纏向遺跡と邪馬台国(日本古代史の謎)(17)

 

8.銅鏡百枚と三角縁神獣鏡

魏志倭人伝には、後半の終わりから1/4程戻ったところに「今、・・・銅鏡百枚・・・賜う。皆装封して難升米・牛利に付さん。還り到らば録受し、悉く以て汝が國中の人に示し、國家汝を哀れむを知らしむべし。故に鄭重に汝に好物を賜えり」 と記載されている。鏡は卑弥呼の好物だったようだ。

明治の頃から三角縁神獣鏡が盛んに出土したため、これが「卑弥呼の鏡」ではないかと言われていたが、今では既に560枚も出土していると言うので、明らかに「銅鏡百枚」の量をこえてきている。

これらの事実を見ても、これら三角縁神獣鏡は「卑弥呼の鏡」ではないことは、容易に推測、というよりも断言できる。

ここに「宝島社」の「古代史15の新説―新視点で読み解く古代日本の論点」(2016.12.15発行)と言う雑誌がある。

そのなかに藤本昇氏の「鉛同位体比から卑弥呼の鏡を考える」と言う論考が載っている。これは氏の「卑弥呼の鏡」(海鳥社)からの抜粋まとめであるが、三角縁神獣鏡は、その成分から漢鏡などではなく、倭国製の国産品であると結論付けている。

ここでは、その内容を紹介しよう。


先ず銅鏡は、銅と錫の合金である、と言う事はよく知られていることと思う。

しかし地球誕生時の岩石・鉱物中には僅かなウランUとトリムThが含まれており、長い年月とともにU,Thは放射壊変により鉛の同位体へと変化すると言う。

U,Thには、238U、235U、232Thという種類があり、それぞれ放射線を出すことにより(放射壊変と言う)安定した原子核に変化すると言う。これを最終核種と言い、それぞれ206Pb、207Pb、208Pbと呼ばれる最終核種・鉛同位体となる。

もう一つ鉛同位体204Pbは、地球が生成された時の存在量のままで変化しないものである。

従って青銅に含まれるこれら鉛同位体の量(具体的には鉛同位体の比率)を測り、異なる青銅が同じ比率を示せば同じ生成過程を経た鉱物であると判断できる訳である。即ち同じ鉱床から産出されたものとみなすことが出来る。

このことにより漢鏡や三角縁神獣鏡の鉛同位体比を分析すれば、それぞれの産出地が推定できるのである。

詳しくは次のURLを参照願う。



同位体比分析による文化財の産地推定法のご紹介
2016年1月1日

はじめに

古文書や古記録等の史料から、歴史が紐解かれることにより、私たちは過去の出来事を知り、そして多くのことを学んできました。
近年では、様々な歴史資料の材質や産地・年代などを明らかにするために、史料を読み解くだけでなく、科学的手法を用いた解明が取り入られるようになり、新たな事実も徐々に明らかになってきました。  

その科学的手法の中に、「同位体比法による原料産地推定」というものがあります。これは、鉛同位体比が鉱山毎に異なるということを利用して、金属材料中に含まれる鉛の同位体比測定を行い、原料の産地を推定するものです。産地の推定ができれば、文字の記録のない時代に行われた文化交流や物質・人々の移動を研究する上でとても重要な情報が得られます。
本法は、1965年アメリカで始まり、日本では1967年から取り組まれ、約50年もの間、平尾良光氏(現別府大学客員教授)を中心に研究されてきました。その測定に使用する「表面電離型質量分析装置(Thermal Ionization Mass Spectrometry、以下TIMSと記載する)」が昨年当事業所へ測定技術と共に移管され、当事業所の新たなメニューに加わりました。

今回は、この「鉛同位体比分析」について以下にご紹介します。

(続く)