米ford Motor社も、PHEVの流れに乗り遅れないようにかどうかは知らないが、2012年
秋発売予定の「Fusion Hybrid Electric」と、こちらは2012年春の限定発売のEV「Focus
Electric」の技術概要を発表している。車の発表でなく技術概要であると言うことが、悪
(にく)いところである。EV車は、きっと加州のZEV規制用であろう。
Ford社が「Fusion Hybrid」、「Focus Electric」の概要を公開
クルマ 2012/04/04 14:14
桃田健史=ジャーナリスト
米Ford Motor社は、「SAE2012 Hybrid Vehicle Technologies/Electric Vehicle
Symposium(米カリフォルニア州サンディエゴ・2012年2月21~23日)」で、2012年秋に発
売する予定のハイブリッド車(HEV)「Fusion Hybrid Electric」と、2012年春に限定車とし
て発売する電気自動車(EV)「Focus Electric」の技術概要を公開した。
Fusion Hybrid Electricは、アトキンソンサイクルのガソリンエンジンを先代「Fusion
Hybrid」の直列4気筒2.5Lから2.0Lへ排気量を減らした。最大出力は105kW/6000rpm、
最大トルクは175N・m/4000rpm。モータの最大出力は88kW/6000rpm、ジェネレータの最
大出力が64kW/1万2500rpm。システム出力は140kWとした。
電池パックの出力は35kW。その搭載位置は後席の後部下で、冷却方法は車室内を通
じた空冷である。この講演の時点では電池セルのメーカーを明らかにしなかったが、その
後パナソニックが同車およびプラグインハイブリッド車にLiイオン2次電池のセルを供給す
ることを発表した(関連記事)。
新型の2.0Lエンジンは、先代より排気量が少なく、ギア比を燃費重視の設定に変更した
ため、加速性能は2.5Lエンジンに劣る。しかし、燃費を比較したグラフによると、市街地走
行などでの低負荷における燃費が改善されており、Ford社はEPA(米環境保護局)燃費
の市街地モードが47MPG(約19.9L/km)になると見ている。一方、高速モードは44MP
G(約18.6L/km)である。それぞれを先代と比較した場合、約15%、約22%の改善とな
る。燃費を向上させるため、空気抵抗も減らした。変速機、燃料タンク、後部フェンダの下
部を覆うアンダーカバーを追加することで、先代に比べて空気抵抗を10~15%減らしたと
いう。
Focus Electricは最大出力が107kW、最大トルクが250N・mのモータを搭載するEV
で、車両の質量は1643kg。電池パックは後席背後の荷室部分に搭載し、電池セルは上下
2段に分かれている。Liイオン2次電池のセルは韓国LG Chem社製のラミネート型で、
全部で430セルを使う。電池パックの出力は60kWで、電池容量は23kWh。容量は日産自
動車「リーフ」の24kWhと近い。充電用コネクタは普通充電に対応するSAE J1772のみ
で、SAE(米自動車技術会)が規格化を目指すコンボコネクタ(急速充電と普通充電の両
方の端子を持つ)への対応については公表していない。
米国内で新車を販売する際に表示が義務付けられている燃費値を示すラベルでは、市
街地モードが100+ MPG equivalent(マイル/ガロン相当、以下MPG e)、ハイウエイモード
が95+ MPG eになるとした。その後、Ford社は3月2日に正式な値を発表し、混合モード
で105MPG e(市街110MPG e、高速99MPG e)と、これまで最高であった日産自動車
「リーフ」の99MPG e(市街106MPG e、高速92MPG e)を抜いて5人乗り乗用車として最
高になったとしている。また、航続距離は76マイル(122km)となり、これもリーフの73マイ
ル(117km)を上回っている。満充電までの時間は240Vの普通充電で4時間であり、リー
フの半分ほどであるが、出力が7kW相当となる電流値の大きな充電器を使っているようだ。
Ford社は通常のガソリン車を購入するのと比較して、電費は5年間の使用で9700ドル
(78万6000円)節約できるとする。Focus Electricの車両価格は3万9200ドル
(317万5000円)であるが、政府の補助金7500ドル(60万8000円)の対象になる。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120404/211073/
Ford Motor社も技術概要の発表である。そのうちに実車が出てくることであろうが、それ
によるとEV車は、航続距離、電費とも日産「リーフ」よりわずかばかりよい数値となっては
いるが、5人乗りセダンとしては、似たようなものであろう。
更には米EVベンチャーのFisker Automotive社は、かねてより出す出すと言っていた
EV、と言ってもレンジエクステンダー式EV、即ち一般に言う高性能PHEVの「Atlantic」
を、2012.4.3にN.Y.で初公開している。
Tech-On【NYショー】Fisker社、2014年発売のレンジエクステンダー付きEV「Atlantic」を公開
2012/04/12 16:06
桃田健史=ジャーナリスト
図1◎フロントビュー
米EVベンチャーのFisker Automotive社は、ニューヨークモーターショー(一般公開日
:2012年4月6日~15日)の開催に合わせて、4月3日ニューヨーク市内の特設会場
で、2014年の発売を目指す4ドアのレンジエクステンダー付きEV(電気自動車)
「Atlantic」を初公開した。価格、発売時期は未定ながら、競合車としてドイツAudi社「A5」
や同BMW社「3シリーズ」を想定している。
同車は、2011年12月から納車を始めた4ドア車「Karma」を一回り小さくしたような外観を
持つ。屋根は「蜘蛛の巣」をイメージしたガラスルーフとした。プラットフォームはKarmaと共
通ではなく、現在開発中のセダン「Nina」がベースとなる。発電機として使用する4気筒ガ
ソリンエンジンについて同社Executive ChairmanのHenrick Fisker氏は「BMW社と交渉
中だ。詳しくは企業機密であり公表できない」と語った。搭載する電池の種類についても未
公表だった。Karmaでは、エンジンが米GM社製の排気量2.0L直列4気筒ターボエンジン
で、Liイオン2次電池は米A123 Systems社製である。
内装は、センターコンソールが運転席側に大きく湾曲し、ダッシュボード全体が水平方向
に広がっていたKarmaと比べて、よりスポーティーな雰囲気を狙った。また7~8インチ型と
見られるディスプレイをセンターコンソールに装備する。
ベースとなるNinaは、DOE(米エネルギ省)がFisker社にATVMI(Advanced Technology
Vehicle Manufacturing Incentive)ローンとして低金利で貸し付けた5億2800万ドル(約433
億円)を活用して生産する。同車の生産拠点は2009年にGM社から買収したデラウェア州
のウィルミントン工場である。生産開始時期は当初「2012年半ばから、年産10万台体制」と
していた。だがKarmaを受託生産しているフィンランドのValmet Automotive社関係者によ
れば「Ninaの生産計画はかなり遅れている」という。Atlanticの生産拠点について、Fisker
社関係者は「デラウェア州で造るかどうかは未定」と語った。
Fisker社は2012年2月28日、元Chrysler社CEO(最高経営責任者)のTom LaSorda氏
がCEOに就任したと発表。今後同氏が主導して、遅れているNinaの生産やAtlanticの量産
を目指す。
図2◎サイドビュー
図3◎リアビュー
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120412/212524/
(続く)