ALPS処理水放出と習近平の凋落(73)

本来ならば、文芸工作団・文工団という「歌」や「踊り」を専門とする部隊からの出演で、華やかな衣装に身を包み祝賀ムードを盛り上げていたものが、今回は「実際に戦闘を行う本物の兵士たち」が、しかも舞台衣装ではなくて、実際の「作戦行動用の迷彩服と装備」を身に着けて登場したというではないか。 

 

だから新年を祝う娯楽番組でここまで「台湾侵攻」を連想させる出し物は初めてと、一部華人の間でも大変不評であったと記されている。 

 

そうであろう、全く新年祝賀の場で、血なまぐさい殺戮を連想させたわけだから、当然である。 

 

と言っても、習近平にとっては「台湾統一」が至高の目標であるからして、あらゆる機会を通じて自国人民を啓蒙しておく必要がある、と考えたわけだ。 

 

というよりも、「台湾侵攻・統一」が近々行われると、中国人民に示すことが必要と考えたのであろう。そのように「心構えよ」と言うことだ。 

 

と同時に米国へのサインでもある。だからバイデンは、「ウクライナ」と共に毅然と「台湾は守る」と表明しておく必要がある。トランプの「ウクライナなんぞは捨てておけ」などと言うことは許されないのだ。もしそんなことをしたら、トランプは米国本国を不幸にする。 

 

さて、中国人自ら「除習(夕)快楽」(大晦日は-習近平が居なくなったら-楽しく過ごせる)と言っている、と皮肉っているようだが、この「2024年の中国には暗雲が漂う」と言った論考も存在しているのだが、どうなることやら。 

 

台湾は既に総統選も終わり、民進党の頼清徳氏が当選しているので、中国にとっては確かに「暗雲が漂う」なのであろう。 

 

少し古くて昨年の12/26の論考であるが、ご一読願う。 

 

 

「台湾の平和統一は困難 中台分断は加速」暗雲漂う中国の2024年 

 

佐伯 真也  上海支局長 2023.12.26 

 

この記事の3つのポイント 

 

1.1月の台湾総統選で与党・民進党が勝利すれば台中分断が加速 

2.台湾ハイテク企業の日米投資が拡大し、中国離れが顕著に 

3.習近平政権「3期目」は景気低迷続く、将来的に「統制経済」へ 

 

 

 異例の「3期目」に入った中国の習近平政権だが、足元では国内の景気低迷が続く。2024年1月には台湾で総統選が行われ、「台湾有事」の行方を大きく左右する。中国の政治・経済は今後どうなるのか。東京財団政策研究所柯隆氏に聞いた。 

 

2024年1月の台湾総統選をどう予測しますか。 

 

柯隆氏(以下、柯氏):与党・民主進歩党民進党)の候補者である頼清徳氏が勝利する確率が高いと見ています。頼氏は、副総統候補に蕭美琴氏を指名しました。蕭氏は直前まで駐米代表(大使に相当)を務めており、米国とのパイプが強い。野党候補と比較してもかなり強いコンビだと見ています。 

 

柯隆(かりゅう)        

東京財団政策研究所主席研究員。1963年、中国江蘇省南京市生まれ。88年に来日し、92年に愛知大学法経学部卒業。94年、名古屋大学大学院修士(経済学)。長銀総合研究所国際調査部研究員、富士通総研経済研究所主席研究員などを経て2018年から東京財団政策研究所に所属。静岡県立大学グローバル地域センター特任教授も兼務(写真は的野弘路、以下同じ) 

 

一方、野党である国民党と台湾民衆党は総裁選候補者の一本化を最終的に断念しました。 

 

柯氏:野党の一本化は短絡的過ぎました。国民党と台湾民衆党は、政見が大きく異なっているため、実現していても、単純に「1+1=2」とはならなかったでしょう。 

 

 4年前の総統選とは異なり、台湾の人たちは中国政府からの脅威を感じています。台湾が「第2のウクライナ」になるのではないかという危機感があるわけです。この4年間、民進党蔡英文政権が大きなミスをしたわけではありません。逆に国民党は右往左往しており、人を引きつけるような政策を打ち出せていません。台湾総統選の行方は依然として不確実性が残りますが、与党・民進党が有利でしょう。 

 

頼氏が勝利した場合、対中強硬派の民進党が初めて3期連続で政権を担います。 

 

柯氏:中国政府にとっては平和的な台湾統一は難しくなり、中国と台湾のデカップリング(分断)は加速するでしょう。足元でも台湾企業は半導体を筆頭に日本や米国への投資を拡大しています。3年後を見据えた場合、台湾ハイテク企業の「中国離れ」が顕著になりそうです。 

 

 中国政府は民進党候補者の3選を防ぐため、23年10月には候補者の一人であった郭台銘(テリー・ゴウ)氏が創業した、台湾の電機大手・鴻海(ホンハイ)精密工業の中国拠点を税務調査しました。野党票の分散を防ぐために、立候補の断念を迫ったとみられます。最終的に郭氏は立候補を断念しましたが、中国政府がこれ以上、総統選に直接的に介入するのは難しい。むしろ問題は、本来すべき台湾企業の中国離れへの対策が打ち出されていないことです。

(続く)