%と低かったことからもともと難しい目標ではないためだ。 

 

Q.日本や世界経済に与える影響は?  

 

 

 

A.日本からの輸出などの下押しになり悪影響が広がる可能性がある。

またことしの初めごろは世界経済のけん引役として中国経済の回復に期待するような見方もあったが、そういう役割を担えるような状況ではなさそうだ。

そして回復が鈍い状況が続けば影響が長期化する可能性もあり、注視が必要だ。 

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230616/k10014101261000.html 

(続く)