日韓併合100年(134)

委員ウィッテは失望し、記者たちも談判決裂を確信した。


午前9時30分
、会議が始まると同時に小村委員が秘密会議を要求し応諾さ

れる。両全権委員と通訳だけとなる。午前10時秘密会談開始


(1)小村委員、8/23の提案=
'11/8/9,NO.129参照・(8/18の秘密合意の

覚書=
'11/8/3,NO.123参照)に対する回答を要求する。


(2)ウィッテ委員、回答覚書を内示する。

   ・日本側の樺太北部12億円での還付は拒否する。

   ・ロシア兵の捕虜給養費は支払うが、それ以外は拒否する。

   ・樺太北部をロシアへ無償で還付するなら、同島南部を日本に譲渡する。


(3)これがロシアの為しうる最後の譲歩である。


(5)小村委員も日本側の訓令内容を説明する。

   ・日本側の償金要求は正当である。

   ・世界平和のために、日本のサガレン占領をロシアが既成事実として承認

すれば、軍費払い戻し要求は撤回する。


(6)ウィッテは「既成事実」の何たるかに疑問を持ったが、皇帝からの訓令なの

で、(2)が回答である。 と返事。ウィッテはどうなるか判らなかったが、これで全て

が終わったという心境となった、と言う。


(7)小村委員は、無造作に「では、それを受諾することにする」と回答。ウィッテは

瞬時呆然として 聞き返して納得したという。ウィッテは後に「完全な勝利の瞬間

だった」と回想している。

   時に8/29,午前10時40分


(8)午前10時55分、講和談判第十回本会議開催。秘密会議の手順に沿って

進行し、講和談判は日露両全権によって承認された。


(9)正午頃、午前の本会議終了。国務次官補パースを呼び、大統領に「講和が

成立した」事を連絡するよう依頼する。しかしこの伝達はなぜか遅れて、大統領

はこのニュースを知る最初の人物とはならなかった。


(10)ウィッテの秘書コロストウエツが記者団への通報役となり、ホテルウェントワ

ースへ電話をいれる。     発表文は直ちに速報板に張り出され、ホテルは上を

下への大騒ぎとなる。


(11)午後零時50分オイスター・ベイに「AP」通信社からの平和発表文の通報

が届く。

     パースからの電報はまだ届いていない。


(12)記者たちは、償金なしの講和成立に対して、「日本の敗北」「ロシアの勝

」と評価した。

     例えばNYタイムス紙は「
ウィッテは、ひとつずつ譲歩を重ねながら日本を償

金問題に誘導して、要求を撤回するか、それとも金銭のための戦争に踏み切っ

て世界に非難されるか、二者択一の袋小路に追い詰めた。
」と報じたと「日露戦

争8」(児島襄)
には記述されている。

(続く)