世界自動車大戦争(65)

値引きで利益が上げられれば正しいのか

――北米事業の不振についてはどう説明していましたか。

「北米事業の不振の原因は過剰値引きだと日産が言っているが、値引きはその時々に行うことで、その結果利益が出たかどうかに尽きる」というのがゴーン氏の考え方だった。

「(ゴーン氏が)CEOだった2016年は大きな値引きがあったとしても十分に利益が取れていた。(201611月に)西川氏がCEOになってから値引きをやめる方針を立てて、それを打ち出したとたんに北米事業の利益が悪くなり、利益が崩壊した。2016年の値引きが2019年の利益の減少の原因になるわけではない」「値引きは道具。やる、やらないとか、増額・減額はマーケティングとセールスのツールだ。目標はトータルの利益で、会社全体の利益を確保すること」ということだった。

――西川氏やその他の経営陣にも業績悪化の責任はあるにしても、ゴーン氏に責任がないというのはいかがなものなのでしょうか

その点には私も疑問があったので、値引きの良し悪しについてかなり突っ込んで聞いた。ゴーン氏の説明は「エルメスはディスカウントしない。彼らは高ければ高いほど利益になる。それは良いことか、それとも悪いことか。それは彼らの利益を見れば一目瞭然で、利益が上がっていれば正しい。値引きの有無ではなくて利益が生まれているかどうか、値引きに会社が耐えられるかが重要だ」と

いうことだった。

彼の言うことは大変ロジカルで合理的だった。ただ、日産の販売戦略において値引きがどのような影響を与えたかという点について、私も若干疑問を持ったことは確かだ。

ゴーン氏は、自動車という商品のブランディングの重要性について、「同じ車でも、ベンツと日産ならベンツのような価格は日産にはとれない。中国メーカーの車も日産と同じ価格はつけられない」と言っていた。しかし、問題は、北米における日産車がベンツのようなブランドに近いか、中国車に近いのかという点だ。

過剰値引きのために、日産車が北米で中国車のようなイメージで見られ、ブランドを損なったとすれば、その影響は長期的に継続した可能性も否定できないように思う。値引きは、手段として利益を上げる結果が出せるかどうかが問題だというゴーン氏の見解は、理屈のうえではその通りだが、自動車販売の現実から考えてすべて正しいと言えるのかは疑問だ

――ゴーン氏と言えば、「コミットメント経営」で有名です。例えば、2011年度~2016年度までの中期経営計画「日産パワー88」で、グローバルシェ8%、営業利益率8%という目標は未達に終わりましたが、責任をとろうとしないゴーン氏自身への批判があります。

この点はストレートに聞いてみた。ゴーン氏の答えは「グローバルの市場シェアが7%に終わった、営業利益率も7%に落ち着いたことを失敗だととらえるのは完全に間違っている。計画はすべての項目が必達のようには作られない。全部計画通りに行ったら、もともとの計画が易しすぎたということ。背伸びをすることは人々をプッシュする。だから、目標をすべて達成できるというのは甘い。難しいものは未達になる。正しい方向に向かって進んでいればよい」というものだった。

目標と結果の関係はそのとおりだと思うが、問題は未達の結果をどう評価するかという点が、すべてゴーン氏の主観で決められていたのではないかという点だ。北米事業の不振の原因としての値引きの影響を短期的にとらえるのか、長期的にとらえるのかによって評価は異なってくる。そのような結果の評価の恣意性が、日産社内でゴーン氏にものが言えない「ゴーン独裁と言われる企業風土を作っていったのではないか。

検察がクーデターに加担したことは明らか

――現在の日産の業績悪化の原因についてどう考えていますか。

業績悪化の責任は、第一義的には、悪化した時点のCEOである西川氏にあると言えるだろうが、根本的には、その前任であるゴーン氏CEOの時代に北米で剰過値引きをしたことが原因となったことは否定できないと思う。ゴーン氏が今も日産に残っていたとしても、日産の業績の悪化は避けられなかっただろう。

ただ、私がインタビューを通じて感じたのは、日産がそういう逆境になった時に、ゴーン氏がいれば、FCAとのアライアンスなどの大胆な戦略で危機を突破できた可能性もあったのではないかということだ。ゴーン氏は、そう思わせる企業人としてのパワーを感じさせる人物だったというのが、インタビューを通じて私が受けた印象だ。

――ゴーン氏の話を聞いたうえで、今回の日産自動車とゴーン氏をめぐる事件について、どのように捉えていますか。

ゴーン氏は羽田空港到着後、弁解も聞かず突然逮捕された。その容疑事実とされた「未払いの役員報酬」の開示に関する金融商品取引法違反が、刑事処罰が当然と言えるような問題ではないことは、私が一貫して言ってきたことだ。それは、インタビューを踏まえてもまったく変わらない。事件の内容から当然だと言えるものではなく、ゴーン会長追放が目的だったからこそ、検察が無理筋の事件で逮捕してクーデターに加担したことは明らかだ。

問題は、日産自動車という日本でも有数の企業にとって、そのクーデターがどういう意味があったのか、どういう結果をもたらすのかだ。直接的な背景はルノーとの統合問題だったようだが、ゴーン氏を追放したところで、今後のルノーとの関係について問題が解決するわけではない。実際、現在も不安定な状況が続いている。

問題はより根深いところにある。徹底した成果主義をとるゴーン氏のコミットメント経営と、日本人幹部の旧来の企業観との間にはかなりのギャップがあったことが、ゴーン氏の言葉の端々からうかがえる。ゴーン氏は、それを日産が1999年以前の悪い状態に戻ろうとしていると見ていて、数年内に日産の経営は破綻すると予測している。

一方、日本社会の見方は「ゴーンは、日産をV字回復させて救ったところまでは良かったが、その後の長期政権で独裁となり、経営を私物化し、その結果、日産自動車が危機的な状況となった」というもの。どちらが正しいのか。日産が今後どうなっていくかを見て判断するしかないだろう。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/325265

 

 

 

だが私が見る限り、ゴーンは最強の悪(わる)だ。あらゆる金づるに対して、なんやかんやの理由を付けて、さも正しい金の使い方だと言い訳が出来るように仕組んで、日産の金をネコババしていたのである。

 

日産のV字回復を図って、経営者として名を挙げた訳だが、これってゴーンの経営能力が成した技だとは思えないのだ。外部から来た経営者だからできた非情のコストカットをヤッタだけではないのかな。こんなコストカットは当時日産社内でも計画に挙がっていたもので、誰でも考え就くものだが、身内にはそこまで手を付ける勇気がなかっただけだ。外から来たからできた技だ。外からくれば、ゴーンでなくても多かれ少なかれ、実行できた筈だ、と小生は考えている。ただゴーンは、情に深くなく、情には浅く少しは頭が切れただけだ。

 

だからお山の大将になると、悪知恵を働かせて日産の金を巧妙にネコババし始めた訳だ。

 

事実、ゴーンがやるべきことは、日産に魅力的なクルマを創り出させることだ。これが一番のゴーンの仕事であったわけだが、それが出来なかったし、リーフ以外にやる計画もなかったようだ。リーフと言ってもゴーンが考え出した企画でもなく、日産独自の企画であり社内では既に進行していたものであった。

 

だから現在の低迷する日産があるのは、ある意味ゴーンの責任である。何も西川社長一人の責任ではなくて、ゴーンの責任の方が余程大きかったはずだ。魅力的なクルマを創り出す仕事は、ちっとやそっとのことでは出来るものではない。長期的な視点が必要だ。ゴーンにはそれが欠けていた、と言わざるをえない。重ねて言うが今の日産の低迷は、ゴーンの責任と言っても過言ではない。米国での値引き販売を見れば、そのことがよくわかる。

 

米国の値引き冷徹なコストカットは、同一線上にある。何故米国で売れるクルマを造りだせなかったのか。造れとはっぱを掛けることが出来なかったのか、疑問の残るところである。

 

ゴーンに無駄口を叩かせないためにも、どうしても江戸幕府は、「必殺仕置き人」をレバノンに派遣する必要がある。

 

ゴーンに、のうのうとさせてはならない。


(続く)