台湾との関係では張り子のトラ
【トラを甘やかす必要性を感じず】
独立派の李登輝が勝利した96年総統選の前に、中国は台湾周辺で軍事演習を行い、ミサイルを発射したが、何も起こらなかった
。2022年に当時の米下院議長ナンシー・ペロシが台湾を訪問した後にも、中国は過去最大の軍事演習を行ったが、このときも大きなことは起こらなかった。
中国共産党は、自国の主権が及ぶ中国大陸と香港ではどう猛なトラだが、台湾との関係では張り子のトラにすぎない。
世界の民主主義国が台湾への揺るぎない支持を表明し続ければ、この点は変わらないだろう。
西側諸国の首脳たちは以前、中国のはったりを受けて立とうとしなかった。
自国企業の対中ビジネスの足を引っ張りたくないと考えたためだ。
しかし、中国経済の状態が悪化し、投資家が大挙して中国市場から引き揚げるようになり、西側諸国の政府はこの張り子のトラを甘やかす必要を感じなくなった。
12月末、今回の総統選の立候補者たちが参加したテレビ討論会で、こうした情勢の変化を浮き彫りにする出来事があった。
野党候補の1人である柯文哲(コー・ウェンチョー)前台北市長が民進党候補の頼清徳(ライ・チントー)副総統に、「あなたが言う台湾独立の考え方を現実的にどのように前進させるのか」という問いをぶつけた。
独立に前のめりの発言を引き出すことで、中国政府に頼を攻撃させ、米政府にも現状維持を揺るがすトラブルメーカーとして頼を批判させようと考えたのだろう。
頼はこう回答した。
「台湾独立とは、台湾の主権が台湾の2300万の人々だけに属し、中台が互いに従属しないことを意味する。私はこの現状を維持して台湾を守るために、最善の努力をする」
頼は、台湾の政治家なら誰も異論を挟めない現実を述べると同時に、これまでタブーだった台湾独立をその現実と巧みに結び付け、独立という考え方を明確に正当化したのだ。
【中台の力関係はより拮抗】
中国は戦争の脅しをちらつかせていたが、今回、米政府の姿勢は全く揺らがなかった。
国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官も中国に対して、総統選に干渉しないよう直ちに警告した。
柯の戦術は空振りに終わり、台湾独立をめぐってアメリカと台湾が期せずして足並みをそろえる形になった。
これは、中国経済が絶好調に見えていたクリントン政権、ブッシュ(息子)政権、オバマ政権の時代には到底考えられなかったことである。
台湾は中国を恐れるべき状況にはない
今後、民進党が政権に就いているときは独立に向けてさらに前進するだろう。
一方、国民党が政権を奪取しても、中国共産党とは距離を置き、選挙期間中よりもアメリカに接近する可能性が高い(国民党の幹部たちは昔から、個人資産をアメリカに置いている場合も多い)。
台湾は、誇示していないだけで着々と力を蓄えてきた。
ジェット戦闘機や潜水艦の開発を進め、北京や上海を攻撃できるミサイルもひそかに配備している。
先端半導体で世界の市場をほぼ独占していることも、台湾にとって強力な武器になり得る。
対照的に、中国は仰々しい脅しをかけてはいるが、その中身は新味に欠ける。
オーストラリア産のワインに高い関税をかけたり、日本へのレアアース(希土類)輸出を停止したりといった戦術は、効果を発揮していないように見える。
台湾が中国を恐れるべき状況にはないのだ。
中台の力関係はより拮抗したものになる可能性が高い。
それは世界平和にとっても好材料と言える。
https://news.yahoo.co.jp/articles/762c3572220ce451c2a93db2a54f0dea8a3d4b51?page=1
中国は、人民解放軍と関係のある武漢病毒研究所が開発した(生物兵器の)コロナウィルスの漏洩による社会閉鎖で、経済的に相当の痛手をこうむっているうえに、現在、景気が大幅に低迷している。
西側諸国も、中国が台湾への軍事侵攻を行うのであれば、相当の経済制裁を科すことになろう。中国にとってはとても深刻な結果となることは、目に見えている。ロシアのウクライナ侵攻を見れば、このことは明らかであろう。
と言うことは、中国の台湾への軍事侵攻には、それ相応の制限が付きまとう、とこの論考は述べている。
第1に、「平和的な浸透工作による統一」を目指すしかないであろう。
第2に、中国自身の態勢と国際社会の反応が、軍事侵攻するにはとてもふさわしくない。
と言うことが言えるのである、と言っている。
(続く)