ALPS処理水放出と習近平の凋落(39)

「台湾を侵攻するような計画は中国にない」!? 

 

そしてもう一つ、首脳会談における習主席の言動は、およそ彼自身の思いもつかないところで、中国にとっての失敗を犯した。 

 

首脳会談で習主席がバイデン大統領に対し、「2027年か35年に台湾を侵攻するような計画は中国にない」と語り、海外で報じられている中国の「台湾侵攻計画」を明確に否定したことは、米国高官によってリークされて世界中に報じられたが、それは当然、台湾の中でも大きなニュースと話題となって、そして来年1月に予定されている台湾総統選に一定の影響を与えるだろうと思われる。 

 

台湾の中では親中勢力とされる国民党は今、台湾独立派とされる政権党の民進党を相手に総統選を挑んでいるところだが、この選挙戦の中で国民党は、「独立派の民進党候補が次期総統となれば、中国は必ず戦争を仕掛けてくる」との言説を吹聴して、「戦争が欲しくなければ国民党に投票しよう」と選挙民に呼びかけている。それこそは、国民党の選挙戦略の柱の一つである。 

 

しかし前述の「台湾侵攻計画はない」という習近平発言が台湾に伝わってくると、「独立派の民進党候補が次期総統となれば、中国は必ず戦争を仕掛けてく」という国民党の言い分は直ちに説得力を失い、国民党の選挙戦のための切り札の一枚はこれで、習主席発言によって無効化されてしまうのである。 

 

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ご褒美は「お散歩」と「お見送り」 

 

こうしてみると、首脳会談における習主席の失敗はもはや明々白々であるが、しかしそれでは習主席には立場もメンツもない。そこで、首脳会談で実をとったバイデン大統領は、習主席のメンツを立てるために二つの演出を通して彼に「ご褒美」を与えた。 

 

まず、バイデン大統領は、会談と昼食会が終わった後、会談の場所となる邸宅の庭園で習主席と一緒に散歩した。そしてこの散歩の写真は翌日の人民日報一面に掲載された。それ以外の一部官制メデイアも「大ニュース」として取り上げ、中国国内ではそれが、「習主席訪米成功」の証とされた。 

 

そして習主席が会談場所の邸宅を後にする際、バイデン大統領は彼を玄関口まで送って、車に乗るのを見送ったが、それもまた、中国国内で「大ニュース」として取り上げられて、環球時報に至って、それだけをニュースのタイトルにして報じた。 

 

バイデン大統領が取ったこの二つの行動は、自分の「古い友人」でありながら敗軍の将」となった習近平の立場に配慮したものであろうと思われるが、逆に中国側はこのようなささやかな「ご褒美」を大きく取り上げて、習主席の外交的失敗を覆い隠すための格好な材料となった。まさに「情けない」との一言に尽きよう。 

 

しかしバイデン大統領は「敗軍の将」に情けをかけたその直後に、再び習主席に追い討ちの一撃を与えた。会談結果についての記者会見においては、記者からの質問に答える形で、バイデン大統領が「習近平は独裁者だ」と明言した。流石の中国外務省がこのバイデン発言に直ちに反発して見せたが、中国国内ではこの一件は一切報じていない。国民の知るところとなれば、習主席の訪米失敗はもはや隠せなくなるからだ。 

 

このようにして中国は、もはや情報統制という常套手段を使う以外に、習主席が自らの失敗を覆い隠しメン立てる方法はない。鳴り物入りの「習近平訪米」は習主席と中国にとっては全くの「失敗と屈辱の旅」となった。 


https://gendai.media/articles/-/119611?page=5 

 

 

 

米中首脳会談は、2023年11月15日(現地時間)に、サンフランシスコで行われている。同16日、17日(日本時間17日、18日)とAPEC首脳会議が開催されている。米中首脳会談は、そのための一連の首脳会議の一つという位置づけであった。事実、米中首脳会議の前には、訪米中のインドネシアのジョコ大統領との会談が行われていた。

 

 

事程左様に、習近平主席だからと言って「特別待遇」は、与えられていなかった。習主席の専用機のサンフランシスコ空港到着に際しては、赤絨毯は敷かれてはいなかったし、主要閣僚の出迎えもなかった、と書かれているではないか。 

 

この米中首脳会談に対する中国側の期待は、すこぶる大きいものがあった。だから、事前に諸々の諸工作を行っていたわけだ。 

 

 

習近平の目標は、次のようなものであった。 

 

(1)台湾には武器は送るな。中国による(平和)統一を支持せよ。 

 

(2)対中輸出制裁・諸規制を撤回せよ。 

 

と言ったものであった。いわゆる「台湾問題」と「経済制裁」であった訳だ。

 

 

 

これに対して、バイデンの狙いはこんなものであった。 

 

米中両国間の競争が、「衝突に発展しないよう」確実にして、米中両国が「責任をもって管理」しておく、というものであった。

 

 

 

「衝突の管理」とは、当然のこととして、軍事衝突」を未然に防ぐ、と言うことである。そのためには、米中間での軍事対話、即ち、米中両国軍の「対話」と「意思疎通」が必要不可欠なこととなる。 

 

12/18のNO.18のブログでも紹介しておいたように、中国軍機の煽り飛行や中国艦船の危険な行為が頻発しているのであるから、当然である。

 

 

しかしながらこの両軍による対話は、昨年2022年8月のペロシ下院議長の訪台によって、中断されたままであるからこれを再開したい、と言うこと。 

 

そして「首脳会談」の結果は、バイデンの期待する通りのものとなっていた。

 

 

「軍対話再開」は両首脳間の最重要な合意事項」となり、更には、「首脳間ホットラインの設置」についても双方が合意しているのである。 

 

将にバイデン大統領の望む通りのものとなっているのであり、バイデン大統領は「高笑いしている」ところであろう、と書かれている。

 

 

中国の期待する「台湾問題」と「経済制裁」に対しては、バイデン大統領は「全くのゼロ回答」であった、と書かれている。 

 

台湾独立を支持しない」とは言ったものの、これは米国政府の常套文句であり、なんの新味もないものであった。しかも中国の要望に対しては、「全くの無反応、黙殺の形で一蹴」しているのである。

 

つまりバイデン大統領は、習主席の求めには一切応じてはいなかったのである。

 

(続く)