次に大中型トラック・バスについて、少し触れてみよう。
燃料電池バスについては、2005(H17)年3月25日から同年9月25日まで開催された「愛・地球博(愛知万博)」(EXPO 2005 AICH JAPAN)で、本会場の長久手と瀬戸会場を結ぶシャトルバスとして運用されていたので、ご承知の方もおられることと思う。
屋根に高圧水素タンク、後部にモーターや電池を配置。
ノンステップ仕様で、最高速度は時速80km。
http://www.expo2005.or.jp/jp/A0/A9/A9.4/index.html より。
この燃料電池バスはトヨタ自動車が、日野自動車と協力して作ったものである。燃料電池スタックはFCVミライのモノを改良したものでしょう。水素タンクは屋根の上に搭載されている。
なお2003(H15)年8月から2004(H16)年末まで、東京都交通局でも同じタイプの燃料電池バスが運行されていた様だ。当然そこからの経験で、万博タイプのFC BUSは改良されていたことでしょう。
現在トヨタは、FCVバス「SORA」を販売している。「SORA」は2018年3月に発売されたものである。
2019年3月には、京浜急行バスが民間事業者としてはじめて、この「SORA」を導入している。
トヨタのFCV開発方針、「トラックは100万km耐久可能に」
FCバス開発責任者に聞く
窪野 薫日経 xTECH 2019.03.29
小型から大型まで幅広く商用燃料電池車(FCV)戦略を進めているのがトヨタ自動車だ。中型の車両としてはFCバス「SORA(ソラ)」を展開している。2019年3月には、京急グループの京浜急行バスが民間事業者として同車両を初めて導入した。FCバスだからこそ必要な開発のポイントとは――。ソラ開発責任者の権藤憲治氏に聞いた。
(聞き手は窪野 薫=日経 xTECH)
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トヨタ自動車の燃料電池(FC)バス「SORA(ソラ)」、総容積600Lの水素タンクを屋根部分に搭載し、1回の水素充填で約200kmを航続可能にした(撮影:日経 xTECH) [画像のクリックで拡大表示]
FCバスの開発は、乗用FCV「MIRAI(ミライ)」とは違う難しさがある。
まず大きく違うのが、耐久性への要求が高いこと。商用車は稼働を止めないことが最重要だからだ。FCVでは、FCスタックの劣化が懸念点である。ソラでは、FCスタックの制御をミライから刷新した。電位変動を可能な限り一定にするために、搭載するニッケル水素電池から出力を補完できるような仕組みに変更。長い距離を故障なく走れるようにした。
ソラの開発責任者を務めたトヨタCV製品企画ZM主査の権藤憲治氏(撮影:日経 xTECH)
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トヨタのFCV開発方針としては、ミライのような乗用FCVで20万km、ソラのようなFCバスで60万kmを走れるように、耐久性の基準を設定している。その他、小型FCトラックは100万km弱、大型FCトラックでは100万km以上が基準値だ。利用年数は10~12年ほどを想定する。ソラのような街乗りのバスは、走行時間は長いが平均車速は15km/hほどと遅い(東京都内の場合)。そのため、大型トラックほどは必要距離は延びない。
10~12年間使い込んだ後が大変だ。商用車は、日本での利用を終えると、海外市場のアフターマーケットに出回る。東南アジアやアフリカの企業が購入し、壊れるまで使う。車両が壊れるまで通算でどのくらい走ったか、我々トヨタでも把握しきれていない。中には、150万km以上走るトラックもあると聞く。商用FCVの場合は、水素ステーションの整備などで利用までのハードルが高いため、そこまで過酷な環境下で使うことは想定していない。
FCスタック以外の耐久性はどうか。
アクスル(車軸)系は、100万~150万km走っても不具合が出ないように設計する。その他、車体やシャシーなどで大きな改良点はない。ベースとした日野自動車の「ブルーリボン」のハイブリッド車(HEV)仕様からの流用部品が大半を占める。ソラでは、日野が車両と駆動部分を、トヨタが電動制御やFCシステムを担当している。開発全体の指揮はトヨタが執った。
モーターや電池は乗用HEVからの流用でコストを抑えた。モーターは「レクサスRX」用のものを2基搭載している。最高出力は226kW(113kW×2)、最大トルクは670N・m(335N・m×2)である。電池は「クラウン」用のものを4基搭載。モーターと電池は、車両後部の床下部分に納めている。
バスにそこまで稼働率の向上は必要か。
バスも一般的なトラック同様に稼働率が命だと思う。少ない台数で乗員を効率よく運べれば、運行事業者にとっては車両コストや人件費の削減になり、儲けの幅が増える。
耐久性を高めたことで、故障による整備の時間を減らせることはもちろんだが、FCVとして水素の充填時間が短いことも利点だ。ソラは総容量600L(容量60L×10本)の水素タンクを屋根部分に搭載しており、約10分で満充填にできる。同車格の電気自動車(EV)バスでは、急速充電で1~2時間、通常充電では約半日を要する。差は大きい。
トヨタは電動化戦略を、FCVやEV、HEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)を含めた全方位で進めている。現時点の技術では、200~300kmが商用のFCVとEVの境界線だと見ている。短い距離ならばコストを含めてEVに利点があるし、長距離を走るならFCVが良い。
ソラが搭載する基幹部品(出所:トヨタ自動車、撮影:日経 xTECH) [画像のクリックで拡大表示]
故障を未然に防ぐ「故障予知」の技術がトラックでは一般的になってきた。
ソラでは、FCスタックの劣化度合いに対象を絞ってモニタリングしている。劣化が数値として見られるわけではないが、発電能力の低下など、劣化の兆候を抽出して分析する手法を採用した。複数のセルを組み合わせたモジュールごとに、電位変動を観測できる仕組みで、不具合の箇所が分かりやすい。セルの出力が10%低下したら交換していく方針だ。
ソラはCAN(Controller Area Network)データを記録し、それを電話回線に乗せて飛ばす。30~60分ほどの時間ごとにデータを送信しているため、突発的な不具合にも対応しやすい仕組みだ。記録する間隔を短く設定すれば精度を高めていくこともできる。
2018年3月にリース提供を始めてから、幸いなことに大きな不具合は発生していない。今後、通算の走行距離が延びるとどうなるか分からないが、収集した貴重なデータは次期型FCバスの開発に生かしたい。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00327/032700015/?P=2
このFC-BUS は売り切りでなくて、リース販売のようだ。まだそれだけの自信はないようだ、と言うよりもトヨタもバス事業者も、その方が安心感がある、と言う事か。
(続く)