世界自動車大戦争(77)

パナソニック、テスラ傾斜に転機 EV電池投資凍結 成長戦略に揺らぎ

2019/4/11 20:00
日本経済新聞 電子版

 車載電池を次世代の成長の柱に据えるパナソニックの戦略が転機を迎えた。米電気自動車(EV)メーカー、テスラと二人三脚で事業を育ててきたが、共同運営する米電池工場の投資凍結は採算確保の難しさを浮き彫りにした。テスラへの過度の依存を減らすため、トヨタ自動車との連携を深めるが、投資競争についていけなければ成長戦略が大きく揺らぐ。

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 「テスラとうまくいかなければEV事業はどこと組んでも成功しない」。パナソニックの経営陣はこう口をそろえる。価格が高く、充電設備も整っていないEVの市場はまだ小さい。しかしテスラは世界中に熱狂的なファンを抱え、同社の高いブランド力にパナソニックは懸けてきた。津賀一宏社長は201810月の決算会見でも「テスラ側と歩調を合わせながら北米での追加投資も検討していく」と蜜月ぶりをアピールした。

 ただテスラの普及価格帯の新型車「モデル3」の量産が軌道に乗るまでに多くの曲折があった。採算ラインとみられる週産5000台の到達時期を2度にわたり延期した。そのたびにパナソニックも収益の下方修正を迫られた。

 パナソニック自身も、車載電池の中核部品セルの生産が思うように進まず米電池工場200300人の技術者を派遣して対応してきた。原材料費もかさんでおり、同工場の大規模投資の償却負担も重い。同社のテスラ向け電池事業の営業損益は19年3月期は200億円の赤字となったもようで、赤字幅は前の期に比べ大幅に拡大した。

 津賀社長にはテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)から「電池を安くしてほしい」と直接電話が来ることもしばしばある。だがテスラ車の販売に陰りがある中で採算が伴わず、パナソニック分だけで1000億~1500億円と見込んでいた追加投資にブレーキを踏まざるを得なくなった。

 テスラが18年7月に表明した中国・上海の電池から完成車まで一貫生産する工場建設を巡っても、数カ月後にはパナソニック幹部が「彼らの描く成長戦略は急峻(きゅうしゅん)すぎる」と語るなど密な二人三脚から一歩引いた姿勢が目立つようになっていた。

 パナソニックは大きく2種類の車載電池を生産する。1つはトヨタハイブリッド車(HV)用に供給する「角形」。もう1つがテスラのEV向けに供給する「円筒形」。パナソニック16年3月期から19年3月期までに1兆円の「戦略投資枠」を設定した。大半を車載電池につぎ込んできたものの利益の刈り取りは乏しいのが実態だ。

 パナソニックはテスラに過度に依存するリスクを減らす意味もあり、トヨタとの連携を深めるトヨタとは20年末までにEVなどに搭載する電池を生産・販売する新会社を設立する。新会社はトヨタが過半出資し、パナソニックが持つ国内外の車載電池工場の大半を新会社の傘下に移す。

 将来の生産能力の拡大に伴う投資負担を分散でき、トヨタ向けに一定の販売数量も確保できる。

 パナソニックはプラズマパネルに巨額投資した時期に、液晶パネルにも投資し傷を深くした。「電池も円筒形と角形の2種類の投資を並行するのはリスクが大きい」(関係者)

 中国の比亜迪(BYD)や韓国のLG化学などが世界で電池生産に巨額投資を重ねる。装置産業の電池は投資競争に付いていかなければ競争力を落としかねないジレンマも抱える。

 電池事業で慎重なかじ取りを迫られるパナソニックだが、ほかに会社全体をけん引する事業が見当たらないのが弱みだ。国内で高いシェアを持つ家電事業で稼ぎ、電池など車載事業で伸びる成長戦略が揺らぐ。

 パナソニック18年3月期の有利子負債は約1兆円。手持ちのキャッシュと同額だが、総資産に対する有利子負債の割合は悪化している。経営危機に陥っていた13年3月期以来の水準にある。

 2月に19年3月期の業績見通しを下方修正し連結営業利益は当初見込みより400億円少ない3850億円とした。ソニーなどライバルの電機会社が高収益をたたき出す中でパナソニックは取り残されている。どうやって成長するのか。再び重い課題が突きつけられている。(千葉大史、藤野逸郎、シリコンバレー=白石武志)

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43635630R10C19A4TJ2000/?n_cid=SPTMG002

 

 

 

と言う訳で、2020.2.3に、トヨタパナソニックは車載用角型電池の新会社の設立概要を発表している。合弁会社2020.4.1設立予定で、会社名は「プライム プラネット エナジー & ソリューションズ株式会社Prime Planet Energy & Solutions, Inc. と言い、車載用高容量電池全般の開発・製造・販売などを行う。

 

トヨタからは東富士研究所の600人、パナソニックからは約4,500人(国内2100人中国2400人)が出向する。工場は、パナソニックの加西事業所(兵庫県加西市)や中国・大連工場などの六つの工場で生産し、パナソニックが販売を担当し、他の自動車メーカーにも販売する。

 

 

トヨタパナソニック、車載用角形電池事業に関する合弁会社の設立を決定

202023トヨタ自動車株式会社 パナソニック株式会社

トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)とパナソニック株式会社(以下、パナソニック)は、2019122日に、車載用角形電池事業に関する新会社(以下、合弁会社)設立に向けた事業統合契約および合弁契約を締結して以降、合弁会社の設立に向けた準備を進めてまいりました。この度、合弁会社プライム プラネット エナジー&ソリューションズ株式会社」の設立および合弁会社の概要が決定しましたのでお知らせいたします。

これからの社会において、電池は自動車をはじめとする様々なモビリティにエネルギーを供給するための、また各種の環境問題解決のためのソリューションとして、人々の暮らしを支える中心的な役割を果たすものと考えています。

合弁会社は、全てのお客様に安心してお使いいただける安全で優れた品質・性能(容量、出力、耐久性他)、ならびにコスト等を実現できる高い競争力のある電池を開発してまいります。また、本合弁会社トヨタのみならず、全てのお客様に広く、かつ安定的に電池を供給してまいります。

合弁会社の社名は、かけがえのない私たちの地球を豊かでクリーンに保つために、多くの仲間と手を取り合いながら、電池というエネルギーの供給のみならず、お客様に幅広い付加価値・ソリューションを提供していくという強い決意を込めたものとさせていただいております。

合弁会社の概要>



1)名称

プライム プラネット エナジー&ソリューションズ株式会社
Prime Planet Energy & Solutions, Inc.

2)所在地

東京本社:東京都中央区日本橋室町二丁目31
関西本社:兵庫県加西市鎮岩(とこなべ)町194番地4

3)事業開始日

202041日(予定)

4)役員体制

代表取締役社長 好田 博昭(トヨタ
・取締役5名(トヨタ3名、パナソニック2名)※代表取締役社長含む
監査役2名(トヨタ1名、パナソニック1名)

5)事業内容

・車載用高容量/高出力角形リチウムイオン電池の開発・製造・販売
・車載用全固体電池の開発・製造・販売
・上記以外の車載用次世代電池(新原理によるものを含む)の開発・製造・販売
・その他付帯・関連事業

6)出資比率

トヨタ51%)・パナソニック49%)

7)従業員数

5,100人(含、中国子会社2,400人)

以上

https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/02/jn200203-1/jn200203-1.html

https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31477868.html

 

 

 

この車載用電池の共同生産会社は、トヨタ51%出資して過半数を持つことになっている。

 

パナソニックの電池事業はCATLに次いで世界2位の販売量を誇っているが、その内情は赤字続きのようで厄介者扱いの事業であるようだ。その原因はと言えば、テスラと共同で始めたあの「ギガファクトリー」である。テスラのモデル3が売れなかったのか、ギガファクトリーのリチウムイオン電池の供給が出来なかったのかは定かではないが、約2100億円の巨額投資が響いて、ずっと赤字が続いている。イーロン・マスクも自分の責任を棚に上げて、パナソニックに背を向け始めている。自分で車載電池の開発・生産を始めるつもりの様だ。


(続く)