カーボンゼロ、クルマの未来はどうなる?(9)

主力のロシア撤退で、販売台数の7割弱が欧州市場となりお膝元への依存度が極端に高まる。実質的には欧州専業メーカーといってもいい。だが欧州はガソリン車など内燃機関の新車販売が35年までに事実上禁止される見通しで脱炭素規制が世界でも先行する地域だ。急速なEVシフトが求められ、巨額の電動化投資やソフトウエア競争への備えが不可欠となる。 

 

EVシフトを急ぐルノー23年中にもEV新会社を設立すると表明し、スケジュールのお尻を自ら切った。日産は交渉過程で資本見直しとEV新会社への出資などを一括の「ワンパッケージ」(関係者)と位置づけ、「合意を急ぐ必要はない」と一部の幹部からは長期化を匂わせる発言がしばしば出た。日産は四半世紀前とは一転して、EV特許などの知的財産の扱いなどで優位な立場で交渉を進められた。したたかな日産を前にしてルノーは後手に回ったようにも見え 

る。 

 

日産の内田誠社長兼CEO㊧とルノーのルカ・デメオCEO     

 

22年の世界販売台数は日産とルノーに、三菱自動車を加えた日仏3社連合の順位が韓国の現代自動車グループに抜かれて4位に後退した。日仏連合は17〜19年には約1000万台を販売し世界首位に迫ったこともあるが、足元はトヨタ自動車がほぼ独走でトップをひた走る。EVでは日産が「リーフ」で先行したが、米テスラ比亜迪(BYD)など中国勢に追い抜かれた。連合での事業戦略の再構築も急ぐ必要がある。 

 

(湯前宗太郎) 

 

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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。 


田中道昭立教大学ビジネススクール 教授
 

 

ひとこと解説 

日産がルノーから支援を受けた1999年3月当時、外資系金融機関でストラクチャードファイナンスを担当、日産と日産の金融子会社も担当していました。日産の破綻懸念が強まっていた中で、RMバンカーとともに日産の経営企画や財務と毎日やりとり、ほとんど全ての自動車会社等からスポンサー就任を断られ、最期に登場したのがルノーだったことを今でも鮮明に覚えています。ルノーはまさにラストリゾート、同社がスポンサーに名乗りをあげていなかったら、当時の日産は破綻し、長銀のような顛末になっていたと思います。ルノーと日産が模索する新たな提携の枠組みは、異業種企業も巻き込み、自動車業界再編の大きなきっかけになると思います。 

2023年1月31日 16:09 (2023年1月31日 16:11更新)124 

 

 


中西孝樹ナカニ自動車産業リサーチ 代表アナリスト
 

 

貴重な体験談 

昔話なら負けてはいません笑。日産がルノーから支援を受けることになる第一歩は、1998年にシュバイツァー会長が(資本提携の牙を隠して)日産の塙社長へ表敬訪問するとことから始まりました。その時、私は某米系外資証券の自動車アナリストとして、会長に日産についてブリーフィングした記憶があります。当時、ルノーVOLVOとの提携に頓挫、「座して死を待つより打って出るべし」という感じで、グローバル化に生き残り戦略を見出だそうとしていたわけです。その後、両社のアライアンスは「対等の精神」→「対等のガバナンス」→「対等の出資」と進化していきます。そして、ルノーはグローバルから欧州特化へ戦略大転換をします。 

2023年1月31日 16:24 (2023年1月31日 16:25更新)112 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC3123V0R30C23A1000000/?n_cid=NMAIL006_20230131_Y 

 

 

ルノーは、2019年のイランからの撤退、そして2022年のロシアからの撤退で、かなりの打撃を受けているようだ。この記事によると、ロシア事業では、営業利益の2割を叩きだしているというので、それがなくなった訳で大打撃となったことであろう 

 

その結果欧州事業が7割弱を占めるようになったという。と言うことはEUでは先にも指摘したように、2035年にはICE車は販売が出来なくなってしまうのでまだ紆余曲折があるようなのだが、BEVに掛かり切りにならざるを得ない、と言う事情が差し迫っているということである。 

 

だから慌てふためいて、日産のBEVの技術に頼ろうとして、日産株を手放して日産と対等な資本関係になったということか。これで日産のご機嫌を取って、 EVの新会社アンペア」への出資を取り付けたかったということであろう。 

 

なんと言っても欧州では、そのうちにBEVしか販売できなくなってしまうからである。BEVだけとは、少し言い過ぎではあるが、現時点ではCO2フリーのクルマは、ルノーにとってはBEVしかないのである。 

 

先にも言及しておいたが、クルマをCO2フリーにするためには、BEVの他には、FCEV(燃料電池車)か、ガソリンを止めて水素か合成燃料(e-fuelなど)に変換しなければならないわけであり、ルノーにとっては、その準備が出来てはいない、と言うことである。だから焦ったのである。 

 

ルノーは会社を5分割してでも、欧州で生き残らなければならないと考えているのである。将に「背に腹は代えられない」と言うことであろう。 

 

 

 

「日産の支配権」を捨てたルノー、つ

 

いに対等関係を認めた焦りの正体 

佃 義夫:佃モビリティ総研代表 - 2023.2.9 4:15 


日産とルノー三菱自ら3社のアライアンスは新たなステージを迎えることになる。写真は記者会見に臨む日産の内田誠社長 Photo:EPA=JIJI  

 

 

日産・ルノーの資本を巡る議論が決着 

日産悲願の「対等出資」へ 

 

 日産自動車ルノー三菱自動車工業の日仏連合「アライアンス・ボード」の首脳が2月6日、英ロンドンで会見し日産とルノーの資本関係見直しで合意したと発表した。ルノー保有の日産株を43.4%から15%まで引き下げ、相互に15%ずつ出資する。いわゆる「いびつな資本関係」の是正によって、1999年の両社の資本提携以来24年間続いた日仏連合は「歴史的な転換点」を迎えることとなった。 

(続く)