世界の流れは、EV化(26)

パナソニックエナジー社)は、このアップルからの話を好意的に受け止めているようだ。 

 

まあテスラとの取引を最優先することが第一ではあるが、余力があればアップルとも取引はしたいところだ。 

 

パナソニックのバッテリー事業は、'22年4月には、パナソニックエナジー社として独立した会社となる予定となっているから、なおさらだ。1日も早く黒字化したいはずだ。それにはバッテリーの供給先を増やすことも、必要となろう。 

 

パナソニックもテスラについていけないところがあり、テスラもバッテリーについては独自に生産を始めているから、パナソニックにとっては、丁度渡りに船状態ではなかったかな。 

 

 

パナソニック、アップルカーに電池「可能性否定せず」 

大阪2021年10月25日 17:14  

 

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電池事業を統括するパナソニックの只信一生氏 

 

パナソニックは25日、米アップルが開発を検討しているとされる電気自動車(EV)「アップルカー」への車載電池供給について「様々な可能性は否定しない」とした。電池事業トップの只信一生氏が日本経済新聞などの取材に応じた。「個別の話については差し控える」としつつ「いろいろなことを検討していく」と話した。 

 

只信氏は「リソースが分散しないでできるのであれば、米テスラ以外との(取引)拡大について否定するところではない」とし、「いろいろなメーカーとの付き合いについて、様々なことを検討している」と話した。 

 

一方、次世代の大型電池「4680」を初公開し「テスラの強い要望も受けて開発している。テスラと商売することが前提だ」(只信氏)と強調した。 

 

2022年4月の持ち株会社移行に伴い、電池事業は独立した事業会社となる。 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF255NJ025102021000000/ 

 

 

世界の流れは、すべからくEV化に向かっている、ようだ。2035年までには、先進国では何らかの法的な規制により、ZEV化せざるを得ないことになるようだ。すなわちEV化である。 

 

そのため各自動車メーカーは、遅くとも2030年には、そのラインナップの大半をEVとしてくるものと思われる。FCVでもよいが、これは水素スタンド沢山出来てきてからの話となる。 

(続く)

世界の流れは、EV化(25)

と言っても、すでに開発は終盤になっているものと思われる。直径46mm長さ80mmと従来の186502170と言った細形の円筒形リチウム電池より、かなり大きくなっている。

 

テスラから要望で開発したものだ。

 

またアップルカーに搭載するバッテリーについて、アップルよりパナソニックに供給依頼の打診があったようで、まんざらでもない様子であった。もしこの話がまとまれば、この4680を供給することになるかも知れないのだ。

 

 

新たに発足したパナソニックエナジー社、テスラ向け新型電池「4680」を披露

202110260730分 公開           [朴尚洙MONOist]

 

 2021101日付で新たに発足したパナソニックの電池事業を統括するエナジー 社長 CEO只信一生氏が報道陣の合同取材に応じた。只信氏は、テスラ(Tesla)向けに開発している新型電池セル「4680」を披露するとともに、2021年度内に量産化に向けた試作設備を国内拠点に導入し、早期に北米工場での量産につなげていきたい考えを示した。

パナソニック エナジー社の只信一生氏パナソニック エナジー社の只信一生氏。左手に持っている電池セルが「4680」で、右手に持っているのが現行の「2170」だ[クリックで拡大]

 

 パナソニック20224月の持ち株会社制への移行時に設立する8つの事業会社を想定し、2021101日から仮想的な組織体制へと移行している。エナジー社は、これまでのカンパニー制でオートモーティブ社やインダストリーソリューションズ(IS)社などに分散していた電池事業を統括し、20224月にはパナソニック エナジー株式会社」が発足する予定だ。主要生産拠点は国内8、海外12の合計20カ所に展開し、グローバル従業員数は国内4500人、海外15500人の合計約2万人に上る。

 エナジー社の事業は、乾電池、リチウム一次電池ニッケル水素電池を扱う「エナジーバイス事業部」と、テスラ向けを中心に車載用円筒形リチウムイオン電池を展開する「モビリティエナジー事業部」、小型リチウムイオン電池と蓄電モジュールや蓄電システムなどの組電池を手掛ける「エナジーソリューション事業」から構成される。売上高の50%強は、モビリティエナジー事業部を中心とする車載向けが占め、残り50%弱がエナジーバイス事業部とエナジーソリューション事業が担う産業・民生向けとなる。

NCA系でコバルトレスの電池も用意

 只信氏は、車載電池事業で鋭意開発を進めてきた新型電池セル4680をメディア向けに初めて公開した。これまでテスラ向けでは18652170というサイズの車載用円筒形リチウムイオン電池セルを供給してきたが「テスラとの緊密なパートナーシップの中で、次世代EV(電気自動車)に求められる電池セルとして4680を開発した。実用化のめどが立ったこともあり、次の段階として2021年度内に試作設備を国内拠点に導入し量産化を進めていく」(同氏)という。

 電池セルのエネルギー容量は1865から21701.5に、2170から46805に増えた。只信氏は「円筒形は安全性が高く電池モジュール内のセル密度を高められる点で大きなメリットになる。より走行距離の長いEVを実現する上で4680という電池セルは重要な技術になるだろう」と強調する。

パナソニックの車載用円筒形リチウムイオン電池セルのサイズ比較パナソニックの車載用円筒形リチウムイオン電池セルのサイズ比較。左から186521704680[クリックで拡大]

 

各電池セルを正面から見た状態(左)と上から見た状態(右)[クリックで拡大]

 

 近年はリチウムイオン電池の主要材料であるコバルトの高騰もあって、EV向けではコバルトを使わないリン酸鉄リチウムイオン電池への注目が集まっている。只信氏は、パナソニックNCA(ニッケル-コバルト-アルミニウム)系リチウムイオン電池の強みについて「NCA系はもともとコバルトの使用量が少ない。また、コバルトを使わないコバルトレスの電池も技術的には完成しており、ニーズがあれば数年内に量産できる状況にある」と説明。その上で「環境負荷が少なく、安全で高容量ということを追い求めているがまだ道半ばであり、その状況でリン酸鉄リチウムイオン電池に開発リソースを振り向けることはない」(同氏)とした。

 なお、モビリティエナジー事業部はこれまで「テスラエナジー事業部」という名称だった。今回の名称変更には、テスラだけにとどまらずさまざまなEVに円筒形リチウムイオン電池の供給を目指す意図がある。只信氏は「エナジー社としてEV市場の変化や広がりに期待するところは大きい。ただし、テスラを中心とした事業展開に影響のない範囲内で進めていく」と述べる。また、アップル(AppleEV用電池の供給をパナソニックに打診したという一部報道に関する質問については「もちろんさまざまな可能性は否定しないが当社からは何も答えられない」(同氏)とした。

https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2110/26/news066.html

 

パナソニックエナジー社)は、このアップルからの話を好意的に受け止めているようだ。

 

まあテスラとの取引を最優先することが第一ではあるが、余力があればアップルとも取引はしたいところだ。

(続く)

世界の流れは、EV化(24)

確認の意味と言う訳でもないが、この記事もご一読願う。

 

 

EV市場、大手攻略へ トヨタは電池新工場で自前に活路

2021/10/19 12:43
日本経済新聞 電子版

トヨタは30年の北米市場のEV・FCV販売比率を15%と見込む

トヨタ30年の北米市場のEVFCV販売比率を15%と見込む   

【ニューヨーク=中山修志】トヨタ自動車18、グループの豊田通商と組んで米国に車載電池の工場を新設する計画を打ち出した。欧州ステランティスも同日、韓国・LG化学と北米で電気自動車(EV)向け電池を生産する計画を表明。EV普及を推し進める米国で主要自動車メーカーの戦略が出そろった。投資額や提携戦略にはばらつきも目立ち、EV需要の先行きに対する迷いも透ける。

 

トヨタは米国で2030年までに電池の生産に34億ドル(約3800億円)を投資する計画だ。第1弾として豊通と共同で129000万ドルを投じてリチウムイオン電池の工場を新設する。当初はハイブリッド車HV)向けの電池を生産するが、米国でのEV生産に備えてEV向け電池も視野に入れる。

 

日本ではパナソニックとの共同出資会社を通じて電池を生産しているが、米国では豊通と組んで「トヨタが主体的に運営できるかたち」(トヨタ)を整える。具体的な生産規模やどこに工場を設けるかは公表しておらず、今後、誘致を進める州政府などとの協議を本格化する。トヨタが海外で自前の電池生産設備を設置するのは初めてとみられる。

 

ステランティス18日、LG化学の電池子会社LGエネルギーソリューションと北米で合弁工場を建設すると発表した。建設場所は未定だが、4000億円規模を投資して24年からEVプラグインハイブリッド車PHV)向けの電池の生産する。

 

環境保護を重視するバイデン米政権はEVシフトを強力に推し進める。バイデン大統領8月、30年に米国市場に占める電動車(HV除く)を50%に引き上げる大統領令に署名。EV電池のサプライチェーン(供給網)構築を重点項目に挙げ、EV充電設備やガソリン車からの買い替え補助に1740億ドルを充てる方針も打ち出した。

 

トヨタの工場建設計画で、主要メーカーの戦略が出そろうことになる。中でもEVシフトにアクセルを踏み込むのが米ゼネラル・モーターズGM)とフォード・モーターだ。

 

GM25年までにEVと自動運転技術に350億ドルを投じ、35年にガソリン車の販売を全廃する目標を掲げる。独走する米テスラの量販車種「モデル3」を下回る3万ドルのEVを投入する方針も表明。メアリー・バーラ最高経営責任者CEO)は「EV戦略が実行段階に入り、収益が拡大する」と自信をみせ、30年に売上高を倍増する計画を打ち出した。フォードも韓国・SKイノベーションと組み、米国に複数の工場を建設する。

 

米新車市場に占めるEV比率は20年で1%台、2119月も2%台と、バイデン政権が掲げる目標との開きは大きい。GMやフォードは手厚い政府補助金を活用しながらお膝元の米国でEV需要を取り込む考えだ。一方、トヨタは得意のHVに軸足を残しながら徐々にEVシフトを進める現実路線を堅持する。18日の発表資料には「トヨタは継続可能かつ現実的な方法でカーボンニュートラルに貢献する」と盛り込んだ。

 

EVの性能や価格を左右する電池技術の提携戦略にも差がある。

 

GMやフォードは韓国系の電池メーカーとの合弁に傾斜する一方、トヨタは今回、外部からの調達ではなくグループを含めた内製を重視する姿勢を鮮明にした。電池メーカーとの合弁は量産によるコスト低減や先端技術への効率的な投資が見込める一方、独自技術の囲い込みや安全・品質面での難しさがある。

 

ガソリンの大型車人気が続いてきた世界第2位の米自動車市場で、政権や自動車大手が思い描くような消費行動の変化が起きるかは誰も見通せないのが現状だ。全固体電池などの次世代技術も浮上するなか、自動車大手幹部は「リチウムイオン電池にいまから巨額の投資をして回収できるのか」との迷いを隠さない。

 

グローバルで環境重視の流れが広がるなか、手をこまぬいていては変化に取り残されるとの危機感がメーカーにはある。EVと親和性が高いとされる自動運転技術でも出遅れるリスクがある。一方で、株式市場には「GMがニッチなEV開発を優先する結果、EVシフトに慎重なトヨタが北米のシェアを伸ばす」との見方もある。需要の読みと足元の戦略の巧拙が、将来の競争力を大きく左右する転換点にさしかかっている。


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN18C7T018102021000000/

 

 

パナソニックパナソニックとして、テスラ向けに新電池を開発している最中だ。トヨタと組んで電池工場を企画するほど暇ではないのではないのかな。

(続く)

世界の流れは、EV化(23)

ここにもあるように、米国でのバッテリー生産工場の建設計画が目白押しだ。

 

欧州ステランティスは、LGエネルギーソリューションと組んで、'22年半ばから工場建設

 

GMもLGと組んで、2箇所の合弁工場を建設中だ。

 

フォードは、SKイノベーションと組んで2箇所の工場建設を計画中だ。

 

と言うことで、トヨタ自動車としても、特に米国でのEVの販売に後れを取ってはいけないのである。せっかく高めた販売台数を落としかねないと危機感を募らせたわけだ。

 

トヨタは、2021.10.18に「豊田通商」と組んで米国にバッテリー工場を建設すると発表した。稼働時期は2025年だという。

当面はHV向けの電池生産であるが、当然EVも視野に入れている。つい最近EVのbZ4Xと言うコンセプトカーを発表している。'22年の半ばの販売のようだ。

 

トヨタはすでにパナソニックと、

 

プライムアースVエナジーPEVE

プライムプラネットエナジー&ソリューションPPES

 

と言う2つの車載電池の生産・開発会社を持っている。

 

今回は、そのパナソニックとは組まなかったことになる。

 

パナソニックとは組まずに豊田通商と組んだことは、「立ち上げに手間取ってはいけない」と言うことと、米国ではパナソニックはテスラと組んでリチウムイオン電池を生産しているのことから、「テスラに利することになりはしないか」との懸念から、パナソニックを外したものと思われる。

 

 

 

トヨタ、米EV攻略を迅速に 自前で初の車載電池工場

2021/10/19 20:52
日本経済新聞 電子版

トヨタ自動車は米電池生産で豊田通商と組みリチウムなど資材供給リスクを低減する

トヨタ自動車は米電池生産で豊田通商と組みリチウムなど資材供給リスクを低減する

トヨタ自動車初の自前の車載電池工場の建設に踏み切る。場所はお膝元の日本ではなく、営業利益の約3割を稼ぐ米国だ。米バイデン政権は矢継ぎ早に主にEVの電動車支援策を打ち出すものの、トヨタが得意とするハイブリッド車HV)は対象外。世界の自動車メーカーがこぞって米国でEV投資を加速する中、乗り遅れるリスクがあった。自前戦略はEV反転攻勢のカギを握りそうだ。

 

トヨタ18日、米国でEVなど向けの車載電池の現地生産34億ドル(約3800億円)を2030年までに投資すると発表した。まずは25年までに車載用電池の工場を新設する計画だ。

 

「バイデンは本気だ」。トヨタに衝撃が走った。1740億ドルのEV支援策を打ち出すなどバイデン大統領は電動車普及に積極的だ。ただ30年に新車販売の半分を電動車とする目標を掲げたものの、トヨタの強みであるHVは除外された。支援策の恩恵は限定的だ。

 

ただ、ゼネラル・モーターズGM)やフォード・モーター4月以降、電池投資などを相次ぎ発表。競合はEVシフトを加速していた。

 

トヨタ2146月期の米乗用車販売で初めて首位(四半期ベース)となった。幾度の危機を乗り越え獲得してきた市場シェアがEVで一瞬でひっくり返されるとの危機感が広がった。「(電動車が市場に浸透する)30年から逆算してギリギリのタイミングだったのだろう」。トヨタ関係者は解説する。

 

今回、トヨタは初めて実質的な「自前」による電池生産に踏み切る。ところが長年、電池生産で協業するパナソニックと組まなかった。なぜか。

 

20年に発足したトヨタパナソニックの電池新会社は「立ち上げに手間取った」(関係者)との声がトヨタ社内にはある。競合が米国に殺到する中で計画遅れの余裕はない。トヨタグループ単独が機動的との判断があったもようだ。

 

EV大手テスラへの対抗の意味もある。テスラは米でパナソニックと組みリチウムイオン電池を生産する。仮にトヨタパナソニックの生産分が米でも加わると、資材購入などで規模のメリットが働き、EVで先行するテスラを利することにもなりかねない。

 

代わりに選んだパートナーがグループ会社の豊田通商。リチウムなど電池に必要な資源開発や調達で強みを持ち供給網リスクを最小限に抑える

 

電池技術の蓄積も「自前」を支える。次世代電池の代表として各社が開発を急ぐ「全固体電池」でトヨタは世界最先端を走る。国内証券アナリストは「電池から一貫して内製できれば、原価低減余地も大きくコストで優位性が増す」と話す。



世界の自動車メーカーの間では電池メーカーと組み生産するのが一般的だ。トヨタほど技術を持たないためでもあるが、投資負担を軽減できるという利点がある。

 

GMは韓国LG化学の電池子会社、LGエネルギーソリューションと組み、米2カ所で合弁工場を建設中。フォード韓国SKと合弁で米国のテネシー州ケンタッキー州に電池工場を建設する。提携相手は主に韓国や中国の電池メーカーだ。

 

そんな中、自前による垂直統合モデルで米電動車市場に挑むトヨタ。「必要な電池量も上振れを想定しなくてはいけないかもしれない」と幹部の鼻息は荒い。ただ、米新車市場に占めるEV比率は20年で1%台、2119月も2%台と限られる。ガソリン大型車大国の米国で、米政権や自動車会社が期待するほど電動車が普及するかは未知数だ。需要が伸びなければ被る投資損失も大きい。

 

トヨタEV燃料電池車(FCV)で30年に世界で200万台を販売する計画。米国で電動車を7割まで引き上げる。電池の自前生産の成否も30年に明らかになる。


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1968P019102021000000/

(続く)

世界の流れは、EV化(22)

リチウムイオン2次電池が発火する原因を、次のように羅列している。

 

(1) 製造工程で混入した金属異物がセパレーターを破り、内部短絡が発生し火災となる。

 

(2) 充電時に「デンドライト」という金属リチウムの針状結晶が生成され、セパレーターを破り
  内部短絡が発生し火災となる。

 

(3) 衝突などの外部衝撃で電池が破損し、燃えやすい電解液が発火して火災が発生する。

 

(4) 過充電などで部材が熱を帯び、場合によっては熱暴走を引き起こし火災なる。そのため
  燃えやすい電解液を無機系の固体電解質に置き換える研究が進んでいる。

 

(5) そんな訳で、保管しているうちに発火する場合もある。

 

 

だから車載電池の開発には、日本の自動車メーカーは、独自に厳しい安全基準と試験規格を設けて開発や評価試験を繰り返しているのである。だから今までに一件もの火災事故を起こしていないのである。

 

これに対して、欧米韓中の自動車メーカーは、日本の自動車メーカー各社の厳しい基準とは乖離したゆるい基準で開発などが進められていた、と言うことである。

 

例えば、正極材では、コバルトの価格が近年高騰しているので、安価なニッケルを多量に使用してコストダウンを図る、などというリスクのあるコスト低減を、特に中韓の電池メーカは実施している。

 

正極材には、ニッケル、コバルト、マンガンの三元素を1:1:1で使用することが、性能と安全性を確保するための条件であったが、価格が高騰するコバルトの比率を下げて、ニッケルを多用するハイニッケル化が進んでいる、と言う。

 

ニッケル、コバルト、マンガンの比率は、6:2:2、そして8:1:1までに、中韓の電池メーカーでは進められている、という。

 

まあ、中韓のバッテリーがこんな状態であれば、容易に火を噴くのは当たり前となっているようだ。まことに怖い話である。

 

そんな中LG Chemの子会社・LGエネルギーソリューションは、ステランティスと北米で合弁会社を設立して、EVの車載電池を生産すると、(欧州ステランティスが)'21.10.18に発表している。

 

総投資額は4000億円に上るという。このリコールなどの混乱期に、重大な経営上の決断が、よくできるものだ。この点は、日本の経営者も見習わなければならない事案だ。と言っても、EV化は世界の趨勢となっているので、バッテリーをどうやって確保するかは以前からの経営上の課題であったわけで、それなりの検討は以前から進んでいた、と言うことではないのかな。

 

しかもLGは、現在、ドイツ、フランス、および米国で2か所、さらにはインドネシアポーランドでも、単独ではないが、電池工場の建設を進めているという。この迫力は大したものだ。

 

そんな状況なので、品質問題も発生してしまった、と言うこともできる。人材不足なのか。

 

 

 

ステランティスLG、北米でEV電池合弁 4000億円投じ

2021/10/18 17:27 (2021/10/18 17:58更新)
日本経済新聞 電子版

ステランティスは、GMとも合弁を組むLGと北米で電池を生産する=ロイター

ステランティスは、GMとも合弁を組むLGと北米で電池を生産する=ロイター 

【フランクフルト=深尾幸生、ソウル=細川幸太郎】欧州ステランティス18日、韓国LG化学の電池子会社、LGエネルギーソリューション合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表した。年間生産能力は40ギガワット時で2024年の生産開始を目指す。関係者によると総投資額は4000億円規模になるという。バイデン米政権が求める電気自動車(EV)シフトを加速する。

 

両社が覚書を結んだ。建設地は現在検討中だが、22年半ばに建設を始めたい考えだ。工場で生産する電池の中核の「セル」やセルを組み立てた「モジュール」を、「ジープ」などステランティスが米国やカナダ、メキシコで生産するEVプラグインハイブリッド車PHV)に搭載する。EV換算で40万~80万台分に相当するとみられる。

 

ステランティス7月、北米の新車販売の4割以上をEVPHVにすると発表。全世界で25年までにEV分野に300億ユーロ(約4兆円)を投じ、30年までに年間260ギガワット時の生産能力を確保するとしていた。

 

欧州では仏トタルエナジーズとの合弁でドイツとフランスに電池工場を建設しており、車載電池世界2位のLGと組むことで北米での電池調達も確実にする狙いだ。

 

LG22年と23のそれぞれの稼働を目指してゼネラル・モーターズGM)と米国の2カ所で合弁工場を建設中。さらにインドネシアでは23年稼働予定の韓国現代自動車との合弁工場、ポーランドでは自社工場の増設を進めている。

 

各工場の同時立ち上げで人材不足が指摘されるなかで、品質問題も表面化している。GMと現代自のEVのリコール(回収・無償修理)のためにLG側がそれぞれ1000億円規模の負担金を支払うことで合意した経緯がある。EV需要の急拡大で一部の電池メーカーに増産要請が集中する課題も生まれている。


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1860R018102021000000/

 

 

国際的なEV化の流れの中で、自動車メーカー各社はバッテリーの確保に躍起となってきているようだ。脱炭素化の流れの中では、まずはEVを作って売らなくてはならないから、当然のことである。

(続く)

世界の流れは、EV化(21)

これに対してLG Chem のバッテリー火災は、製造上の欠陥によりバッテリー内部で短絡(ショート)してしまい、発火したものである。

 

いずれの場合でも、EVの火災は、普通の水かけではなかなか消火できないものだ。

 

それは、火災で熱を持ったバッテリーをうまく冷やせないからである。だからデンマークの消防署では、水を張ったコンテナーにEVを沈めて消火することにしているのだ。

 

さて話を元に戻そう、LG Chemのバッテリー火災は、バッテリーの製造上の欠陥が原因である。製造上の欠陥の発生原因は、無理な低コスト化だと言われている。

 

 

海外のEV火災、電池コスト削減が一因 専門家に聞く

2021/10/7 5:00
日本経済新聞 電子版

 

車載電池開発に詳しい名古屋大学未来社会創造機構客員教授佐藤登氏(出所:日経クロステック) 佐藤登氏

 

カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)の実現に向けて、自動車メーカー各社が電動化に舵(かじ)を切る中、海外では電気自動車(EV)の火災事故が増えてきている。EV電池発火のメカニズムや増加の背景について、ホンダや韓国の電池大手サムスンSDIEV用の電池開発に深く携わった佐藤登氏に聞いた。



【関連記事】相次ぐEV火災の「消えない火」 電池冷やせず再燃

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00134/091500280/?P=1



発火しやすく消火しにくい部材



──そもそもEVのリチウムイオン2次電池はなぜ発火するのでしょうか。

「発火の原因は多種多様である。代表例としては、電池製造工程で混入した金属の異物が充放電を繰り返すうちに正極と負極を分離するセパレーターを突き破ることで内部短絡が発生し、火災に至る場合がある」

「他にも、充放電の条件や構成材料によっては、充電時にリチウムイオンが負極中へ取り込まれないために『デンドライト』という金属リチウムの針状結晶が生成される。これがセパレーターを突き破ると内部短絡につながり、発火の原因となるケースもある」

「衝突事故などで外部から大きな衝撃が加わると電池が破損し、火災事故に至る可能性が高まる。鉛蓄電池ニッケル水素電池は電解液が無機系で不燃性なのに対し、リチウムイオン2次電池の電解液は可燃性有機溶媒で、そもそも燃えやすい性質を持つ」

「また、電池を構成する部材が熱安定性に劣ると、過充電になった場合などに発熱が促進され熱暴走、そして火災に至る。電池を構成する部材は可燃性の物が多いので、一度火災に至ると消火が難しい

「消火したとしても温度が下がらず、電池内部に熱がこもっていると再燃を繰り返すことがある。海外ではリサイクルのために保管してあるリチウムイオン2次電池から出火した事例もある」

「次世代電池として注目が集まる全固体電池の固体電解質無機系で難燃性だ。これが普及すれば、火災事故の低減にもつながるだろう。かといって、全固体電池でも条件がそろえば火災事故に至るケースもあり、全固体電池だから火災事故は起きないとは言いきれない」



──効果的な消火方法はありますか。

「公道での車両火災事故は、やはり大量の水で酸素を遮断しながら鎮火させる方法が現実的だ。EV用途のように電池容量が大きくなると、普通の消火器では消火が難しい。実験室や試験室での火災においても同様だ」

「私が上席顧問を務めるエスペックでは電池の安全性受託試験などを手掛けており、限界試験や過酷試験などの独自試験で電池が発火する場合がある。発火の際には頑丈な試験評価室内のスプリンクラーが作動し、十分な放水で消火している」

「試験終了後でも電池が化学的に不安定な場合が多い。安全に保管や輸送をするために、電池を塩水に浸して失活処理を行っている。その結果、短時間で効率よく完全放電できるので再燃を防げる」

エスペックでは過去に、液体窒素の噴霧も検討したが、あまりにもランニングコストが高いので断念した。二酸化炭素を使って消火する方法もあるが、試験室内での使用は人命への影響が懸念される。結果として大量の放水が効果的、かつコストと安全の観点からも妥当といえる」



コバルト高騰で正極材が燃えやすく



──近年、海外でEVの車両火災が増えています。

韓国製の電池を搭載した電動車の火災2019年中ごろから急に増えた。背景には、電動車の価格に占める比率が高い電池の価格低減を自動車各社が求めていることがある。電池部材のコストを削減する必要がある中、安易に安価な部材を採用していることが原因の1つと考える」

「もともと、日系自動車メーカー各社は車載電池に対して独自に厳しい安全基準と試験規格を設けて開発や安全性評価試験を進めており、安全性が十分ではない安価な部材を見極める機能が働いている。私のこれまでの経験から、欧米韓中の自動車メーカー各社の電池に対する開発基準が日系勢の基準と乖離(かいり)し、緩い条件下で進められていたと実感している」

「さらには、正極材を構成する材料も変わってきている。正極材はいくつか種類があり、最も広く適用されているのがニッケル、コバルト、マンガンを主成分とする『三元系』。従来は性能と安全性の観点で3種類の元素が1:1:1と同じ比率で入っていた」

「近年は価格が高騰するコバルトの比率を下げ、代わりにニッケルを増やすハイニッケル化が進んでいる。ニッケル、コバルト、マンガンの比率を6:2:2、そして8:1:1まで拡大した正極材の適用が中韓の電池メーカー各社を中心に進められている。ニッケルが増えると熱安定性が下がり、発火しやすくなる傾向にあるため、安易なハイニッケル化はリスクを伴う」

「価格競争の中で低品質の部材が採用される例が増えている。韓国のある電池メーカーでは、もともと日本企業のセパレーターを採用していたものの、日本製の半値ともいわれる中国製のセパレーターに全量転換した事例もある」

「中国製は価格面で優位にあるので、電池のコスト低減効果は絶大だ。その分、品質が日本製よりも劣るものもあり、電池に不具合が起こる原因となっている可能性もある」



日本メーカー、厳格な安全性試験



──国によって電池やEVの安全性に差はあるのでしょうか。

「国際的には『ECE-R100-02』という電池の試験規格が国連規則として16年に発効し、認証取得まで義務付けられている。日本の自動車メーカーはこの国連規則に加えて、厳格な独自の安全性試験を実施している」

「例えば充電率だけでみても、規格では『140%程度の過充電状態で火災・爆発などを起こさないこと』が求められる中、日本のメーカーは充電を続けて電池が破壊される『死に際』を把握することで電池の安全性を担保する。こうした限界試験を実施し、自主的に高い次元での安全性を確認しているのだ」

「国連規則の基準は教育に例えれば義務教育に相当する。それだけでは不十分で高等教育が必要であることを、昨今の海外勢の車両火災事故とリコールが立証している」

「日本の試験基準に対して、韓国や欧米はその8割くらいの厳しさ、中国に至ってはそれ以下の厳しさで試験をしてきた。海外製の電池で採用できる各種部材も、日本の基準に照らし合わせると採用できないことは多々ある」

「だからこそ、日本製の電動車が25年の長きにわたって公道で火災事故を起こしていないといった世界に誇れる実績を出している。電池の不具合によるEVの火災事故と大規模リコールは、安全性と信頼性が強みである日本の電池産業にとっては追い風になるだろう」

「昨今のEVシフトの中で、人命に関わる車載電池のあるべき姿を、海外の自動車メーカー各社と電池メーカー各社は再考する必要がある」



佐藤登(さとう・のぼる)氏


名古屋大学未来社会創造機構客員教授エスペック上席顧問、イリソ電子工業社外取締役1978年ホンダ入社。自動車の腐食防食技術の開発に従事し、その社内成果で工学博士の学位を取得した後、90本田技術研究所基礎研究部門へ異動。91年車載用の電池研究開発部門を築く。チーフエンジニアであった2004年にサムスンSDIに常務として移籍。中央研究所と経営戦略部門で技術経営を担当、12年退社。

(聞き手は日経クロステック/日経ものづくり 岩野恵)

[日経クロステック2021924日付の記事を再構成]

 

関連リンク

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2995X0Z20C21A9000000/?n_cid=NMAIL006_20211007_Y

(続く)

世界の流れは、EV化(20)

欧州では事故車をプールに沈めて搬送

 大量の水でバッテリーを冷やし続ける方法は、EVの火災事故の対応として有効な一方で、完全に火を消し止めるまで時間を要する。18323日に米国カリフォルニア州の国道101号線でテスラのEV中央分離帯に衝突して炎上した事故では、101号線の6車線が6時間も閉鎖された。

 この事故に対処した消防隊はEVに触れて感電する危険性についての判断がつかなかったため、テスラに助けを求めた。消防隊は道路の真ん中から動かせないテスラ車が再燃しないように水をかけ続け、現場に来たテスラの技術者が損傷した電池セルを1つずつ取り外し、バケツの水に沈めていった

 消火に時間を要することに加えて、消火に使った水の処理の問題もある。スイス連邦材料試験研究所(Empa)などは、EVの消火に使った水は燃えるバッテリーから出る化学物質で汚染されているため、そのまま下水に流すべきではないと指摘する。

 そこで、新たな対処法が生まれた。例えば、デンマークの消防署は事故を起こしたEVなど電動車を運ぶ特別なコンテナを開発。コンテナはレッカー車に載る大きさで、中に水をためられる。小型のクレーンを使って事故車をつり上げて、プールのようなコンテナの中に沈めてから搬送するのだ。

 このコンテナを使えば、大量の水を消費せずにEVを冷やせる上に、冷却に使った水を管理できる。事故現場からEVを動かすまでの時間も短縮できる見込みだ。実際に、オランダの消防隊はショールームで煙を出したドイツBMWプラグインハイブリッド車PHEV)「BMW i8」を、水をためたコンテナに沈めて冷却した(3、図4)。

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3 煙が出たBMW i8を水が入ったコンテナの上までつり上げる様子
(出所:オランダの中央および西ブラバント消防隊) 画像のクリックで拡大表示]

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4 コンテナの中の水に漬かったBMW i8
(出所:オランダの中央および西ブラバント消防隊) [画像のクリックで拡大表示]
   

 

 ところが、テスラはこの消火方法を勧めない。同社はモデルSの緊急時対応マニュアルに、「水の入った大きな容器に車両を入れることは推奨しない」と記載している(5)。代わりにバッテリーに直接、大量の水をかけて冷却する対処法を提示する。ただ、必要だと定義する水の量は約30008000ガロン(113563283L)で、前述の実際の事故で使用した約28000ガロン(105991L)とは大きな開きがある。

 

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5 テスラ「モデルS」の緊急時対応マニュアル
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から火が出た場合、車を水に沈めず、約30008000ガロン(113563283L)の水で冷却するように指示する。(出所:テスラ) [画像のクリックで拡大表示]    



 同社は、容器に車両を入れる方法を推奨しない詳細な理由は説明していない。消火に要する時間や水の量、使用した水の処理などの点でどのような消火方法が最適なのか、まだ不明な点が多いと言えるだろう。



メーカーの事故対応マニュアルは不十分

 NTSBEV特有の火災事故が増えつつある状況に警鐘を鳴らす。同機関はEVの火災への対処法を考えるために、1718年に起きた4件のテスラ車の火災と、リチウムイオン2次電池を搭載した車を造る自動車メーカー36ブランドの緊急時対応マニュアルの内容を調査し、20年に調査結果を安全報告書として発行した。その中で、ほとんどのメーカーの緊急時対応マニュアルはEVの消火に関する明確な情報を欠いていると指摘したのだ。

 例えば、大半のマニュアルには、燃えている高電圧バッテリーのどこに水をかけるか指示がなく、水をかけるのをやめても安全かどうかを判断する適切な温度のしきい値などについて具体的な情報がなかった。高電圧バッテリーを車両から切り離す手順は全てのメーカーが記載していたものの、再燃を防ぐための手順について具体的に説明した企業はなかった

 カーボンニュートラルを目指す世界的な潮流の中で、EVをはじめとする電動車はさらに普及が見込まれる。安全性をしっかりと確保していくためには、従来車と違った電動車特有のリスクを十分に把握し、いざ事故が起きたときに対処できる態勢を万全に整えることが求められる。

参考文献

1Angelo Verzoni, "Battered Batteries", April 22,2021. Retrieved from https://www.nfpa.org/batteredbatteries

2Jesse Roman, "Stranded Energy", January 1, 2020. Retrieved from https://www.nfpa.org/stranded

3National Transportation Safety Board. "Safety Risks to Emergency Responders from Lithium-Ion Battery Fires in Electric Vehicles", 2020. Retrieved from https://www.ntsb.gov/safety/safety-studies/Documents/SR2001.pdf

4National Transportation Safety Board. "Preliminary Report (HWY21FH007)", May 10,2021. Retrieved from https://www.ntsb.gov/investigations/AccidentReports/Reports/Forms/AllItems.aspx

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06034/?P=3



 

テスラのEVの火災事故は、衝突などでバッテリーが損傷して短絡を起こし、その結果発熱して火災に至ったものである。だからEVの場合、事故は怖いのである。

(続く)