日本のご皇室と英国王室(15)

世界の論点】メーガン妃の告白

2021.3.22 11:00 コラム その他

【世界の論点】メーガン妃の告白2018年6月、英バッキンガム宮殿での式典で、エリザベス女王(右)と同席するヘンリー王子(中央)とメーガン妃 (ロイター)



 「生まれてくる子の肌の色はどれくらい濃くなるのか」。英ヘンリー王子の妻でアフリカ系の祖先を持つメーガン妃が、長男を妊娠中に王室内で人種差別的な扱いを受けたと米テレビ番組で告白した。人種差別の解消が大きな社会問題となっている米国で、夫妻の訴えは広く支持され、好感度は20ポイント以上も上昇した。英国でも夫妻の発言は将来的な王室の存続に関わると深刻に受け止められ、王族に「変化」を求める論調が目立っている。

 米国 英王政への全面的な攻撃

 米CBSテレビで7日夜に放送された英ヘンリー王子と妻メーガン妃のインタビュー番組は1710万人が視聴、芸能番組としては昨年2月の米アカデミー賞授賞式(2360万人)以来の視聴者数となり、大きな注目を集めた。

 米国内で最も波紋が広がったのが、メーガン妃が英王室内に長男の「肌の色の濃さ」を懸念する声があったなどと告白した問題だ。米紙ワシントン・ポスト(電子版)は9日付の記事で「衝撃的なインタビュー」と評し、英王室を「2世紀以上にわたってアフリカ人の奴隷貿易を行った国の王朝」と非難し、「インタビューは英王室に黒人排斥の意識が残っている可能性を明らかにした」と指摘した。

 番組放送直後の9日に中西部ミネソタ州の黒人男性暴行死事件の公判が始まり、人種差別への問題意識が改めて高まる中、「とりわけ象徴的なタイミングのインタビュー」になったとも指摘した。

 米紙ロサンゼルス・タイムズ(同)は8日付の社説で、英王室が熱狂的なファンを持つ一方、「長年にわたり、英国の公的資金を浪費しているにすぎないと激しい批判の的となっている」と指摘した。メーガン妃については「時代遅れの英王室に新しい息吹を吹き込もうとしていた」と評価。メーガン妃が離れたことで、英王室は「多民族的な世界でより適切な存在」になる機会を逃したとし、「王室や廷臣(ていしん)がそれに気づかないのは不幸なことだ」と論じた。

 他にもメーガン妃らの告発を支持する論調は多く、米調査会社のモーニング・コンサルトによると、番組放送後、メーガン妃に対する米国人の好感度は67%、ヘンリー王子は69%となり、それぞれ放送前と比べ20ポイント以上上昇した。

 一方、米紙ウォールストリート・ジャーナルのコラムニスト、ペギー・ヌーナン氏は週末版(13、14日)の記事で、告白は「千年以上続いてきた英国王政に対する全面的な攻撃だった」と総括した。

 ヌーナン氏は、ヘンリー王子が王族について「王座を維持できるかどうかを左右するタブロイド紙への恐怖にとらわれた」存在だと主張したことで、「王室の弱体化」という問題も提起したと述べた。

 そして、米国人が英王室に関心を持つのは、米国に王室が存在しないという理由にとどまらず、英国から独立した歴史を持つ米国に「継続性と安定性の概念を与える、君主制の神秘」を尊重しているからだと指摘。ヘンリー王子が「王族を弱者とみなしたことにより、その神秘性は薄まっていく」と論じ、インタビューが英王室にもたらした打撃の深刻さを懸念した。(ニューヨーク 上塚真由)

 英国 ならなかった改革の象徴

 メーガン妃が人種差別的な扱いを受けたと訴えたインタビューは英王室に大きな衝撃を与えた。エリザベス女王の人気に陰りは見えないが、時代の変化に応じた改革を進めなければ将来にわたり王室を存続させるのは難しいと危惧されている。

 英王室内の人種差別を王族が米国のテレビ番組で告白するという衝撃的な展開に、英大衆紙ミラー(電子版)は8日、「王冠をかけた恋」と呼ばれるエドワード8世が周囲の反対を押し切って離婚歴のある米女性と結婚するため退位を決意した「1936年以来、王室にとって最大の危機」と報じた。英国民の間では「王室の崩壊につながるのでは」との不安も広まった。

 こうした中、英紙ガーディアン(電子版)は12日、メーガン妃の告白は王室にとって「致命的」としつつ、「(現在のところは王室を維持する上で)有利な状況が続いている」と指摘。今回の一件で君主制が廃止されることはないと冷静に論じた。根拠の一つとされたのが、女王率いる王室が「はるかに大きな試練を乗り越えてきた」ことだ。

 1997年のダイアナ元妃の事故死では、バッキンガム宮殿に半旗が掲揚されず、葬儀の前夜まで女王が公式の声明を出さなかったことに非難が殺到し、女王の支持率が急落した。当時と比べればメーガン妃らの訴えが「王室に与えた衝撃は小さい」と王室の専門家は指摘する。

 英調査会社ユーガブによるとインタビュー公表後の女王の支持率は80%。英紙タイムズ(同)は9日、「女王はいまだに、あらゆる世代にわたり、世界的な称賛を集めている」と伝えた。

 ただ、今年95歳になる女王が永遠に君臨することはできない。ユーガブの世論調査によると、王位継承順位1位の長男、チャールズ皇太子の10~11日時点の支持率は49%。皇太子の長男で継承順位2位のウィリアム王子の76%を下回った。人気の高い女王なくして多額の経費がかかる王室を将来も存続できるのか-という疑念の解消へ向けた道筋は示されていない。

 メーガン妃とヘンリー王子の結婚を王室が許した背景には、多様性を受け入れる姿勢を示すことにより、「開かれた英王室」のイメージを内外に伝える狙いもあったとされる。今回の騒動を受け、英紙インディペンデント(同)は8日、2人の結婚が「王室が時代に合わせて改革できることを示す」象徴にならなかったことを嘆いた。「王室が(人種差別の問題などに対応できるよう)変わらなければ、遅かれ早かれ、無用の長物になっていく」と厳しい見方を示している。(ロンドン 板東和正)

 ≪ポイント≫

 ・英王室に黒人への差別意識がある可能性

 ・王室は多様性を世界に示す機会を失った

 ・エリザベス女王の人気に陰りは見えない

 ・公的資金で支えられる王室の将来に懸念



https://www.sankei.com/column/news/210322/clm2103220004-n1.html?564102



 

とは言うものの、ヘンリーとメーガンはさっさと王室を離脱してアメリカへ渡ってしまった訳であるが、それと言うのも、2人はアメリカで独立できる自信があったからである。

 

ヘンリー王子は、早速米新興企業の幹部に祭り上げられている。

(続く)