ALPS処理水放出と習近平の凋落(36)

台湾問題半導体規制などでは、米国からの何らの譲歩も得られなかったと言うことである。反対に、中国側からは台湾に侵攻する計画はない」とまで言ってしまった様だ。 

 

 

 

米中首脳会談を渇望しながら「会いたいなら要求をきけ」と強請りの習近平、実はバイデンに無視され空振りの旅だった 

石 平評論家    2023.11.22 

 

習近平、「ラブコール」連発 

 

アメリカ東部時間の11月15日APEC首脳会議の開催に伴った米中首脳会談は世界の注目の中でサンフランシスコ開催された。それはインドネシアのバリ島で開かれた前回の首脳会談から一年ぶりの会談であるが、実は中国の習近平政権は早くも今年の9月あたりから、雰囲気づくりや閣僚会談などの下準備を着々と進め、大変意気込みで会談のための地ならしを行った。 

 

 

by Gettyimages© 現代ビジネス   

 

まずは9月12日、習近平主席は第2次世界大戦中に中国を支援した米義勇航空部隊「フライング・タイガー」の退役軍人たちからの書簡に返信した。退役軍人たちがいつ習主席に書簡を送ったのかは不明だが、習主席はこのタイミングで彼らに返信を送ったのは当然、これを利用して関係改善への意欲を米国側に示しておきたいからだ。 

 

習主席は返信の中で、「中米両国は大国して将来に向けて世界の平和、安定、発展により重要な責任を負っており、相互尊重、平和共存、協力・ウィンウィンを実現すべきであり、実現しなければならない。」と書いて、自ら米国側に熱烈な「ラブコール」を送った 

 

10月24日、習主席は北京人民大会堂にて米国カリフォルニア州知事と会談した。中国の国家元首が米国の一州知事と会談するのは異例中の異例だが、習主席は会談の中で「米国との相互尊重・共存共栄」を大いに語り、今後の協力強化を展望した。 

 

 

熱意の外交的下準備 

 

そして10月24日から26日まで、王毅外相がワシントンを訪問し、バイデン大統領・ブリンケン国務長官らと会談を行った。それは当然、首脳会談への下準備の重要なる一環である。 

 

11月4日、米中友好都市大会」は中国江蘇省で開かれた際、習主席は自ら祝賀の書簡を送り、米中間の友好交流の推進や米中関係の「安定かつ健全なる発展」を訴えた。 

 

11月4日から7日までに、中国は解振華・気候変動問題担当特使を米国に派遣し、ケリー・米大統領特使(気候変動担当)と会談させた。そして米中首脳会談直前の15日、米国側は上述の会談で米中両国が気候変動分野での協力について合意したと発表。 

 

11月8日から12日、今度は中国の何立峰副首相がワシントンを訪問、イエレン米財務長官と数日間にわたって会談した。 

 

このようにして首脳会談開催に至るまでの3カ月間、中国側が3回にわたって副首相・大臣クラスを一方的に米国に遣わして訪問。そして習主席自身も「ラブコール」の書簡を乱発したり格下の米国州知事と会談したりして、あらゆる機会を用いて米国に関係改善への「熱意」を伝えた 

 

さらに、気候変動問題で米国と合意したりしてバイデン政権の痒いところに手が届いた。バイデン政権に対してまさに愛嬌と媚びの限りを尽くしたが、それらは全て、習主席と中国に対するバイデン大統領の心証を良くして、首脳会談を成功裏に導こうとするための外交的努力であった。 

 

望んでおきながら「要求をきけ」 

 

その一方において中国は、自ら首脳会談の実現を熱望しておきながらも、米国側に対しては「会談実現を望むならばこちらの要求を聞き入れよう」という形の強請りをかけていた。 

 

10月28日、米国側との一連の会談を終えた王毅外相は米国民間人との座談会では、「中米両国は首脳会談の実現に向けて一緒に努力することに合意しているが、“サンフランシスコへの道のり”は平坦なものではない “自動運転”を期待すべきではない」と語った。 

 

その意味するところはすなわち、1)中国側は未だに首脳会談の開催に合意していないこと、2)首脳会談の実現に依然として障害があり、何もせずにして首脳会談が自動的に実現できるものではないことであろう。つまり王外相はここで、「首脳会談の実現を望むなら、中国の要求を聞いてなんとかしろ」と米国に迫った訳である。 

 

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自ら会談の開催を熱望しながらも、「会談実現」を一枚のカードにして相手に揺さぶりをかけ要求を飲ませようとするのは中国の外交手法の一つでもあるが、この王毅発言は逆に、彼とバイデン大統領・ブリンケン国務長官との会談では米国側が中国に譲歩しなかったことの証拠であって、王毅はこの時点でかなり焦っていることが分かる。

 

(続く)