カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(139)

調査会社のマークラインズによると、トヨタなど日本車メーカー6社の米国での販売シェアは2022年で3割強に上った。トヨタ自動車が15%、ホンダが7%だ。だがEVに絞ると販売車種は日産自動車の「リーフ」などに限られる。ガソリン車やハイブリッド車(HV)が主体で現状、EVの生産・販売体制はほとんど整っていない 

 

米国でEVに税優遇する歳出・歳入法(インフレ抑制法)が22年8月に成立した後、日本車メーカーは米国でのEV一貫生産体制の構築を急いでいる。 

 

トヨタケンタッキー州の工場の生産設備を改修し、ガソリン車と一緒にEVも造れるようにする。まずは多目的スポーツ車SUV)を25年中に月約1万台生産し、26年以降は年20万台規模に引き上げる。米国で生産する車の2割近くがEVになる見通しだ。 

 


 

 

ホンダオハイオ州の主力工場でラインを改修し、同工場で造ったEVを26年に販売する。同州の別の工場でもEVを生産できるようにするほか、エンジン工場では車載電池のケースを生産する。日産も26年から順次、ミシシッピ州の工場で高級車ブランド「インフィニティ」を含む新型EV4車種の生産を始める。 

 

完成車の税優遇の対象は北米に限られた一方、車載電池は材料の一部が日本で採取、加工された重要鉱物が優遇対象となる。電池サプライチェーン協議会(BASC)の森島龍太・業務執行理事は「これを機に日本として米国市場に臨みたい」と話す。 

 

日本自動車工業会豊田章男会長は「重要鉱物の供給網確保に向け、日米の協力関係が維持・強化されることを歓迎する」と述べた。伊藤忠総研の尾三四郎上席主任研究員は「重要鉱物がどこで採取されたかなどを把握するためのデータ基盤の構築も急ぐ必要がある」と指摘する。 

 

日本メーカーは1970年代に顕在化した日米貿易摩擦を契機に、米国の現地生産を進めてきた。各社は現地で部品調達網も構築した。ホンダの場合、北米での部品調達率は主力車種で約80%となった。 

 

日欧などは引き続き輸入車への優遇拡大を訴える考えだが、実現は不透明だ。ガソリン車やHVで進めた現地生産体制の構築ノウハウはEVでも生きる可能性があるが、欧米メーカーのEV攻勢は激しく高シェアの維持には難路が予想される。 

 

【関連記事】米EV優遇の要件一部緩和へ、日本の重要鉱物利用も対象 


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC316OG0R30C23A3000000/ 

 

 

米EVの税優遇、米3社11車種のみ 日欧韓すべて対象外に 

北米2023年4月18日 5:34 (2023年4月18日 13:01更新) 

 

新たに税優遇の対象になるEVはテスラ、GM、フォードの車に限られた 

 

【ニューヨーク=堀田隆文】米政府は17日、消費者が電気自動車(EV)を購入する際に、税優遇の対象となる車種の新たなリストを明らかにした。対象はテスラなど米国メーカーの11車種に限られ、日欧韓メーカーの車はすべて外れた。米政府はEVを巡って北米での生産・調達を最優先としており、対応が遅れる米国外メーカーは厳しい競争環境に置かれている。 

 

米政府は自国市場のEVについて、消費者が最大7500ドル(約100万円)の税額控除を得られる販売支援策を採っている。2022年8月成立の歳出・歳入法で支援対象を北米生産車に限るなど新たな要件を定め、段階的に適用してきた。4月18日から新たな要件を適用するのにあわせ、対象車種も更新した。 

(続く)