カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(23)

EVユーザーが次に乗り換える車としてEVを選ぶ割合は、半分一寸である。大半のEVユーザーは、またEVを選ぶのかと思っていたが、そうではなかったのだ。このデータでは、53.8%の人しかEVを選ばなかった訳だ。 

 

その理由としては、

 

 

(1)充電に時間がかかる。 

(2)充電スポットが少ない。 

(3)充電の残量が不安になる。

 

 

と言った理由がTOP3である。バッテリーの充電に関するもので、占められている。BEVである以上、エンジンに変わるものとしての動力源のバッテリーに対する不満・不安が出てくることは、当然のことであろうと理解できるものである。小生としては、この不満・不安が払しょくされない限り、BEVはそれほど普及はしないのではないかと思っているものである。

 

 

 

特に軽自動車のEVであれば、充電に対する不満・不安、即ち航続距離に関する心配は、ついて回るものと思われる。 

 

そんな「日産サクラ」の試乗記があるので、ご一読願う。

 

 

日産サクラ 最高の乗り心地も「充電難民」でマジ泣けたっス

 

第698回 日産 サクラ(試乗編) 

2023.2.13 

51件のコメント 

フェルディナント・ヤマグチ コラムニスト 

 

(略) 


軽自動車界の風雲児。日産サクラ試乗記をお送りします。 

 

 

出だしは好調だった。
 「これは素晴らしい!」。走りだしてすぐに感嘆し、高速道路に入ると「すげえ!」「速い!」「軽じゃないだろこれ!」と助手席に座る日産自動車の広報氏に向かい称賛の言葉を次々と口にした。 

 

軽の皮をかぶった高級車 

 

 日産の軽EV(電気自動車)「サクラ」。
 別の媒体の取材で赴いた日産グローバル本社で車両を受け取り、家が同じ方向だからと同社広報の伊藤俊くんを隣に乗せ、みなとみらいインターから首都高速道路に乗り、いくつかのコーナーを越えてから第三京浜道路に入ったときのことだ。
 「良いでしょう」と鼻の穴を広げ、勝ち誇ったように伊藤くんが言う。
 うん。良い。ものすごく良い。
 間違いなく軽自動車最高レベルの高速安定性。道路の継ぎ目を越える際、安っぽく跳ねることもなく、ドスンともパタンともいわない岩のような高剛性。重いバッテリーをボディ下部に配した高重量低重心がもたらすものだろうか、ともかく乗り心地が非常に良い。 

 

軽自動車の概念を根底から覆す日産サクラ。   

 

 クルマは軽いに越したことはない。加速も減速も良くなるし、コーナリング性能も向上する。(アルミやハイテン鋼などの高額部材を使わなければ)原材料費は抑えられるし、ブレーキやタイヤへの負担も軽減できる。なにより燃費が良くなるから江古田……じゃなくてエコだ。
 だが「重さゆえの安定感」があることも事実だ。サクラはそれを体現している。
 サクラの重量は1080キログラム(Gグレード)。軽自動車としては相当重い。同じ日産の軽で、サクラ同様に三菱自動車が製造するデイズのFF仕様車の重量は840キログラム。サクラより200キログラム以上も軽い。デイズももちろん良いクルマなのだが、サクラと比べるとやはり軽い「ICE(内燃機関)の軽」である。道路の段差では跳ねるし、加速時はウンウンうなるし、高速で横風を食らうとヒヤヒヤする。 

 

何度も充電でお世話になった日産東京販売成城店。親切にしていただきありがとうございました。  

 

 一方でサクラのこの安定感はどうだ。そしてこのトルクフルな走りはどうだ。
 前輪を駆動させるモーターは、交流同期のMM48型。ノートe-POWER四駆版の後輪を駆動するモーターと同型機だ。それを軽自動車業界の自主規制に合わせるため、ほんの少しだけデチューンして搭載している。最高出力はおなじみ64馬力。これを2302rpmから10455rpmの間で発生し続ける。実際に1万回転超えの領域に入ることはないのだが、そこまで楽勝でブン回し、高出力を発生し続ける驚異のモーターだ。サプライヤー明電舎。東京都の大崎にある本社の近くには、おいしい鰯(いわし)料理の店があったのだが、今はどうなっているのだろう。 

 

 そして 最大トルクは驚異の195N·m。トルクに自主規制はないから、文字通りの“やり放題”である。この超絶トルクが生み出す力強い加速。しかもその加速は暴力的なものでは決してなく、しっとりと上質だ。「胸のすくような加速」でありながら、決して一線を踏み越えない。1080キログラムの車重に対し、195N·mのトルク。チューニング次第ではドタバタ暴れる下品な加速も容易に実現可能なスペックだ。だがそうしていない。開発担当者のお人柄だろうか。下品ギリギリのところで止めている。下品好きの不肖フェルとしては、「もっとやっちゃえ日産!」と申し上げたいところなのだが、やはり市販車ですからね。そうムチャもできますまい。 

 

前輪の駆動部分。     

 

 最上級グレードのGだから、ということもあろうが、インテリアも実に上質だ。
 ここも軽最上級ではあるまいか。水平基調のダッシュボードが良い。シートの座り心地も悪くない。翌週にスキーの予定があったので、コンビニに宅配便を出しに行ったのだが、助手席の背もたれを後ろに倒し、後部座席の背もたれを前に倒すと、ご覧の通り広大なスペースが生まれる。大きなスキーケースも楽勝で収納可能である。波乗りに行く人も、ミドルレングスなら板を車内に収納できそうだ。 

 

大きなスキーケースも楽勝で収納可能である。なんかこうして見るとずいぶんボロいですね。そろそろ買い替えの時期かなぁ……。   

 

 と、さんざん褒めそやしてきたのだが、大きな弱点もある。航続距離だ。
 標榜する数値は満充電で180キロメートルWLTCモード)。車両を受け取った際、航続可能距離は150キロメートルと表示されていた。日産グローバル本社から伊藤くんを降ろすために二子玉川駅を経由して自宅まで28.6キロメートル。帰宅時にはすでに航続可能距離が100キロメートルを割っていた。28.6キロメートル走って50キロメートル分の消費。“暖房全開”“高速走行”とEVには厳しい条件で走ったとはいえ、れはひどい話半分とはこのことだ。

 

(続く)