ALPS処理水放出と習近平の凋落(37)

米国には効果なし、なし崩し会談へ 

 

10月30日、人民日報系の環球時報は米中首脳会談の開催を論じる社説を掲載した。それは「“サンフランシスコへの道のり”は平坦なものではない」という王外相の言葉を引用しながら、首脳会談実現のためには、米国側の対中関税の撤廃や台湾に対する支援の取りやめなど、様々な要求を具体的に挙げて米国に突き付けた。 

 

そして11月8日、首脳会談開催のわずか1週間前、中国外務省の汪文斌報道官は定例の記者会見で、上述の「道のりは平坦でない」「自動運転を期待すべきでない」という王外相の言葉をもう一度持ち出して米国側に揺さぶりをかけた。つまりこの時点に至っても、米国側はいっこうに中国の要求を飲まなかった。 

 

そして2日後の11月10日、中国外務省は習主席の訪米と首脳会談の開催を正式発表した。両大国間の首脳会談は開催のわずか5日前に正式発表されるのは外交上で極めて異例なことだが、要するに中国側はギリギリのタイミングで米国側に強請りをかけてきて、ギリギリの線で会談の開催を発表せざるを得なくなった。 

 

しかし後に取り上げる首脳会談の結果から見ても分かるように、「会談カード」を使って中国側の強請り作戦はこの時点では完全に失敗に終わった。 

 

実際、中国国営新華社通信が11日に報じたところによると、訪米中の何立峰副首相はイエレン米財務長官との会談で、半導体の対中輸出規制などに対する懸念を表明し、見直しの具体的行動を求めたという。つまり中国側が首脳会談の開催を正式に発表した時点でも、米側は依然として中国の「強請作戦」に屈していなかったことがこれでわかった。 

 

にもかかわらず14日になると、米国からの譲歩を迫る作戦が失敗に終わった中で、習主席は「屈辱と徒労の訪米の旅」に出かけることとなった。 

 

事前アプローチに失敗した中国・習近平政権。その後。開かれた米中首脳会談では『2027年か35年に台湾を侵攻するような計画は中国にない』と米中首脳会談でバイデンに言っちゃった習近平の媚びと焦り https://gendai.media/articles/-/119611)で詳細を解説するように、実際の首脳会談では更なる外交的敗北が待ち構えていた。 

 

https://gendai.media/articles/-/119610 

 

 

習近平が渇望していた米中首脳会談が、今年2023.11.15にサンフランシスコで開催された。首脳会談開催に対しては、習近平は米国に熱烈な「ラブコール」を贈っている。 

 

王毅外相を派遣したり、海振華・気候変動問題担当特使を派遣したり、はたまた副首相の何立峰を送ったりして、何かと米国の気を引こうと涙ぐましい努力を重ねていたものだ。 

 

しかしながらその本音は、「中国の要求を聞け」というものであった。「聞いたら首脳会談に応じてやる」と言った尊大なものであった。

 

しかしながら、米国は何の譲歩も与えなかった。次の論考では「中国側の強請り作戦はこの時点では完全に失敗」に終わっている、と断言している。しかも「台湾を侵攻する計画はない」とまで言わざるを得なかったようだ。

 

 

次の論考では、「さらなる外交的敗北」と表現している。しかも「成り物入の習近平訪米」は「全くの失敗と屈辱の旅」となった、と結んでいる。 

 

ではこの論考を熟読願う。

 

 

 

 

「2027年か35年に台湾を侵攻するような計画は中国にない」と米中首脳会談でバイデンに言っちゃった習近平の媚びと焦り 

 石 平評論家 プロフィール 2023.11.22

 

米中首脳会談を渇望しながら『会いたいなら要求をきけ』の習近平、実はバイデンに無視され空振りの旅だった」で紹介したように、米中首脳会談に向け硬軟両用のアプローチをかけた中国・習近平政権だったが、米側には効果ないまま渡米して首脳会談に臨んだ。そこでは、さらなる外交的敗北が待ち構えていた。 

 

徹底して「特別待遇」でない習近平 

 

米中首脳会談は、11月15日(現地時間)においてサンフランシスコの郊外で行われた。実はそれに先立って13日、バイデン大統領はまずAPEC参加のために訪米のインドネシア大統領と会談した。それによって米国側は、その後の米中首脳会談もAPEC会議の開催に伴う一連の首脳会談の一つに過ぎないこと、習主席に「特別待遇」を与えていないことを示したのではないかとも思われよう。 

 

実際、習主席が専用機でサンフランシスコの空港に到着した際、カリフォルニア州知事やイエレン米財務長官が出迎えたものの、ブリンケン国務長官など大物閣僚が迎えに行かずにして、習主席のために赤絨毯が敷かれることもなかった。 

 

習近平、サンフランシスコ空港到着  by Gettyimages    

 

こうした中で開かれた世界注目の首脳会談であるが、米中両国、あるいはバイデン大統領習主席はそれぞれ、この会談を通して何かを得て、どのような成果を上げたのか、それは最大の注目ポイントであろう。 

 

まず、会談に臨むアメリカとバイデン大統領の狙いあるいは目標はどういうものかを見てみよう。それは実は、会談冒頭で記者に公開する部分でのバイデン大統領の発言に凝縮されているのである。 

 

バイデン大統領はここで、両国の競争が「衝突に発展しないよう」確実にし、米中関係を「責任を持って」管理する必要があると語ったが、それこそは米国側の対中国外交の着眼点であろう。つまり米国側としては、米中関係の「改善」にはさほどの関心もなく、両国間の競争が衝突に発展しないようにどう管理しておくのかはバイデン政権の最大の関心事である事を明らかにしたのである。 

(続く)