世界自動車大戦争(108)

一つ重要な因子を(忘れているわけではなかろうが)、忘れている、と言うよりも言及していない。

 

それは水素ステーションの数である。ご承知の様に、「ミライ」は水素を使って電気を起こして(燃料電池、モーターで動くクルマである。従って水素が無くなれば、走らないことになる。

 

ガソリンが無くなれば、今の自動車は最寄りのガソリンスタンドで、ガソリンを入れてまた走ってゆく。

ガソリン(スタンド)がある限り、今の自動車は何処までも走ってゆけるわけだ。

 

「ミライ」も水素ステーションがあれば、水素は僅か3分で注入できるので、すぐさまどこまでも走ってゆける、と言う事である。しかしどこにも水素スタンド(ステーション)が、現状ではある訳ではない。これは重大な事である。850km近く走れても、水素タンクを満タンにしてくれる水素ステーションがなければそんなことは出来なくなってしまう。これは、当たり前のことである。

 

「ミライ」を10倍売りたければ水素ステーションをそれだけ作っておく必要がある。

 

これがなければ、いくら「ミライ」と言うクルマがカッコよくて使い勝手が良くても、10倍なんぞは売ることは出来なかろう。

 

トヨタは「ミライ」を普通のクルマにしたければ、水素ステーション自前で設置するくらいの蛮勇があってもよいのではないのかな、「ウーブンシティ」と同じように。少なくとも下記の水素ステーションが、いつでも使えると言う状態を維持できるようにしてゆきたいものである。そうすれば、少ないステーションでもミライは10倍は売れるのではないのかな。また売れれば、稼働するステーションも増えてゆく、と言う事なので、ともに必要な事である。

 

 

水素ステーションの一覧表は、下記参照のこと。

 

https://toyota.jp/mirai/station/index.html

 

これによれば、水素ステーションの数は、118となっている。但し稼働日、稼働時間は夫々確認しないといたずらに訪れても、稼働していない時が多いようだ。地域別は次の通り。

 

北海道・東北   4

関東      45

中部      33

近畿      18

中国・四国     8

九州      10

合計       118

 

 

次に燃料電池実用化推進協議会FCCJの「商用水素ステーション情報」(http://fccj.jp/hystation/)によれば、136箇所で内24箇所は計画中の物のため、差し引き112箇所が現存するステーションの数となっている。

 

この先の118箇所とこの112箇所での差、6箇所の違いは、何か不明である。どちらが正しいかはわからないが、高々100箇所程度の水素ステーションでは、FCVの販売は伸びない訳だ。しかもすべてが稼働しているわけではない。

 

政府のロードマップでは、

2020年には160箇所

2025年には320箇所

2030年には900箇所   を想定している様だが、どんなものだか。

 

まあ取り扱う対象が水素と言う事で慎重にならざるを得ないものではあるが、巷のガソリンスタンドに水素ステーションが併設されていれば、FCVにとっては好都合ではないのかな。だから、ある程度の大きなガソリンスタンドであれば、水素タンクの併設も出来るように規制改革を実施すれば、それなりに水素ステーションは増加する筈だ。

 

 

ちなみに、FCV「ミライ」の日本での販売実績は次の通り。201412月発売以来、2019年までの5年でたったの3,346となる。

 

House to Househttp://house-to-house.car.coocan.jp/fcv.htmlによれば、次の通り。

 

 

2014年   7

2015 411

2016 950

2017  766

2018  575

2019  644

 合計 3,346

 

 

発売当初は、700/年の生産能力だったものだが、今では3,000/年となっている、と言われているが、2018の生産台数が2,400だったと言う数字をどこで見たので、年間3,000台の生産能力はつい最近になってアップさせたものでしょう。

 

この生産能力台数と国内販売台数の差は輸出台数となる。輸出台数の方が多いのは当然だ。販売先は米国と欧州9か国である。ZEV規制のある米国のカリフォルニア州では、2015.10.21発売から2018.1.23で、丁度3,000台の販売を突破している。たったの23ヵ月である。

 

ことほど左様に燃料電池車の生産には、燃料電池スタックや水素タンクなどのややこしいものが沢山あるのだ。これを10倍にすると息巻いていると言う事は、それなりにしゃかりきに生産能力の増強を図ってゆかなければ、達成することはできないのではないのかな。トヨタさんも大変だ。頑張ってほしいものだ。

 

序にと言うよりも、本格的に水素ステーションの設置にもシャカリキになってもらいたいものだ。

 

 

もう一つ気になるのは、「ミライ」の車種構成である。

 

このミライ・コンセプトの車格は、クラウンやLSクラスである。もう少し小さなクラスのFCVがあってもよかろう、と思っている。その方が台数がはけるのではないのかな。SUVやミニバンもよいけれど、プリウスC-HRクラスのFCVも必要となるのではないのかな。

 

GA-Cクラスのクルマ、即ちプリウスC-HRクラスだ。GA-Kクラス、RAV4クラスでもよかろう。そうすれば、相当台数は、はけることになる。但し車両に搭載する水素タンクにかなりの工夫が必要となるのだが。

 

小さいクルマには小さなタンクしか積めないことになる訳だ。これでは航続距離が伸びないことになり、今時のEVと同じ弱点をさらけ出すことになってしまう。これでは困るのである。

 

だから、水素タンクにはかなりの創意工夫が必要となってくるわけだ。さもないとの小型車クラスにはFCVは造れない、と言うことになってしまう。

 

今回「ミライ・コンセプト」の航続距離が+30%845km程度になった、と言う事は、それだけミライがでかくなったと言う事である。事実、そのプラットフォームはGA-KからGA-Lへと大型化している。いわゆるカムリクラスからレクサスLSクラスに大きくしている。このように大きくしないと、大きな水素タンクが積めなかった、と言う訳だ。大きな水素タンクが積めなければ、航続距離は+30%は伸ばせなかったと言う事である。

 

このあたりがFCVの限界なのであろう。当分は、セダンタイプではこのクラスどまりとなるのではないのかな。いわゆるGA-CクラスのプリウスC-HRFCVは、日の目を見ることは無いであろう。あるとすれば、GA-KカムリRAV4クラスFCVまでとなろう。まあ、このクラスのSUVミニバンには、可能性はあるのかもしれないのだが。

 

と言う事はセダンの次は、大中型トラック・バスに、大きな水素タンクか小型タンクなら数多く載せて走らせる、と言う事は出来そうだ。

 

ここらあたりが、FCVの生きのこる場所ではないのかな。その間に水素ステーションの普及があれば、セダンタイプのFCVも一層普及すると言うことになろう。

 

ちなみに現行ミライ(初代)の水素タンクの容量は、前方のタンクが60Lで、後方のタンクが62.4Lである。合計で122.4Lとなる。

650km ÷ 122.4L 5.31 km/L

 

これで650kmの航続距離となるので、水素1L当たり5.3kmの航続距離となる。それほど良い燃費と言う訳ではない。燃料電池の発電能力の向上が期待されるところであるが、今のところ航続距離を稼ぐためには、大きな水素タンクが必要と言う事なのでしょう。だからミライ・コンセプトはレクサスLSほどではないにしても、クラウンより幾分大きくなった訳だ。

 

この初代のFCVミライに関しては、小生のブログ「次世代エコカー・本命は?」(2014.11.25~)に詳しく書かれているので参照願うが、水素タンクについては2015.01.13NO.32に載っているので参照願う。

 

先の論考の最後の部分では、乗用車と部品を共用してコストを下げたい、と言っているのだが、現行ミライは、次のように共用している。同上ブログの2015.1.14NO.33参照のこと。

 

駆動用バッテリは、HV車で使い慣れたカムリHV用と同じニッケル水素2次電池だ。

駆動用モーターやパワーコントロールにニットは、レクサスRX450hと同じものだ。

 

と言う事は、この「ミライ・コンセプト」も部品の共用は、相当進んでいると思って間違いがなかろう。アンダーボデー足回りなども、クラウンなどと相当共用しているのではないのかな。そうでもしないとコスト高で首が回らない筈だ。

(続く)